ウェーハ表面検査の粒径はPSL換算値同じLSE径でも実寸は材料と形次第
ウェーハの表面検査装置(SSIS)が返すパーティクルの「サイズ」とは、欠陥の実寸ではなく、同じ強さの光を散らすポリスチレンラテックス(PSL)球の径に換算した値、LSE径だ。換算の基準になるSEMI M531の校正は、同じメーカー・同じ機種の装置どうしで、同じ散乱体に同じLSE径を付けるためのものだ。NISTの計算と測定では、粒子の材料と形、下地の膜の違いによって散乱光の強さと向きが変わった。PSL球と性質の違う欠陥では、同じLSE径が同じ実寸を意味するわけではない。
LSE径は欠陥の正体も示さない。鏡面ウェーハで光る点には、パーティクルのほかにCOPのような結晶欠陥も含まれる。ウェーハの検査項目の全体はシリコンウェーハの入門で扱っている。
LSE径は、同じ強さの光を散らすPSL球の径
Section titled “LSE径は、同じ強さの光を散らすPSL球の径”SSISは、回転するウェーハにレーザーを当て、欠陥で散った光を検出器で受ける。M53は、パターンのない鏡面・エピ・膜付きのウェーハ表面に堆積させたPSL球をSSISが正しく測れるように、暗視野の検出チャンネルを校正する手順を定めている。主に鏡面シリコンウェーハ用に作られた規格で、ほかのパターンのない表面にも「適した参照ウェーハを使えば」適用できるとしている。同じ規格は、LSE径を、正体も実寸も形も分からない実際の表面欠陥を報告するための値として位置づけ、PSL球以外の散乱体の実寸をLSE径からどう決めるかは定めないと明記する。
LSE径は、装置が光の強さを径の目盛りに読み替えた値だ。M53の注記によれば、深紫外(DUV)の照明を繰り返し当てるとPSL球の散乱の応答が変わるため、DUVの装置では長期の校正にシリカ(SiO2)などDUVで安定な材料の粒子を使うことが多い。そのとき粒子の散乱強度には、実際の径ではなく、同じ強さを出す仮想のPSL球の径を割り当てる。M53は、こうした標準ウェーハを「サイズの標準」ではなく「散乱強度の標準」と呼んでいる。
校正がそろえるのは、同じメーカー・同じ機種の装置どうし
Section titled “校正がそろえるのは、同じメーカー・同じ機種の装置どうし”M53は校正の目的を、あるメーカーのある機種の複数の装置が、特定の局在光散乱体(LLS)に同じLSE径を付けることとしている。機種が変われば、照明の角度や波長、集光の角度範囲が変わる。
NISTのGermerとMulhollandは論文の導入で、光学配置の違う2台の装置をPSL球で同じ値が出るように校正しても、実際の汚染粒子は形も屈折率もPSL球と違うので、装置ごとに違うLSE径が出ると論じている2。同じ論文は、校正点の間を対数目盛りの直線で補間する現在のやり方では、使う標準粒子の組を変えると、とくに大きい粒径で校正曲線が大きく変わりうるとも述べている。
PSL球そのものの径にも、測り方による差がある。同じ論文では、気相の粒子を電気移動度で測った径と、ウェーハに付いた粒子を散乱光で測った径が約5%食い違った。著者らは、ウェーハに付いた粒子が変形したことが原因と考えている。そのうえで、径が約200 nm未満の粒子では、この変形が計算に基づく装置の校正に与える影響は小さく、径の誤差は約1%にとどまると結論している。
材料と形が変わると、同じ大きさでも散る光が変わる
Section titled “材料と形が変わると、同じ大きさでも散る光が変わる”散乱の強さと向きは、粒子の大きさだけでなく屈折率で変わる。前節のGermerらも、形と屈折率がPSL球と違えば散乱光の分布が変わることを、装置間でLSE径がずれる理由に挙げている。NISTのKimらは、径約100 nmのPSL球と銅球を、酸化膜の厚さが異なるシリコン基板に載せ、波長532 nmの光で散乱光の偏光と強さを測り、基板の膜まで含めた散乱の計算で再現した3。計算から求めた径は、気相で電気移動度から測った径と一致した。
形の影響は、金属で大きい。Germerは、波長488 nmのp偏光を60度で斜めに入れる一つの条件で、シリコン上の径60 nmのアルミニウム粒子を計算で比べた4。基板と接する付近の形を最大1.2 nm変えただけで、散乱が強い角度での散乱光は20〜30%違い、径に直すと最大5%、または材料を取り違える誤りにつながりうる。誘電体の粒子では、同じ程度の形の違いの影響ははるかに小さかった。
下地の膜と検出チャンネルで、拾える欠陥と信号が変わる
Section titled “下地の膜と検出チャンネルで、拾える欠陥と信号が変わる”前節のKimらの計算は、粒子の下にある基板の酸化膜まで含めていた。M53も、鏡面ウェーハ以外の表面に適用する条件として、その表面に適した参照ウェーハを使うことを挙げている。
検出チャンネルによっても、見える欠陥が変わる。KLAはSurfscan SP7XPの製品資料で5、垂直入射のチャンネルが斜入射のチャンネルで見つからない欠陥を捉え、位相差のチャンネルが浅い盛り上がりや残渣のように散乱の弱い欠陥の信号を強めると説明している。KLAの説明では、チャンネルごとに捉えやすい欠陥が違う。
LSE径が同じでも、パーティクルとCOPは別の欠陥
Section titled “LSE径が同じでも、パーティクルとCOPは別の欠陥”鏡面ウェーハで光る点には、パーティクルのほかにCOPのような結晶欠陥も含まれる、と日立ハイテク6は説明している。付着した粒子と結晶由来のピットでは、できる工程が違う。両者を分ける方法として、CZウェーハでCOPをほかの輝点欠陥から切り分ける差分法の精度7がJournal of Crystal Growthで報告されている。
同じウェーハを繰り返し走査して捕捉率と誤検出率を求める方法や、装置が加えた粒子の数(アダー)の仕様の決め方は、テストウェーハとモニターウェーハの解説にまとめている。
7件を表示
- 1SEMI M53:標準粒子による表面検査装置の校正store-us.semi.org ↩
- 2NIST:電気移動度と表面散乱によるPSL球の径の比較(2005年)tsapps.nist.gov ↩
- 3
- 4NIST:わずかに球からずれた表面粒子の散乱(2003年)tsapps.nist.gov ↩
- 5KLA:Surfscan SP7XPの製品資料kla.com ↩
- 6日立ハイテク:ウェーハ欠陥検査装置の検出方式hitachi-hightech.com ↩
- 7Journal of Crystal Growth:CZウェーハでCOPを輝点欠陥から切り分ける差分法の精度(2000年)sciencedirect.com ↩