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モニターウェーハ、前後の差で工程を監視|測れる量は表面の状態次第

テストウェーハとは、本稿では製品にならないまま工程に流す基板をまとめて指す。モニターウェーハは、装置を通す前と後を同じ条件で測り、その差を時系列で追って工程の変化をつかむ。何を測れるかは表面の状態で決まる。鏡面のベアウェーハなら装置が加えたパーティクル、全面に膜を付けたブランケットウェーハなら膜厚やエッチングレート、パターン付きウェーハなら線幅や重ね合わせが対象になる。

日立ハイテクの欠陥検査の解説は1、装置の清浄度を監視するためにダミーのベアウェーハを使うと書き、同じ1枚にダミーとモニターの両方の仕事を持たせている。呼び名がウェーハそのものより使い道に付いていることが、ここから読み取れる。同じ解説は、パターンのないウェーハでの直接検出と、パターン付きウェーハでの隣り合うダイの画像の差分を、別の検査方式として紹介している。この2点から本稿は、「ダミーを1枚流して」という指示で決まるのは役割だけで、表面の状態、事前・事後の測定レシピ、対象のチャンバー、合否の基準まで書いて、はじめて繰り返せる工程監視になると考える。

モニターとダミーは、使い道で定義されている

Section titled “モニターとダミーは、使い道で定義されている”

半導体工場は、製品用のウェーハと一緒にモニター用のウェーハを工程に入れる。RSテクノロジーズの有価証券報告書2の説明では、製品ウェーハは最終工程でチップに切り分けられるのに対し、モニターウェーハは各工程で抜き取られ、円盤のまま残る。同じ報告書は、ダミーウェーハを、製造装置の立ち上げ、プロセス条件の確認、搬送系の動作確認などに使うウェーハと説明している。

この定義にならい、本稿では3つの呼び名の仕事を次のように分ける。テスト(評価)ウェーハは、材料の候補、装置、レシピ、測定法を比べるときの広い呼び名だ。モニターウェーハは、同じ条件で繰り返し測り、工程の中心値、ばらつき、ドリフト(ゆっくりした変化)、急な変化を追う。ダミーウェーハは、製品を入れる前に、搬送、装置の立ち上げ、チャンバーのコンディショニング、バッチの枚数合わせを担う。この分け方では、同じ1枚でも、レシピの条件振りでは評価用、基準値が決まった後はモニター、装置を整える処理ではダミーと呼び名が変わる。

呼び名その回の主な目的主な出力呼び名に加えて決める項目
テスト/評価仮説の比較、装置の認定、プロセスウィンドウの探索条件間の差、感度、再現性、合否の根拠ベア/ブランケット/パターン付き、新品/再生
モニター決まったサンプリングと測定レシピによる工程監視事前・事後の差、ウェーハマップ、管理図、異常の記録専用ウェーハか製品ウェーハか、測る物理量
ダミー搬送、枚数合わせ、ウォームアップ、コンディショニング、製品の保護処理の完了、ハンドリングの結果、必要に応じてパーティクル数や膜厚低グレードでよいか、測定するか、再利用できるか

購入時のグレードは、呼び名とも表面の状態とも別の軸だ。SEMI M8は3、新品の単結晶Siテストウェーハを寸法、結晶、電気特性、表面欠陥特性で分類する規格で、パーティクル計数、リソグラフィの解像度測定、金属汚染の監視のように高い基板品質が要る用途にはSEMI M244を参照するよう指示している。M24は150〜300 mmのプレミアムウェーハをこの3用途向けに定めた仕様で、SEMIのストアでは「inactive」と表示されている。寸法と共通の特性はSEMI M15が定める。受入値に使う結晶・形状・表面品質の測定項目はシリコンウェーハの入門で扱っている。

表面の状態はベア・ブランケット膜付き・パターン付きの3つ

Section titled “表面の状態はベア・ブランケット膜付き・パターン付きの3つ”

ベアウェーハは、測定のために意図して付けた膜もパターンもない基板だ。それでも表面には自然酸化膜、研磨によるヘイズ(表面のくもり)、パーティクル、結晶欠陥がある。ブランケット膜付きウェーハ(ブランケットウェーハ)は、連続した膜を全面に付け、ダイの繰り返しパターンを持たない基板で、単層膜も積層もある。パターン付きウェーハは、ラインアンドスペース、コンタクト、重ね合わせのターゲット、製品ダイ、TEGなどの形を持つ。「ブランクウェーハ」は会話ではベアに近い意味で使われるが、裏面膜や保護膜の付いた品種もあるので、実際の膜構成はウェーハの履歴と測定で確かめる。

KLAのSurfscan SP7XPの発表資料は6、パターンなし検査の対象として、基板とさまざまなブランケット膜を挙げている。日立ハイテクの解説のとおり検査原理も表面で分かれるので、基準値はベア、ブランケット、パターン付きで別々に持つことになる。

図1表面の状態と3つの用途
ベアウェーハ ブランケット膜付き パターン付き Si基板 膜 評価 モニター ダミー 搬送・洗浄条件の比較 レートと面内均一性 パターン依存差の測定 前後の差で粒子の増加 膜厚・屈折率の推移 CD・重ね合わせの推移 装置立上げ・スロット埋め 最表面を製品に近づける パターン負荷で条件合わせ
同じ評価・モニター・ダミーの仕事でも、ベアなら粒子の増加、膜付きなら膜厚・屈折率、パターン付きならCD・重ね合わせを測る。

ベアウェーハは前後のスキャンの差で、装置が加えた粒子を数える

Section titled “ベアウェーハは前後のスキャンの差で、装置が加えた粒子を数える”

日立ハイテクは同じ解説で、清浄度モニター用のベアウェーハを装置に入れ、装置内のステージを動かしてパーティクルの増加を測る手順を挙げ、この確認が装置メーカーの出荷検査とデバイスメーカーの受け入れ検査の両方で行われるとしている。KLAもSurfscan SP7XPを、ウェーハメーカー、欠陥のない工程を開発する装置メーカー、受け入れウェーハ・工程・装置の品質を保つ工場で使われる装置として紹介している。

手順では、処理の前にスキャンし、搬送系やチャンバーを通した後に、同じ感度と同じエッジ除外幅でもう一度スキャンする。日立ハイテクの解説によれば、鏡面ウェーハで光る点にはパーティクルのほかにCOPのような結晶欠陥も混ざる。事後の個数だけでは、受け入れ時からあった欠陥と装置が加えた欠陥が同じ数字にまとまるので、座標を照合して、新たに増えたもの(アダー)、消えたもの、残ったものに分ける。

アダーの「サイズ」は実寸とは別の値だ。SEMI M53は7、単分散の標準粒子で表面検査装置の暗視野チャネルを校正し、正体・実寸・形の分からない欠陥をラテックス球相当(LSE)径で報告する枠組みを定めている。「0.05 µmのアダーが3個」は、LSE径0.05 µm相当と分類された散乱体が3個あるという意味だ。LSE径の意味は表面検査の粒径で詳しく扱う。

小さな差を見分けられるかは、検査装置の再現性で決まる。SEMI M50は8、同じウェーハを繰り返しスキャンして検出位置を重ね、LSE径ごとの捕捉率と誤検出率を求める試験法で、ウェーハを外さない静的な方法と載せ直す動的な方法を分けている。捕捉率と誤検出率が分かれば、事前・事後の差に含まれる検査側の揺れの大きさが分かる。アダーの管理限界がこの揺れに近いと、装置が加えた粒子と検査側の揺れを見分けにくくなるので、限界はこの幅と比べて決めることになる。表面検査装置の仕様の推奨は、130 nmから5 nm世代を対象とするSEMI M529の2025年5月版がまとめている。装置が加えた粒子を測る手順を定めたSEMI E1410は2003年に取り下げられ、1回の通過あたりの粒子数の仕様は供給者と使用者が個別に取り決める。検査装置の種類は検査・計測・オーバーレイ装置で扱う。

ブランケットウェーハは膜厚とレートの面内分布を測る

Section titled “ブランケットウェーハは膜厚とレートの面内分布を測る”

ブランケットウェーハは、パターン密度や局所的な形の影響を除いて、膜の厚さ、屈折率、組成、応力、シート抵抗、エッチングレート、CMPの除去量をウェーハ面内で測るための基板だ。酸化・成膜では表面がベアからブランケットへ、エッチングではブランケットから薄くなった膜や露出した基板へ変わる。

Nova WMCは11、製品ウェーハ上の測定用の窓か、ブランクウェーハの全面で薄膜を測る構成を紹介している。全面マップと窓での測定では測る点の集まりが違うので、「膜厚の平均」の基準値も別々に持つ。測定器そのものの確認には参照材料を使う。NISTのThin Film RGTMは12、200 mmまたは300 mmのSiウェーハに薄膜を付け、X線反射率法(XRR)と分光エリプソメトリを組み合わせて値を付けた参照材料だ。NISTの平面参照材料の計画は13、測定済みの厚さと粗さを付けたブランケット試料を、測定装置の検証と工程安定性の監視に提供する。

工程前→後の表面状態主に測る量ブランケットでは測れない項目
成膜・酸化ベアまたは下地のブランケット → ブランケットの積層膜厚、n・k、応力、シート抵抗、パーティクルパターン側壁の被覆、製品トランジスタの特性
エッチングブランケット → 薄くなった膜、または露出した基板エッチング量、レート、面内均一性、残渣、粗さパターンによるローディング、コンタクト底の局所的な残渣
CMPブランケットの積層 → 平坦化したブランケット除去量、残膜、不均一性、スクラッチ、表面のヘイズ配線のディッシング、パターン密度によるエロージョン
洗浄ベアまたはブランケットの処理前 → 処理後パーティクルの増加、金属、ウォーターマーク、膜減り後のパターン工程の歩留まり、電気的な合否

パターン付きウェーハは形の違いによる差を測る

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パターン付きの評価ウェーハでは、線幅、ピッチ、向き、パターン密度、下地の積層を設計し、リソグラフィ、エッチング、成膜、CMPが形にどう反応するかを測る。ベアやブランケットで安定している工程でも、密集部と孤立部、中心と周辺、縦線と横線で、CD、膜厚、欠陥の捕捉率が変わることがある。KLAのVoyager 1015の発表資料は14、現像後のパターン付きウェーハ検査と、ベア・ブランケット向けのパターンなし検査に、別々の装置を当てている。NISTの光学・電気ハイブリッド重ね合わせテスト構造は15、同じパターンから光学の値と電気の値を取り、光学的な重ね合わせ測定に特有のずれを取り出す研究例だ。

製品ウェーハをモニターの代わりに使う構成もある。Applied MaterialsのExciteの発表資料は16、ブランケットウェーハとパターン付きの製品ウェーハの両方でプロセス装置の状態を監視する構成を紹介し、製品ウェーハを検査することで非製品ウェーハを流す枚数を減らせるとしている。どこまで代えられるかは、対象の層、感度、前の層の欠陥を切り分けられるかで、工程ごとに決まる。

ダミーウェーハは製品を入れる前の物理条件を整える

Section titled “ダミーウェーハは製品を入れる前の物理条件を整える”

ダミーウェーハは、ロボット搬送、アライナー、ロードロック、チャック、チャンバーのコンディショニング、バッチ炉のスロット埋めなど、製品を入れる前後の物理条件を整える。必要な直径、厚さ、エッジの形、反り、裏面の摩擦、導電性、表面の膜は装置ごとに違う。バッチ式LPCVDの例では、ダミーウェーハの米国特許が17、製品ウェーハの枚数が変わってもボートに載せる量と表面積をそろえ、膜厚の再現性を保つ使い方を記載している。熱工程のボートや枚葉チャンバーのシーズニングでは、ダミーに求める表面と配置が変わる。

センサーを内蔵した非製品ウェーハもある。KLAのSensArrayは18、エッチング、リソグラフィ、ウェット洗浄の最中にウェーハ面内の温度を時系列で測るウェーハだ。工程中の状態を直接測る道具で、スロットを埋めるダミーとは用途が違う。

TEGと製品ダイの判定は、ウェーハの呼び名とは別の結果

Section titled “TEGと製品ダイの判定は、ウェーハの呼び名とは別の結果”

TEG(test element group)は、抵抗、キャパシタ、トランジスタ、コンタクト、配線、ビアなどを電気的に測りやすくまとめた構造群で、スクライブラインや専用のテストチップに置く。テストウェーハが基板に付ける役割なのに対し、TEGはウェーハ上の構造の単位だ。NISTのTest Structure Fundamentalsは19、大きな回路の応答から、加工寸法、個々のトランジスタ、ばらつき、信頼性をテスト構造で切り分けて測る役割を挙げている。信頼性を測る構造は別に設計する。JEDEC JESD87は20、AlCuと高融点金属のバリアを組み合わせた配線について、エレクトロマイグレーションとストレス誘起ボイドを測る構造を定めている。加速試験用の構造の結果は、工程の管理図とは分けて持つ。

FormFactorのウェーハ受け入れテスト(WAT)の解説21とアドバンテストのDynamic Parametric Testは22、製造の途中と最後にスクライブラインなどの専用構造へプローブを当て、工程の一貫性を測る構成を紹介している。製品ダイの良否は別の段階で決まる。アドバンテストのATEの解説は23、プローバーが各ダイの電極に接触し、テスターの結果から良品ダイと不良品ダイを分ける流れを示している。モニター、TEG、ウェーハソートのマップを重ねるときは、ノッチ、原点、軸の向き、ダイピッチ、表裏をそろえて共通の座標に変換する。SEMI E142の改訂解説は24、プローバーやレシピの座標を標準のXY座標へ変換する課題を取り上げている。測定の段階ごとの違いはウェーハテストとスクリーニングで扱う。

モニターの値は管理図で追い、限界を超えたら原因を絞る

Section titled “モニターの値は管理図で追い、限界を超えたら原因を絞る”

モニターウェーハの価値は、1回の合格値よりも、同じ条件で測った値の変化を早く見つけられることにある。NISTの管理図の解説は25、中心線と上方・下方の管理限界を使って、偶然のばらつきでは説明できない工程の変化を見つける方法を示している。管理限界は工程の変化を見るためのしきい値で、製品として受け入れる範囲を決める製品仕様とは役割が違う。

ばらつきは階層に分けて見る。NISTの半導体バッチ処理のSPC事例は26、拡散炉のバッチ、枚葉処理、リソグラフィの露光領域でばらつきの階層を分けている。NISTの入れ子型のばらつきの事例は27、バッチ内のウェーハ、その中の測定点という階層でモニターウェーハのデータを設計している。チャンバー間、処理の回の間、ウェーハ間、測定点の間のばらつきを一つの標準偏差にまとめると、ドリフトがどの階層で起きたのかが分からなくなる。

前回の値と比べるときにそろえる条件は、次の6つだ。

そろえる条件主な中身そろえないと起きる取り違え
ウェーハの素性ウェーハの番号、供給元のロット、材料の状態、新品/再生、再生回数材料や履歴の違うウェーハを同じ基準値に混ぜる
役割と表面その回の役割、ベア/ブランケット/パターン付き、膜構成、パターンの版「モニター」という名前から測定対象を推測する
処理の実行装置、チャンバー、レシピとその版、スロット、開始・終了時刻、保守の状態設定値と、実際に動いた装置の状態を混同する
測定事前・事後、計測装置とレシピ、校正の状態、エッジ除外幅、測定点測定感度やサンプリングの差を工程の差と取り違える
座標変換ノッチ、表裏、原点、XYの向き、ダイの配置、マップ変換の版回転・反転したマップを同じ位置として重ねる
判定基準にするウェーハ群、管理限界、仕様、処置工程の統計的な変化と製品の合否に同じしきい値を使う
図2モニターウェーハで装置の状態を判断する
事前測定 装置に通す 同じ条件で事後測定 管理図で比べる 元からある粒子 搬送とステージ動作 増えた粒子 増えた粒子数 管理限界 時間 限界内 生産を続ける 限界を超えた ロット保留の候補 原因を絞る 測定→履歴→処理→チャンバー→保守 保留・継続・再認定を選ぶ
モニターの前後の差を管理図で追い、限界を超えたら原因を絞ってから保留・継続・再認定を選ぶ流れの一例。

図2の例では、管理限界を超えたとき、測定そのもの、ウェーハの履歴、処理の実行内容、チャンバー間の差、保守の時刻の順に原因の範囲を絞る。モニター1枚の異常はロット保留の候補になり、最終的な処置は、再測定、近くのモニター、同じ時刻のセンサーや製品検査のデータを合わせて決める。パーティクルの総数が同じでも、中心に集まるのか周辺にリング状に並ぶのかで疑う部位が変わるので、生の個数、要約値、マップは分けて見る。欠陥の分布を製品への影響と結び付ける方法は歩留まりと欠陥管理で扱う。

使い終わったモニターウェーハは、再生して何度も使う

Section titled “使い終わったモニターウェーハは、再生して何度も使う”

膜やパターンが付いたモニターウェーハは、そのままでは工程に戻せない。再生会社は膜を剥がし、研磨、洗浄、検査を経て、再び使える基板に戻す。RSテクノロジーズの有価証券報告書は、1枚のモニターウェーハを10回から20回程度再生できると書き、三益半導体工業は28、回収したテスト・モニターウェーハを新品のテストウェーハと同等の品質に戻すとしている。SEMI M3829は再生ウェーハをメカニカル用、炉用、パーティクル用、リソグラフィ用の4つに分け、分類ごとに要求値の表を定めている。1回の再生で削る厚さと、内部に残る銅が再生の回数をどう縛るかは、使用済みモニターウェーハの再生回数で扱う。

新品と再生品を同じウェーハ群に混ぜるときは、再生の回数、除いた膜、残りの厚さもウェーハ群を分ける条件に加える。

再生は独立した事業でもある。RSテクノロジーズのウェーハ再生事業の2025年12月期の外部顧客への売上高は275億2,800万円だった2。再生会社の売上と市場の推計は再生ウェーハの事業で比べる。

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