安全に動くことを確かめた動作点が 2 つあります。そのあいだは安全だと言ってよいのか。
言えるなら試験は縁の数点で済み、言えなければ総当たりです。この 1 問が、試験規模を 1 桁変えます。
同じ「形が握る」という構図が、線源の治具にも出ます。そちらでは 0.1 mm の設置ずれが 4.4% の報告誤差になります。
凸なら補間できる。非凸なら、その権利が消える
形について、3 語を先に分けます。
| 語 | 形 |
|---|---|
| 凸 | 領域内の任意の 2 点を結ぶ線分が、すべて内側にある |
| 非凸 | どこかにへこみがあり、内部の 2 点を結ぶ線分が外へ出る |
| 内部の穴 | 領域の内部に開いた孤立した危険域。縁から切り離されている |
安全動作領域が内部に孤立した穴を持つのは稀です。ところが非凸であることは、よくあります。
この 2 つで、言えることが別です。
電圧と電流の平面で考えます。低電圧・高電流は安全、高電圧・低電流も安全。ところがその中間で、共振や熱の局所集中が起きる。
両端だけを測ると、真ん中を見逃します。
だから総当たりが要求される理由は、精度の外——形状です。
非凸が生じる物理は、先に列挙が済みます。共振、熱暴走の閾値、寄生素子の導通、保護回路の動作点。「ある範囲でだけ働く機構」があれば、そこにへこみが入ります。
短絡耐量が電圧の与え方で動くことを正面から主題にした2021 年の研究1や、半ブリッジ構成での短絡耐性を挙動モデルで組んだ2023 年の報告2があるとおり、縁を握る軸は 2 本以上あります。
掛け算で 45〜80、危険条件を足して 65〜130
試験点の数え方が、掛け算の形で与えられています。短絡耐量が電圧の与え方で動く2021 年の研究1のように、掃引すべき軸は機構ごとに増えます。
そこへ高ストレスやばらつき試験などの危険条件を 20〜50 点追加します。
試料の数え方も、点の種類で割れます。
| 条件 | 1 点あたり | 理由 |
|---|---|---|
| 通常条件 | 5 個 | 典型的な信頼性試験に十分なデータ |
| 危険条件 | 10 個 | 極限条件でのばらつき増大を織り込む |
危うい側だけ倍にします。全点を 10 個にすればコストが倍になり、全点を 5 個にすれば縁の推定が甘くなる。
試料 425〜900 個。
公開表は、5 個/点と 10 個/点でちょうど再現する
デバイス種別ごとの規模が、表で公開されています。半ブリッジ構成の短絡耐性を挙動モデルで組んだ2023 年の報告2のような仕事は、この点数を計算で減らす側にあります。
| デバイス | 試験点数 | 総試料 | 直列の時間 | 並列の時間 |
|---|---|---|---|---|
| CMOS | 92〜170 | 460〜1,700 | 15.4〜57 h | 7.7〜28.5 h |
| SiC MOSFET | 70〜130 | 350〜1,300 | 2.8〜19.5 h | 1.4〜9.7 h |
| LDMOS | 70〜120 | 350〜1,200 | 2.8〜18.8 h | 1.4〜9.4 h |
試料数を点数で割ります。
下端はちょうど 5 個/点、上端はちょうど 10 個/点です。
つまり表の下端は「全点が通常条件」、上端は「全点が危険条件」という設定です。前節の 5 個と 10 個が、そのまま範囲の両端になっています。
CMOS が最も重い理由も表から読めます。掃引に酸化膜等価厚の水準を 3〜4 通り足しているので、点数で 1.3 倍、時間で 3 倍以上になります。
並列化は、どの行でも 2.00 倍ちょうど
直列と並列の比を全行で取ります。バーンインの費用を時間と加速で最適化する1996 年の研究3と同じ取引が、ここでも並列度として出ます。
| 直列 | 並列 | 比 |
|---|---|---|
| 15.4 h | 7.7 h | 2.00 |
| 57.0 h | 28.5 h | 2.00 |
| 2.8 h | 1.4 h | 2.00 |
| 19.5 h | 9.7 h | 2.01 |
| 18.8 h | 9.4 h | 2.00 |
5 行とも 2.00 です。この表の「並列」は、2 並列を意味します。
読み取れることが 2 つあります。1 つは、表の並列側が実測の代わりに2 で割った設計値だということ。もう 1 つは、並列度を上げる余地がそのまま残っていることです。
ただし並列度は、試験装置の側の占有で決まります。先端ノードでは高エネルギーキャリアや絶縁破壊の試験をウェハレベルで回す必要があり、同じ装置群を取り合います。
幾何因子は、立体角の比そのもの
話を線源の治具へ移します。α 線のソフトエラー率を測る治具で、線源から出た粒子のうちチップへ届く割合を幾何因子と呼びます。
が線源とチップの距離、 が線源の半径。どちらも通常は数 mm。
この式は、立体角の比そのものです。チップ上のある点から見上げると、半径 の線源が円板として映ります。半頂角 の円錐が張る立体角は
α 放射が等方的なら、飛んでくる粒子の割合はチップ側の半球( sr)に対するこの立体角の割合に等しい。
仮定は 2 つで、どちらもこの 2 行を書くために要ったものです。放射が等方的であること(成り立たなければ割合を立体角で測る根拠が消えます)、そして放射束がチップ上の各点で同じであること(成り立たなければ 1 点の値を全面へ広げる根拠が消えます)。
線源と検出器のあいだの実効立体角を数値計算で求める2021 年の研究4があるとおり、実形状では解析式からのずれが出ます。上の 2 つの仮定は、その差の在り処を指しています。
0.1 mm の設置ずれが、報告する FIT を 4.4% 押し上げる
mm、 mm とすると
治具の設置が 0.1 mm ずれて mm になると
は故障率の式の分母にいます。
0.1 mm の設置ずれが、4.4% の報告誤差になります。
感度を式で書きます。
の点()で 。 が 10% ずれると が 7.5% 動きます。
範囲の両端も出しておきます。実用域は から とされています。
距離を 6.5 倍動かすと が 4 倍動きます。
だから治具には、距離を機械的に決め打つ構造が要ります。手載せの方式が出せる精度は、この手前で止まります。
線源の半径 も乗ります。同じ距離でも半径が別なら値が動くので、線源を交換したら を計算し直します。α 粒子の遮蔽と低減の手そのものを主題にした2007 年の研究5が挙げる対策も、この幾何の上に乗ります。
は単位そのもの——良品でも 38 時間に 1 ビット
式の先頭の は、単位の取り決めそのものです。物理定数や補正係数とは別物。
が 1 時間あたりの故障ビット数。 で割ってビットあたりに直し、 と で線源側の加速を割り、 を掛けて FIT にする。式の形が、いっぺんに読めます。
単位が分かると、規格値の意味が出ます。一般的な水準は 200 FIT/メガビット、仕様上限は 1,000 FIT/メガビット。16 GB の部品に直します。
| 水準 | 部品あたりの FIT | 1 ビット反転の間隔 |
|---|---|---|
| 200 FIT/Mb | 38.1 時間 | |
| 1,000 FIT/Mb | 7.6 時間 |
良品でも 38 時間に 1 ビット、仕様上限なら 7.6 時間に 1 ビットです。
ソフトエラーは「起きるかどうか」の外——「毎日起きるものをどう織り込むか」の問題になります。誤り訂正が必須の機能である根拠が、ここに出ます。動的メモリのソフトエラー率が総線量でどう動くかを主題にした1989 年の研究6や、回路の側からソフトエラー率を推定する2017 年の研究7が対象にするのも、この日常の量です。
ソケットが 60% なら、汎用化の上限も 60%
最後に、バーンインボードの原価構造です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 必要数 | パッケージ種別ごと・製品ごとに 1 セット |
| 納期 | 約 6 週間 |
| 価格 | 1 セット数千ドル |
| ソケットの比率 | 製造原価の約 60% |
原価の 60% が 1 部品に集まっているので、汎用化の的はそこ 1 点です。
汎用ソケットで何%まで削れるかを出します。製品種が 、1 セットの原価を とすると
| 節約率 | |
|---|---|
| 2 | 30.0% |
| 5 | 48.0% |
| 10 | 54.0% |
| 20 | 57.0% |
| 50 | 58.8% |
上限はちょうど 60%——ソケットの原価比率そのものです。ソケットの要求仕様を正面から主題にした1998 年の報告8があるとおり、ここを汎用化できるかどうかが節約の天井を決めます。
納期の側も勘定に入ります。
1 セットの手配が、四半期のほぼ半分を占めます。加速バーンインの費用最適化を主題にした1996 年の研究3が対象にするのも、この時間と費用の取引です。