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東京エレクトロンのソフト、自社装置向け|工程フローの仮想試作はLamだけ

東京エレクトロン(TEL)のソフトウェアは、自社装置の開発を速める道具と、顧客工場に入った装置の稼働を支える基盤に向いている。仮想試作とは、工程フローを入力して、できあがる3次元構造と欠陥を計算する手法を指す。TEL・Applied Materials(AMAT)・Lam Researchの3社の公式の製品説明で、工程フロー全体の仮想試作をうたうのはLamのSEMulator3Dだ。TELのソフトが顧客に届くのは、装置が工場に入った後だ。

ただし、この段階の道具はLamの独占ではない。SynopsysやSilvacoといったTCAD(工程と素子のシミュレーション)の会社も、工程フローから構造を計算するソフトを売っている。TELとLamの差は、装置メーカーどうしで比べたときに表れる。

TELのソフトは、自社装置の開発と納入後の稼働に向いている

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TELの製品ページは1、成膜、リソグラフィ、エッチング、洗浄、テスト、ボンディング/デボンディングの6分類の装置でできている。サービスのページ2に並ぶフィールドソリューションは、86,000台を超える業界最大の設置台数2を活かした保守・部品・改造・中古装置の事業だ。

ソフトウェアの技術は社内にある。TELは2025年8月の自社ブログで3、デジタルツインで試作数と実験数を減らし、開発期間・環境負荷・費用を下げると説明した。強みの根拠に挙げたのは、装置メーカーとしてハードウェアの構成とプロセスの仕組みを詳しく知っているので、精度の高いモデルを作れることだ。紹介された事例は、ウェーハを切らずにエッチング後の断面を仮想空間で再現する使い方だった。

人の配置も同じ向きを示す。東京エレクトロン九州が2026年9月に出したシミュレーションエンジニアの求人は4、業務を「当社の半導体製造装置の新製品・新規モジュール開発」のシミュレーション全般とし、実測とシミュレーションを統合したデジタルツインの構築を挙げている。対象は装置内の流体・伝熱・表面反応で、顧客の工程フローではない。

顧客に向けたソフトは、装置が入った後に働く。TELが2025年12月に策定したEpsira(イプシラ)は5、公式の説明では「装置側と顧客フィールドをデータで連結するデジタル基盤」で、装置生産性とフィールド生産性の2つの軸で価値を生む。挙げている効果は、生産現場の効率化、歩留まり改善、設備稼働率の向上だ。

図1同じ資産、3つの出口
共通の資産 装置の物理モデル 工程ノウハウ Lam Research 顧客が買う仮想試作ソフト SEMulator3D 工程フローを試す段階で顧客の机の上にある Applied Materials 運用ソフト AIx / SmartFactory 顧客の量産ラインで歩留まりと搬送を動かす 東京エレクトロン 社内の装置開発速度 + 納入後の稼働支援 デジタルツインは社内、Epsiraは納入後の装置とフィールド
3社の比較では、どの社も装置の物理モデルと工程の知識を持ち、Lamは顧客の工程検討へ、AMATは量産ラインへ、TELは自社の装置開発と納入後の稼働へソフトを向けている。

Lamは、工程フロー全体を仮想で組むソフトを製品にした

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Lamは2017年8月、SEMulator3Dを持つCoventorの買収を完了した6。買収リリースは、仮想試作によって工程のばらつきを開発の早い段階で把握し、シリコンでの学習サイクルを減らせると説明している。2023年6月には事業部Semiverse Solutionsを発足させ7、製品群が「Lam、その顧客、米国の提携大学ですでに使われている」と書いた。

Lamの説明では、SEMulator3Dはエッチング、成膜、リソグラフィの各工程を仮想で再現し、実ウェーハなしで工程フロー全体を組んで解析できる8。製品群には9、プラズマ放電を計算するOverVizと、量産の歩留まり立ち上げ向けのFabtex Yield Optimizerもある。

Lamはこのソフトを、大学と技術者の育成にも配っている。2023年にはインドの技術者を10年で最大6万人育てる目標を掲げ、SEMulator3Dの仮想環境を使う計画を公表した。2026年8月にはAlbany NanoTech Complexを運営するNY CREATESと、5年で最大約3,500人の学生8を育てる計画を加えた。3カ国への配布の経緯はLamの仮想試作ソフトの年表にまとめた。

図2配布が作る循環
配布 大学・コンソーシアム インド 6万人 / 10年 Albany 最大約3,500人 / 5年 習熟 工程統合を練習した 技術者が育つ 採用 デバイスメーカーで 同じソフトを使う 利用 Lam、顧客、研究機関の工程検討で使われる imecの論文の参考文献にも名前が載る
Lamの配布計画から、この記事が描く循環。配布で工程統合を練習した技術者が、同じソフトをデバイスメーカーへ持ち込む。

研究機関とLam自身の論文が、SEMulator3Dで工程を検討している

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imecの2025年のVLSIシンポジウム論文では、A10ノード向けのアウターウォール・フォークシート10が参考文献にSEMulator3Dのユーザーマニュアルを、Synopsysの工程シミュレータSprocessと並べて載せた。ダブルロウCFETでSRAMビットセルを0.01 µm²未満にする論文も11、SEMulator3DとSynopsysを並べて参照している。

使い方の例はLam自身が発表している。Lamの上海の技術者が2025年のCSTICで発表した2D NANDのゲートエッチングの論文は12、SEMulator3Dで工程を系統的に調べ、活性領域(AA)のピッティングとフェンスという2つの欠陥が、ONOスペーサーの高さの制御に結びついていることを示した。そのうえで欠陥が出ないプロセスウィンドウを探り、ONOとポリシリコンの選択比とポリシリコンの削り量の釣り合いが要になると結論づけている。

図3較正ループ
手順1 短ループの 工程フロー入力 手順2 実シリコンの 断面で較正 手順3 仮想DOEで 条件を振る 手順4 ウィンドウ 決定
SEMulator3Dを使った工程窓探索の流れをこの記事で整理した図。ウェーハを流す前に、欠陥の出ない条件の範囲を絞り込む。

AMATは、量産ラインの運用ソフトと、材料・チャンバーのシミュレーションを売る

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AMATの製品サイトには「Solutions & Software」の区分がある。中心のAIx(Actionable Insight Accelerator)は13、チャンバーのセンサーと機械学習のChamberAI、成膜中に膜を測る真空内計測、電子ビーム計測、レシピ最適化のAppliedPRO、チャンバーとシステムのデジタルツイン、計算資源でできている。動く範囲は、公式ページによればAMATのプロセス装置、電子ビーム計測、検査装置のすべてだ。もう一方のApplied SmartFactoryは14、MES(製造実行システム)、ラン・ツー・ラン制御、スケジューリングなど工場の実行系と計画系のソフトをそろえる。

AMATは装置の前段のシミュレーションも製品として載せている。公式ページによれば、Ginestra15は材料の探索から素子の性能・信頼性・ばらつきの予測までを扱い、ACE+16は流体・熱・化学・電磁気などを連成させ、装置設計とプロセスレシピの最適化に使う。ACE+には反応炉スケールと形状(Feature Scale)の計算もある。どちらにも問い合わせ窓口がある。AMATは2026年2月18日のブログで、NVIDIAのAI基盤とライブラリを使うとGinestraはCPUのみの実行と比べて最大10倍、ACE+の形状シミュレーションは最大35倍速くなる17と説明し、ACE+を数千の工程ステップの相互作用を予測する文脈に置いた。

AMATも工程の前段を計算するソフトを売っている。ただし、AMATの製品ページの記述は材料と素子の予測、物理現象の連成、装置設計とレシピの最適化までで、工程フロー全体を組んで3次元構造を計算するとうたうのは、3社の製品説明の中ではSEMulator3Dだけだ。

図4動くために何が要るか
装置ゼロの状態から動く 設置済みの装置が前提 Lam SEMulator3D 工程フローを記述して 3次元構造と欠陥を計算する 発注前の検討段階で使う商品 Applied AIx Applied製の装置・計測・検査の上で動く Applied SmartFactory 稼働中の工場の実行系と計画 TEL Epsira フィールドソリューション 設置済みのTEL装置の生産性と保守
図の4製品のうち、工程フローの記述から3次元構造を計算するのはSEMulator3Dで、AIx・SmartFactory・Epsiraは設置済みの装置の上で動く。
Lam ResearchApplied Materials東京エレクトロン
顧客へ売るソフトSEMulator3D、OverViz、Fabtex Yield OptimizerAIx、SmartFactory、Ginestra、ACE+Epsira(2025年12月に策定した顧客向けDXソリューションのコンセプト)
専任の組織Semiverse Solutions(2023年発足)Solutions & Software、Applied SmartFactory装置インテリジェンス開発部(自社ブログ3でデジタルツインを担うデータサイエンティストの集団と紹介)
設置装置の要否SEMulator3Dは工程フローの記述で動くAIxはAMAT製の装置・計測・検査の上で動くEpsiraは装置と顧客フィールドのデータを結ぶ
顧客が使う時点工程フローの検討から量産の歩留まり立ち上げまで材料・チャンバーの検討から量産の運用まで装置の稼働とフィールド作業

工程検討の道具では、LamはTCADの会社とも競う

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工程フローから構造を計算するソフトは、TCADの会社も売っている。米EE Journalの2016年の記事によれば、Synopsysは2016年時点でProcess Explorerを出し、SEMulator3Dとかなり似た製品だと説明した18。SilvacoのVictory Processは19、エッチング、成膜、注入、拡散、酸化を1次元から3次元まで計算する工程シミュレータで、Silvacoは工程の「デジタルツイン」を持てると説明する。imecの2025年の論文2本でも、参考文献にSEMulator3DとSynopsysのツールが並ぶ。TCADの会社と比べれば、Lamの独自性は装置メーカーがこの種のソフトを持っている点にある。

装置メーカーどうしで比べると、TELの位置ははっきりする。TELの2026年3月期の決算説明会資料では20、売上高2兆4,435億円のうち、半導体製造装置の新規装置が1兆7,754億円、フィールドソリューションが6,260億円だった。この2つを足すと売上高の98%になる。研究開発費は2,778億円、設備投資は2,160億円だ。LamがCoventorに払った1億3,760万ドルは21、同社の2018年度売上高110億7,700万ドルと比べて、筆者の計算で1.2%にあたる。

装置のシェアと、工程検討のソフトの位置は別の話だ

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装置のシェアでは、TELは製品ページ1でコータ/デベロッパの市場の90%を掲げている。一方、確認したimecの2025年の論文2本で、参考文献に載る装置メーカーのソフトはLamのSEMulator3Dだった。装置メーカーで働く技術者にとってこの差が職種ごとにどう表れるかは、3社の求人から見た記事にまとめた。

装置単体の比較はTEL、AMAT、Lamの最新装置と注目技術、工程ごとの占有率は工程別の装置シェアにある。

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