SEMulator3D、3カ国の大学と顧客へLamが2017年のCoventor買収で取得
Lam Researchは2017年に仮想試作ソフトSEMulator3Dを買収で手に入れ、2023年からインド・韓国・米国の大学の講座と、顧客の工程検討の現場へ配っている。仮想試作とは、成膜、エッチング、リソグラフィなどの工程を順に入力し、できあがる3次元構造を計算する手法を指す。買収額の1億3,760万ドルは、Lamの2018年度売上高と比べると、筆者の計算で1.2%にあたる。
Lamはこのソフトを、シリコンでの学習サイクルを減らす道具と説明している。2026年の求人では、SEMulator3Dを顧客の現場で使ってみせる技術者を、地域の営業チームと組ませている。一方で、SynopsysやSilvacoなどTCADの会社も工程フローから構造を計算するソフトを売っており、Lamはその市場でも競っている。
1億3,760万ドルの買収で、工程フロー全体を計算する製品を得た
Section titled “1億3,760万ドルの買収で、工程フロー全体を計算する製品を得た”Lamは2017年8月にCoventorの買収を完了した1。リリースは、この組み合わせがLamの先進プロセス制御の構想を支え、工程統合のシミュレーションを加速すると書いている。Coventorの顧客は、ウェーハを流す前に構造と挙動を予測し、工程のばらつきの影響を開発の早い段階でつかみ、シリコンでの学習サイクルを減らすためにこのソフトを使っていた。
取得対価は、Lamの2018年度の年次報告書(10-K)2によれば1億3,760万ドルだった。同じ報告書の2018年度売上高110億7,700万ドルと比べると、筆者の計算で1.2%にあたる。識別された無形資産4,850万ドルのうち、Lamは既存技術を2,620万ドル、顧客関係を1,500万ドルと評価した。
Lamの説明では、SEMulator3Dはエッチング、成膜、リソグラフィの各工程を仮想で再現し、実ウェーハなしで工程フロー全体を組んで解析できる3。AMATのACE+は流体・熱・化学・電磁気などの連成と形状(Feature Scale)の計算を、装置設計とレシピの最適化に使う製品と説明されている。装置大手3社のソフトの違いは東京エレクトロンのソフトウェア戦略の記事で比べた。
2023年から、事業部をつくって3カ国の大学へ配っている
Section titled “2023年から、事業部をつくって3カ国の大学へ配っている”Lamは2023年6月に事業部Semiverse Solutionsを発足させ4、コーポレート・バイスプレジデントのDavid Fried氏に率いさせた。同じリリースで、インドの技術者を10年で最大6万人育てる目標を掲げてSEMulator3Dの仮想環境を使う計画を公表し、製品群が「Lam、その顧客、米国の提携大学ですでに使われている」と書いた。
配布の中身は国ごとに具体的だ。インドでは、インド理科大学院(IISc)のナノ科学工学センターと組み、2023年8月に30人の試行講座を始めた5。韓国では2024年10月、竜仁キャンパスの開所に合わせて成均館大学と韓国半導体産業協会と覚書を結び、2025年の試行に最大70億ウォン相当のライセンスと研修資源を出すとした6。米国では、2025年10月のLamの記事がCornell、Stanford、UC Berkeley、UCLA、UT Austin7を提供先に挙げ、2026年8月にはNY CREATESと5年で最大約3,500人の学生を育てる計画3を発表した。
Lamが掲げる理由は、学生が工場に入る前に工程統合の判断を経験できることだ。Fried氏はNY CREATESとの発表で、学生には先端チップの作り方を左右する複雑な工程判断の実地経験が要ると述べた。Lamの2025年8月の記事は、ある米国の大学の実習設備が平面トランジスタまでにとどまる例を挙げ、SEMulator3DならFinFETを含む最新の技術を仮想環境で学べる8と説明している。
Lamは顧客担当の技術者を営業チームと組ませている
Section titled “Lamは顧客担当の技術者を営業チームと組ませている”2026年8月にボイシで出たSemiverse Solutionsのアプリケーションエンジニアの求人は9、ロジック、DRAM、3D NANDの重要顧客と組み、SEMulator3Dを含む製品で技術開発と量産立ち上げの学習サイクルを速く安くできることを示す仕事だと書く。業務には、顧客の現場で価値を示して数値化する活動の計画と実行、定期的な現場常駐、地域の営業チームとの売上目標づくり、顧客担当・営業チームとの連携が並ぶ。歓迎条件は、先端ロジックかメモリーのプロセス統合または歩留まりの技術者の経験だ。
Lamの2025年度の10-Kは10、自社の中核の技術力を、ハードウェア、プロセス、材料、ソフトウェア、プロセス制御を統合してウェーハ上の結果を出すことだと書く。ソフトウェアは、ウェーハ上の結果を出すために統合する要素の1つとして挙がっている。
仮想試作の道具は、Lamだけのものではない
Section titled “仮想試作の道具は、Lamだけのものではない”工程フローから構造を計算するソフトは、TCADの会社も売っている。米EE Journalの2016年の記事によれば、Synopsysは自社のProcess ExplorerをSEMulator3Dとかなり似た製品だと説明した11。imecの2025年のVLSI論文は、参考文献にSEMulator3DとSynopsysの工程シミュレータSprocessを並べている12。Lamの技術者がSEMulator3Dで2D NANDのゲートエッチングを調べた2025年のCSTIC論文13の抄録は、仮想の解析で欠陥の形成の仕組みを調べたうえで、実際のエッチング条件の調整ではパターンごとの負荷(pattern loading)が最も難しい課題になったと書いている。
装置3社の求人から見た職種の違いは装置3社の求人7件を比べた記事にまとめた。工程と素子のシミュレーションの全体はTCAD、設計と工程を合わせて詰める考え方はDTCOで読める。
13件を表示
- 1Lam Research:Coventorの買収完了(2017年8月)newsroom.lamresearch.com ↩
- 2
- 3Lam Research:NY CREATESとの学生育成計画(2026年8月)investor.lamresearch.com ab
- 4Lam Research:Semiverse Solutions発足とインドの育成計画(2023年6月)newsroom.lamresearch.com ↩
- 5Lam Research:IIScとの試行講座(2023年8月)newsroom.lamresearch.com ↩
- 6Lam Research:竜仁キャンパス開所と成均館大学との覚書(2024年10月)newsroom.lamresearch.com ↩
- 7Lam Research:米国の大学へのSEMulator3D提供(2025年10月)newsroom.lamresearch.com ↩
- 8Lam Research:米国の大学での教育への展開(2025年8月)newsroom.lamresearch.com ↩
- 9Lam Research:Semiverse Solutionsアプリケーションエンジニアの求人(2026年8月)careers.lamresearch.com ↩
- 10
- 11
- 12
- 13