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ALDの段差被覆、前駆体と反応ガスで変化|東ソーの1回の測定、差は上面の厚さ

ALDという方式を選んでも、深い構造の底まで同じ厚さで覆えるとは決まらない。底まで届くかは、前駆体と反応ガスがそれぞれ表面でどれだけ反応しやすいか(付着確率)と、溝の入口にどれだけの量を送るかに左右される。Ts-Hf3を開発した東ソーの報文では1、同社の1回の測定で、同じ250°C、同じO3、アスペクト比(AR)20・幅50 nmの溝に対し、底と上面の膜厚比にTs-Hf3の99%とCpHf(NMe2)3の86%という違いが出た。

この13ポイントの差は、底が薄いことから出たのではない。同じ報文の断面TEMでは、底の膜厚はTs-Hf3が9.6 nm、CpHf(NMe2)3が9.9 nmとほぼ同じで、上面がTs-Hf3の9.7 nmに対しCpHf(NMe2)3は11.4 nmと厚かった。成膜方式の全体像と、ALDが1層で反応を止める仕組みは成膜の総説にある。

底まで覆うには、最低限の供給量と入口での露出量の両方が要る

Section titled “底まで覆うには、最低限の供給量と入口での露出量の両方が要る”

ALDの前駆体は、溝の入口に近い表面から順に反応して埋まっていく。入口付近が飽和すると、余った分子が奥へ進み、さらに奥の表面と反応する。底まで飽和させるには、溝の内面すべてを覆うだけの分子を送り込む必要がある。

Harvard大学のGordonらは2003年に、狭い穴を均一な厚さで覆う条件を簡単な速度論モデルで導いた2。必要な条件は2つで、最低限の量の蒸気を供給すること、穴の入口で蒸気圧と露出時間の積を一定以上にすることだ。同じ論文では、ハフニウムジメチルアミドと水蒸気によるHfO2が、AR 43の穴で完全に均一な膜になった。そのため、ALDでも露出量が足りなければ底まで均一にはならず、底まで覆えるかは方式名より供給の条件で決まる。

奥まで届く深さは、1サイクルで積む量にも左右される。Gonsalvesら(Aalto大学のPuurunenが共著)は2026年9月のプレプリントで、分子の拡散が壁との衝突で律速される条件では、膜が届く深さが1サイクルあたりの成長量(GPC)の平方根に反比例する3という計算結果を示し、ZnOのALDに阻害剤を加えてGPCを下げる実験で確かめた。

前駆体と反応ガスは、付着確率で届く深さが変わる

Section titled “前駆体と反応ガスは、付着確率で届く深さが変わる”

付着確率は、分子が表面に1回当たったときに反応する確率を指す。オランダのアイントホーフェン工科大学(TU/e)のArtsらは、ALDの段差被覆が前駆体と反応ガスの反応しやすさに強く左右されるとし、高アスペクト比構造の中の膜厚分布の前縁の傾きから付着確率を求めた。その値は、Al2O3のALDでトリメチルアルミニウム(TMA)が(0.5〜2)×10⁻³、H2Oが(0.8〜2)×10⁻⁴4だった(設定温度275°C、推定基板温度約220°C)。同じ論文は、H2Oの工程で飽和がゆるやかにしか進まず、低温ほどそれが段差被覆を制限することも示した。

この測定では、反応ガスのH2Oの付着確率はTMAより1桁小さい。Al2O3のこのALDでは、前駆体ではなくH2Oの工程が段差被覆を制限する場合がある。

プラズマALDでも、反応ガスの側の量が届く深さに関わる。同じグループは、Oプラズマの原子が成長面で再結合して失われる確率を材料ごとに求めた。プラズマの露出を延ばすとSiO2とTiO2の膜はAR約900まで入り込み、Al2O3とHfO2の膜はAR約80と約40まで均一だった5。前者は膜が入り込んだ深さ、後者は均一さが保たれた深さで、同じ指標ではない。O原子の再結合確率は、SiO2とTiO2で(6〜7)×10⁻⁵、Al2O3で(1〜10)×10⁻³、HfO2で(0.1〜10)×10⁻²と見積もられた。

同じOプラズマのALDで膜が届いたアスペクト比を対数目盛で比べた横棒グラフ。SiO2とTiO2は約900まで入り込み、Al2O3は約80、HfO2は約40まで均一だった。
OプラズマのALDでは、SiO2とTiO2の膜がAR約900まで入り込み、Al2O3とHfO2の膜はAR約80と約40まで均一だった。この違いは、O原子の再結合確率の材料による違いと対応していた。

東ソーの1回の測定では、86%の原因は上面側が厚いことにあった

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東ソーは報文の冒頭で、DRAMのキャパシターが高アスペクト比の3次元構造になり1、CVDとALDに期待が集まっていると書く。同社の比較の条件は、Hf前駆体の供給10秒、真空6秒、Arパージ5秒、O3の供給3秒、真空3秒、Arパージ5秒で、Ts-Hf3を120サイクル、CpHf(NMe2)3を130サイクル積んだ。O3は10 sccm、圧力は0.8 Torr、温度は250°Cだ。この温度は、Ts-Hf3(報文の測定)とCpHf(NMe2)3(文献値)のALDウィンドウ250〜350°Cの下端にあたる。

AR20、幅50 nmの溝にHfOxをALDで積んだときの上面と底の膜厚。Ts-Hf3は上面9.7 nm、底9.6 nmで底/上面比99%。CpHf(NMe2)3は上面11.4 nm、底9.9 nmで比86%。
東ソーの1回の測定では、底の膜厚はTs-Hf3の9.6 nmとCpHf(NMe2)3の9.9 nmでほぼ同じだった。86%という比は、CpHf(NMe2)3の上面が11.4 nmと厚いことから出ている。

報文のTEM像には、上面と底の間の側壁の膜厚も2点ずつ示されている。Ts-Hf3は上面から9.7、9.3、9.5、9.6 nmで、ほぼ一定だった。CpHf(NMe2)3は11.4、10.6、10.6、9.9 nmで、上面から底へ向かって薄くなった。CpHf(NMe2)3の膜は溝全体で深さとともに薄くなり、その終点の底の厚さがTs-Hf3とほぼ同じだった。

膜厚をサイクル数で割ると、Ts-Hf3の上面は0.81 Å/cycleになる。同じ報文が平坦なSi基板で測ったTs-Hf3のGPCは約1.0 Å/cycleだが、そちらはO3 30 sccm、2.3 Torrの条件で、溝の比較のO3 10 sccm、0.8 Torrとは条件が違う。そのため、溝の中のGPCを平坦基板の値と並べて比べることはできない。

底/上面比は上面を分母にするので、上面の厚さで動く

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底/上面比は、底の膜厚を上面の膜厚で割った値だ。東ソーの測定では、底の膜厚がほぼ同じでも、上面が厚いCpHf(NMe2)3の比は86%になった。Gordonらのモデルは、露出量が足りなければ穴の底まで均一な膜にならないことを示し、Artsらは、膜が届かなくなる前縁の傾きから付着確率を求めた。比の値は、上面、側壁、底の膜厚の分布の一部を切り取ったものにあたる。段差被覆の定義は段差被覆の用語ページにあり、PVD・CVDとの比較は成膜方式の選び方で扱っている。

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