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CVDとPVDの違いと成膜方式の選び方|段差、温度、材料の順に選ぶ

成膜とは、ウェーハの上に薄い膜を積む工程だ。その方式は、膜の材料をどこから運ぶかで4つに分かれる。固体の材料を叩き出すか蒸発させて飛ばすPVD(スパッタリング、蒸着)、ガスを表面で反応させるCVD、ガスを1原子層ずつ反応させるALD、液中の金属イオンを電流で析出させるめっきだ。方式ごとの違いは、深い溝の側壁と底まで同じ厚さで覆えるか(段差被覆性)、その工程で許される温度、膜の材料の3つに出る。段差を最もよく覆うのはALDだが、積むのは最も遅い。CVDは段差をよく覆いながら絶縁膜を速く積め、金属を厚く積むならスパッタリングとめっきが速い。許される温度が高い工程ほど、膜質のよい熱CVDを選べる。

1つのチップの中でも、方式は膜ごとに使い分ける。Lam Researchは、銅配線をめっき(電気化学成膜)で作り、タングステンの接続部と薄いバリアをCVDとALDで、配線どうしを絶縁して守る膜をPECVD、HDP-CVD、ALDで作る1と説明している。成膜が前後の工程とどう並ぶか、原料ガスがどうウェーハへ届くかは酸化・成膜工程の全体像にまとめた。

成膜方式は、膜の材料をどこから運ぶかで4系統に分かれる

Section titled “成膜方式は、膜の材料をどこから運ぶかで4系統に分かれる”

PVD(Physical Vapor Deposition、物理気相成長)は、固体の材料を原子にして飛ばし、ウェーハに積もらせる。半導体工場の主力はスパッタリングで、真空中でアルゴンのイオンをターゲット(成膜したい金属などの板)に当て、叩き出された原子を積む。東京エレクトロンの用語集は、スパッタリングをPVDの別名として載せている2。蒸着は、真空中で材料を加熱して蒸発させ、その蒸気をウェーハに積む。イオンで叩き出すスパッタリングに対し、蒸着は熱で材料を飛ばす。EvatecはRFフィルタ向けに蒸着とスパッタの両方の装置3を出している。

CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長)は、膜の元素を含むガスを反応室へ流し、ウェーハ表面の化学反応で膜を作る。東京エレクトロンは、CVDを配線材料と絶縁膜の成膜に使う工程4と説明している。CVDは、反応を進めるエネルギーの与え方と圧力で種類が分かれる。

  • 熱CVDは、ウェーハを加熱するだけで原料ガスを反応させる。最も基本の形で、温度は高い。
  • LPCVD(減圧CVD)は、反応室の圧力を下げて行う熱CVDだ。東京エレクトロンの縦型バッチ炉は、LPCVDでポリSi、SiO₂、Si₃N₄を積む5。
  • PECVD(プラズマCVD)は、プラズマで原料ガスを分解して反応を助け、従来のCVDより低い温度で積む6。Lam ResearchのVECTORのように7、絶縁膜の成膜に使う。
  • HDP-CVD(高密度プラズマCVD)は、密度の高いプラズマを使うCVDで、Lam Researchは配線どうしや素子どうしの間のすき間を絶縁膜で埋める工程8に使うとしている。
  • MOCVD(有機金属CVD)は、有機金属を原料にして、GaNなど化合物半導体の結晶を積む。
  • エピタキシャル成長は、下地の結晶と向きをそろえて単結晶の膜を積む。Siのエピタキシャル成長もガスを原料にするCVDの仲間だ。

ALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積)は、2種類のガスを交互に流し、その合間に不活性ガスで残りを追い出す。ASMによれば、1回の供給で表面が覆われると反応が止まり、このサイクルを繰り返す回数で膜厚が決まる9。2つ目のガスに水などを使う熱ALDと、酸素などのプラズマを使うプラズマALD(PEALD)があり、Oxford Instrumentsはサイクルの中でこの1段だけが両者で異なる10と説明する。

めっきは、金属イオンを含む液にウェーハを浸し、電流で金属を析出させる。先端チップの銅配線の溝は、この電気化学成膜で埋める11。熱酸化は4系統とは別の作り方で、酸素や水蒸気でウェーハのSiそのものを酸化して膜に変える。

系統主な方式得意なこと弱いところ代表的な膜
PVDスパッタリング、蒸着金属を速く積み、ターゲットの組成をほぼそのまま移す深い溝の側壁と底が薄くなる金属の電極とコンタクト
CVD熱CVD、LPCVD、PECVD、HDP-CVD、MOCVD、エピタキシャル成長絶縁膜を速く広く積み、溝の側壁にも回り込む熱CVDとLPCVDは高温が要る層間絶縁膜、SiN、ポリSi、Wのコンタクト
ALD熱ALD、PEALD深く細い溝を均一に覆い、膜厚を原子層単位で決める1サイクルで1Å以下しか積めず遅いhigh-k膜、薄いバリア、スペーサー
めっき電解めっき(ECD)銅を厚く積み、溝の中にすき間(ボイド)を残さず埋める下地に電流を流すシード層が要る銅配線、TSV、ウェーハレベルパッケージ
図1CVD と PVD ─ 膜になるまでの経路
CVD ─ 化学気相成長原料ガスが表面へ到達してから反応する反応室(原料ガスで満たす)膜ウェーハ表面反応が回り込むため、深い溝の側壁も覆う成膜温度は中〜高温、LPCVDは減圧で運転するPVD ─ 物理気相成長ターゲットから叩き出した粒子が飛んで積もるAr+ が衝突ターゲット(成膜する金属)膜ウェーハ飛来方向が偏るため、溝の入口が先に厚くなる成膜温度は低〜中温、超高真空の機種もある
CVDはガスが表面に届いてから反応して膜になり、PVDはターゲットから飛んだ粒子がまっすぐ積もる。この飛び方の差が段差被覆性の差になる。

系統を分けるのは膜の材料の出どころで、プラズマの有無ではない。PECVDはスパッタリングと同じくプラズマを使うが、プラズマは原料ガスを分解して反応を進めるだけで、膜の材料はガスから来る。スパッタリングのプラズマはターゲットを叩くイオンを作り、膜の材料はターゲットから来る。だからPECVDはCVDに属する。

段差を最もよく覆うALDは、積むのが最も遅い

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段差被覆性は、ALD、CVD、PVDの順に高い。PVDでは、ターゲットから飛んだ原子がほぼまっすぐ届くので、溝の入口の角に先に膜が付き、側壁と底が薄くなる。CVDではガスが溝の奥まで入ってから反応するので、側壁にも膜が付く。ALDは表面が1層覆われるたびに反応が止まるので、溝の奥でも入口と同じ厚さになる。Oxford Instrumentsは、ALDが高アスペクト比の構造の中でも優れた段差被覆性を示すとし10、アスペクト比15:1の構造をプラズマALDのSiO₂で覆った例を載せている。アスペクト比は溝の深さを幅で割った値で、大きいほど深く細い溝になる。言葉の定義は段差被覆性の用語解説にある。

図2段差被覆性 ─ 同じ溝を CVD と PVD で埋める
CVD ─ ほぼ同じ厚さで回り込む側壁と底も同じ厚さ層間絶縁膜、バリア膜、パッシベーション膜PVD ─ 入口が先に厚くなる側壁が薄く仕上がる金属配線、電極、シード層
同じ溝でも、CVDは上面・側壁・底をほぼ同じ厚さで覆い、PVDは入口の角が張り出して側壁と底が薄くなる。溝が深く細いほど、この差は広がる。

その代わり、ALDは遅い。Oxford InstrumentsによればALDが1サイクルで積む膜厚は1Å以下で10、10 nmの膜を積むにはサイクルを100回以上繰り返す。CVDは段差被覆でALDに劣る代わりに速く、PECVDはプラズマ中の活性種で高い成膜速度を出せる6。金属を厚く積むなら、スパッタリングとめっきが速い。

遅いALDを量産に乗せる手段の1つが、多数枚をまとめて処理するバッチ炉だ。東京エレクトロンの縦型炉TELINDY PLUSは、1回に125枚を処理し、酸化やアニール、LPCVDのほかALDにも使う5。同社のEVAROSは300 mmウェーハを1バッチ200枚まで処理する。KOKUSAI ELECTRICも、LP-CVD、酸化、ALDに対応したバッチ式の成膜装置12を提供している。

熱を多くかけられる工程ほど、膜質のよい方式を選べる

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熱CVDやLPCVDは、ウェーハを加熱して反応を進めるので膜質が安定する。その代わり温度が高い。トランジスタや配線を作った後の工程では、先に作った構造が耐えられる熱の上限(サーマルバジェット)の中で膜を積む。そこで、プラズマで反応を助けて温度を下げるPECVDとPEALDを使う。ASMはPEALDではプラズマが反応のエネルギーを与えるので、熱の上限が低い用途で温度を下げられるとする9。東京エレクトロンは、プラズマを組み合わせたバッチ炉で膜質を保ったまま低温側へ広げた5と説明している。PVDも低温から中温で積める。

高温側には、結晶を積む工程がある。ASMは、エピタキシャル成長は高温の工程で、温度の精密な制御が膜質とドーピングの均一さを左右する13と説明する。ドーピングは、電気の流れ方を決める不純物を膜に加えることだ。先端トランジスタでは、Si、SiGe、SiPのエピタキシャル層で結晶の原子間隔を伸ばしたり縮めたりして(ひずみ)電子や正孔を動きやすくし、チャネルやソース/ドレインを作る(同じASMの説明)。トランジスタでの使い方はソース/ドレインのエピタキシャル成長にある。AIXTRONは、MOCVDをIII-V族化合物半導体、とくにGaN系の最も重要な製法とし、ウェーハを材料に応じて400〜1,300℃に加熱する14と説明している。

金属配線は、薄く覆う膜と厚く埋める膜で方式を分ける

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銅配線では、絶縁膜に掘った溝の内側をまずバリアとライナーで覆う。バリアは銅が絶縁膜へ拡散するのを止める膜で、ライナーはバリアと銅の間に入れる膜だ。IBMは、溝を掘り、拡散バリアとライナーを付けてから、めっきで銅を埋める15流れを銅ダマシン配線として説明している。めっきの前には、電流を流す下地として薄い銅のシード層を付ける。Lam Researchは銅の電気化学成膜の課題として、ボイドのない埋め込み、高アスペクト比の溝の充填、配線が細るにつれて薄くなるバリアとシードの制御11を挙げる。はみ出した銅はCMPで削る。

細い配線では、このバリアとライナーが銅の断面を取る。IBMは、配線が細るとCuが占める体積の割合が減り、Cu配線の抵抗が上がる15と述べ、ライナーを薄くするとCu配線にボイドができやすくなるとも指摘する。細い配線では、Ruの配線がCuより抵抗が低くなり始め、Moも膜ではCuに並ぶ。その比較はBEOL配線材料の記事で扱う。

タングステンのコンタクトは、CVDとALDで埋める。Lam ResearchのALTUSは、CVDとALDを組み合わせ、タングステン配線向けに段差によく沿う金属膜を積む1装置だ。

図3膜に求める性質から方式を選ぶ
膜に求める性質選ぶ方式段差被覆性が要る層間絶縁膜・バリア膜・パッシベーション膜CVD表面反応で回り込むALDさらに高いアスペクト比へ金属を厚く速く積む配線・電極・めっきのシード層(組成をそのまま移す)PVD(スパッタリング)ターゲット組成をほぼそのまま膜へ移す熱予算に上限がある既に作り込んだ素子・配線を守る温度域PECVD(低温CVD)プラズマで反応を促進またはPVD低〜中温で成膜膜質を優先できる工程順では、熱CVD・LPCVDの膜質の高さが活きる
深い凹凸を覆う膜はCVD(さらに深い溝はALD)、金属を厚く速く積む膜はPVD、熱の上限が低い膜はPECVDかPVDを選ぶ。

まず、膜が深い溝を覆う必要があるかを見る。必要ならCVD、溝が深く細いほどALDへ移る。次に、その工程で許される温度を見る。上限が低ければPECVD、PEALD、PVDが候補になり、余裕があれば熱CVDやLPCVDで膜質を取る。最後に材料を見る。金属を厚く積むならスパッタリングとめっき、化合物半導体の結晶ならMOCVDだ。

装置メーカーも系統で分かれる。スパッタリングにはキヤノンアネルバの超高真空で多層膜を積む装置16や芝浦メカトロニクスの半導体向けスパッタリング装置がある17。アルバックはスパッタリング、PE-CVD、蒸着の装置をそろえる18。

CVDとPVDの最大の違いは何ですか?

膜になるまでの経路が異なります。CVDは原料ガスを反応室へ導入し、基板の表面で化学反応を起こして膜を作ります。PVDはターゲット材料へ高速のアルゴンイオンを当て、叩き出された粒子を基板へ積もらせます。CVDは化学反応、PVDは物理的な運動が膜を作る、という一点から段差被覆性と成膜温度の差が生まれます。

スパッタリングはCVDとPVDのどちらですか?

スパッタリングはPVD(物理気相成長)に属します。東京エレクトロンの公式用語集は、スパッタリング装置を、加速した不活性物質がターゲット材料へ衝突し、叩き出されたターゲット分子が基板へ堆積する装置として記述しています。金属配線や電極の成膜で広く使われます。

PECVDはどのような成膜方法ですか?

PECVD(プラズマ支援CVD)はCVDの一種で、プラズマで反応を促進することにより、低い基板温度で膜を作ります。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、PECVDを多様な膜種の成膜に使われる確立した手法として挙げ、屈折率、応力、電気特性、ウェットエッチレートを制御項目として示しています。パッシベーション膜や高密度マスクの用途が代表例です。

半導体製造でCVDとPVDはどの工程で使われますか?

CVDは層間絶縁膜、パッシベーション膜、バリア膜など、深い凹凸を覆う必要のある膜で使われます。PVDは金属配線、電極、シード層など、金属を厚く速く積む膜で使われます。どちらもウェーハ前工程の成膜工程に属し、同じ工場の中で役割を分けて並行して動きます。

段差被覆性に優れているのはCVDとPVDのどちらですか?

CVDが優れます。CVDは気相の分子が表面へ到達してから反応するため、深い溝の側壁や底にも回り込みます。PVDはターゲットから飛来する粒子の方向が偏るため、溝の入口が先に厚くなり、側壁が薄く仕上がります。さらに高い被覆性が要る場合は、CVDから派生したALD(原子層堆積)を使います。

CVDとPVDの装置メーカーは同じですか?

一部は重なり、一部は分かれます。Applied Materials、KLA(SPTS)、NAURA、Plasma-Thermのように両方を持つメーカーがある一方で、CVD側にはラムリサーチ、KOKUSAI ELECTRIC、AIXTRON、Veeco、PVD側にはキヤノンアネルバ、アルバック、Evatec、芝浦メカトロニクスが並びます。当サイトの装置カタログDBでは、公式製品ページ単位でメーカーと製品familyを引けます。

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