Ru配線の抵抗、細線でCuを下回り始める根拠の大半はブランケット膜の測定
配線の断面が数百nm²まで細ると、Ruの配線はCuより抵抗が低くなり始め、Moも膜ではCuに並ぶ。Cuの電子は散乱せずに約40 nm進むため細線で抵抗率が急に上がり、しかもCuだけは拡散を止めるバリアとライナーに断面の一部を譲る。RuとMoは抵抗率の上がり方が緩い。Moはバリアも密着ライナーもなしで溝を埋められ、Ruは主に金属を削って配線にし、拡散バリアの代わりに薄い密着層だけを付ける。細い層ほど、この2つの差が積み重なる。
しかし、この結論を支えるデータの大半は、ブランケット膜(白膜)の測定と、それを配線へ延ばしたモデルだ。ブランケット膜とは、配線のパターンを切る前にウェーハ全面へ付けた平らな膜を指す。配線に加工してから測った比較はRuで出始めたところで、相手のCuは計算値であることが多い。Moの配線は溝やビアでの実測が出始めた段階にある。
細線の抵抗は、抵抗率と平均自由行程の積で比べる
Section titled “細線の抵抗は、抵抗率と平均自由行程の積で比べる”金属の抵抗率は、線幅や膜厚が電子の平均自由行程()に近づくと上がる。表面と粒界で電子が散乱される回数が増えるからだ。imecの代替金属の解説は1、Cuのバルク抵抗率を1.7 µΩcm、室温のを39 nmとし、候補材料はバルク抵抗率との積()がCuより小さくなければならないとする。Co、Ru、Rh、Ir、Moは太い寸法ではCuより抵抗率が高いが、寸法を縮めたときの上がり方が緩いため、小さな寸法で逆転する。
この指標を金属ごとに計算で求めたのが、Rensselaer工科大学のDaniel Gallだ。Gallは2016年、最も導電性の高い20の単体金属について、第一原理計算のフェルミ面からを求め、細線の極限ではRh、Ir、NiがCuの2.1倍、1.8倍、1.6倍よく電気を通し、Mo、Co、RuはCuとほぼ同じになる2と示した。したがってCuとの比較では、MoとRuの強みは「Cuよりずっと良い」ことではなく、「Cuと同等の導電性をの短さで保てる」ことにある。
実測では順位が動く。Gallは2020年の展望論文で、エピタキシャル膜で測ったが多くの金属で計算値よりかなり大きく、10 nm未満で古典的な輸送モデルが崩れることを指摘し、細い高導電配線の単体金属ではIrが最有望で、RuとRhが続く3と結論した。Moについては、同じグループがMo(011)のエピタキシャル膜で Ωm²を測り4、計算値5.99×10⁻¹⁶ Ωm²とよく一致し、Cuの測定値より10%、Wより40%小さいと報告した。面方位を変えたMo(001)では7.7×10⁻¹⁶ Ωm²で、同じMoの比較でも結晶の向きだけで抵抗率の上がり方が変わる。
Cuが負ける主因は、バリアとライナーに断面を取られること
Section titled “Cuが負ける主因は、バリアとライナーに断面を取られること”で比べると、MoとRuはCuとほぼ互角だ。差を広げるのは、電流が流れる断面の取り合いだ。Cuは絶縁膜へ拡散するため、溝とビアの内側をTa/TaNのバリアとRuCoなどのライナーで覆ってからめっきで埋める。IBMはIEDM 2024の解説で5、配線が細るとCuが占める体積の割合が減ってCu配線の抵抗が上がると述べている。バリアの厚さはほぼ一定のまま線幅だけが縮むので、細い配線ほど高抵抗の層の割合が増える。
MoとRuは、Cuほど厚い層に断面を取られない。KU Leuvenとimecは3–50 nmのPVD Mo薄膜で6、Moのを11 nm、Cuを40 nmとし、Moの抵抗率はWより全膜厚で低く、TaN/Cu/TaN積層には総金属厚およそ8 nm以下で優ると報告した。同じ論文は、MoがSiO₂とlow-k膜のどちらにも密着ライナーなしで5 J/m²を超える密着エネルギーを示した一方、RuやIrなどの白金族金属は密着ライナーが要るとしている。Lam ResearchもIITC 2025で、大粒径Moの抵抗率は膜厚への依存が小さく、膜厚約7 nm以下でW、Ru、Cuを下回った7と発表した。
Cu側の散乱の内訳も測られている。NISTが25–45 nm幅のCu細線を調べた研究では8、結晶粒の構造と抵抗の温度依存を解析した結果、その試料群では表面での拡散散乱が抵抗率を支配していた。
Cu側も層を薄くして断面を取り戻している。Applied Materialsは2024年7月、RuとCoの二元系ライナーを33%薄い2 nmにし、配線抵抗を最大25%下げたとして、3 nmノードから顧客への出荷を始めた9。
Gallの研究を含め、比較の大半はブランケット膜で行われている
Section titled “Gallの研究を含め、比較の大半はブランケット膜で行われている”Gallのグループの最近の研究は、ほぼすべてエピタキシャルの平らな膜を使う。W(001)–Mo(001)多層膜の研究は10、界面を横切る抵抗を直接測るには10 nm未満のパターニングが要るため、界面に平行な方向の抵抗率から界面抵抗を求める方法を示した。W–Mo界面の接触抵抗は2.6×10⁻¹⁶ Ωm²だった。Ru(0001)/Co(0001)多層膜では11、界面で混ざった合金層が接触抵抗を決め、その値は成膜温度で大きく変わった。
表面の状態も膜で調べている。厚さ7 nmのRu(0001)膜では、0.1–0.5 nmのTiキャップの堆積でシート抵抗が1.0–2.6%、酸素への暴露で1.0%上がった12。散乱の変化は、Tiキャップで1.5分の1から6分の1、酸素暴露で6分の1から10分の1と、Cu、Co、Rhより小さい。2026年の研究では、厚さ6.5 nmのRu(0001)膜に0.5〜2原子層分のRuを積み、原子1個分の高さの段差を付けると、シート抵抗が4–6%上がった13。
散乱の原因を1つずつ切り分けるには、結晶の向きと界面が揃った単結晶の膜が要る。一方、実際の配線は多結晶で、粒の大きさは溝の幅に縛られ、側壁はエッチングや酸化の跡を持つ。Gallも2020年の展望で、粒界の寄与を無視できるのは粒が200 nmより大きいか線幅の10倍あるときとしている3。線幅12 nmの配線なら、粒の長さが120 nmを超える必要がある。
白膜から配線へ移すと、粒界と側壁の寄与が増える
Section titled “白膜から配線へ移すと、粒界と側壁の寄与が増える”膜の測定から配線の抵抗をどこまで予測できるかは、imecがRuで確かめた。Duttaらの2018年の研究は14、ALD Ru膜の膜厚依存から求めた散乱パラメータを配線用のモデルへ入れ、断面積30–130 nm²のRu配線の抵抗率を約10%の誤差で予測した。Ru配線の抵抗率は主に粒界散乱で決まり、50 nm²未満では表面散乱の寄与が大きくなる。最小の断面ではモデルが実測を系統的に下回った。同じモデルでCu配線を計算すると、Ruとの抵抗率の逆転は断面積45 nm²付近になる。この比較のCuは膜のパラメータから計算した値で、バリアを含まず、粒径とアスペクト比はRu配線と同じとおいている。
膜の結晶の質は、配線にも持ち越される。imecはIITC 2025で、イオンビーム成膜した(0001)配向の大粒径Ru15を公称CD 9 nm、ピッチ18–26 nmの配線に加工し、同じ断面積の従来のRuより配線の抵抗率が12%下がったと報告した。
加工で新しく生じる損失もある。配線ピッチ32 nm以下のRuとMoのダイレクトエッチの研究によると16、RuではO₂系のエッチングに由来する酸化層がハードマスクの側壁に育ち、最小寸法ではエッチングが止まることがある。Moでは側壁の保護不足と、加工した配線の酸化が主な課題だ。前出のMo薄膜の研究も、Moが大気中で酸化して絶縁性の表面酸化物をつくり、エッチングで削り出した配線では電流の流れる断面を削ること、N₂を含む雰囲気でのアニールで窒化して抵抗率が上がることを挙げている。この断面の損失は、白膜の比較には現れない。アニール条件の決め方は熱処理とサーマルバジェットにまとめている。
パターン化した配線の実測は、Ruが先行し、Moはこれから
Section titled “パターン化した配線の実測は、Ruが先行し、Moはこれから”Ruは配線での実測が積み上がっている。imecは16 nmピッチのRuセミダマシン配線17で平均656 Ω/µmを得た。IEDM 2023の2層Ru配線では18、CD 10 nm・アスペクト比6のRu配線が235 Ω/µmで、アスペクト比2のCuのシミュレーション値より75%低いと報告された。比べたのは実測のRuと計算のCuで、配線の高さも3倍違う。背を高くする効果は、IITC 2022でアスペクト比6のRu配線がアスペクト比3より約40%低い抵抗を示した19実測で確かめられている。Cuとの逆転点について、SemiEngineeringはVLSI 2022で示されたデータとして、断面積300 nm²(約17×17 nm)を少し下回るところでRuの抵抗率がCuを下回る20と伝えている。バリアを入れずに計算したDuttaらの45 nm²とは6倍以上開いており、逆転点は比べ方で大きく動く。
IBMとIntelの研究も、細いピッチではRuを配線に使う道を示している。IBM ResearchはIEDM 2024で、Ruトップビア配線のEM試験で1,800時間まで故障がなく、同程度の寸法の最良のCuより大幅に良かった5と報告した。Intelは同じIEDM 2024で、Ruを削って作る配線にエアギャップを組み合わせ、ピッチ25 nm以下で配線間の容量を最大25%減らした21。セミダマシンとダイレクトエッチの工程はRu配線の量産条件、エアギャップによる容量の下げ方はLow-kとエアギャップで扱う。
Moの配線データは、溝とビアを埋めた構造での測定が中心だ。IITC 2024のMo ALDの発表は22、幅20 nmの高アスペクト比のSiO₂溝をボイドなく埋め、抵抗の温度係数から求めた実効抵抗率がアニール前で約11 µΩcmだったと報告した。アニールを加えると粒が育って抵抗率はさらに下がり、シームも消え、剥離は起きなかった。CD 10.5 nmのビアを領域選択的に埋めた結果も示している。IITC 2022のバリアレスALD Moは23、埋め込み電源配線(BPR)とそこへのビア、M0AにMoを組み込み、800°Cのアニール後と、5 MA/cm²・330°Cで150時間を超えるストレス後の構造を報告した。一方、Lam Researchが示したMoのハイブリッド配線で総抵抗がCuデュアルダマシンより約55%下がるという結果は24、同社のSEMulator3Dによる仮想加工の計算だ。imecのZsolt TokeiはMoは酸化が懸念でダマシン型に向き、ミドルオブラインに有望だと述べ、imecの進捗はRuのほうが進んでいる20と話している。
Moが先に入るのは、配線よりコンタクトだ。Applied Materialsは2026年2月、単結晶Moを選択成膜するALD装置が、同社の選択W装置よりクリティカルなコンタクト抵抗を最大15%下げる25と発表した。コンタクトでのMoの選択成膜はMoコンタクトと選択成膜の量産条件で詳しく扱う。
残る問いは、パターン化した配線で実際どうなるか
Section titled “残る問いは、パターン化した配線で実際どうなるか”Ruでは、実測の配線がCuの計算値を75%下回る結果がIEDM 2023で出ており、逆転する断面積は45 nm²から300 nm²まで幅がある。IBMとIntelは細いピッチのRu配線を試作で示した。Cuは引き続き伸びている。IBMはIEDM 2024で、ピッチ24 nm(線幅12 nm)のCu配線を2 nmノード向けに検証済みとした5。IRDS 2024も26、Cuが少なくとも2029年まで配線金属の主流にとどまり、Cu以外の金属はローカル配線(M0)と、EM寿命の限界からMOL・M1・Mxのビアに入ると見ている。MoはでCuとほぼ互角で、Cuを10%下回るのは(011)配向の膜だけだ。膜厚約7 nm以下の膜では、Lamの測定でCuより低い抵抗率が出ている。配線での実測は溝の埋め込みでアニール前に約11 µΩcmが出たところで、量産の入口はコンタクトだ。
IRDS 2024の計測の章も27、配線構造の計測の多くは単純化した構造やモニターウェーハで行われており、電気特性・歩留まり・信頼性と相関する物理計測と、パターン付きウェーハでの測定が要るとしている。次に確認すべきは、同じウェーハ、同じ断面積で、Cuのバリアとライナーまで含めた実測のR/µmを並べるデータだ。そこで比べるべきは、Ruの粒界、Moの側壁の酸化、Cuのバリア厚という、白膜の測定には現れない3つの損失になる。配線とビアの作り方の違いはBEOLインテグレーションフローの3D比較にある。
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- 1imec:二元・三元化合物はCuに勝てるか、代替配線金属の指標(2022年10月)imec-int.com ↩
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- 5IBM Research:IEDM 2024のCu配線とRuトップビア(2024年12月)research.ibm.com abc
- 6
- 7SemiEngineering:Moによるメモリーの微細化、Lam ResearchのIITC 2025発表(2025年9月)semiengineering.com ↩
- 8
- 9Applied Materials:RuCo二元系ライナーで配線抵抗を最大25%低減(2024年7月)globenewswire.com ↩
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- 15imec(IITC 2025):イオンビーム成膜Ruの配向と配線抵抗率(2025年6月)imec-publications.be ↩
- 16imec(JVST A):RuとMoのダイレクトメタルエッチ(2022年)imec-publications.be ↩
- 17imec:16 nmピッチのRuセミダマシン配線、IITC 2025(2025年6月)imec-int.com ↩
- 18imec(IEDM 2023):2層Ru配線、AR6のRuとAR2のCu計算値の比較(2023年12月)imec-publications.be ↩
- 19imec:高アスペクト比のセミダマシンで配線抵抗を半減する道筋(2022年6月)imec-int.com ↩
- 20SemiEngineering:Cu配線はどこまで微細化できるか、RuとCuの逆転点(2022年12月)semiengineering.com ab
- 21
- 22IITC:2024年会議プログラム、Mo ALDの発表(2024年6月)iitc-conference.org ↩
- 23IITC:2022年会議プログラム、バリアレスALD MoのBPR(2022年6月)iitc-conference.org ↩
- 24Lam Research(SemiEngineering寄稿):Moハイブリッド配線のSEMulator3D評価(2025年9月)semiengineering.com ↩
- 25Applied Materials:選択Mo ALDなどトランジスタと配線の新装置(2026年2月)ir.appliedmaterials.com ↩
- 26IRDS:2024年版More Moore、配線金属の見通し(2024年)irds.ieee.org ↩
- 27IRDS:2024年版Metrology、配線構造の計測課題(2024年)irds.ieee.org ↩