成膜方式6系統、段差被覆と温度の違いGAAではALDの比重が上がる
成膜とは、ウェーハの上に薄い膜を積む工程だ。その方式は、ウェーハに何が届き、どこで膜になるかで6系統に分けられる。固体から飛んできた原子を積むPVD、ガスを表面で反応させるCVD、2種類のガスを交互に流して1層ずつ反応を止めるALD、液中の金属イオンを電流で析出させるめっき、ウェーハのSiそのものを酸化する熱酸化、下地の結晶を引き継いで結晶を育てるエピタキシーだ。この違いが、深い溝の側壁と底まで同じ厚さで覆えるか(段差被覆)、何度まで加熱できるか、どれだけ速く積めるかの差になる。トランジスタがGAAへ移ると、表面反応が1層で止まるALDの比重が上がる。細いコンタクト向けには、狙った面だけに金属を積む選択成膜の装置も出ている。
ASMは、最初の世代のGAAで、3 nm FinFETと比べて自社の対象市場が4億ドル増え、ALDとエピタキシーでシェアを上げた1と説明する。HfOxのALDは1サイクルで1 Å前後(東ソーのTs-Hf3)2しか積めない。それでもALDが選ばれるのは、細い溝の奥まで同じ厚さで覆うためで、ASMはALDが要求を満たす唯一の方式になる用途もあるとしている3。
成膜方式は、ウェーハに届くものと膜ができる場所で6系統に分けられる
Section titled “成膜方式は、ウェーハに届くものと膜ができる場所で6系統に分けられる”PVD(物理気相成長)は、固体の材料を原子にして飛ばす。スパッタリングは真空中でアルゴンのイオンをターゲットに当てて原子を叩き出し、蒸着は材料を加熱して蒸発させる。どちらも原子がほぼまっすぐ飛ぶので、溝の入口に先に膜が付く。EvatecはRFフィルタ向けに蒸着とスパッタの両方4を手がける。
CVD(化学気相成長)は、膜の元素を含むガスを流し、表面の化学反応で膜にする。圧力と反応のエネルギーの与え方で種類が分かれる。常圧で行う熱CVDがAPCVD、圧力を下げた熱CVDがLPCVDで、東京エレクトロンの縦型バッチ炉はLPCVDでポリSi、SiO2、Si3N4を積む5。PECVDはプラズマでガスを分解し、高い成膜速度6で絶縁膜を積む。HDP-CVDは密度の高いプラズマで、Lam Researchは配線や素子の間の隙間を絶縁膜で埋める工程7に使う。MOCVDは有機金属を原料にGaNなどの化合物半導体の結晶を積み、AIXTRONによればウェーハを材料に応じて400〜1,300°Cに加熱する8。流動性CVD(FCVD)は、Applied Materialsの説明では膜が液体のような状態でウェーハ表面に付き、隙間へ流れ込んでボイドもシームも残さず埋める9。
ALD(原子層堆積)は、前駆体と反応ガスを交互に流し、その合間に不活性ガスで残りを追い出す。表面が1層覆われると反応が止まるので、サイクルの回数で膜厚が決まる。反応ガスに水などを使う熱ALDと、プラズマで反応のエネルギーを与えるプラズマALD(PEALD)があり、ASMはPEALDなら熱の上限が低い用途で温度を下げられるとする3。
残る3つは気相から積む方式と性格が違う。めっきは液中の金属イオンを電流で析出させ、Lam Researchは銅配線をこの電気化学成膜(ECD)で作り、TSVやウェーハレベルパッケージにも使う10と説明する。熱酸化は酸素や水蒸気だけを送り、膜のSiはウェーハから取る。エピタキシーは届くものがガスである点でCVDの仲間だが、膜は下地の結晶の並びを引き継いで単結晶になる。膜ができる場所と形が下地の結晶で決まるので、別の系統として扱う。
| 方式 | ウェーハに届くもの | 温度の目安 | 溝の中の膜 | 主な使いどころ |
|---|---|---|---|---|
| 熱酸化(ドライ・ウェット) | O2、H2O(膜のSiはウェーハから) | 高温 | Siが酸化膜に変わる | ゲート酸化膜、STIのライナー |
| 蒸着 | 加熱で蒸発した原子 | 低温〜中温 | 入口が厚く、底が薄い | RFフィルタの金属膜 |
| スパッタリング(PVD) | イオンが叩き出したターゲットの原子 | 低温〜中温 | 入口が厚く、底が薄い | 金属の電極とコンタクト |
| 熱CVD(APCVD・LPCVD) | 熱で反応するガス | 高温 | 側壁にも付く | ポリSi、SiO2、Si3N4 |
| PECVD | プラズマで分解したガス | 低温 | 側壁にも付く | 層間絶縁膜、パッシベーション |
| HDP-CVD・流動性CVD | 高密度プラズマ/液体のように流れる膜 | 低温 | 隙間を埋める | 素子分離、配線間の埋め込み |
| MOCVD | 有機金属ガス | 400〜1,300°C8 | 平坦な面に結晶が育つ | GaNなどの化合物半導体 |
| ALD(熱・プラズマ) | 交互に流す前駆体と反応ガス | 中温(Ts-Hf3のウィンドウは250〜350°C2)、PEALDはさらに低温3 | 奥まで同じ厚さ | high-k膜、薄いバリア、スペーサー |
| エピタキシー | Si・Ge系の原料ガス | 高温 | 露出した結晶面だけに育つ | チャネル、ソース/ドレイン |
| めっき(ECD) | 液中の金属イオン | 液中 | 溝を下から埋める | Cu配線、TSV |
PVDとCVDとALDを、段差、温度、材料の順に方式ごとに比べた詳しい解説は成膜方式の選び方(PVD・CVD・ALD・めっき)にある。
段差被覆は、膜がどこで育つかで決まる
Section titled “段差被覆は、膜がどこで育つかで決まる”PVDの原子は、ターゲットからほぼ直線で飛ぶ。溝の入口の角が先に厚くなって影を作り、側壁と底は薄く仕上がる。CVDのガスは溝の奥まで入ってから反応するので側壁にも付くが、反応が速すぎると入口でガスを使い切り、奥ほど薄くなる。ALDは1層で反応が止まるので、入口で余ったガスが奥へ進み、底まで同じ厚さになる。Oxford Instrumentsはアスペクト比15:1の構造をプラズマALDのSiO2で覆った例11を示している。
CVDでも、反応の速さを抑えれば奥まで届く。東ソーの報文では2、Hf前駆体とO2のCVDで、成膜速度がTs-Hf3は270°C以上、TEMAHは200°C以上で温度によらず一定になり(ガスの供給が律速)、それより低温では表面反応が律速になる。アスペクト比5の穴へ160°Cで積むと、Ts-Hf3は穴の全面に膜を作り、TEMAHは穴の底でほぼゼロだった。熱で壊れにくい分子ほど、分解せずに穴の底まで届く。
ALDでも、底と上面の膜厚比は分子で変わる。同じ報文では、アスペクト比20、幅50 nmの溝に250°CでO3のALDを行い、底と上面の膜厚比がTs-Hf3で99%、CpHf(NMe2)3で86%だった。装置も反応ガスも構造も同じで、13ポイントの差は分子の違いから来る。前駆体を替えるときは、平坦なウェーハの膜厚だけで合否を決めず、狙うアスペクト比の溝で底と上面の比を測る。この差が底の不足ではなく上面の厚さから出ていたことはALDの段差被覆と前駆体で比べている。
隙間を埋める膜には別の方式を使う。HDP-CVDは隙間を絶縁膜で埋め、流動性CVDはアスペクト比30:1までの隙間を埋める9。金属の溝はめっきで下から埋める。覆う膜はALD、埋める膜は流動性CVDやめっき、という分担になる。
熱の上限が低い工程ほど、プラズマで反応を助ける
Section titled “熱の上限が低い工程ほど、プラズマで反応を助ける”熱CVDとLPCVDはウェーハを加熱して反応を進める。東京エレクトロンは縦型の熱処理炉について優れた膜質をうたう5。その代わり、トランジスタや配線を作った後の工程では、先に作った構造が耐えられる熱の上限の中で積む必要がある。PECVDとPEALDは、反応のエネルギーをプラズマから得て温度を下げる。東京エレクトロンの縦型バッチ炉も、低温のALDとプラズマを使う成膜5へ用途を広げている。熱の上限の考え方と工程ごとの違いはアニールとサーマルバジェットにまとめた。
高温側には結晶を育てる工程がある。ASMはエピタキシーを温度の精密な制御が膜質とドーピングの均一さを決める高温工程とし12、同社のEpsilon 2000は、ウェーハ用の高温Siから、トランジスタの歪み層を作る低温の選択SiGeまでを積む。選択エピタキシーは、絶縁膜で覆った面には育たず、露出したSiの上だけで結晶が育つ。トランジスタでの使い方はソース/ドレインエピタキシーと歪み工学で扱う。
熱酸化だけは、膜のSiをウェーハから取る
Section titled “熱酸化だけは、膜のSiをウェーハから取る”CVDとALDは膜の全元素をガスから供給する。熱酸化はO2かH2Oだけを送り、膜のSiはウェーハが出す。膜が厚くなるほど、酸化剤はすでにできたSiO2の中を拡散して界面へ届くので、同じ条件でも成長は膜厚とともに遅くなる。
Deal–Groveモデルは酸化膜厚の成長をで表し、薄い側をが決める線形域、厚い側をが決める放物線域として扱う。渡邉孝信氏のレビューによると13、の活性化エネルギーはドライ・ウェットとも約2.0 eVで、界面反応の律速に対応する。の活性化エネルギーはドライで1.24 eV、ウェットで0.71 eVで、溶融シリカ中のO2の拡散障壁1.17 eV、H2Oの拡散障壁0.79 eVに近い。ドライとウェットの速度差は、界面反応ではなく酸化種の拡散のしやすさから来る。
薄い膜では、この式から外れる。同じレビューでは、ドライ酸化は膜厚およそ30 nmまでの初期域でDeal–Grove式の成長曲線から外れ、ウェット酸化は初期から式に沿う。数nmのゲート酸化膜やSTIのライナー酸化膜では、この初期域の速さの差がそのまま膜厚のばらつきになるので、ドライ酸化の条件は初期域の実測で決める。同レビューはまた、high-k膜をALDで積んだ構成でも下地の薄いSiO2がトラップの少ない界面を保つとしている。熱酸化の評価は膜厚で終わらず、界面のトラップ密度と、後に積むhigh-k膜を含めた電気特性まで続く。酸化の温度と時間はウェーハ全体の熱履歴に加わり、熱バジェットの一部になる。
GAAではALDの比重が上がり、細いコンタクトでは選択成膜でライナーを省く
Section titled “GAAではALDの比重が上がり、細いコンタクトでは選択成膜でライナーを省く”微細化で難しくなるのは、細い隙間を埋める膜と、狭い穴に導電体を詰める膜だ。Applied Materialsは、トランジスタが縮むほどその間の隙間も縮み、絶縁膜で埋めて分離するのが難しくなる9と説明する。Lam Researchは、タングステンの接続部と薄いバリアを、CVDと、数原子層ずつ積むALDで作る10と説明する。ASMは、次のGAA世代である1.4 nmへの移行で対象市場がさらに4億5,000万〜5億ドル増え、伸びはトランジスタ工程で最も大きい1と見込む。同社は枚葉式ALDの市場が2024年の30億ドルから2030年に51億〜61億ドルへ伸びると予測している。
穴が細ると、ライナー・バリアと核形成層が占める体積の割合が大きくなる。Applied Materialsは、コンタクトの断面が縮むほどライナー・バリアと核形成層が体積に占める割合が増え、導電体の入る場所が減る14と説明する。同社の選択W成膜は、表面処理で下地の金属と絶縁膜を作り分け、金属の上にだけWを下から積むことで、ライナー・バリアと核形成層をどちらも省く。WからMoへの置き換えと選択成膜の量産条件はMoコンタクトと選択成膜で比べている。
選択成膜を広げるには、積まない面で前駆体を止め続ける材料が要る。領域選択ALDのレビューによれば15、自己組織化単分子膜(SAM)は長いアルキル鎖ほど前駆体をよく遮り、分子の大きいAl(C2H5)3はAl(CH3)3より遮られやすい。ただしSAMは、200°Cではおよそ5サイクルで欠陥ができ、80°Cではおよそ50サイクルまで持つ。多くのALDは100〜400°Cで行うので、SAMの耐熱性が、選択成膜に使えるサイクル数の上限を決める。蒸気で入れる小さな阻害剤分子は、この耐熱性と深い構造への届きやすさを補う候補として挙がっている。
前駆体は、容器の中の相で供給の仕方が変わる
Section titled “前駆体は、容器の中の相で供給の仕方が変わる”装置の流量設定が前回と同じでも膜厚や組成が合わないとき、そのずれは、設定値とウェーハに実際に届いた量(ドーズ量)の差として現れる。同じ材料でも、容器の温度と圧力で気体・液体・固体のどれから供給するかが変わり、その違いが膜厚・組成・抵抗率の差として測定される。
| 容器内の相 | 代表例 | 供給圧と残量 |
|---|---|---|
| 圧縮ガス | SiH4、Si2H6、GeH4、B2H6、SiF4 | 充填圧が消費とともに下がり、圧力が残量の目安になる |
| 液化ガス | WF6、DCS(SiH2Cl2) | 液相が残る間は容器温度の蒸気圧で一定、残量は質量で見る |
| 常温液体 | TEOS、TMA、TiCl4、TEMAH | 液温の蒸気圧とキャリアガスで蒸気量が決まる |
| 常温固体 | HfCl4、MoO2Cl2、TDMAH、PDMAT | 昇華面積と残量で蒸気量が変わり、連続パルスで枯渇する |
液化ガスでは、圧力が残量を示さない。Nippon Sanso / MathesonのWF6データシートは16、21°Cのシリンダー圧を2.6 psig、蒸気圧を0.0°Cで−8.0 psig、32.2°Cで15.6 psigとし、22.6 Lのシリンダーに59 kgを充填して、液相が尽きて気相だけが残る量(フェーズブレーク)の0.8 lbを交換点としている。圧力ははっきり下がった時点で、液相はすでに尽きている。液化ガスの残量は容器の質量と温度で管理し、圧力は冷えた箇所とフェーズブレークの検出に使う。
常温の相は、カタログの区分ではなく分子ごとの融点と沸点で決まる。NIST Chemistry WebBook17によるとトリメチルアルミニウム(TMA)の三重点は288.43 Kで、約15.3°C以下で固体になる。冬に加熱していないアンプルや配管の冷えた箇所では、TMAが固まる。同じ金属でも配位子で相が変わり、ADEKAの材料一覧18ではTEMAHが液体、TDMAHが融点32°Cの固体だ。同じHf系アミドでも、アンプルの加熱設計は別の条件になる。
液体と固体では、蒸気の取り出し方がドーズ量を左右する。NISTは、低揮発性の液体CCTBAでバブラーとフローオーバー容器の蒸気の持ち出し量の差を19、固体PDMATで連続パルスに伴う供給効率の低下20を測った。気体でも、流量計の表示どおりには流れない。NISTの流量標準の研究は21、N2での校正と単純な換算係数だけではガス種ごとの校正が要るという結果を得ている。固体の前駆体では、ラン開始直後と連続ランの後を分けて膜厚を測り、容器の枯渇をラン順と対応づける。
届く量は、蒸気圧と熱安定性の折り合いで決まる
Section titled “届く量は、蒸気圧と熱安定性の折り合いで決まる”蒸気圧は容器から取り出せる量を、熱安定性は容器・配管・反応室で分子が壊れずにいられる範囲を決める。蒸気圧は同じ膜種でも分子ごとに大きく違う。東ソーの報文は2、蒸気圧が1.0 Torrに達する温度をHfCl4で170°C、TEMAHで113°C、Ts-Hf3で118°Cとし、Ts-Hf3の熱分解の始まりを260°C以上としている。同報文は、HfCl4が室温で固体かつ揮発しにくく膜にハロゲンを持ち込むこと、アミド型のTDMAHやTEMAHが酸素・水分に敏感で熱に弱いことを、新しい分子を設計した出発点に挙げる。蒸気圧の高さと熱安定性は両立しにくく、その折り合いが容器、配管、反応室の温度の設計幅を決める。
表面に届いた後の温度の窓も、分子と下地で変わる。NISTのTEMAHとH2OによるHfO2のALDでは22、約100°CのSiO2表面で最初のサイクルから飽和したが、340°Cでは配位子の分解の兆しが見え、何サイクル後も被覆が不完全だった。温度を振る実験では、成長率と同時に、表面の化学種、被覆率、膜中のCとNを測る。
ALDの膜は、飽和と初期の核形成で決まる
Section titled “ALDの膜は、飽和と初期の核形成で決まる”飽和とALDウィンドウは別々に測る。飽和は供給時間とパージ時間に対して1サイクルあたりの成長量(GPC)が頭打ちになること、ALDウィンドウはGPCが一定に保たれる温度域を指す。東ソーの報文では2、Ts-Hf3とO3のALDで、供給2秒以上、パージ5秒以上でGPCが飽和し、250〜350°CでGPCが約1.0 Å/cycleに保たれた。文献値では、TEMAHとO3のウィンドウが240〜320°C、CpHf(NMe2)3とO3が250〜350°CでGPC約0.75 Å/cycleだ。GPCが一定でも組成は温度で変わり、250°Cの膜には微量の炭素が残り、350°Cと400°Cの膜ではC、N、Siが検出下限未満だった。化学系を替えるたびに、供給時間、パージ時間、温度の3つを振り直し、GPCと残留元素を同時に測る。
平均のGPCが一定であることと、最初の数サイクルで全面が覆われることは別の結果だ。前駆体が最初に反応するサイトの数は、下地の終端、OH基、自然酸化膜で変わる。NISTのHfCl4とH2OのALDでは23、水素終端Siと化学酸化膜とで核形成の仕方が違い、化学酸化膜の上では島がおよそ25サイクルで合体した。数nmの膜では、この島の時期が膜の連続性を左右するので、0サイクル、初期の数サイクル、連続膜になった後で被覆率と表面粗さを測る。下地の終端を作る前洗浄と待ち時間は洗浄と表面前処理で扱う。
純度は、受入・供給・膜の3段で別々に測る
Section titled “純度は、受入・供給・膜の3段で別々に測る”受入規格に合格した材料でも、容器の交換、長い滞留、加熱、配管内の残留で、ウェーハに届く組成は変わる。そのため純度は、受入容器、供給後の蒸気、膜の3段に分けて測る。液化ガスの残量が減るにつれて水分が上がる例と、加熱した配管で分子が分解する例は前駆体の受入規格と膜の品質にまとめた。
液化ガスでは、同じシリンダーでも気相と液相で純度の規格が別になる。WF6データシートは16、ULSI Plusグレードで気相純度99.998%、液相純度99.99995%、金属の合計500 ppbw以下、Gigabitグレードで気相99.9995%、液相99.99999%、金属100 ppbw以下を掲げる。金属はロットごとに液相から、ガス不純物はシリンダーごとに気相から採って分析する。WF6にはSEMI C70規格もある24。液体では、EntegrisのUltraPur TEOS25がGCによる純度99.99%、水分5 ppm、元素別のppb規格、保存期間24か月を1枚にまとめている。開封後の滞留で水分を吸うと膜のSiO2の密度が変わるので、開封日と消費の速さも比較の条件に入る。
膜に残った不純物は、電気特性に直結する。TU/eのPd(hfac)2によるALDでは26、O2プラズマの段を省いてH2プラズマだけにすると膜の炭素が10%を超え、膜の抵抗率が上がった。膜の炭素と抵抗率は同じ試料で比べる。
評価は、ブランケット・パターン・電気の試料で階層を分ける
Section titled “評価は、ブランケット・パターン・電気の試料で階層を分ける”パターンのない平坦なブランケットウェーハは、膜厚、密度、組成、応力の面内分布を細かく測れ、材料ロットや反応炉のドリフトを見つけやすい。パターンウェーハでは、上面・側壁・底の被覆、シーム、ボイド、選択性を測る。電気評価用のテスト構造は、膜の差をリーク電流、容量、抵抗に置き換える。ブランケットの膜厚が合っていても、パターンの底でドーズ量が足りなければ高抵抗や断線になるので、3種の試料は同じランから取る。
| 試料 | 測る量 | 代表的な方法 |
|---|---|---|
| ブランケット膜 | 膜厚、密度、組成、表面粗さ、応力 | 分光エリプソメトリー、XRR、XPS、AFM、ウェーハ曲率 |
| パターン | 上面・側壁・底の膜厚、シーム、ボイド | 断面SEM・TEM、EDX |
| 電気評価 | リーク電流、容量、抵抗率 | テスト構造の電気測定 |
数nmの膜では、解析モデルの選び方で結果が変わる。NISTのXRRによるALD HfO2の研究では27、1 nm未満の膜を1層で仮定する単純なモデルが破綻し、HfO2、界面層、Siの2層モデルのほうが妥当だった。NISTの薄膜の参照試料も28、200 mmウェーハ上の8 nmのALD HfO2を、全面の分光エリプソメトリーと9点のXRR、切り出した試料のXPSを組み合わせて決めている。装置間で膜厚を比べるときは、同じ測定点、同じ層モデルにそろえてから材料の差を読む。
応力も式の前提に左右される。量産のウェーハ曲率法はStoney式で膜応力を求め、この式は膜が基板よりはるかに薄く変形が小さいことを前提にする。修正Stoney式の研究は29、大きく反ったウェーハでは古典式の誤差が大きくなることを示し、板厚、直径、ヤング率、ポアソン比に応じた補正係数を与えている。反りの大きい厚膜や積層では、補正した値で装置間を比べる。
成膜材料の主な供給元は、材料の形態で分かれる
Section titled “成膜材料の主な供給元は、材料の形態で分かれる”| 企業 | 材料と形態 | 成膜での用途 |
|---|---|---|
| Air Liquide | Voltaix30のジシラン・ゲルマン・ジボラン、ALOHA31のSi系とRu・W・Co系の前駆体 | Si・Ge含有膜、金属膜のCVD・ALD |
| 関東電化工業 | SiF4、WF6などの特殊ガス32 | Si含有膜、WのALD・CVD |
| JSR | TEOS、ALD・CVD前駆体、ドーパント33 | ゲート絶縁膜、バリアメタル、配線 |
| Entegris | 固体のHfCl434とMoO2Cl235(純度99.7%以上)、液体のTEOS | HfO2のALD、ロジック・DRAM・3D NAND向けMo膜、SiO2 |
| ADEKA | 分子ごとに常温の相を示したALD・CVD前駆体 | HfO2、ZrO2、TiN、Ru、SiO2、SiNx |
| 東ソー | 常温で液体のHf錯体Ts-Hf3 | DRAMキャパシター向けHfOxのCVD・ALD |
| JX金属 | Mo化合物を含む高純度金属化合物36 | 次世代配線向けの金属成膜 |
固体前駆体はMoのような配線金属へ広がっている。MoO2Cl2はMo、O、Clだけでできた分子なので、膜中の残留元素の候補はClと酸素に絞られ、受入分析と膜の分析を同じ元素でそろえられる。W、Mo、Ruを配線のどこに使うかはBEOL配線材料で金属ごとに比べている。
- 成膜方式の選び方(PVD・CVD・ALD・めっき):CVDとPVDの違いを方式ごとに詳しく比べる
- ALDの段差被覆と前駆体:溝の中の膜厚分布を前駆体と反応ガスで比べる
- 前駆体の受入規格と膜の品質:受入・供給・膜の3段で組成が変わる理由
- 洗浄と表面前処理:表面の終端、前洗浄、再酸化、待ち時間
- KOKUSAI ELECTRICのCVD・ALD装置群:バッチ式の反応炉、パージ、スループット
- AMATのGAA世代向け成膜装置:選択的な窒化膜PECVDやメタルゲートALDの装置
- BEOL配線材料:W・Mo・Ruの前駆体、核形成、配線
- Moコンタクトと選択成膜:選択成膜とコンタクト抵抗
- ソース/ドレインエピタキシーと歪み工学:結晶成長、歪み、欠陥
- テストウェーハとモニターウェーハ:ブランケットに使うモニターウェーハの管理
- エッチングガスと洗浄薬液:成膜材料と対になるガスと薬液
- JSR企業研究・JX金属企業研究:成膜材料メーカーの事業
- 企業研究:Lam Research
- 企業研究:東京エレクトロン
- 企業研究:Applied Materials
36件を表示
- 1ASM:Investor Day、GAAによる対象市場の増加とALD市場の予測(2025年9月)globenewswire.com ab
- 2
- 3
- 4Evatec:CLUSTERLINE 300、蒸着とスパッタの装置(2026年10月閲覧)evatecnet.com ↩
- 5
- 6Oxford Instruments Plasma Technology:PECVDの特徴(2026年10月閲覧)plasma.oxinst.com ↩
- 7Lam Research:SPEED、HDP-CVDによる絶縁膜の埋め込み(2026年10月閲覧)lamresearch.com ↩
- 8AIXTRON:MOCVDの仕組みと成長温度(2026年10月閲覧)aixtron.com ab
- 9Applied Materials:Producer Eterna FCVD、流動性CVDによる隙間の埋め込み(2026年10月閲覧)appliedmaterials.com abc
- 10
- 11Oxford Instruments Plasma Technology:ALDとプラズマALDの段差被覆(2026年10月閲覧)plasma.oxinst.com ↩
- 12ASM:エピタキシーの温度制御と装置(2026年10月閲覧)asm.com ↩
- 13渡邉孝信:Applied Physics Express 18、Siの熱酸化の速度論レビュー(2025年)iopscience.iop.org ↩
- 14Applied Materials:Endura Volta Selective W CVD、ライナーを省く選択W成膜(2026年10月閲覧)appliedmaterials.com ↩
- 15
- 16Nippon Sanso / Matheson:WF6の製品データ、蒸気圧・交換点・純度グレード(2026年10月閲覧)us.nipponsanso.com ab
- 17NIST Chemistry WebBook:トリメチルアルミニウムの相変化データ(2026年10月閲覧)webbook.nist.gov ↩
- 18ADEKA:半導体材料、ALD・CVD前駆体の分子と常温の相(2026年10月閲覧)adeka.co.jp ↩
- 19NIST:低揮発性液体前駆体の飽和器設計の比較(2026年10月閲覧)nist.gov ↩
- 20
- 21
- 22NIST:HfO2のALD中の反射吸収赤外分光(2026年10月閲覧)nist.gov ↩
- 23
- 24SEMI:C70、六フッ化タングステンの規格(2026年10月閲覧)store-us.semi.org ↩
- 25Entegris:UltraPur TEOSのデータシート(2026年10月閲覧)entegris.com ↩
- 26
- 27NIST:X線反射率によるALD膜の評価(2026年10月閲覧)nist.gov ↩
- 28NIST:薄膜の参照試料RGTM(2026年10月閲覧)nist.gov ↩
- 29
- 30Air Liquide:Voltaix、ガス状のSi・Ge・B前駆体(2026年10月閲覧)electronics.airliquide.com ↩
- 31Air Liquide:ALOHA、ALD・CVD前駆体と供給系(2026年10月閲覧)electronics.airliquide.com ↩
- 32関東電化工業:特殊ガス、SiF4とWF6(2026年10月閲覧)kantodenka.co.jp ↩
- 33JSR:電子材料事業、成膜材料(2026年10月閲覧)jsr.co.jp ↩
- 34Entegris:HfCl4、ALD・CVD用の固体前駆体(2026年10月閲覧)entegris.com ↩
- 35Entegris:MoO2Cl2、ALD・CVD用のMo前駆体(2026年10月閲覧)entegris.com ↩
- 36JX金属:高純度CVD・ALD材料の供給体制(2025年6月)jx-nmm.com ↩