コンテンツにスキップ

半導体洗浄はSamsungで全工程の約3割|接合のボイドは待ち時間の管理しだい

洗浄は、半導体工場で最も回数の多い工程だ。Samsungで洗浄技術の開発を率いるKT Lee氏は、2025年の国際会議UCPSSの基調講演で、同社の工場ではウェーハ洗浄が全工程の約3割を占める最頻工程で、しかも増えている1と述べた。成膜、露光、エッチング、CMPの間には洗浄が入り、洗浄が次の工程へ渡す表面の状態が、最終の歩留まりを左右する。

洗浄とは、前の工程が残した汚れを落とし、次の工程が求める表面の化学状態に戻す工程だ。難しいのは、その状態を次工程まで保つことにある。装置は2つの方式に分かれる。薬液の槽にウェーハをまとめて沈めるバッチ式はコストと処理枚数で有利で、一方の枚葉式は1枚ずつ洗い、ウェーハごとに雰囲気や乾燥まで制御できる。洗浄装置の大手である東京エレクトロン(TEL)とSCREENは、どちらも両方式をそろえている。

Samsungでは洗浄が工程の3割を占め、立体構造でさらに増える

Section titled “Samsungでは洗浄が工程の3割を占め、立体構造でさらに増える”

Lee氏は洗浄工程を、前処理洗浄(プレクリーン)、後処理洗浄(ポストクリーン)、ウェットエッチの3つに分ける。3D NANDのような立体構造が入ってから、洗浄工程に占めるウェットエッチの割合が上がっているという1。

洗浄が増えると、薬液の費用と廃液も増える。Samsungは、枚葉のスピン洗浄で回転数を極端に落とすパドル洗浄にすると、薬液の使用量が高速回転の17分の1になる1と報告した。工程数が多いぶん、1回あたりの薬液量の差は工場全体の費用に効く。

落とす汚れは5種類で、残る工程も落とし方も違う

Section titled “落とす汚れは5種類で、残る工程も落とし方も違う”

SCREENは洗浄を、ごく微細な粒子から、製造工程で生じた微量の有機物・金属の残渣、空気にさらされてできる自然酸化膜までを薬液で取り除く工程2と説明する。わずかな汚染でも回路の欠陥になるからだ。ウェーハ端面(ベベル)の汚染も端部の欠陥として歩留まりを下げるので3、裏面と合わせて落とす対象は5種類になる。

図1汚れの種類と載り方
粒子 表面に載る 金属残渣・スラリー成分 表面に付着する 有機残渣・ポリマー 膜状に覆う 自然酸化膜 空気にさらされて生じる ベベル汚染 ウェーハ端面に付く 裏面汚染 相互汚染の起点になる 下地(Si・配線・low-k)
5種類の汚れは載る場所と付き方が違うので、それぞれ別の方法で落とす。
落としたいもの主に残る場面落とし方の例
粒子成膜の後ブラシや純水のスプレーで物理的に落とす2、極低温エアロゾルで飛ばすドライ洗浄4
有機残渣、ポリマーアッシングによるレジスト除去の後アッシング後の洗浄2、SPM(硫酸過水)5
金属残渣、スラリー成分CMPの後SPMによるCMP後洗浄5
自然酸化膜空気にさらされた後薬液で取り除く2、接合前はプラズマ活性化6
ベベル・裏面の汚染工程をまたいで端部と裏面にたまるプラズマによるベベル洗浄3、裏面洗浄

粒子は欠陥として数えられ、有機残渣とポリマーは主にエッチングとアッシングの後に、スラリー成分はCMPの後に残る。どの汚れも、残った後の次の工程で不良として現れる。

洗浄後の表面は待ち時間のうちに変わり、症状は次の工程で出る

Section titled “洗浄後の表面は待ち時間のうちに変わり、症状は次の工程で出る”

洗浄で整えた表面も、次の工程が始まるまでの待ち時間(queue time)に変わっていく。自然酸化膜は空気にさらされるとできるので2、待つ間に再び育つ。粒子も再び付く。

図2洗浄後の待ち時間に表面で進むこと
洗浄 待ち時間 次工程 時間 洗浄直後 待ち時間の後 清浄で活性な表面 再酸化 再汚染 表面活性が下がる 次工程で出る症状 ボイド・未接合 接触抵抗の上昇 欠陥の増加
洗浄直後の清浄な表面も、次工程を待つ間に再酸化し、粒子が載り、活性が下がる。症状は次の工程で現れる。

このため症状は、洗浄装置の中ではなく次の工程で見つかる。エッチング後はポリマー、アッシング後の残渣、表面の濡れ性の変化が残り、次の膜付けや接触の条件を崩す。CMP後は平坦度が良くても、スラリーの残り、金属の腐食、ウォーターマーク(乾燥跡)が残れば、後の工程で欠陥や電気特性のばらつきになる。スラリーとパッドが同じでも、後段の洗浄と乾燥で残る残渣が変われば、CMP後の欠陥も変わりうる。

待ち時間の管理が装置の仕様にまでなったのがハイブリッド接合だ。Applied MaterialsのKinexは、ウェット洗浄、プラズマ活性化、脱ガス、計測、接合を1台にまとめた。調査会社Futurumはこの統合について、待ち時間のばらつきと汚染の起こりやすさが接合の歩留まりを決める主な要因で、待ち時間を管理すれば接合面が化学的に活性なまま保たれ、ボイドが減る6と分析する。

バッチ式は安く大量に洗い、枚葉式は1枚ずつ同じ条件で洗う

Section titled “バッチ式は安く大量に洗い、枚葉式は1枚ずつ同じ条件で洗う”

バッチ式は、薬液を満たした槽にウェーハをまとめて沈める。TELのEXPEDIUSシリーズは1回に最大50枚を処理し、複数の処理槽で薬液を使い分ける。最新機のEXPEDIUS-iは毎時1,000枚を処理する7。TELはこの装置を「コスト効率に優れたバッチ式」と位置づけ、拡散前洗浄、エッチング後洗浄、レジスト剥離に加えて、3D NAND向けの酸化膜/窒化膜の高選択ウェットエッチにも使う。SCREENのバッチ装置FC-3100も毎時1,000枚8を処理する。枚葉式がこの処理能力にどこまで近づいたかと各社の装置の違いは、枚葉洗浄の再現性と処理能力で比べている。

枚葉式は、チャンバーの中でウェーハを1枚ずつ回しながら薬液を当て、そのまま乾かす。TELのCELLESTA-i MDは、洗浄後のチャンバー内の雰囲気制御と独自のIPA吐出技術で、微細なパターンを倒さずに乾かす9。弱みは処理枚数で、チャンバーを積み重ねて補う。SCREENのSU-3400は24チャンバーで毎時最大1,200枚10を処理し、SCREENはこれを「バッチ式洗浄装置にも迫る処理能力」と説明する。

両方式の利点を1台に入れる装置も出ている。ACM ResearchのUltra C Tahoeは、バッチ処理と枚葉洗浄チャンバーを同じSPM装置に組み込み、低〜中温のSPM工程で枚葉専用機並みの性能を出しつつ、薬液の使用量を最大75%減らす11とACMは説明する。

TELとSCREENはバッチ式と枚葉式の両方をそろえ、枚葉機はチャンバー数を競う

Section titled “TELとSCREENはバッチ式と枚葉式の両方をそろえ、枚葉機はチャンバー数を競う”
項目TELSCREEN
バッチ式EXPEDIUS-i:1回最大50枚、毎時1,000枚FC-3100:毎時1,000枚
枚葉式CELLESTA-i:最大20チャンバーSU-3400:24チャンバー、毎時最大1,200枚
薬液の節減CELLESTA Pro SPM:SPM薬液コストを最大50%削減SU-3400:改良ノズルと薬液循環で使用量を節減
倒壊を抑える乾燥CELLESTA-i MD:チャンバー内の雰囲気制御とIPA吐出、CELLESTA SCD:超臨界乾燥SU-3300:チャンバー内の温度・湿度の制御
薬液の供給と再利用CELLESTA-i MD:薬液リサイクルSU-3200:DDI方式とキャビネット方式から選ぶ

枚葉式では、TELのCELLESTA-iが最大20チャンバーを積み、1 m²あたりの生産性は世界最高水準とし9、SCREENのSU-3400は24チャンバーで毎時最大1,200枚10を処理する。TELのSPM専用機CELLESTA Pro SPMは、最大18チャンバーを積み、硫酸の使用量を減らす独自機能でSPM薬液のコストを最大50%下げる5。

乾燥と薬液の扱いでも、両社は同じ課題に別の機種で答えている。TELのCELLESTA-i MDはチャンバー内の雰囲気制御とIPA吐出で倒壊を抑え、薬液のリサイクルで運転費を下げる9。SCREENのSU-3300はチャンバー内の温度と湿度を制御して高アスペクト比のパターン倒壊を抑え12、SU-3400は改良した洗浄ノズルと効率的な薬液循環で薬液の使用量を大きく減らした10。SU-3200では、薬液供給系を装置の背面に置いて供給源からウェーハまでの距離を短くし、DDI(Dynamic Direct Injection)方式とキャビネット方式の2種類から顧客の要望に合わせて選べるようにした13。SCREENは洗浄装置で世界シェア1位(同社調べ)10を掲げる。

先端では、乾燥と端面まで洗浄の範囲に入る

Section titled “先端では、乾燥と端面まで洗浄の範囲に入る”

構造が細く高くなると、洗浄は乾かし方まで含めた工程になる。TELは、多層化が進む先端デバイスでは乾燥中のパターン倒壊が大きな課題の一つで、表面張力がゼロになる超臨界流体なら倒壊を起こさず乾かせるとして14、2021年1月にCELLESTA SCDを発売した。液を使わない方法もある。TELのANTARESは、極低温の不活性ガスのエアロゾルで粒子を飛ばすドライ洗浄で、金属膜やlow-k膜でも腐食やウォーターマークを残さない4。

ウェーハの端面も洗浄の対象になる。Lam Researchは、ベベル洗浄でウェーハ端部の欠陥を工程をまたいで管理すると、欠陥が減り、全体の歩留まりが上がる3と説明する。端部はデバイスを作らない領域でも、粒子の脱落や相互汚染の起点になる。

14件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14