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CMP歩留まりを落とすディッシング|欠陥密度が良好なウェーハにも残る凹み

CMPで歩留まりを落とすのは、欠陥検査で数えるスクラッチや粒子だけではない。金属を削りすぎてできる凹み、つまりディッシングとエロージョンは、欠陥密度が良好なウェーハにも残り、後工程で配線抵抗の上昇や露光の余裕の低下1として見つかる。凹みを防ぐには、研磨をちょうどよい時点で止める必要がある。その止めどきを決めるのが終点検出で、摩擦、光、渦電流という測り方の違う方式がある。配線金属をCo・Mo・Ruへ替えると、研磨条件の許される幅、つまりプロセスウィンドウはさらに狭くなる。終点検出と統合計測の各社の実装はCMPの終点検出と統合計測、金属ごとに研磨処方がどう変わるかは配線金属ごとのCMP処方で扱う。

CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)は、樹脂製のシートを貼った回転テーブルに研磨液を流し、ウェーハを押し付けて削る2工程だ。荏原製作所によれば、CMP装置は回路表面の凹凸を高低差10〜20 nmまで平坦にする2。配線層を一段積むたびに、溝からあふれた金属と段差を削り、次の露光と成膜が使える面を作る。

図1CMP装置の制御点
研磨ヘッド荷重のゾーン配分端部の不均一スラリー選択比ディッシング・腐食ドレッサーパッドの状態スクラッチ・不均一洗浄・乾燥残渣の除去欠陥・腐食ウェーハ研磨パッド回転テーブル終点検出研磨中の終点検出削りすぎ・ばらつき
CMPの仕上がりは、ヘッドの荷重、スラリー、パッドの状態、終点検出、洗浄という別々の設定で決まり、研磨の止めどきは終点検出が決める。

歩留まりを落とすのは、欠陥検査では数えにくい形の不良

Section titled “歩留まりを落とすのは、欠陥検査では数えにくい形の不良”

ディッシングは、幅の広い配線で溝の金属だけが皿のように凹む現象だ。エロージョンは、細い配線が密に並ぶ領域で、金属のあいだの絶縁膜ごと表面が下がる現象を指す。Versum Materialsの特許も、ディッシングとエロージョンをこの形の違いで区別している1。どちらも傷や粒子のような異物ではなく表面の高さのずれなので、異物を数える欠陥検査の数字には現れにくい。

図2CMP前後の断面と2つの凹み方
CMP前CMP後:目標CMP後:不良余剰Cu段差Cu低誘電率の絶縁膜CMP目標面溝の中だけにCuが残るディッシングエロージョン金属部だけ凹む絶縁膜まで削れる配線抵抗が上がる露光が不安定
ディッシングは幅の広い配線の金属だけを凹ませ、エロージョンは密な配線の領域を絶縁膜ごと下げる。どちらも配線抵抗と露光の余裕で後から見つかる。

ディッシングが起きると配線の断面積が減り、配線抵抗やビアの導通余裕が悪化する。エロージョンは局所的な平坦さを崩し、次の層の露光でフォーカス余裕を削り、後続の膜厚もばらつかせる。同じディッシングでも、あるラインでは配線抵抗の上昇として、別のラインではフォーカスや重ね合わせ余裕の低下として検出される。原因をCMPまでさかのぼるには、CMPの管理指標と、後工程の電気特性や露光の指標を並べて見ることになる。

凹み方はスラリーの性質で変わる。Versum Materialsの特許は、金属と絶縁膜の選択比が高いスラリーでは金属が削られすぎてディッシングが出やすく、化学的なエッチ速度が大きい場合もディッシングにつながる1と書く。

不良起き方後工程で見える症状
ディッシング幅の広い配線の金属だけが凹む配線抵抗の上昇、ビア導通余裕の悪化
エロージョン密な配線の領域が絶縁膜ごと下がる露光のフォーカス余裕の低下、後続膜厚のばらつき
マイクロスクラッチ・粒子表面に傷や異物が残る欠陥密度の上昇、リーク、ショート
残渣・腐食金属やバリアが残り、腐食が始まる断線・ショート、信頼性の劣化
端部の不均一ウェーハ端で除去量が乱れる端部のプロセスウィンドウが狭まる

欠陥検査で数えられるのは、スクラッチ・粒子と残渣が中心だ。傷と粒子がどこで生まれるかはCMPスラリー・パッド・コンディショナーで扱う。低誘電率膜(low-k膜)のように壊れやすい膜は研磨の荷重そのもので傷むので、CMPが守るべき構造は低誘電率膜とエアギャップの基礎と合わせて見るとはっきりする。

終点検出は、方式ごとに見える膜が違う

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研磨をどこで止めるかは、研磨中にウェーハの状態を測る終点検出が決める。測り方には、摩擦、光、渦電流を使う方式がある。

1つ目は摩擦を測る方式だ。研磨する膜が変わるとパッドとの摩擦が変わり、テーブルを回すモーターの電流に表れる。SpeedFam-IPECが2000年に出願した特許は、この方式を量産で実績のある方法としながら、Cu配線のバリア金属(TaやTaN)は下の絶縁膜と摩擦係数が近く、電流の変化が小さくて検出しにくい3と指摘している。

2つ目は光を使う方式だ。パッドに開けた窓から光を当て、ウェーハからの反射を測る。Applied Materialsは2007年、窓つきパッドと多波長分光を組み合わせ、酸化膜・STI・ポリシリコンのCMPで研磨中に終点を検出するFullVision4を発表した。同社は、ウェーハ上の研磨ゾーンごとに監視し、パターン付きウェーハで終点の精度を3σで150 Å(15 nm)未満にできるとしている。

3つ目は渦電流を使う方式だ。渦電流センサーは、導電性の膜の中に生じる渦電流を使って、その膜の厚さを測る5。測れるのはCuやWのような導電膜に限られる。荏原製作所は、技術誌のエバラ時報でCMP終点検出モニタ用の渦電流式センサと、酸化膜CMP用の光学式終点検出モニタ6をそれぞれ報告している。

Applied Materialsは分光と渦電流の2方式を用意し、特許では同じ位置に重ねる

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Applied MaterialsのReflexion LK CMPは、複数の終点検出方式、インライン計測、先進プロセス制御を一式で載せる7。終点と研磨プロファイルの制御には、絶縁膜と金属のどちらのCMP用途でも、広帯域分光を使うFullVision XEか、ホール効果の渦電流センサーを使うRTPC XEのどちらかを使う7。同社は狙いを、消耗材の組み合わせや投入ウェーハのばらつきによるドリフトで生じる不良ウェーハを減らし、工程能力指数Cpkを上げることとしている7。

2つの方式を同時に使う構成は、Applied Materialsの特許にある。2001年出願の特許は、渦電流と光学の2つの監視系でウェーハのほぼ同じ位置を測り、信号を合わせて使う研磨装置8を示す。同特許の説明では、渦電流は厚い金属を削る段階で導電膜の厚さを追い、光学は反射率の変化で膜の切り替わりをとらえる。

荏原製作所のF-REX300XAも、研磨終点の検出モニターとインライン膜厚測定器をオプションで載せる9。研磨後の膜厚は、Novaのi580のようなCMPのプロセス制御向けの統合型計測10が装置の中で測る。

図3測定結果を反映する先
研磨終点検出で停止洗浄・乾燥粒子・残渣を除去計測・検査後工程の症状RC・重ね合わせ・欠陥インライン膜厚計測統合型計測CMP後の欠陥検査制御変数スラリーの選択比パッドの状態荷重のゾーン配分終点・プロファイル設定を反映測定結果症状から逆算
研磨中の終点検出、研磨後の計測と検査、後工程の症状は、どれも制御変数の設定へ返して初めて管理に使える。

装置の市場では、Applied MaterialsがReflexion LKを業界をリードする300 mmのCMPプラットフォーム7と称し、荏原製作所はIR資料でCMP装置の世界シェア2位と、WやCuの金属CMPでの高いシェア11を掲げる。Reflexion LKは研磨後の洗浄に全浸漬のマランゴニ蒸気乾燥を使い、ウォーターマーク欠陥をほぼなくすとする7。後継のReflexion LK Primeは研磨と洗浄の部屋を増やしてスループットを最大2倍にし、3D NANDの厚い膜と広い段差は複数のプラテンで短い研磨に分けて安定に平坦化する12。

Co・Mo・Ruは、それぞれ別の理由でプロセスウィンドウが狭い

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CMPのプロセスウィンドウは、除去速度、選択比、腐食、表面の荒れがすべて許容内に収まる研磨条件の幅だ。スラリーの化学は磨く膜ごとに違い、FujimiのPLANERLITEも、酸化膜、W、ポリシリコン、Cu、Cu/Taバリアと膜ごとに系列を分けている13。配線金属を替えると、スラリーから作り直すことになる。

Coは腐食しやすい。2017年のECSの講演要旨は、Coは水溶液中で腐食しやすく、酸化還元電位が低いためCMP中にガルバニック腐食を受けやすい。市販のCu用スラリーでは、ピット、表面の荒れ、配線の消失が出る14と報告した。そのうえで、キレート剤と腐食抑制剤を入れながら毎分2,000〜5,000 Åの除去速度を保つ配合を求めている。Applied MaterialsもCoのコンタクトと配線では、Co用に最適化したスラリーでReflexion LK Primeが余剰金属を除く15工程を組む。

Moは、磨かなくても溶ける。imecなどの2021年の研究では、過酸化水素がMo表面に酸化物を作り、その酸化物が過酸化物との錯体として溶けるため、静的エッチ速度が過酸化水素の濃度とともに上がった16。pH 2とpH 10ではどちらも除去速度が高かったが、pH 10は静的エッチが速く、表面が荒れた。削る速さと勝手に溶ける速さの差が、Moのプロセスウィンドウになる。

Ruは削りにくい。ACM Researchは2025年の自社発表で、Ruは硬く化学的に安定なため、従来のCMPでは除去と平坦化が難しいとし17、電気化学反応でRuの表面を酸化させてからフッ酸で溶かす無応力研磨を示した。酸化剤でRuを溶かす方向にも制約がある。Versum Materialsの特許は、研磨中に毒性のRuO4ができないこと1を自社の配合の利点に挙げている。

Ruの配線で研究が進むセミダマシンは、Ruをエッチングで削って配線の形にするので、溝に埋めた金属を磨く工程を使わない。imecは、セミダマシンは金属CMPを不要にし、工程を簡単にして配線の高さを制御しやすくする18と説明する。imecが挙げる利点は工程の単純さと高さの制御だが、上の通りRuは磨きにくい金属なので、金属CMPを使わないことはRuでは除去の難しさも避けることになる。工程の詳細はRu配線の量産条件、材料ごとの抵抗の比べ方はBEOL配線材料で扱う。

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