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Ruは酸化を速め、Moは静的エッチを抑え、CoはCuとの電位差を詰める|配線金属を替えるたびにCMPの処方を作り直す

配線金属をCuからCo、Mo、Ruへ替えると、CMPのスラリーと後洗浄は金属ごとに作り直しになる。詰める数値が金属ごとに違うからだ。Ruでは酸化が除去速度を律速し、錯化剤や強い酸化種で速さを上げる。Moでは静的エッチ速度、つまり研磨しなくても溶ける速さを、除去速度より十分小さく保つ。CoではCuとの腐食電位の差を詰め、ガルバニック腐食を止める。

差は数字に表れる。Ruは過酸化水素系のスラリーで除去速度が毎分47 Åにとどまり1、錯化剤を加えると890 Åに上がった。Moは酸性のKIO3スラリーで除去速度が毎分約90 nm、静的エッチ速度が毎分約2.2 nmで2、静的エッチは除去速度の約2.4%にあたる。CoとCuは、腐食抑制剤で腐食電位の差を1 mVまで縮めた3配合が報告されている。CMPの基本と、Co・Mo・Ruで研磨が難しくなる理由の概略は親記事のCMPにある。

金属ごとに、酸化剤、錯化剤、pH、腐食抑制剤の組み合わせが変わる

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スラリーは金属ごとに別製品になる。Fujifilmは新金属向けに、Co用の2段階、Ru用、Mo用のスラリーを別々の製品として並べている4。Entegrisも、新しい金属ごとにスラリーと洗浄液を開発する必要があるとする5。

効く薬品も金属ごとに違う。Ruでは錯化剤のニトリロ三酢酸アンモニウムが除去速度を上げ、Moでは陽イオン性の腐食抑制剤が静的エッチを下げ、CoとCuでは1,2,4-トリアゾールが両者の電位差を縮める。図1は、以下の節で引く論文の数値を並べたものだ。

3つの枠で論文の数値を棒で示した図。Moは除去速度が毎分約90 nm、静的エッチ速度が毎分約2.2 nm。Ruは過酸化水素系で毎分47 Å、錯化剤を加えて890 Å、砥粒なしの強い酸化系で1,202 Å。CoとCuは除去速度が毎分約62.4 nmと約47.3 nmで、腐食電位の差は1 mV。
Moは静的エッチを除去速度の約2.4%に抑え、Ruは酸化を強めて除去速度を約25倍に上げ、CoとCuは電位差を1 mVまで縮めている。

CoとCuは、腐食電位の差を1 mVまで詰める

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Coで詰めるのは、Cuとの腐食電位の差だ。電位の違う2つの金属がスラリー中で触れると、電位の低い側が溶けるガルバニック腐食が起きる。2017年のECSの講演要旨は、Coは酸化還元電位が低く、CMP中にガルバニック腐食の標的になりやすい。市販のCu用スラリーでは、ピット、表面の荒れ、配線の消失が出る6と報告した。

腐食抑制剤で電位差を詰める研究がある。中国のアルカリ性スラリーの研究では、1,2,4-トリアゾールを345 ppm入れた配合でCoの腐食電位がCuより高くなり、差は1 mV、ガルバニック電流密度は0.02 nA/cm²まで下がった3。同じ添加剤で、CoとCuの除去速度の比は1.32対1(Co毎分約62.4 nm、Cu毎分約47.3 nm)に調整され、研究者はこの比をディッシングの補正に役立つとしている。どちらの金属が溶ける側になるかは配合で変わるので、目標は電位の差そのものを小さくすることになる。

市販品は工程を2段に分ける。Fujifilmは、Coの余剰を除く1段目の配合でTi・TiNとの選択比を調整でき、2段目ではCoの除去速度を他の膜と独立に変えられる4ことを特徴に挙げる。

後洗浄も、Coをどこに使うかで変わる。Entegrisは2015年の発表で、Coがライナーとして薄く残る構造と、配線全体がCoの構造では洗浄がまったく違う7と述べた。Cu配線のライナーでは、Coを溶かさずにCuを洗い、CuとCoの間の腐食を抑える。Co配線では、溶けにくいCo酸化物を作らないか溶かし、液中のCo³⁺とCo²⁺の比を管理する。Cuのライナーを薄くする流れはCuライナーの薄膜化で扱う。

Moは、静的エッチを除去速度より十分小さく保つ

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Moで詰めるのは、除去速度に対する静的エッチ速度の比だ。酸性のKIO3スラリーの研究では、Moの表面にできるMoO3とMo2O5が柔らかく、pH 2で砥粒のこすりで容易に取れる2。冒頭の毎分約90 nmと約2.2 nmは、この研究で静的エッチが最も低く、除去速度が最も高かった0.1 MのKIO3、pH 2の値だ。アルカリ側では、Entegrisの講演要旨が先行研究を引いて、pH 6を超えるとMoの酸化物がモリブデン酸イオンとして溶ける8と述べている。

スラリーメーカーは、除去速度を落とさずに静的エッチだけを下げる腐食抑制剤を探している。Fujimiは国際会議ICPT 2022で、pH 2ではMo表面が負に帯電するため陽イオン性の抑制剤が吸着して静的エッチを下げ、除去速度はほぼ保てる9と報告した。最適化した配合は、同社のFEOL用スラリーと比べてMoの除去速度が60%高く、静的エッチ速度は30%に下がった。

Moでは、Cuと違ってバリアが要らない。Entegrisは、MoはTaNやTiNのバリアを要しない5ことを利点に挙げる。Fujifilmも、Mo用スラリーの特徴に絶縁膜に対する高い選択比4を挙げる。

後洗浄の目標は厳しい。Entegrisは、WとMoの後洗浄に静的エッチ速度毎分0.5 Å未満、残る金属が10¹⁰ atoms/cm²未満8を求められるとする。洗浄後のMo表面は、Mo⁶⁺、Mo⁵⁺、Mo⁴⁺の酸化物が混ざった層で覆われる。

Moの採用は始まっている。Lamは2025年2月、韓国とシンガポールに工場を持つ大手3D NANDメーカーと先端ロジックの工場でMoの初期採用が始まった10と発表した。用途ごとの順序はMo配線の見通しにまとめた通り、3D NANDのワード線が先に量産へ入り、ロジックはコンタクトから続く。3D NANDの深い積層について、Entegrisはエッチング液でMoを均一に後退させる工程5を課題に挙げている。

Ruで詰めるのは酸化の速さだ。RuのCMPでは酸化が除去速度を律速する11。過酸化水素系のスラリーでは、錯化剤のニトリロ三酢酸アンモニウムを加えると除去速度が毎分47 Åから890 Åへ約17倍に上がった1。研究者は、錯化剤がシリカ砥粒と相互作用し、Ruとその酸化物をキレートして溶けやすくすると説明している。

砥粒を使わない系もある。過酸化水素、ペルオキソ二硫酸、鉄錯体を組み合わせた系では、ヒドロキシルラジカルなどの強い酸化種がRuをRuO2とRuO3に酸化し、さらに溶けるRuO4⁻とRuO4²⁻に変えて、pH 7で毎分1,202 Å11に達した。表面の粗さは0.94 nmだった。Entegrisも、2022年の講演要旨で、自社が2010年の研究でTiO2砥粒と過酸化水素の組み合わせでRuを毎分1,000 Å超で研磨した8研究を背景として紹介している。

Ruは貴な金属なので、ガルバニック腐食で溶けるのは隣のCuの方になる。Ruをバリアに使う研究では、RuがスラリーにさらされるとCu配線にガルバニック腐食を起こす12。pH 10の過炭酸ナトリウム系スラリーにベンゾトリアゾールを加えた2013年の配合では、除去速度がRu毎分約10 nm、Cu毎分約80 nmで、欠陥のない試料を得た。過ヨウ素酸カリウム系のスラリーでは、ベンゾトリアゾールと非イオン界面活性剤を加えるとガルバニック電流密度の理論値が1桁下がった13。そのため、Ruのスラリーには、遅いRuを酸化する力と、隣のCuを守る抑制剤を同時に入れることになる。

市販のスラリーには、別の金属を守る抑制剤を載せたものもある。FujifilmのRu用スラリーはMoを守る腐食抑制剤を含み、Mo用スラリーはRuを守る抑制剤を含む4。

Ruには、エッチングで配線を作る道もある

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Ruには、溝に埋めて磨くのではなく、膜をエッチングで削って配線の形にする道がある。imecは、Cuのデュアルダマシンで金属ピッチが20 nmを下回るとRC遅延が増える問題への対策として、Ruのセミダマシンを提案した14。2025年6月には、この方式で作った16 nmピッチのRu配線で平均656 Ω/µmを示し、18〜22 nmピッチではウェーハ全面で90%以上の歩留まりを得た。imecは、A7世代以降の最初の局所配線層の候補に位置づけている。

imecが挙げた要素は3つある。ハードマスク、スペーサー、埋め込みに安価な酸化膜と窒化膜を使うこと、パターン反転とSiO2の埋め込みを組み合わせること、Ruのエッチング中にSiNハードマスクの酸化を抑えて配線間の短絡を防ぐことだ。

Ruのエッチングでは、揮発する生成物が要になる。2004年のUC Berkeleyの研究では、ArとO2のプラズマでRuのエッチ速度が毎分60 Åで、生成物のほとんどが壁に堆積した。Cl2を加えるとエッチ速度が5倍になり、排気側でRuO4が検出され、壁への堆積はほぼ消えた15。研究者は、より揮発しやすいRuの酸塩化物ができたためと解釈している。工程の詳細はRu配線の量産条件で扱う。

金属詰める数値効かせる薬品選択比を取る相手後洗浄の要点
CoCuとの腐食電位の差(1 mVの報告)1,2,4-トリアゾールなどの腐食抑制剤Ti・TiNライナーかCo配線かで処方を分け、Co酸化物を残さない
Mo静的エッチ速度(除去速度の約2.4%の報告)酸性の酸化剤と陽イオン性の抑制剤絶縁膜静的エッチ毎分0.5 Å未満、金属残渣10¹⁰ atoms/cm²未満
Ru除去速度(毎分47 Åから1,202 Åの報告)錯化剤と強い酸化種、隣のCuを守る抑制剤絶縁膜隣のCuの腐食を抑える
W成熟した配合絶縁膜で止めるか止めないかを選ぶ窒化膜、酸化膜、ポリシリコン静的エッチ毎分0.5 Å未満

Wは比較の基準になる。FujifilmはW用に、絶縁膜で止める配合と止めない配合4を用意している。MoについてEntegrisは、W用とは別のスラリーと洗浄液に加え、Moの除去速度と欠陥に合わせたパッド、Moの残渣に合わせたブラシを開発する必要があるとする5。消耗材の欠陥と管理はCMP消耗材、配線材料の抵抗の比べ方はBEOL配線材料で扱う。

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