コンテンツにスキップ

CMPスクラッチは粗大粒子の数に沿って増加|パッドくずとダイヤモンドも傷の源

CMPスクラッチは、研磨中に硬い粒が膜の表面を引っかいてできる傷だ。その数は、接触部に届く0.5〜1 µmを超える粗大粒子の数とともに増える。粗大粒子はスラリーのロットに含まれるだけでなく、供給系での凝集からも生じ、装置直前の使用点フィルターで減らせる。パッドの削りくずやコンディショナーから外れたダイヤモンドも傷をつけるので、対策は粒子を使用点で数えることと、傷の形から発生源をたどることの二つになる。

研磨の速さを表すMRR(material removal rate、除去速度)は、単位時間あたりに削れる膜の厚さで、nm/分やµm/時で表す。MRRは圧力、回転数、スラリーの種類と濃度で変わり1、パッドの状態でも落ちる。スクラッチの数は、MRRとは別に数える。Friction誌のレビューが紹介するParkらのグループの実験では、シリカスラリーで酸化膜を研磨しながら、パッドくず、乾いたスラリー粒子、ダイヤモンド粒子を少量ずつ加えた。MRRは変わらず、スクラッチの数は加えた源の種類で変わった2。この実験では、MRRを見てもスクラッチの増減は分からなかった。

スクラッチは、砥粒より大きく硬い粒がパッドに押されて膜を掘った跡

Section titled “スクラッチは、砥粒より大きく硬い粒がパッドに押されて膜を掘った跡”

CMPは、スラリーを流しながら、回転するパッドにウェーハを押し付けて、化学作用と機械作用で膜を削る工程だ。装置の構成と終点検出はCMPの解説にまとめている。スラリーの砥粒は小さく、Entegrisの試験では平均粒径がシリカで30〜80 nm、セリアで50〜100 nmだった3。この大きさの粒が無数に当たって、膜を少しずつ削る。

図1上から見た研磨装置
回転 タンク フィルター スラリー供給口(使用点) 薬液と砥粒を接触部へ 研磨ヘッド ウェーハを下向きに押し付ける 定盤と研磨パッド 接触面をつくり、液を保持 使用済みの液と研磨くず 揺動 コンディショナー 表面を削って突起を更新
スラリーはタンクからフィルターと配管を通って接触部へ届く。傷の源は、この経路とパッドの上の両方にある。

ここに1 µm級の粒が混ざると、パッドの突起がその粒を膜へ押し付け、膜に溝を掘る。Friction誌のレビューが置換メタルゲート工程の欠陥を整理した表では、研磨パッド上の大きく硬い異物がマクロスクラッチの原因に挙がっている2。マクロスクラッチは複数のダイにまたがってパターンを削る。マイクロスクラッチの原因には、スラリーの凝集とパッドの突起が挙がる。

傷の形は膜の性質で変わる。同じレビューによれば、酸化膜、BPSG、ポリシリコンのような脆い膜には、円弧状の傷跡が周期的に並ぶチャターマークができる。Cuについて、Teoらは、長い傷はパッドに埋まり込んだ砥粒が、三角形の傷は液中を漂う砥粒が膜へ押し付けられて生じたと考えている。スクラッチは研磨の直後には見つけにくく、酸化膜ではHF溶液でエッチングしてから検出することが多い。スクラッチは初期不良だけでなく、長期の信頼性不良の原因にもなる。

スクラッチ数は、0.5 µm前後を超える粒子の数に沿って増える

Section titled “スクラッチ数は、0.5 µm前後を超える粒子の数に沿って増える”

受入検査で粒径を測る動的光散乱(DLS)やレーザー回折は、分布の位置と幅を返すが、粒子の濃度の情報は返さない4。粗大粒子を数えるには、粒子を1個ずつ光ビームに通す単一粒子光学計数(SPOS)を使う。EntegrisがSPOSで測った凝集セリアスラリーには5、1 µmを超える粒子が1 mLあたり約700万個、2 µmを超える粒子が約2万2,000個あった。平均径が数百nmの液でも、分布の裾にはこれだけの粒が残る。

スクラッチの数は、この裾の粒子数に沿って増える。Friction誌のレビューが転載したRemsenらのヒュームドシリカの測定では、0.469 µm以上の粒子数とスクラッチ数が直線に乗った2。図から読むと、粒子がスラリー1 gあたり約70万個のときスクラッチは10個前後、約870万個では約270個だった。ろ過した6種のスラリーは、0.68 µm以上の粒子が1 gあたり10万〜40万個で、スクラッチ10〜55個の低い領域に並ぶ。管理値は平均粒径ではなく、しきい値を超える粒子の個数で置く。粒子数をロット間で比較するときは、SEMI C986が定めるとおり、測定原理、サンプル調製、報告範囲をあわせて記録する。

凝集体は供給系からも届き、使用点フィルターで減る

Section titled “凝集体は供給系からも届き、使用点フィルターで減る”

Entegrisは、分布の裾が汚染、化学組成の変化による凝集、供給系、せん断力から生じる4と挙げる。受入時の測定値が良くても、接触部に届く液の裾は別に測る必要がある。

せん断は凝集を増やす。ECS誌の研究は、0.5 µmを超える粗大粒子が研磨欠陥の原因になることを前提に、シリカスラリーにせん断をかけると、低せん断側の解砕、遷移、高せん断側の凝集という三つの領域が現れる7ことを示した。Entegrisの試験ループでも、ポンプを高速で回して液を循環させると、シリカスラリーは凝集し、セリアスラリーの凝集はほとんど変わらなかった3。せん断への強さはスラリーごとに違う。

供給配管の中の凝集体も傷の源として調べられている。Friction誌のレビューによれば、Seoらは配管の内側で固まって付着した凝集体によるマイクロスクラッチに着目し、使用点フィルターで粗大粒子の濃度を抑えた。フィルターを付けた後、欠陥は大きく減った2。比較の図に使われたのは0.5 µmのフィルターだ。Teoらの報告では、配管に滞留したスラリーを流し出す手順でもスクラッチが減った2。

フィルターの役目は、主な粒子集団を変えずに粗大粒子だけを減らすことだ3。オンラインの粒子計数器は、最後のフィルターの後ろに置いて、ウェーハに触れる直前の液を監視する4ことが多い。ロットに含まれていた粒も供給系で生じた粒も、使用点を通って接触部へ届くからだ。フィルターと計数器を売るEntegrisは、スラリー、パッド、コンディショナー、ブラシ、計測装置まで同じ会社から調達すると歩留まりが上がる8と訴えている。

パッドくずとダイヤモンドも傷をつくり、傷の形で発生源を見分けられる

Section titled “パッドくずとダイヤモンドも傷をつくり、傷の形で発生源を見分けられる”

スラリーをろ過しても、傷の源は残る。Friction誌のレビューは、消耗材に由来する傷の源として、砥粒の凝集、コンディショナーから外れたダイヤモンド、パッドの削りくず2の三つを挙げる。

パッドの削りくずは、コンディショナーがパッド表面を削るときに出る。成均館大学の酸化膜CMPの研究は、研磨中に集めたくずの表面に、パッド材と砥粒が混ざった層があり、その層がくずとパッド表面を硬くしていた9ことを電子顕微鏡で観察した。スクラッチ数が最も少なくなるくずの大きさの範囲があり、それより小さくても大きくても傷は増えた。

コンディショナーのダイヤモンドは使ううちに傷む。ECS Transactionsの試験では、ダイヤモンドの鋭い縁が摩耗して欠け、一部のダイヤモンドは応力と弱い接合のために脱落した10。外れたダイヤモンドは、レビューが挙げる傷の源の一つだ。

発生源は傷の形に表れる。先に挙げたParkらのグループの実験では、乾いたスラリー粒子を加えると途切れたチャターマークが、パッドくずを加えると群れたチャターマークができた2。欠陥の座標とレビュー像を歩留まりと欠陥の分類に合わせて残すと、粒子由来とパッド・コンディショナー由来を分けられる。同じレビューによれば、研磨中に高圧の純水をパッドへ吹き付ける方式は、パッド上に粗大粒子がたまるのを防ぎ、欠陥密度を大きく下げた。

傷の源生まれる場所先に数えるもの打つ手
砥粒の凝集体スラリーのロット、ポンプのせん断、滞留した配管使用点でのしきい値超えの粒子数使用点フィルター、せん断の低い送液、配管の洗い流し
パッドの削りくずコンディショニング中のパッド表面くずの大きさの分布、群れたチャターマークコンディショニング条件、パッドへの純水噴射
ダイヤモンドの脱落コンディショナーのディスクディスクの欠けと脱落、パッド上の異物ディスクの点検と交換

砥粒そのものの硬さも傷の深さを変える。Cu CMPでは、アルミナのように大きく硬い砥粒ほど深い傷が出た2。メーカーは低欠陥の砥粒を作り分けており、レゾナックは小粒径で反応性の高いナノセリアで低欠陥と高い除去速度を両立させ11、JSRは単分散のコロイダルシリカで欠陥を減らす12。後洗浄の工程設計は洗浄・表面前工程で扱っている。

MRRの低下はパッドの状態を映し、スクラッチとは別に数える

Section titled “MRRの低下はパッドの状態を映し、スクラッチとは別に数える”

MRRはパッドの状態でも落ちる。SiCウェーハを使ったMicromachines誌の研究では、ダイヤモンドディスクでコンディショニングしたポリウレタンパッドで、10時間後の除去速度が最大値の51.4%まで下がった13。高圧マイクロジェットで3時間ごとにコンディショニングした群では、除去速度は2.73〜3.75 µm/時で安定した。著者らは低下の原因を、パッドの気孔が砥粒で埋まって硬くなったためと説明しており、硬度は20時間で75 HDから83 HDへ上がった。MRRが落ちたときに何をどの順で測るかはMRRが落ちたらパッドから測るで扱う。

パッドの条件はスクラッチ数も動かす。Friction誌のレビューが紹介するYangらの比較では、微細な穴をもつ無発泡パッドは多孔質パッドよりMRRが約10%低く、スクラッチは少なかった2。パッドを替えればMRRとスクラッチの両方が変わるので、両方を別々に測る。

同じように膜面の欠陥に見えても、腐食はスクラッチと別の現象だ。W CMPでは、スラリーを止めた後の純水リンス中に0.5 psiの圧力が残るだけで表面の酸化膜が削れ、その後の洗浄液で腐食欠陥が生じ、リンス中の圧力を抜くと防げた14。配線の中央が落ち込むディッシングも、粒ではなくパッドの変形がつくる局所圧力で決まる15。

図2接触部の拡大断面
ヘッドからの圧力 ウェーハ 絶縁膜 スラリー 研磨パッド 砥粒 パッドの突起 スクラッチ 粗大粒子・研磨くず 気孔 金属配線 ディッシング パッドが変形して押す パッドの動く向き
スクラッチは、パッドの突起に押された粗大粒子や研磨くずが膜を掘った跡だ。ディッシングは粒ではなく、パッドの変形が配線の中央を押し下げてできる。

スクラッチを減らす手順は、使用点でしきい値を超える粒子を数え、傷の形を分類し、パッドとコンディショナーの履歴と同じ時刻で並べることだ。工程全体の消耗材と装置の対応は工程別の装置と材料にまとめている。

15件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14
  15. 15