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MRRが落ちたら、スラリーより先にパッドを測る|コンディショニングを止めた50枚は平均で6割遅かった

CMPの除去速度(MRR)が1枚のパッドの寿命の途中で落ちてきたら、スラリーより先にパッドを測る。MRRは、単位時間に削れる膜の厚さを指す。MRRを表すPrestonの式のうち、圧力と速度は装置が設定値に保つ。残る比例係数を、パッドの突起、ディスクの摩耗、溝、温度が動かすことは、以下の節の出典で確かめられる。

Texas Instrumentsの実験では、スラリーを変えずにコンディショニングだけを止めると、続く50枚の酸化膜のMRRは平均で約6割低かった。赤外分光で見た化学組成は新品と比べてほぼ同じで、コンディショニングしなかったパッドの粗さは、コンディショニングしたパッドの4倍だった。スラリーを固定したままMRRが落ちたので、寿命途中の低下ではまずパッドを測る。

Prestonの式で寿命中に動くのは係数Kpで、パッド表面の変化はKpに入る

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研磨の速さは、古くからPrestonの式で表されてきた。ローレンス・リバモア国立研究所の論文がまとめるとおり、除去速度は圧力と相対速度の積に比例し、比例係数Kpが化学と材料の効果をまとめて受け持つ1。CMPの研究は、この式を流体の効果やパッドの突起との微小な接触1を含む形へ広げてきた。

ウェーハが実際に触れているのは、パッドの突起の先だけだ。Muldowney、Elmufdi、Lawingは2007年、突起の先にかかる圧力を、加えた圧力にウェーハの面積と接触面積の比を掛けた値2として示した。Rohm and HaasのLawingが2004年に示した測定では、推定接触面積は削る力の弱いコンディショナーで11.3%、中程度で7.7%、強いもので2.2%だった3。この式に当てはめると、突起の先の圧力は、接触面積2.2%で加えた圧力の約45倍、11.3%で約8.8倍になる。突起が平らになって接触面積が増えると、局所の圧力は5分の1ほどに下がる計算だ。

左にウェーハとの接触、ダイヤモンドの摩耗、溝の摩耗、摩擦熱の4つの原因を並べた図。それぞれがグレージング、スラリーの供給の減少、パッド温度の変化を通じてPrestonの式の係数Kpを動かし、MRRを変える。圧力Pと速度Vは装置が一定に保つ。
出典で確かめた4つの原因は、どれもPrestonの式の係数Kpを通じてMRRを動かす。

パッド表面は、2つの力の釣り合いで決まる。ウェーハとの接触は突起の先をすり減らし、コンディショナーは表面を削って突起を作り直す。Lawingは、パッドの摩耗速度が高いほど、またコンディショナーの切削速度が低いほど、定常状態のグレージングが強くなる3と示した。グレージングは、突起の先が平らになった状態を指す。削る力の弱いコンディショナーほど突起は平らになり、推定接触面積は増え、研磨速度は最大値から大きく離れた。

コンディショニングを止めると、続く50枚のMRRは平均で約6割低い

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Texas Instrumentsは1997年、IC1000/Suba IVの積層パッドとヒュームドシリカのスラリーで酸化膜を研磨した。パッド寿命の初めのMRRは2,124 Å/分で4、コンディショニングしながら160枚を研磨した後は1,826 Å/分(約183 nm/分)、ばらつきは5%だった。続く50枚をコンディショニングなしで研磨すると、その50枚の平均MRRは750 Å/分(約75 nm/分)に落ち、ばらつきは15%に広がった4。1,826 Å/分からの下がり幅は59%になる。

同じ報告で、使用後のパッドを赤外分光(FTIR)で調べると、新品と使用後で化学組成に大きな差はなかった4。イオン分析では、溜まった研磨くずによる汚染で、新品と使用後に大きな差が出た。コンディショニングしなかったパッドの粗さ(rms、Ra、Zmax)は、コンディショニングしたパッドの4倍で、著者らは気孔の不均一な埋まりとスラリーの塗り広がりによると説明した。著者らは、MRRの低下を、ウェーハへ届くスラリーの減少とパッド表面のグレージングに帰し、スラリーとパッドの化学反応は小さいと結論した。

Lawingの測定では、コンディショニングを止めた後のMRRは対数的に落ち、突起の摩耗の進み方と対応した3。コロイダルシリカのスラリーは、ヒュームドシリカより突起をすり減らしにくく、MRRの落ち方も小さかった。スラリーの種類は、パッドの減り方を通じてもMRRの安定性を変える。SiCウェーハでパッドの硬さが上がった例はCMPスラリー・パッド・コンディショナーで扱っている。

コンディショナーが鈍ると、条件を変えなくてもパッドは平らになる

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3Mは2014年、W(タングステン)メタルゲートのバフ工程で、焼結砥粒のディスクを使うとTEOS膜のMRRが、主にパッド表面の突起が失われたために落ちた5と報告した。同社のCVDダイヤモンドディスクでは、MRRは目標の250 Å/分近くに保たれた。この工程の従来ディスクの寿命は約3時間、ウェーハ1,000枚で、3Mは20時間、7,000枚を目標に置いた。

ディスクの切削速度は、使ううちに大きく落ちる。Entegrisのアプリケーションノートによれば、従来の4インチのダイヤモンドディスクは2万〜30万個のダイヤモンドを持ち、働いているのは20%未満だ6。同ノートが引く研究では、新品の従来ディスクはパッドを削りすぎ、切削速度が必要な最低値まで落ちるまで使われる。量産で50時間使った例では、切削速度は当初の16%まで指数関数的に落ち、切削速度かウェーハ面内のばらつきが許容範囲を外れた時点で交換された6。固定したダイヤモンドは鈍り、削り直せない。Lawingの釣り合いに当てはめると、切削速度が落ちたディスクではグレージングが強まる。

コンディショナーのメーカーは、パッドの摩耗を抑え、切削速度を保つことを売りにしている。3MはW plug工程の試験で、焼結砥粒のディスクで削ったパッドは、自社のTrizactで削ったパッドより摩耗速度が3〜4倍以上高く、表面の粗さは同じだった5と示した。EntegrisはCVDダイヤモンドのPlanargemで、ダイヤモンドの脱落をなくし、パッドとディスクの寿命を延ばすとしている6。スラリーとパッドも売るEntegrisの品ぞろえはEntegrisのCMP消耗材一式戦略で扱う。パッド側では、QnityがIkonicの2000シリーズについて安定したMRRと長いパッド寿命7を挙げ、上位のシリーズでは欠陥とパッド寿命を通じたMRRの安定性の両立を挙げる。どのシリーズにも、コンディショニングしやすい表面を挙げている。

ディスクを比べるときは、パッドのロットの差を分けて測る。Entegrisは、硬いパッドでは比重や溝の形のロット内のばらつきだけで、同じディスクの切削速度が最大約30%変わるとし6、使用済みのディスクを新しいパッドで測り直すことを勧めている。

Applied Materialsの特許は、溝が1か所でも残り5ミルになった時点をパッド寿命の終わりとする

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パッドの溝は、スラリーを接触部へ運び、研磨くずを外へ出す。Applied Materialsは2010年に優先権を持つ特許で、有効なパッド寿命を、どこかの溝の残り深さが5ミル(約0.13 mm)になるまでのコンディショニング時間8と定義した。初期の溝深さが30ミル(約0.76 mm)なら、25ミルを削った時点で寿命が終わる。

この特許は、コンディショナーのアームに誘導式のセンサーを付けて、装置の上でパッドの厚さを測る方法を示す。その厚さでアームの滞在時間を半径ごとに変える閉ループ制御により、溝の深さのばらつきを40%以上減らし、パッド寿命を20%延ばせると予測する8。電解研磨のパッドを扱う同社の別の特許も、パッドの研磨能力は摩耗と研磨くずの堆積で落ち、摩耗は場所ごとに偏ることがある9と書く。

荏原製作所も、パッドを装置から外さずに測る方法を特許にしている。2011年に優先権を持つ特許では、コンディショニング中にパッドの高さを一定時間ごとに測り、位置ごとの高さの差を経過時間で割って切削速度を求める10。2015年の特許は、パッドにレーザーを当てた反射光から表面の凹凸の波長成分を求め、パッドの表面状態がCMPの性能を決める要因の一つだとして11、その値から研磨性能を推定する。

パッド温度は、活性化エネルギーの大きいCuほどMRRを動かす

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パッドの表面温度も、Kpを動かす。荏原製作所の特許は、研磨速度は荷重だけでなくパッドの表面温度にも依存し、研磨液の化学作用が温度で変わるため12と説明し、放射温度計で測った値で熱交換器の液温を制御する方法を示す。

温度の効き方は膜で大きく違う。2025年のMaterials誌の研究は、バリアCMPの活性化エネルギーをCuで151.7 kJ/mol、Taで29.9 kJ/mol、SiO₂で8.75 kJ/mol13と求めた。ウェーハが触れた直後のパッド表面を赤外センサーで測った工程温度は、冷却しないと約36°Cを超えるまで上がった。このバリアスラリーのアレニウス式を30°Cから36°Cに当てはめると、CuのMRRは約3.2倍、Taは約1.26倍、SiO₂は約7%上がる。

この研究では、30°Cで3種の膜のMRRが約500 Å/分にそろった。冷却で30°Cに保つと、100 µm幅の配線のディッシングは11 nmから4 nmに減った13。SiO₂のMRRは6°Cで7%ほどしか動かないが、Cu配線のMRRと選択比は数°Cで動く。

測る順番は、装置ログ、温度、コンディショナー、突起、溝、スラリー

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ここまでのデータから、測る順番は次のように組める。すぐ読める記録から測り、パッドを外す測定を後に回す。スラリーは、パッド側の変化で説明できなかったときに調べる。

順測るもの道具見る兆候
1圧力、回転数、スラリー流量装置の記録設定値からのずれ
2パッドの表面温度放射温度計研磨中の上がり幅の変化
3コンディショナーの切削速度新しいパッドでの再測定、アームの変位センサー(特許の方法)新品時からの低下
4突起の高さ分布と粗さ触針式粗さ計、レーザー共焦点顕微鏡分布の上側が削れた形、または粗さの上昇
5溝の深さ溝深さのレーザー測定、パッド厚さのセンサー(特許の方法)残りの深さと半径ごとの差
6スラリーロットの記録、粒子の計数ロット切り替えとMRR低下の時刻の一致

1は、Prestonの式のPとVを確かめる作業だ。2は、前節の計算から、Cuのように活性化エネルギーの大きい膜ほど早めに確かめる意味がある。3で切削速度が落ちていれば、ディスクを替えてMRRが戻るかを見る。パッドを替えずにディスクだけ替えて戻れば、原因はコンディショナーだ。

4の道具は、EntegrisがパッドのRaに触針式粗さ計を、表面の形とSaにレーザー共焦点顕微鏡を使った6組み合わせだ。TIの例のように、グレージングしたパッドでは粗さが上がることもある。5は、3Mが溝深さのレーザー測定でパッドの摩耗速度と表面の粗さ5を同時に求めた方法が使える。新しいパッドと新しいディスクに替えてもMRRが戻らなければ、そこで初めてスラリーのロットを調べる。粒子の数え方はCMPスラリー・パッド・コンディショナーで扱う。比べるときは、モニターウェーハの膜と測定点をそろえる。CMP工程全体の不良と終点検出はCMPの解説で扱う。

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