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除去レートとは

除去レートとは、CMPで単位時間あたりに削れる膜厚のことです。 研磨前と研磨後の膜厚差を研磨時間で割った値で、ふつうnm/minで書きます。同じ装置でも膜とスラリーの組み合わせで桁が変わり、ベタ膜のモニタで測った値は製品ウェーハのパターンの上でずれます。レートを上げる操作は平坦性と面内分布を悪くするので、除去レートは速さを競う指標ではなく、研磨時間を決めるために測り続ける値です。

除去レートは、膜とスラリーと荷重ごとに実測する値

Section titled “除去レートは、膜とスラリーと荷重ごとに実測する値”
膜とスラリーの組み合わせ
10100研磨速度(nm/min、対数)SiO₂ × 酸化セリウムSiO₂ × シリカSiN × 保護作用の研磨材Cu × Cuメタル用60020010以下600
SiO₂は酸化セリウム研磨材で600 nm/min、シリカ研磨材で200 nm/minで、保護作用を持つ研磨材を当てたSiNは10 nm/min以下と、組み合わせで2桁近く変わります。

除去レートは、装置の公称速度に時間を掛けた予測値ではなく、その膜、そのスラリー、その荷重で研磨前後の膜厚を実測し、その差を時間で割った値です。東亞合成のCMP用ポリマー添加剤の社内測定では、膜厚計に大塚電子製OPTM-A1を使い、研磨前後の膜厚変化から研磨量を算出しています1。

日立化成工業(当時)が直径200mmウェーハで測ったプラズマTEOS法のSiO₂膜の研磨速度は、酸化セリウム研磨材(酸化セリウム濃度1wt%)で600nm/min、シリカ研磨材(シリカ濃度12wt%)で200nm/minと3倍の差がありました2。陰イオン性の有機化合物を含む研磨材をSiN膜表面に作用させると、SiNの研磨速度は10nm/min以下になりました。SiO₂の酸化セリウム研磨材とは、60倍以上の開きです。この研磨材の開発のきっかけは、シリカ研磨材または酸化セリウム研磨材を単独でSTIに使うと、SiO₂とSiNの研磨速度比が1対3から1対5程度にとどまり、SiNの研磨量が大きくなりすぎることでした。最悪の場合はストッパ膜がなくなり、素子部までえぐられます。

レートは摩擦エネルギーに沿って動く

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砥粒とpHで動くレート
砥粒径を大きくするとSi₃N₄膜とpH研磨速度砥粒径 →砥粒数一定砥粒濃度一定研磨速度pH →4付着砥粒数と摩擦も最大電位が正負で引力
砥粒数を一定にすれば粒径とともに研磨速度が上がりますが、ふつうの濃度一定の条件では向上に限界があり、Si₃N₄膜はpH4で研磨速度、付着砥粒数、摩擦エネルギーがそろって最大になります。

フジミインコーポレーテッドの森永均氏が示したデータでは、様々な粒径・材質・形状の砥粒で研磨したときのシリコン酸化膜の研磨速度が、研磨時の摩擦エネルギーとよく相関します3。摩擦エネルギーは研磨定盤の駆動電流値から測ったもので、研磨機はEbara EPO-222、研磨圧力5psi(35kPa)、定盤回転速度110rpmという条件です。摩擦エネルギーを増やすのは、作用する砥粒個数の増加、砥粒1個あたりの接触面積の増加、転がりにくさの増大です。森永氏は、球形砥粒に対して異形な砥粒が転がりにくく、摩擦エネルギーを増やして研磨速度を向上させるとしています。

このため、砥粒径の影響は条件によって逆になります。砥粒数を一定にすると、砥粒径を大きくするほど砥粒1個あたりの接触面積が増えて研磨速度が上がります。砥粒濃度を一定にすると、粒径が大きくなるほど単位容積あたりの砥粒数が減って作用点が減るため、研磨速度の向上に限界があります。森永氏は、通常の実験は後者の条件であることが多いとしています。このデータは、フジミインコーポレーテッドがガラスハードディスクをスエードパッドとコロイダルシリカ+KOH(pH10)で研磨し、圧力75g/cm²、回転数40rpmで測ったものです。

化学的な要因でも摩擦は増えます。Si₃N₄膜の研磨速度がpH4で最大になるのは、このpH域で砥粒と基板の表面電位(ゼータ電位)が正負の関係になって引力が生じ、より多くの砥粒が研磨面に付着して摩擦が増えるためです。付着砥粒数と摩擦エネルギーも、研磨速度と同じようにピークを持ちます。測定はコロイダルシリカ5wt%、圧力2.6psi(18kPa)、研磨機CETR CP4、ヘッドと定盤の回転数300/300rpmの条件です。CMPスラリーのpHは、選択比とレートの両方に影響します。定盤の駆動電流で摩擦を追う管理は、この相関に基づきます。

パターンがあると、ベタ膜のレートからずれる

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ベタ膜のレートと密集部
ベタ膜のレートで予想した面減った残膜広い絶縁膜微細ピッチの密集部絶縁膜Cu配線
微細ピッチの密集部では絶縁膜部の研磨レートがバルク絶縁膜より大きくなり、ベタ膜のレートで予想した面より下まで削れて残膜厚が減ります。

CMPの平坦化は、研磨パッドを敷いた大きめのテーブルの上でウェーハを下向きに押し付け、研磨材を供給しながら自転と公転をさせて行います。このとき凸部には凹部より大きな圧力がかかり、研磨速度の圧力依存が凸部と凹部の研磨速度の差を生んで平坦化が実現します4。除去レートが場所ごとに違うことは、平坦化の仕組みそのものです。

同じ理由で、パターンのある製品ウェーハのレートはベタ膜からずれます。Cuダマシン構造の配線のCMPでは、Cuと絶縁膜のそれぞれの研磨レートが、研磨パッドの凹凸や弾性などの要因により、パターンサイズ、パターン密度、断面構造といったパターン形状に依存して変化します5。エロージョンは、微細ピッチのパターン密集部で絶縁膜部の研磨レートがバルク絶縁膜の研磨レートより大きくなり、残膜厚が減る現象で、パターン密集部はベタ膜で測った値より速く削れます。

JEITAのDFM用語集は、モニタウェーハと製品ウェーハの研磨レートを別々の直線で描き、両者の差をPES(Pattern Effect Shift)と表記しています。ベタ膜のモニタで引いた直線をそのまま製品の研磨時間へ当てると、目標膜厚を通り過ぎるか、手前で止まります。

レートを上げる操作は、平坦性と面内分布を悪くする

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研磨圧力を上げると、プレストン式のとおりレートは1乗で伸びますが、平坦性は低下します。東亞合成は、近年の半導体の高性能化と需要増加に伴い、スラリーに平坦性の向上と研磨速度の確保という、ある種相反する特性が同時に必要になっているとし1、水溶性ポリマー製品のポリアクリル酸を、研磨速度を抑えて平坦性を向上させる調整剤として挙げています。研磨速度を下げる薬剤が製品として販売されていることが、平坦性と研磨速度のトレードオフの大きさを示しています。

同社は、高圧の6kgと低圧の1kgで研磨したときの研磨速度の比6kgf/1kgfを「圧力応答性」として表し1、アクリル酸系ではリビング重合品のほうが従来型ラジカル重合品より低圧条件で研磨速度が下がり、圧力応答性に優れたとしています。低圧条件でだけ研磨速度を下げる添加剤ほど、圧力応答性が高いと評価されます。

圧力と速度を上げると温度も上がります。研磨の摩擦は加工面の摩耗だけでなく摩擦熱も生み、加工面が数十度温まることも多くあります3。化学作用は一般に、反応の活性化エネルギーが51kJ/molの場合を目安にすると、10℃程度の温度上昇で2倍程度速くなります。大型基板の研磨では中心部に熱がこもりやすく、中心部の研磨速度が上がって平坦性に悪影響を及ぼします。対策は、研磨定盤のチラー機能の活用、スラリー流量の最適化、CMPパッドへの溝構造形成によるスラリー排出の促進です。レートを上げる操作は、面内分布を悪化させます。

面内分布には、パッドと端部も影響します。軟質パッドによる研磨ではパッドの復元力で加工面の端部に圧力が集中しやすく、対策にリテーナリングやテンプレートが使われます。ニッタ・デュポンの製品一覧は、研磨パッドの機能として段差解消性と高研磨レートを別の項目に分けています6。同社のIkonic™シリーズは、さまざまなパッド硬度と異なる孔隙率を組み合わせ、調整しやすいパッド表面を備えることで研磨効率と平坦性を改善する設計とされています。製品カタログの段階から、レートと平坦性は別の指標です。

両立の到達点として、日立化成工業はCu-CMP向けに開発したCuメタル用研磨材で、ライン/スペース100/100µmの平坦性30nm、研磨速度600nm/min、研磨面内の均一性1σ=3.0%を得たとしています2。

レートは変動する前提で、終点と履歴を追う

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1990年代後半には研磨の終点検出機能を備えたCMP装置が開発され、実用性が向上しました4。レートが変動することを前提に工程を組むため、終点を検出する機能が装置に搭載されました。

日々の管理では、膜厚測定で研磨前後を測ってレートを更新し、定盤の駆動電流やトルクで摩擦の変化を追い、パッドコンディショニングの履歴を同じ時系列に並べます。装置間で値がずれるときは装置間差として、同一ロット内でばらつくときは均一性の問題として切り分けます。

除去レートとは何ですか?

研磨前と研磨後の膜厚差を研磨時間で割った値です。装置の性能値というより、膜、スラリー、荷重の組み合わせごとに測り直す値です。東亞合成のCMP用ポリマー添加剤の社内測定では、膜厚計に大塚電子製OPTM-A1を使い、研磨前後の膜厚変化から研磨量を算出しています。

同じ装置なら除去レートは同じですか?

膜とスラリーで桁が動きます。日立化成工業(当時)が直径200mmウェーハで測ったプラズマTEOS法のSiO₂膜の研磨速度は、酸化セリウム研磨材で600nm/min、シリカ研磨材で200nm/minでした。保護作用を持つ研磨材を当てたSiN膜は10nm/min以下です。

除去レートは何で決まりますか?

摩擦です。様々な粒径・材質・形状の砥粒で研磨したシリコン酸化膜の研磨速度は、研磨定盤の駆動電流値から測った研磨時の摩擦エネルギーとよく相関します。

砥粒を大きくすればレートは上がりますか?

濃度を一定にするか個数を一定にするかで結果が別になります。砥粒数一定なら粒径を大きくすると砥粒1個あたりの接触面積が増えて研磨速度が上がり、砥粒濃度一定では単位容積あたりの砥粒数が減って作用点が減り、向上に限界が生じます。フジミインコーポレーテッドの森永均氏は、通常の実験は後者の側にいることが多いとしています。

ベタ膜で測ったレートを製品ウェーハへ当ててよいですか?

ずれます。Cuダマシン構造のCMPでは、Cuと絶縁膜の研磨レートが研磨パッドの凹凸と弾性などの要因により、パターンサイズ、パターン密度、断面構造に依存して変化します。JEITAの2011年度版DFM用語集は、モニタウェーハと製品ウェーハの研磨レートを別々の直線で描き、両者の差をPES(Pattern Effect Shift)と表記しています。

圧力を上げてレートを上げると、どんな問題がありますか?

平坦性の悪化と温度の上昇です。スラリーには平坦性の向上と研磨速度の確保という、相反する特性が同時に求められています。研磨時の摩擦熱で加工面が数十度温まることも多く、大型基板では中心部に熱がこもって中心部の研磨速度が上がり、平坦性に悪影響を及ぼします。

除去レートの面内分布はどう均しますか?

圧力の均一化と端部の受け方です。軟質パッドによる研磨ではパッドの復元力で加工面の端部に圧力が集中しやすく、対策にリテーナリングやテンプレートが用いられます。日立化成工業は、開発したCuメタル用研磨材で研磨速度600nm/min、研磨面内の均一性1σ=3.0%を得たとしています。

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