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CMP(化学機械研磨)とは

CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)とは、化学反応と機械研磨を組み合わせてウェーハ表面を平坦化する技術および装置です。 配線を多層に積むたびに表面を削り直し、次の層の出発点をそろえます。レートを上げるつまみはどれも平坦性か表面品質を差し出し、CMP後の待ち時間と洗浄は配線の信頼性へ跳ね返ります。CMPの出来は、化学と機械の配分を材料ごとにどう決めるかで決まります。

凹凸は層ごとに積み上がり、露光の焦点を面内でずらす

Section titled “凹凸は層ごとに積み上がり、露光の焦点を面内でずらす”

配線を1層作るたびに表面には凹凸が残り、その上へ作る次の層は凹凸を引き継ぎます。凹凸が残ったままリソグラフィを行うと面内で焦点がそろわず、パターンが崩れます。層を重ねるたびに表面を平坦へ削り直す工程が要るのはこのためです。CMPの最初の目的はインターレベル絶縁膜(ILD)の平坦化で、1980年代の初めに採用されました1。

化学で表面層を変え、パッドと砥粒が凸部から取り去る

Section titled “化学で表面層を変え、パッドと砥粒が凸部から取り去る”

典型的なCMPプロセスでは、研磨パッドで覆われた回転テーブルへウェーハを押し当て、コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーをウェーハとパッドの間へ供給します2。スラリーの化学作用で反応させた表面層を、パッドと砥粒が機械的に取り除きます。機械研磨だけであれば傷が入り、化学反応だけであれば形状が崩れるので、2つを組み合わせて平坦さと表面品質を両立させます。除去する表面の材料によっては、砥粒を含まないスラリーを使う場合もあります。東京精密のCMP装置も3、この化学と機械の複合作用で研磨します。

装置の構成と界面
装置の構成押し当てる回転スラリー界面の拡大ウェーハ表面の膜凸部パッドの動き反応層砥粒研磨ヘッドウェーハ研磨パッド回転テーブル
研磨ヘッドがウェーハを回転する研磨パッドへ押し当て、その間へスラリーを流します。スラリーの化学作用で変わった表面の反応層を、パッドと砥粒が凸部から機械的に取り去ります。

フジミインコーポレーテッドの森永均氏は、CMPに要る機能を材料除去、表面保護、汚染管理の3つに分けています。そのうえで、材料除去では機械と化学の作用が足し算だけでなく掛け算でも組み合わさり、相乗効果を生むとしています4。

化学は微小な粗さを下げ、うねりを取るのは機械側

Section titled “化学は微小な粗さを下げ、うねりを取るのは機械側”

森永氏は、サンドペーパ#800で前加工したアルミニウム合金AL5052の面で、薬液のみの化学研磨とCMPを比べました。研磨前の面はSa 272nm、P-V 3405nmです。リン酸79wt%と硝酸2.1wt%の水溶液で20μmを溶かす化学研磨ではSa 81nm、P-V 531nmまで下がります。コロイダルシリカと水酸化カリウム(pH 10)のスラリーとスエードパッドで15μm研磨すると、Sa 1nm、P-V 49nmへ届きます。粗さはZYGO NV9000で、視野100μm×100μm、XYピッチ0.1μmで測っています。

AL5052の表面粗さ
粗さ(対数目盛)1μm100nm10nm1nm研磨前化学研磨CMP3405nm531nm49nm272nm81nm1nmP-VSa
化学研磨でSaは272nmから81nmまで下がりますが、CMPは1nmまで届き、P-Vも49nmまで縮みます。うねりまで取れるのは、平らなパッドと砥粒が凸部から削る機械側の作用です。

差が出るのは溶け方のためです。薬液による溶解は活性な突起部から始まるので、微小な粗さは化学作用だけでも下がります。ところがうねりの凹部にも薬液が作用するため、長波長のうねり成分の除去と平坦性の改善は難しくなります。平らな定盤と砥粒で凸部から表層を強制的に取り去る機械側が、うねりには有利です。CMPスラリーの配合とCMPパッドの硬さは、どちらの側をどれだけ強めるかという配分そのものです。

除去レートは圧力・速度・時間の積で、残りはすべて係数kに入る

Section titled “除去レートは圧力・速度・時間の積で、残りはすべて係数kに入る”

研磨量RA\mathrm{RA}は、プレストン係数kk、研磨圧力pp、相対速度ν\nu、研磨時間ttの4つの積でRA=k⋅p⋅ν⋅t\mathrm{RA}=k\cdot p\cdot\nu\cdot t5と書けます。このプレストン式のうち、装置レシピから直接動かせるのはpp、ν\nu、ttの3つです。砥粒、パッド表面の状態、温度、界面を流れるスラリーは、すべてkkという1文字へ畳まれます。

森永氏はそのkkの中身を摩擦として測りました。荏原製作所のEPO-222を使い、研磨圧力5psi(35kPa)、定盤回転速度110rpmでシリコン酸化膜を研磨すると、研磨速度は砥粒と加工対象物の間の摩擦エネルギーとよく相関しました。摩擦エネルギーは定盤を駆動する電流値から換算し、シリカスラリーと酸化セリウムスラリーの研磨速度は0〜400nm/minの目盛りの上に並びます。摩擦は、作用する砥粒の個数、砥粒1個あたりの接触面積、転がりにくさの3つで増えます。球形より転がりにくい異形の砥粒は、摩擦エネルギーを増やして研磨速度を上げます。

管理の土台は、レート・均一性・選択比・平坦性の4指標

Section titled “管理の土台は、レート・均一性・選択比・平坦性の4指標”

SEAJ(日本半導体製造装置協会)は、CMP装置の用語をEPD、均一性、研磨レート、シンニング、スクラッチ、スラッジ、選択比、ダマシン、ドレッシング、Prestonの式、平坦性の11語にまとめています。土台になるのは次の4つです。

  • 研磨レートは、研磨前後の膜厚の差である研磨量を研磨時間で割った値です6。膜厚測定の精度がそのままレートの精度になります。
  • 均一性は、研磨レートの最大と最小の差、あるいは平均自乗誤差を研磨レートで割った値です。異なる研磨ヘッド間の均一性もあり、装置間の差はツールマッチングの対象になります。
  • 選択比は、同一スラリーで異なる材料を研磨したときのレート比です。材料AとBのレートをaa、bbとすると、A基準の選択比は 1:b/a1:b/a と書きます。
  • 平坦性は段差緩和性(Step Height Reduction Ratio)で表し、研磨前後の段差の差を研磨前の段差で割ったSHR(Step Height Ratio)を使います。グローバル平坦性とローカル平坦性を区切る領域の一般的な基準値は10μmです。

止めどきはEPDが決めます。EPDは研磨量が目標値へ達したこと、または近づいたことを自動で検出する機能で、理想的な研磨面を越えて削り込み、膜が薄くなった状態をシンニングと呼びます。装置側の重点はエンドポイントと測定機能へ移り、レシピ調整に時間を要するインライン測定よりエンドポイントが好まれます。

圧力・速度・砥粒・時間のつまみは、どれも何かと引き換え

Section titled “圧力・速度・砥粒・時間のつまみは、どれも何かと引き換え”

研磨圧力ppを上げると、プレストン式の1乗でレートが上がり、段差緩和性と摩擦熱を差し出します。研磨中の加工面は摩擦熱で数十度加温されることが珍しくなく、活性化エネルギーが51kJ/molの反応なら10℃程度の加温で化学作用が2倍程度促進されると、森永氏は示しています。加温で化学作用だけが過剰へ振れると、表面荒れや局部腐食が出ます。アルミニウム合金Al6063では、研磨時の温度を40℃から25℃へ下げるだけで表面荒れが大幅に改善しました。温度をそろえる手段は定盤のチラーとスラリー流量で、パッドの溝はスラリーの排出を促します。面内では、大型基板の中心に熱がこもってレートが上がります。

圧力を下げる側の装置は、低ストレス用に低面圧で設計されています。ITRS 2013の和訳は、より脆い材料で作られたより小さいチップを研磨するには、デバイスに損傷を与える最大応力を下げる必要があるとしています。脆い低誘電率膜への最大応力を下げるかわりに、レートとスループットを差し出す選択です。同じ和訳は、κ値が2.3未満のULK層間絶縁膜について、CMPスラリーや洗浄工程のダメージによるκ値の増大を最小に抑えることが低実効誘電率配線の成功の鍵だとしています。

相対速度ν\nuは定盤とヘッドの回転数で動き、上げると同じ圧力でもレートが上がります。差し出すのはスラリーの滞留時間と面内分布です。東亞合成の研磨条件は研磨盤回転数60rpm、森永氏のSi3N4の実測はヘッドと定盤がどちらも300rpmで、装置形式と対象で1桁ぶんの幅があります。下げる側では、界面へスラリーが行き渡る時間が伸びるかわりに、レートと1枚あたりの時間を差し出します。

スラリーの砥粒濃度と化学の比率も1本のつまみです。砥粒濃度を上げると作用点が増え、レートと粗さが同時に良くなる領域がありますが、粗大粒子の混入確率も上がります。粗大な砥粒や異物が混ざるとその1点へ圧力が集中し、スクラッチや凹凸状の欠陥が出ます。化学側へ振るとディッシングと腐食の管理が厳しくなり、機械側へ振るとパーティクルとスクラッチの管理が厳しくなります。導電液中で導電体を研磨する限り、電解腐蝕や光腐蝕は残り続ける課題です。

研磨時間ttとパッドの状態は連動します。目詰まりでレートが落ちた分を研磨時間で埋めると、削り込みの総量が増えてディッシングとエロージョンが進みます。時間を短く切る側では、残膜のばらつきが増えます。この配分はパッドコンディショニングの頻度と一体で決まります。

CMP後の銅の酸化が、配線の絶縁寿命を縮める

Section titled “CMP後の銅の酸化が、配線の絶縁寿命を縮める”

CMP界面は、BEOL絶縁破壊で最も懸念される箇所に常に入ります。CMPプロセス中、およびCMPと絶縁バリア成膜の間に起きる銅の酸化とイオン化がTDDB寿命を縮める主要因だという結果が積み上がり、銅CMP後の保持時間が長いほど絶縁破壊電圧が下がる測定もあります。途中まで加工したダマシン基板で残留銅の量と絶縁信頼性の関係を量で示した報告があり、残留銅の上限値は1平方センチメートルあたり10の12乗個(atoms/cm²)に設定されました。平坦さを買ったかわりに、CMP後の待ち時間と洗浄がそのまま信頼性のバジェットへ乗ります。

世代を追うごとに、ウェーハが通るCMPの回数は増える

Section titled “世代を追うごとに、ウェーハが通るCMPの回数は増える”

ILDの平坦化から始まったCMPは、各技術世代でステップ数を着実に増やしてきました。ダマシン法は、層間絶縁膜をエッチングして配線の溝を掘り、Cuなどの金属を堆積させてから、表面の余分な金属をCMPで除去・平坦化する手法です。SEAJは、微細な金属配線用薄膜の加工が要らなくなり、歩留まりを上げられるとしています。

CuとバリアのCMP
Cu堆積後Cu研磨バリア研磨ハードマスク研磨CuTaバリアハードマスク絶縁膜削る前の面
CuとバリアのCMPは1回で終わらず、Cu、バリア、ハードマスクの順に表面の層を1つずつ取り、溝の中の配線だけを残します。最後に形状と膜厚を合わせ込みます。

Cuとバリアの研磨は他の層より平坦化工程が多く1、Cuの研磨から、Taベースのバリア層、メタルハードマスク材料の研磨、最終の形状と膜厚の合わせ込みまで、複数段で回します。タングステンのCMPでは、パターンアレイの両端でエロージョンが深く進むEOE(Edge Over Erosion)が課題として残り、スラリーとパッドの開発で改善してきました。前工程の外でも、ウェーハを機械的に研削した後の裏面に残る薄いダメージ層を取る手段として、CMPはドライエッチやウェットエッチと並んで使われています。

装置は、洗浄機を組み込んだロータリー型のポリッシャー(Dry-in、Dry-out)が主流です。450mmへの移行では、エッジエクスクルージョン2mmで回せるハードウェア設計が挙がっています。Cu-CMPとSTIまで含めると、1枚のウェーハが前工程で通るCMPの回数は世代ごとに積み上がります。

この用語に対応する装置と製造メーカー

Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”

装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 5社/5family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22

出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。

CMPとは何ですか?

CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)は、化学反応と機械研磨を組み合わせてウェーハ表面を平坦化する技術および装置です。配線を多層に積むたびに表面を削り直し、次の層の出発点をそろえます。

CMPはどうやって平坦化しますか?

研磨パッドで覆われた回転テーブルへウェーハを押し当て、コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーをウェーハとパッドの間へ供給します。スラリーの化学作用で変えた表面層を、パッドと砥粒が凸部から機械的に取り去ります。

なぜ平坦化が要るのですか?

配線を多層に積むと、下の層の凹凸が上の層へ引き継がれるためです。凹凸が残ったままリソグラフィを行うと焦点が面内でそろわず、パターンが崩れます。

スラリーには必ず研磨剤が入っていますか?

材料によります。除去する表面の材料に応じて、砥粒を含まないスラリーを使う場合があります。ITRS 2013の配線章の和訳は、砥粒濃度を下げて化学反応を強める傾向と、砥粒レスの配合が出てくる可能性を挙げています。

CMPで起きる代表的な問題は何ですか?

削れ方の差から生じる形状のずれです。広い配線の中央がへこむディッシングと、配線が密な領域が全体的に低くなるエロージョンが代表例で、どちらも材料やパターン密度によって削れる速さが異なることに由来します。導電液中で導電体を研磨する限り、電解腐蝕や光腐蝕も課題として残ります。

CMP装置のメーカーはどこですか?

Applied Materials、荏原製作所、ACCRETECH(東京精密)、Hwatsingなどです。当サイトの装置カタログDBで、CMPに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。

除去レートは何で決まりますか?

研磨量RAはプレストン係数k、研磨圧力p、相対速度ν、研磨時間tの積 RA=k・p・ν・t です。装置側のつまみはp、ν、tの3つで、砥粒、パッド表面、温度、界面の流れはkへ畳まれます。

除去レートの均一性はどう測りますか?

研磨レートの最大と最小の差、あるいは平均自乗誤差を研磨レートで割った値で表します。同じ条件で別の研磨ヘッドを回したときのヘッド間均一性も指標です。

平坦性の規格はどう表しますか?

段差緩和性(SHR:Step Height Ratio)で表し、研磨前後の段差の差を研磨前の段差で割ります。グローバル平坦性とローカル平坦性を区切る領域の一般的な基準値は10μmです。

研磨圧力を上げるとどうなりますか?

プレストン式の上ではレートが1乗で上がり、段差緩和性と摩擦熱を差し出します。研磨中の加工面は数十度加温されることが珍しくなく、活性化エネルギーが51kJ/molの反応なら10℃の加温で化学作用が2倍程度促進されると、フジミインコーポレーテッドの森永均氏は示しています。

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