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オーバーポリッシュとは

オーバーポリッシュとは、CMPでストッパ膜や下地が露出した後も研磨を続けて、面内に残った削り残しを除去する操作です。 削り残しを除くのと引き換えに生じる過研磨をどこまで許すかが、CMPのレシピを左右します。面内で研磨レートがばらつくほど、遅い場所を露出させるまでに速い場所を削り続ける時間が延び、その分だけディッシングとエロージョンが増えます。

終点を「すべてのストッパ膜が露出した時点」に取ると、速い場所は削られ続ける

Section titled “終点を「すべてのストッパ膜が露出した時点」に取ると、速い場所は削られ続ける”
オーバーポリッシュ区間
残っている膜厚研磨時間 →ストッパ膜の上面速い場所が露出全面が露出=終点遅い場所速い場所オーバーポリッシュ区間速い場所の過研磨
速い場所がストッパ膜に達してから、遅い場所が達する終点までの区間がオーバーポリッシュで、その間も速い場所は削られ続けます。

日立化成工業は、STI形成CMPの研磨特性を測る際、研磨の終点をすべてのストッパ膜が露出した時点としました1。Cu配線でも、絶縁膜の上のCuとバリア膜をすべて除くため、ダイ内のパターンをわずかに過研磨します2。この終点の取り方が、オーバーポリッシュの原因です。

面内の研磨レートの差は、熱と圧力から来ます。研磨の摩擦で摩擦熱が生じ、加工面が数十度温まることも多く3、大型基板では熱が中心にこもりやすいため、中心の研磨速度が上がって平坦性が崩れます。柔らかいパッドでは戻ろうとする力で加工面の端部に圧力が集中しやすく、そこにはリテーナリングやテンプレートを使います。中心は熱で、端部は圧力で研磨が速くなるので、均一性が悪化すると、必要なオーバーポリッシュ時間が長くなります。

延ばした時間は、ディッシング、エロージョン、酸化膜の削れとして残る

Section titled “延ばした時間は、ディッシング、エロージョン、酸化膜の削れとして残る”

荏原製作所の辻村学氏は、皿状に窪む側をディッシング、配線と配線のあいだの酸化膜が削れる側をエロージョンと呼び分けています。同氏はCMPの適用箇所を、ストッパ膜を敷く埋込みCMPプロセスと4、均質膜をそのまま削るブラインドCMPプロセスに大別しています。Si₃N₄などのストッパ膜を敷くSTIは前者で、ストッパ膜内の均一性とディッシングの低減が問われ、層間絶縁膜は後者で段差低減性能が問われます。均質膜を削る後者では、追い研磨の終点を時間だけが支配します。

エロージョンは微細パターンで発生し、ストッパ膜とSTI部がともにえぐられるように除去される現象です。ディッシングは、幅広パターンの中央が皿状にへこむ欠陥です。Cu配線では、過研磨とディッシングでCu配線が薄くなり、電気抵抗が上がります2。オーバーポリッシュ時間を延ばすと酸化膜も過研磨され、面の平坦性が悪くなることがあります。ダイの中に残る凹凸は、露光するショット領域の一部を焦点深度から外すおそれがあります。同じ論文は、サブミクロン幅のCuのディッシングは20 nm未満で、面の不均一への寄与は酸化膜の過研磨より小さいと観察しています。

Sematec 864のSTI用テストパターンでは、初期段差600 nm、研磨時間140秒で、100 µmのLine/Spaceでの残留段差10 nm、トレンチ酸化膜のばらつき25 nm、ストッパ膜のばらつき5 nmでした。トレンチ酸化膜のばらつきは主に幅広パターンのディッシングから、ストッパ膜のばらつきはSiN膜の研磨速度とディッシングの両方から生じます。この内訳が、オーバーポリッシュの副作用を測る物差しになります。

選択比で削れを抑えられるのは、段差ができる前まで

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保護膜が効く所と効かない所
細かいパターン幅広パターンパッドSiNの露出で止まるパッド脇に圧力が集中削られるSiN幅100 µm超保護膜SiN埋めた酸化膜Si基板
細かいパターンではSiNの上の保護膜が研磨を止めますが、幅100 µmを超えるパターンがディッシングすると、その脇のSiNに圧力が集中し、そのSiNが削られます。

シリカまたは酸化セリウムの研磨材を添加剤なしでSTIに使うと、SiO₂とSiNの研磨速度比は1対3から1対5程度にとどまり、SiNが削れすぎます。最悪の場合はストッパ膜がなくなって素子部までえぐられ、動作不良になります。陰イオン性の有機化合物を入れたCMPスラリーをSiN面に作用させると、砥粒の機械的な作用を抑える保護膜ができ、日立化成の研磨材ではSiNの研磨速度が10 nm/min以下まで下がりました。これで微細パターン上のエロージョン、つまりストッパの過研磨を抑えられます。

セリア粒子用の添加剤は被研磨膜に吸着する性質から、2つの働きを同時に持ちます5。凹凸のあるSiO₂膜を平坦に研磨する働きと、STI工程の研磨停止膜であるSiN膜が露出したところで研磨速度を下げる働きです。同じ仕組みは圧力でも説明できます。有機高分子を多く入れるほど、それを剥がすのに必要な圧力が高くなるので、添加量を選べば、段差が残っている間は凸部だけが削れ、平坦になった時点で研磨速度が下がるように調整できます。

ただし、SiNの研磨を抑える研磨材に替えた後でも、幅が100 µmを超えるパターンではディッシングが起き、その脇のSiN膜が削られた例がありました。幅広パターンにディッシングができると、その脇だけに圧力が集中し、SiNの研磨を抑えられなくなります。段差を消すために働いていた保護膜が、段差ができた後は剥がされてしまいます。選択比に頼って追加研磨を延ばせるのは、この状態になる前までです。

Cu配線では、1段目の段差を2段目の選択比で回復させる

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Cu配線の2段研磨
1段目 Cuスラリー14.0 kPa、Cu 850 nm/min2段目 バリアスラリー10.5 kPa、Cu 27、TaN 95 nm/min50 nm未満10 nm未満100/100 µm9/1 µm10 nm未満5 nm未満100/100 µm9/1 µmCu配線絶縁膜
1段目で太幅配線に50 nm未満の皿ができても、TaとSiO₂をCuより速く削る2段目で面全体が下がり、皿は10 nm未満、細密部のエロージョンは5 nm未満まで浅くなります。

Cu-CMPでは、この2段構えを数値で追えます。日立化成のCu用スラリーとバリアメタル用スラリーによる2段階研磨では、Cu研磨側は圧力14.0 kPaでCu 850 nm/min、TaNは1 nm/min未満、100/100 µmのディッシングは50 nm未満、9/1 µmのエロージョンは10 nm未満で、Cu残りはゼロです。バリア研磨側は圧力10.5 kPaでCu 27、TaN 95、SiO₂ 90、SiOC 31 nm/minで、ディッシング10 nm未満、エロージョン5 nm未満です。同社が最終の到達点に置くのは、太幅配線側で10 nm以下、細密配線側で数nm以下という2つの上限です。前者は100 µm幅でのディッシング、後者はエロージョンを指します。

バリアメタルの研磨ではCuよりTaとSiO₂を速く削るため、面全体が下がってディッシングが浅くなります。CuとTaとSiO₂の比を1対3対3程度に合わせたときに、仕上がりが最も平坦になります。その代わり、2種類のスラリーと2段分の時間がかかります。ロジック、メモリー、イメージセンサーではパターンの粗密が異なるため、この選択比は顧客ごとに調整する必要があります。

時間、選択比、圧力、面内分布、レイアウトの5つで過研磨を調整する

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オーバーポリッシュ時間を延ばせば面内のCu残りやストッパ膜の未露出はなくなる一方、延ばした分はそのままディッシングとエロージョンになり、ストッパ膜の消失に近づきます。短くすると段差は浅くて済みますが、リワークや次工程での削り残しの原因になります。止めどきを正確にするため、MITの論文は研磨段階ごとのパターン面の反射率の変化から終点を検出する手法を開発し2、過研磨を最小にすることを狙いました。

選択比を上げると、同じ追加研磨時間でもストッパの削れが減ります。上げすぎると、保護膜が残るという問題があります。レゾナックは、ゲート形成工程を例に、絶縁膜を速く削りながらポリシリコンなどのストッパ材料を削らずに残す選択研磨性を、ナノセリアスラリーの特長としています6。凹部に強く残る保護膜ほど、研磨後の表面に残ります。同じMITの論文は、材料の選択比、パターンの線幅、パターンの面積率がディッシングと過研磨の速さに与える影響を、半経験的なモデルで調べています。

圧力とパッドの剛性は、追加研磨による過研磨の量を左右します。平坦化性能は、荷重が低いほど、相対速度が速いほど、パッドの剛性が高いほど良くなることが分かっています。ディッシングとそれに続くストッパの過研磨への対策は、凹部を保護する作用を研磨材に持たせること、パッドを硬くして変形を減らすこと、設計で幅広パターンをなくすことの3つです。MITの論文も、粒子の大きさ、粒子の硬さ、パッドの剛性を使って、除去速度を上げ、SiO₂とCuの選択比を高め、面の凹凸を減らす最適化の方針を提案しています。圧力を下げれば過研磨は減りますが、レートが下がって研磨時間が延び、プレストン式のプレストン係数の変動の影響を受ける時間も長くなります。

面内分布を均一にすると、必要な追加研磨時間そのものが短くなります。温度の均一化策は研磨定盤のチラー機能の活用、スラリー流量の最適化、パッドへの溝構造形成によるスラリーの排出促進です。そのためには、CMPパッドの溝設計とパッドコンディショニングの管理が必要です。旭ダイヤモンド工業は、パッドのコンディショニングをCMPの研磨特性を安定させる重要な工程と位置づけ、25年以上コンディショナを供給してきたとしています7。

レイアウトも追加研磨時間に影響します。段差解消性の低い研磨材では、大面積パターンをそのまま研磨して段差を10 nmまで下げるのは困難です。そこで、ダミーパターンの挿入や、逆パターンで大面積部分をエッチングで除去する工程を追加します。リバースマスクはコストを上げ、ダミーパターンを入れられる場所も限られるため、こうした追加工程を省いて、段差解消性能の高い酸化セリウム研磨材に移る流れが広がっています。

追い研磨を延ばすと、スクラッチに晒される時間も延びる

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研磨時間が長いほど、スラリー中の粗大粒子や研磨副生物がウェーハと接触する機会は増え、スクラッチに晒される時間も延びます。オーバーポリッシュ時間の上限を決めるときは、膜厚測定で残膜を測るのと同時に、欠陥検査の数も並べて追う運用になります。

オーバーポリッシュとは何ですか?

ストッパ膜や下地が露出した後も研磨を続けて、面内に残った削り残しを除去する操作です。日立化成工業はSTI形成CMPの研磨特性を測る際、研磨の終点をすべてのストッパ膜が露出した時点としました。すべての場所が露出する時刻は、面内で最も研磨の遅い場所で決まります。

なぜオーバーポリッシュが必要になるのですか?

面内で研磨レートに差があるためです。研磨時の摩擦熱で中心部に熱がこもると中心部の研磨速度が上がり、平坦性に悪影響を及ぼします。中心と外周で終点の時刻がずれるので、遅い場所が露出するまでの間、速い場所は削られ続けます。

オーバーポリッシュを長くすると何が悪化しますか?

ディッシングとエロージョンです。ディッシングは配線部分が皿のように過研磨される現象、エロージョンは配線間の酸化膜が過研磨される現象です。エロージョンは微細パターンで発生し、ストッパ膜とSTI部がともにえぐられるように除去されます。Cu配線では、薄くなった分だけ電気抵抗が上がります。

ストッパ膜があれば、どこまで削りすぎを抑えられますか?

選択比で決まります。シリカまたは酸化セリウムの研磨材を添加剤なしでSTIに使うと、SiO₂とSiNの研磨速度比は1対3から1対5程度にとどまり、最悪の場合はストッパ膜がなくなって素子部までえぐられ、動作不良になります。陰イオン性の有機化合物を加えると、SiNの研磨速度は10 nm/min以下に下がりました。

選択比を上げれば、追い研磨をどこまでも伸ばせますか?

段差ができると効かなくなります。幅広パターンにディッシングができると、その脇に圧力が集中してSiNの研磨を抑えられなくなり、段差が残っている間は働いていた保護作用が失われます。

できてしまった段差はどう回復させますか?

Cu配線では、次の段で回復させる方法があります。Cu-CMPでできた段差は次の段のバリアCMPの選択比で回復でき、CuとTaとSiO₂の比を1対3対3程度に合わせたときに仕上がりが最も平坦になります。その代わり、2種類のスラリーと2段分の時間が必要です。

オーバーポリッシュ量は何を測ると分かりますか?

残留段差とストッパ膜の残り厚です。Sematec 864のSTI用テストパターンでは、初期段差600 nm、研磨時間140秒、100 µmのLine/Spaceでの残留段差10 nm、トレンチ酸化膜のばらつき25 nm、ストッパ膜のばらつき5 nmという値が得られており、ストッパ膜のばらつきはSiN膜の研磨速度とディッシングの両方から生じます。

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