焦点深度とは
焦点深度とは、露光でパターンの寸法が規格に収まる、ウェーハ表面の高さの幅です。 その幅の中に表面が入っていればパターンは仕様どおりに出来上がり、幅を超えれば同じ設計でも寸法が動きます。解像度を上げるために開口数を大きくすると、焦点深度は開口数の2乗に反比例して小さくなります。ウェーハの平坦度や裏面の異物など露光装置以外の要因もこの幅を使うため、微細化するほど余裕が減ります。リソグラフィの勝負は、細く描く力と高さの余裕の取り合いです。
合格とする寸法の幅が、数値そのものを決める
Section titled “合格とする寸法の幅が、数値そのものを決める”焦点深度は、パターンの寸法の規格の上下限に対応する露光焦点の深さで、例えば寸法の±10パーセントの規格を満たすフォーカスの範囲1の広さで表します。そのため数値は、レンズの仕様と、合格とする寸法ずれの幅の両方から得られます。合格の幅を狭くとれば、同じ装置でも焦点深度は小さくなります。層ごとに要求が異なれば、同じ露光機でも層ごとに焦点深度が異なります。
解像度は開口数の1乗、焦点深度は2乗に反比例する
Section titled “解像度は開口数の1乗、焦点深度は2乗に反比例する”深さの大きさは、光の波長とレンズの開口数で決まります。レイリーの式では、解像度は、焦点深度は1で表され、とはプロセス定数です。
解像度は開口数の1乗に反比例し、焦点深度は2乗に反比例するので、開口数が大きくなると、解像度が小さくなる以上に焦点深度は小さくなります2。この式に開口数を2倍にした場合を当てはめると、解像度の値は2分の1、焦点深度は4分の1です。細かく描く能力を1段買うたびに、高さの余裕はそれより速い割合で減っていきます。微細化が進むとウェーハの平坦性への要求も厳しくなり、CMP技術が用いられるようになりました。
幅を使い切るのは、ウェーハの表と裏の凹凸
Section titled “幅を使い切るのは、ウェーハの表と裏の凹凸”焦点の合う範囲を超えた場所では、パターンの寸法が規格の上下限を超えます。同じ露光の一区画の中でも、表面が高い場所と低い場所で仕上がりが変わり、設計は1つでも出来上がりはウェーハの中の場所ごとに異なります。
ウェーハに必要な平坦度は、露光装置の焦点深度から逆算されます。露光時のウェーハ表面の凹凸は、ウェーハ自身の平坦度、デバイス工程で生じる段差、リソグラフィプロセスのばらつき、ウェーハチャックの平坦性などの影響を受け、これらをすべて合わせたばらつきを焦点深度の範囲内に収める必要があります3。65ナノメートル世代に向けては、経験的にウェーハ自身の平坦度は焦点深度の3分の1から4分の1以下が必要とされ、デザインルールとほぼ同じ値になります。
ウェーハ裏面のパーティクルも、リソグラフィのときにウェーハ面の上下位置を変動させるため問題になっています。リソグラフィ装置の焦点深度は年々改良され、ウェーハの保持方法もピンで支える方法に変わってきましたが、ITRS2011は2011年以降のリソグラフィの基準を、100ナノメートルの粒子でウェーハ1枚あたり200個と定めています。ウェーハの裏に付いた粒子が、表のパターンを崩します。
焦点深度は、層ごとにフォーカスと露光量を振って実測する
Section titled “焦点深度は、層ごとにフォーカスと露光量を振って実測する”手順は、フォーカスと露光量を意図的に振って露光し、出来上がったパターンの寸法を測ることです。寸法とフォーカスの関係をCDフォーカスカーブと呼び、CDフォーカスカーブから寸法の規格の上下限に対応する露光量とフォーカスをプロットしたときのフォーカスマージンと露光量マージンを、プロセスウィンドウと呼びます1。寸法への要求が比較的緩い層では、寸法の±10パーセントの規格を満たす焦点深度と露光量裕度で表すことが多く、焦点深度はこのウィンドウの横幅にあたります。
露光領域内の焦点位置のばらつきは焦点位置精度と呼びます。ウィンドウの広さとは別に、実際に露光する面の中で焦点がどれだけ揃っているかも測る必要があります。
幅を広げる手は、照明とマスク、平坦化、露光の分割の3つ
Section titled “幅を広げる手は、照明とマスク、平坦化、露光の分割の3つ”1つ目は照明とマスクです。解像限界に近いパターンの解像性と焦点深度を上げる手法には、斜入射照明、位相シフト、SMO、高解像レジストの採用が含まれます。光軸の中心から外れた位置に絞りを入れてレチクルに斜めに光を入射させる変形照明で、解像度と焦点深度が向上します1。絞りの形には輪帯照明、ダイポール照明、四重極照明があります。位相シフトマスクも、光学コントラストを改善して解像性と焦点深度を上げます。代わりに計算の時間とコストが増えます。
偏光照明とダイポール照明を組み合わせた開口数1.30の液浸露光で39ナノメートルのラインアンドスペースを解像し、800ナノメートルという比較的大きな焦点深度を得た実験例もあります4。液浸露光は、波長を液体の屈折率で割った等価波長で露光する方式と理解でき、その波長に相当する解像力と焦点深度が得られます。自由な形の補助パターンを使えば焦点深度は広がる一方で計算時間が長くなり、現実的な解から遠ざかるため、補助パターンの種類の選択はコストと性能のトレードオフになります。
2つ目は下地を平坦にすることで、CMPが広く使われるようになった理由の1つがここにあります。レジストの下に敷く下層膜にも平坦化の効果があり、多層レジストプロセスはレジスト表面を平坦化して解像力を向上させる方法です。露光装置の焦点深度を広げにくい場合は、ウェーハ表面の凹凸を減らします。
3つ目は、1回の露光で作るのをやめることです。2012年に量産が始まる32ナノメートル世代では、超解像技術だけでは焦点深度とパターン解像度が不足するため、マスクを2枚以上使うダブルパターニングが提案されています。工程数と重ね合わせの負担が増える代わりに、1回の露光の要求を緩められます。
ニコンは、露光装置の性能を左右する技術として、投影レンズの解像度、重ね合わせ精度、スループットの3つ5を挙げています。焦点深度は、この3つのどれを取りにいっても跳ね返ってきます。露光装置を選ぶ場面でも、工程を組む場面でも、同じ幅の取り合いが続きます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”焦点深度とは何ですか?
露光でパターンの寸法が規格に収まる、ウェーハ表面の高さの幅です。パターンの寸法のスペックの上下限値に対応する露光焦点の深さにあたります。
焦点深度の数値は何で上下しますか?
合格とする寸法ずれの幅です。例えば寸法の±10パーセントのスペックを満たすフォーカスの範囲で表し、合格の幅を狭くとれば、同じ装置でも焦点深度は小さくなります。
焦点深度は何によって決まりますか?
光の波長とレンズの開口数です。レイリーの式では、焦点深度はプロセス定数k2に波長を開口数の2乗で割った値を掛けたものです。解像度は開口数の1乗に反比例するため、細かく描くほど深さは速く失われます。
深さが不足すると、現場では何が起きますか?
ウェーハ表面の高さがその幅を超えた場所で、パターンの寸法が規格の上下限を超えます。同じ設計でも、ウェーハの中の場所によって仕上がりが変わります。
何がその幅を使ってしまうのですか?
露光時のウェーハ表面の凹凸は、ウェーハ自身の平坦度、デバイス工程で生じる段差、リソグラフィプロセスのバラツキ、ウェーハチャックの平坦性などの影響を受けます。これらをすべて合わせた凹凸を、焦点深度の範囲内へ収める必要があります。
どうやって測るのですか?
フォーカスと露光量を振って、出来上がった寸法を測ります。そこから得られるフォーカスマージンと露光量マージンをプロセスウィンドウと呼び、寸法の±10パーセントのスペックを満たす焦点深度と露光量裕度で表すことが多いです。
焦点深度を広げる方法はありますか?
照明とマスクを変える方法があります。変形照明や位相シフトマスクで解像度と焦点深度が向上しますが、計算の時間とマスクの費用が増えます。液浸露光は、液体の屈折率で割った短い等価波長に見合う焦点深度を得られます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”6件を表示
- 1SEAJ:半導体製造装置用語集(リソグラフィ)seaj.or.jp abcd
- 2電子情報通信学会 知識ベース:10群2編3章 プロセス要素技術ieice-hbkb.org ↩
- 3日本半導体歴史館:65ナノ時代のシリコン材料技術shmj.or.jp ↩
- 4SEAJ:半導体製造装置技術ロードマップ リソグラフィ 2012年版seaj.or.jp ↩
- 5ニコン:露光から計測・検査までjp.nikon.com ↩
- 6SEAJ:半導体製造装置技術ロードマップ ウェーハプロセス 2012年版seaj.or.jp