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補助パターン(SRAF)とは

補助パターン(SRAF)とは、解像限界より細い寸法でフォトマスクへ添える、本体パターンの解像を助けるための図形です。 密なパターンに合わせた照明では、孤立したパターンの焦点深度や露光余裕が小さくなります。補助パターンはこの余裕を補いますが、ウェーハ上に転写されない細さに抑える必要があります。効かせたい太さと写らない細さの間で寸法が決まり、その細い図形がマスクの規格とデータ量を押し上げます。

本体から離し、像を結ぶ手前の細さで添える

Section titled “本体から離し、像を結ぶ手前の細さで添える”

補助パターンは、パターンをウェハに投影するときにエッジを際立たせて解像度を上げるため、パターンの周辺に設ける限界解像度以下の図形です1。フォトマスクへ配置しても、ウェーハで像になる手前の細さにとどめ、リソグラフィ余裕度をいっそう向上させるために形成します2。形としては、マスク上の狙った位置に置く細いクロムの切れ端で、写る像をくっきりさせます3。

ここがOPCの補正図形との違いです。OPCは、変形を見込んでマスクパターンに図形を付加したり、パターンの疎密に応じて寸法を補正したりする技術で4、角が丸くなる部分をはみ出させるコーナーセリフの追加5がその例です。セリフは本体につながって、本体を写すために入れます。補助パターンは本体から離して、像を結ぶ手前の細さで添えます。

マスクの図形と光の強さ
本体だけ補助パターンありマスク本体補助補助像になる強さウェーハ上の光の強さ縁が急になる補助の落ち込みは像にならない
補助パターンを添えると本体の像の縁が急になります。補助パターン自身の光の落ち込みは像になる強さに届かず、ウェーハには本体だけが写ります。

Siemensは、補助パターンが像の対数傾斜(ILS)を高め6、それによってラインエッジラフネスを減らし、焦点深度を広げるとしています。同社は補助パターンを、直線だけのマンハッタン型でも曲線のマスクでも、DUV用でもEUV用でも、マスクの基本的な構成要素としています3。

光近接効果は半径約2µmの配置で決まり、補助パターンはその配置を変える

Section titled “光近接効果は半径約2µmの配置で決まり、補助パターンはその配置を変える”

露光光はマスクで回折して干渉縞を作ります。NN次の干渉縞の角度は sin⁡θN=N×λ2HP\sin\theta_N = \frac{N \times \lambda}{2\mathrm{HP}} で表され、ハーフピッチHP\mathrm{HP}が小さくなるほど投影レンズに取り込まれる干渉縞の本数が減ります。開口に入らない次数が欠けると、角の丸まり、ライン端部の後退、ピッチの違いによる寸法ずれが生じます。これらが光近接効果(OPE)で、OPEは対象パターンを中心とした半径約2µmの範囲のパターン配置で決まります2。

光近接効果の届く範囲
約2µm本体補助パターン光近接効果を決める範囲範囲の外の図形範囲の外の図形
光近接効果は、対象の本体から半径約2µmの中の配置で決まります。補助パターンはこの円の中に置かれ、本体の周りの配置を書き換えます。

補助パターンが変えているのは、この半径約2µmの範囲の配置です。孤立したラインの隣に解像限界より細い線を加えると、本体の周りの周期が変わります。解像度の式には手を加えずに、本体の近くの配置だけを変える方法です。

解像限界に近いピッチのラインアンドスペースを作るには二重極(ダイポール)照明が必要ですが、その照明形状では孤立パターンなどをラインアンドスペースと同時に形成することが難しくなります。1枚のレチクルには、密なラインも孤立線も載っています。照明条件を密なパターンに合わせたまま孤立パターンも形成するには、マスク側で対応する必要があります。

効果はプロセスウィンドウで測り、配置は計算で検証する

Section titled “効果はプロセスウィンドウで測り、配置は計算で検証する”

プロセスウィンドウは、CDフォーカスカーブから寸法スペックの上下限に対応する露光量とフォーカスをプロットしたときのフォーカスマージンと露光量マージンです1。CDへの要求が緩い層では、寸法の±10%を満たす焦点深度と露光量裕度で表すことが多くあります。補助パターンを足した結果は、焦点深度とプロセスウィンドウがどれだけ広がったかで測り、仕上がりの寸法はCD-SEMで追います。

配置した後の検証は計算で行います。計算機リソグラフィは、リソグラフィプロセスの転写性能を予測してOPCの計算やSB(Scattering Bar)の生成を検証・最適化する技術で7、マスク上の全パターンの転写性能を確保します。モデルベースのOPCが広く採用され、SBも自動生成され、生成したマスクパターンの転写性を検証して、マスク全領域で転写裕度を保証します。

市販のツールは、写ってしまった補助パターンとマスクの製造ルールの両方を扱います。Siemensの曲線用ツールCalibre nmCLSRAFは、利用者が定義するか、ILTのシミュレーション結果から抜き出したテンプレートで補助パターンを作ります3。生成の途中で、補助パターンを入れる最小のオフセットや最小の長さといったマスクルール(MRC)の値を評価し、整理の最後にMRCに違反しない補助パターンを出力するとしています3。同じ系列のCalibre nmCLOPCは、補助パターンの周りや、アンチSRAFの周りの穴に出た転写を見つけて補正し3、補正後の形が内部のMRCに違反すれば、違反した部分を切り、必要なら形ごと消すとしています3。シリコンフォトニクス向けには、補助パターンの被覆と隙間の抑制という追加の要求に合わせた専用の流れを組めるとしています3。

調整する条件は、太さ・適用範囲・照明との同時最適化の3つ

Section titled “調整する条件は、太さ・適用範囲・照明との同時最適化の3つ”
  • 太さです。ウェーハ上で像を結ばないという条件が、太さの上限になります。細くすれば上限から離れますが、その分電子ビームマスク描画とマスク検査で描画・検査する図形が細くなります。
  • 適用する層と自動発生の範囲です。JEITAの平成19年度報告の技術表は8、マスクの行を、クリティカル層のモデルベースOPCとゲート層の補助パターンから始め、ベクトルシミュレーションを伴うモデルベースOPCへ補助パターンと偏光補正を加える段に進めています。適用を広げれば余裕の要る層まで届き、狭めればマスクへ渡すデータと検証の対象が軽くなります。
  • 照明と同時に最適化するかどうかです。照明内の光源1つずつの輝度を個別に制御する東芝の新機能とSMOを組み合わせると、露光するすべてのパターンに余裕を最大限に残す輝度の配分が決まり、同時に補助パターンの配置も決まります。SMOで最適化すれば照明とマスクが1つの解になり、マスクだけで最適化すれば照明は固定のままで、得られる余裕はマスク側の分に限られます。

EUVでは、補助パターンを向きとスリットの位置で変える場合がある

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Siemensは、EUVリソグラフィの5nmノード以降では補助パターンが必須になる可能性が高いとみています6。EUVは斜めから照明し、影の出方がスリットの中で変わるため、縦と横の両方向に非対称な補助パターンが必要になる場合があり、スリットの位置ごとに別の補助パターンが要ることもあります6。

Siemensのツールでは、Calibre pxOPCが非対称な補助パターンを作り、焦点深度、ILS、またはその組み合わせを目標に調整できるとしています6。Calibre nmSRAFは、pxOPCの結果をテンプレートにしてルールベースの補助パターンを作り、非対称にも置けるとしています6。

マスク上だけの図形にも、最小幅と寸法直線性の規格が付く

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JEITAの平成19年度報告のフォトマスク要求表では、4倍マスクを前提に、2007年の欄でマスクの名目寸法が170nm、主パターンの最小寸法が119nm、補助パターンの最小幅が85nmです。名目寸法はウェハのレジスト上の最小寸法にマスクの縮小倍率を掛けたもので、補助パターンの最小幅は、マスク上でウェハに転写されない図形の最小幅です8。ウェハ側の同じ欄のレジスト上のMPUゲート寸法は42nmです。85nmを4で割ってウェハ換算すると約21nmで、ゲート寸法の約半分になります。2022年の欄では、主パターンが21nm、補助パターンが15nmまで小さくなります。

マスク上の寸法の規格
名目寸法170 nm主パターン119 nm21 nm補助パターン85 nm15 nm2007年の欄2022年の欄4倍マスク上の寸法
4倍マスク上で、補助パターンの最小幅は2007年の欄で85 nm、2022年の欄で15 nmです。主パターンと同じ尺度で、マスク上だけの図形にも寸法の規格が付きます。

寸法直線性は2007年の欄で10.4nm、2022年の欄で1.8nmで、直線性を測る寸法の範囲は最小の補助パターンから始まります。

1層分の非圧縮データをパターン発生装置へ渡すときの想定最大サイズは、2007年の欄で413GB、2022年の欄で13,209GBで、約32倍です。世代ごとに伸びるこのデータの中で、マスクへ足した図形は描画と検査の対象になります。

寸法の許容幅も、マスク側に厳しく影響します。ウェハ上のCD誤差はマスク上のCD誤差に比例し、MEEFがその比例定数です。MEEFが1を超えると、ウェハのCD均一性バジェットを守るためにマスクのCD均一性の要求が厳しくなります。表のMEEFは2007年の欄で、孤立ライン1.6、密なライン2.2、コンタクト3.5です。補助パターンを増やすほどマスクに載る図形が増え、その1本ずつがCD均一性バジェットの中で守るべき寸法を持ちます。

設計ルールは、補助パターンを許す段から制限が累積する

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マスクの行を引いた技術表では、設計ルールの行がOPCと位相シフトマスク、補助パターンを許すところから始まります。続いてピッチと向きの制限、OPCとの相性と転写可否を検証したライブラリセル、格子上への配置、使える図形の限定へと、累積で制限が増えます。デザインルールチェックへ落ちてくる制限は、補助パターンを添える余地との引き換えです。同じ表のk1k_1の欄は0.48〜0.52から0.18〜0.28までを並べています。

余裕を広げる最適化ほど、計算とマスクのコストが重くなる

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JEITAの平成21年度報告は、プロセスマージンを最大限に広げる方向として照明もマスクも制限を外してピクセル単位で設計する方法を挙げ、ハーフピッチ45nm以下ではマスクの三次元効果を計算へ取り込む必要があり、負荷が非常に高いとしています。補助パターンを平らな図形として計算できる範囲を越えると、断面の形まで計算の入力になります。

照明とマスクに設計パターンも加えた東芝のトータル最適化では、リソグラフィ余裕度が約1.5倍に広がった例があります。この最適化では調整できる因子の数が膨大になるため、品質工学的手法で余裕度を左右する重要な因子だけを抽出し、多変数最適化アルゴリズムで各因子を決める手法が構築されました。

マスクの負担を度外視するインバースリソグラフィやピクセル位相マスクは、付加価値の高いロジックデバイスで検討され、ハーフピッチ40nmの実現に迫っていると考えられています9。一方でJEITAの平成20年度報告は、コスト負担とマスク精度の限界から、広く使われる技術として普及するかは不透明だとしています。マスク上だけの図形をどこまで加えられるかは、マスクのコストで決まります。マルチパターニングに切り替えるか、1回の露光でマスクの図形を加えて対応するかの判断も、同じコストの比較で決まります。

補助パターン(SRAF)とは何ですか?

フォトマスクの本体パターンの周りへ添える、解像限界より細い図形です。パターンをウェハへ投影するときにエッジを際立たせて解像度を上げるために設け、ウェーハ上では像を結ばせません。

OPCの補正図形とは、どこが異なりますか?

本体につながるかどうかと、ウェハ上で像を結ぶかどうかです。OPCの例であるコーナーセリフは、角が丸まるところをはみ出させる図形で、本体の一部として像を結びます。補助パターンは本体から離し、ウェーハで像になる手前の細さで作ります。

なぜ像を結ぶ手前の細さで添えるのですか?

本体の周りの状況を入れ替えるためです。光近接効果は対象パターンを中心とした半径約2µmの範囲のパターン配置で決まり、補助パターンはその範囲の中の配置を書き換えます。

どれくらいの細さですか?

JEITAの平成19年度報告のフォトマスク要求表は、4倍マスクを前提に、2007年の欄でマスク上の主パターン最小寸法を119nm、補助パターンの最小幅を85nmとしています。2022年の欄では21nmと15nmです。

誰が、どこで配置するのですか?

マスクデータを作る計算のなかで配置します。計算機リソグラフィはOPCの計算とSB(Scattering Bar)の発生を検証して最適化し、SBも自動発生させて、発生したマスクパターンの転写裕度をマスク全領域にわたって保証します。

添えると何が増えますか?

マスクへ載る図形が増え、その1本ずつに寸法の規格が付きます。寸法直線性を測る寸法の範囲は最小の補助パターンから始まり、JEITAの平成19年度報告は1層分の非圧縮マスクデータ量を2007年の欄で413GB、2022年の欄で13,209GBと見通しています。足した図形は、この量の中で描画と検査の対象になります。

照明条件とはどう関係しますか?

一緒に決まります。東芝は、光源1つずつの輝度を個別に制御する機能とSMOを組み合わせると、余裕を最大限に残す輝度の配り方と補助パターンの配置が同時に決まるとしています。

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