k1係数とは
係数とは、レイリーの式 に入るプロセス定数です。 波長と開口数NAは装置で決まり、 はその装置をどこまで使いこなしたかを表します。同じ装置のまま線を細くできる変数は だけで、その代わりにパターンごとの作り込みを払います。
同じ装置でも、k1 を下げた分だけ線は細くなる
Section titled “同じ装置でも、k1 を下げた分だけ線は細くなる”では、が解像性、が波長、がレンズ開口数で、 はプロセス定数です1。ASMLは を、チップ製造工程の多くの要因で決まる係数2と位置づけています。照明の形、フォトマスクの作り、レジストの切れ味が、この一つの数に入ります。
EUVの 13.5nm の光と NA 0.33 の装置に当てはめると、 を 0.80、0.60、0.40、0.25 と下げるにつれ、線幅は約 33nm、25nm、16nm、10nm と縮みます。下げる先には壁があり、ASMLはリソグラフィの物理的な下限を としています2。単純な結像にも下限があり、その先は照明・マスク・レジストの三方から押し下げます。
同じ式を NA 0.55 の高NA EUVに当てはめると、 で約 6nm、0.80 でも約 20nm です。imecは2024年、0.55NA の露光機 TWINSCAN EXE:5000 で16nm ピッチのラインアンドスペースを1回の露光で描き3、世界記録としています。線幅 8nm を式に当てはめると、 は約 0.33 です。
NA を上げる道は、焦点深度を2乗で削る
Section titled “NA を上げる道は、焦点深度を2乗で削る”線を細くする変数は波長、NA、 の三つです。ASMLは、波長を短くするには新しい光源を積んだ新しい露光機と、新しい光学材料・レジスト材料・工程が要るとしています2。波長を切り替える合間の進歩は、レンズの開発と、計算機リソグラフィなどの工程の工夫による の低減2が担ってきたというのがASMLの見方です。
NA にも代価があります。焦点深度は で表されます1。 は では1乗、 では2乗で分母に入るため、 を 0.33 から 0.55 へ上げると、式の上では は 0.60 倍、焦点深度は 0.36 倍になります。imecは、0.55NA の実効焦点深度が0.33NA の2〜3分の1になる見込みとしています。
装置の買い替えを伴わず、焦点深度を2乗で削ることもない変数が k1 です。ただし k1 を小さくした露光でも焦点深度の余裕は細り、その分を工程側の管理が引き受けます。
k1 を下げる4つの手は、照明・マスク・材料を別々に動かす
Section titled “k1 を下げる4つの手は、照明・マスク・材料を別々に動かす”解像性向上手法は、解像限界に近いパターンの解像性と焦点深度を上げる手法で、斜入射照明、位相シフト、SMO 手法、高解像レジストの採用などを含みます1。Low k1 露光はプロセス定数 k1 の小さい露光を指し、Resolution Enhancement Technique と同義です1。同じものを、手段の側と結果の側から呼んだ二つの名前です。
斜入射照明は、絞りを光軸から外して光の入れ方を変えます。細かいパターンに光をまっすぐ当てると像を結ぶのに要る1次回折光がレンズの口径から逃げ、斜めに入れるとその1次回折光を拾えます。imecも、NA が決めるのはレンズが拾う回折光の次数の数3だとしています。位相シフトはマスクを通る光の位相を反転させ、マスクの作りを変えます。SMOは光源とマスクを同時に最適化します。
高解像レジストは材料の切れ味を変える手です。imecが 16nm ピッチを描いたのは、高NA EUV 向けに最適化したメタル酸化物レジストでした。コンタクトホールは化学増幅型レジストで、ピラーはメタル酸化物レジストで、それぞれ24nm ピッチを解像したとしています3。
手はどれも、パターンごとに設計し直すことになる
Section titled “手はどれも、パターンごとに設計し直すことになる”k1 を下げる手は、どれも対象のパターンに合わせた作り込みです。ある照明条件がよく利くパターンでも、別の形のパターンでは利きが落ちます。
近年は SMO で任意の絞り形状も適用されています1。形の自由度が上がった分、決めることも増えました。計算機リソグラフィは、計算機を駆使してマスク形状や光源形状を見積もる手法です。設計の量が人手を超えたところから、計算機が肩代わりします。
その結果、品種を増やすほど設計の量が膨らみます。焦点深度の余裕が細るので、ウェハの平坦さと重ね合わせの管理も厳しくなります。
露光を繰り返す道は、k1 を変えずに密度を上げる
Section titled “露光を繰り返す道は、k1 を変えずに密度を上げる”マルチプルパターニングは、露光を繰り返して回路の密集度を高める技術です4。ニコンは、ArF 露光装置が液浸露光方式とマルチプルパターニングを取り入れて解像度を上げ、10nm 以下のプロセスノードまで微細化を実現したとしています4。
1回の露光で引ける線幅は変わらなくても、2回に分ければ間隔は半分になります。ここで動いているのは k1 そのものより、工程の組み方です。確実な道ですが、工程数とコストが回数分だけ積み上がります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”k1 係数とは何ですか?
レイリーの式 R = k1(λ/NA)に入るプロセス定数です。波長と開口数が同じ装置でも、k1が小さいほど細い線を引けます。
何を表しているのですか?
同じ装置と同じ波長で、どこまで細く引けたかという作り込みの度合いです。照明の形、フォトマスクの作り、レジストの性能がこの値に入ります。
Low k1 露光とは何ですか?
プロセス定数 k1 の小さい露光で、Resolution Enhancement Technique(解像性向上手法)と同義です。
どうやって下げるのですか?
斜入射照明、位相シフト、SMO 手法、高解像レジストの採用などで下げます。照明、マスク、材料をそれぞれ動かす手です。
下限はありますか?
あります。ASMLはリソグラフィの物理的な下限をk1 = 0.25としています。単純な結像の下限から先は、照明とマスクと材料の作り込みで押し下げます。
下げると何を払いますか?
作り込みの手間です。照明の形もマスクの形も対象のパターンごとに設計する必要が出て、その量を計算機リソグラフィが引き受けます。焦点深度の余裕も細ります。
露光を繰り返す手もありますか?
あります。マルチプルパターニングは露光を繰り返して回路の密集度を高める技術です。ニコンは、ArF露光装置が液浸露光と組み合わせて10nm以下のプロセスノードまで微細化を実現したとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 開口数(NA)とは── 同じ式の分母
- 斜入射照明とは── を下げる代表
- 計算機リソグラフィとは── 設計量を引き受ける手
- 焦点深度とは── 同時に細る余裕
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- 2ASML:Rayleigh criterionasml.com abcd
- 3imec:The case for High NA EUVimec-int.com abc
- 4ニコン:露光から計測・検査まで:半導体製造における露光装置と計測・検査装置の基礎知識jp.nikon.com ab