コンテンツにスキップ

ウェハ平坦度とは

ウェハ平坦度とは、ウェハ表面がどれだけ平らかを表す指標です。 判断の基準は、露光の焦点が合う高さの幅に表面が収まるかどうかです。装置に吸着すれば反りはおおむね矯正されますが、厚みのばらつきは表面の高さに残ります。露光は区画ごとに焦点を合わせ直すので、出来ばえを決めるのは1回の露光で照らす区画の中の平らさです。そのため平坦度の数値は、区画の大きさ、基準面、保持方法、測定方式を添えて初めて比べられます。

焦点の合う幅が狭いほど、許される高さのばらつきは小さい

Section titled “焦点の合う幅が狭いほど、許される高さのばらつきは小さい”

露光で焦点が合う高さの幅を焦点深度と呼びます。開口数を上げるほど、この幅は狭くなります。ウェハ表面の高さが幅を超えた場所ではパターンがぼけ、同じ設計でも場所ごとに仕上がりの寸法が動きます。

ASMLは、高NA EUVの装置が開口数0.55の光学系を用い、より高いコントラストと8nmの解像度で描画できるとしています1。解像度が上がるほど焦点深度は浅くなり、許される高さのばらつきも小さくなります。

吸着しても、厚みのばらつきは表面の高さに残る

Section titled “吸着しても、厚みのばらつきは表面の高さに残る”
吸着前と吸着後
吸着前反りが残る吸着後幅を超えてぼける焦点深度裏面は平ら、厚みの差は表面に出るウェハ保持台支持点
吸着で裏面が保持台に密着すると反りはおおむね矯正されますが、厚みの違いは表面の高さの違いとして残り、厚い場所が焦点深度の幅を超えます。

反りは吸着でおおむね矯正されます。しかし厚みそのもののばらつきは、そのまま表面の高さのばらつきになります。裏面が保持面に完全に密着しても、厚みが場所ごとに違えば表面の高さは動きます。

この事情は指標の決め方に組み込まれています。全面の平坦度を表すGBIRはGlobal Backside Ideal Range(全面・裏面理想)の頭文字で、厚さ分布の最大、最小の幅です2。裏面を理想的な平らな面とみなす、つまり保持台に吸着しきった状態を前提にした量なので、GBIRの値はそのまま厚みのばらつきの大きさになります。

平らさはウェハ製造の研磨の順序で作り込まれます。SUMCOの工程では、単結晶インゴットを厚さ1mm程度にスライスしたあと、まずウェーハ両面を平行になるように整えながら所定の厚さに仕上げるため、アルミナ研磨材で粗研磨(ラッピング)します3。次に機械加工によるダメージを化学的なエッチングで取り除き、最後にウェーハ表面の凹凸をなくして平坦度の高い鏡面に仕上げるため、コロイダルシリカ液でメカノケミカル研磨を施します。両面を平行に整えるラッピングが早い段階に来るのは、露光が厚みのばらつきをそのまま高さのばらつきとして受け取るからです。表面だけを磨いても、裏面との平行度が崩れていれば、吸着した先で表面の高さがばらつきます。両面研磨で表と裏の平行度をそろえる理由も同じです。

露光は区画ごとに焦点を合わせ直すので、効くのは局所の平坦さ

Section titled “露光は区画ごとに焦点を合わせ直すので、効くのは局所の平坦さ”
全面の形と区画の中の形
全体は湾曲、区画内は平ら1回の露光の区画どの区画も幅に収まる全体は平ら、区画内に段差段差の底が幅の外焦点の幅
焦点の幅は区画ごとに置き直せるので、全体の湾曲は区画の中で平らなら収まり、区画の中の段差は全体が平らでも収まりません。

指標には2つの階層があります。全面の指標はウェハ全体としての反りやうねりを、局所の指標は1回の露光で照らす区画ごとの平坦さを表します。

露光装置は区画ごとに焦点を合わせ直せます。そのため、ウェハ全体がゆるやかに湾曲していても、区画の中で平らであれば焦点の合う幅に収まります。逆に、全面としては平らでも区画の中に急な段差があれば、そこでパターンが崩れます。

露光装置の側も、自分でウェハの高さを測ります。ASMLは、TWINSCAN NXT:2050iのレベルセンサUVLS-2が紫外光を用い、膜の積み重ねの違いに対する感度を抑えながらウェハ表面をインラインでマッピングするとしています4。ウェハメーカーが出荷前に測る平坦度と、露光装置が露光の直前に測る高さの地図は、別々に取られた2つの測定です。

指標の名前は、範囲・基準面・保持方法の組み合わせで決まる

Section titled “指標の名前は、範囲・基準面・保持方法の組み合わせで決まる”
3つの基準面
GBIR裏面基準・全面裏面を理想平面にSFQR表面基準・区画最小二乗面からの幅Warp / Bow3点基準・非吸着Bow+通常は直径の3%内側中心が上ならプラス
同じウェハでも、裏面、区画の最小二乗面、3点で決まる平面のどれを基準に取るかで、別の量になります。

名前の頭のGはGlobal(ウェハ全面)、SはSite(区画)を指し、続くBackとFrontは基準面を裏面と表面のどちらに取るかを指します。

  • GBIR(Global Backside Ideal Range) ── 全面。TTV(Total Thickness Variation)と同じ量で、平坦なチャック面にウェーハ裏面を全面吸着させ、ウェーハ裏面からの最低点を最高点から差し引いた値です5。つまり裏面を基準とした厚みムラです。
  • SBIR(Site Back Ideal Range) ── 区画ごと。LTV(Local Thickness Variation)と同じ量で、ウェーハ裏面に平行な基準平面から、表面上の最高点と最低点までの距離の合計です。常に正の値で、各サイトの厚みムラにあたります。
  • SFQR(Site Front Least Squares Range) ── 区画ごと。LTIR(Local Total Indicated Reading)とも呼び、区画の表面に最小二乗法で当てた面を基準に取り、そこからの偏差の最大と最小の幅です。常に正の値です。
  • ESFQR(Edge Site Front Least Squares Range) ── ウェハの縁。円弧に沿った帯状の領域(セクタ)ごとに、SFQRと同じ取り方で測ります。
  • Warp / Bow / Sori ── 吸着を解いた形。Warpは3点基準平面から表面上の最高点と最低点までの距離の合計で、常に正の値です。Bowはウェハ中心の高さで、3点基準平面からの符号付きの距離です。Soriは最小二乗平面を基準に取った同じ量です。

保持のしかたにも名前があります。エスオーエルは、裏面を真空チャックに全面吸着させて測る方法をClamp(全面吸着)、裏面の3点または1点を吸着し元の形を保ったまま測る方法をUnclamp(非吸着)と呼び分けています5。平坦度はClamp、WarpやBowはUnclampで測るのが基本です。3点基準平面は測定領域の内側3点を通る平面で、通常は直径の3%内側に取ります。Bowは中心が3点基準平面より上ならプラス、下ならマイナスです。

非吸着の測定では、重力によるたわみも名前に書き込まれます。エスオーエルによると、SEMI名称は保持方法を明示できるようになっていて、ウェハを垂直に近い状態で保持する装置では重力による中だるみが修正済みとして4番目の文字がY、水平に保持する装置では未修正として4番目の文字がNになります。

これらの記号はSEMI規格に由来します。SEMI M1「Specification for Polished Single Crystal Silicon Wafers」は研磨済み単結晶シリコンウェーハの注文情報と要求事項を定めた規格で6、厚さ、TTV、Bow、Warpを対象に含みます。縁近傍の形状についてはSEMI M67(ESFQR、ESFQD、ESBIR)と、SEMI M70(partial wafer site flatnessによる縁近傍の形状の試験方法)を参照しています。

SFQRの値は、サイトの大きさと測定方式とセットで読む

Section titled “SFQRの値は、サイトの大きさと測定方式とセットで読む”
繰り返し精度の桁
110100繰り返し精度(nm、対数)厚さの100万分の1LGW GBIR100nm以下LSW GBIR10nm以下LSW SFQR0.33nmLSW ESFQR0.39nm
同じGBIRでも静電容量式と光学干渉式で繰り返し精度は1桁違い、LSWのSFQRとESFQRは厚さの100万分の1より細かい水準です。

SFQRの数値は、サイトの寸法が添えてあって初めて比べられます。コベルコ科研は、300mmウェハのSFQRを10回測って再現性を調べました2。条件はサイトサイズ26×8mm、サイトオフセット(0,0)、全サイト数336個で、ESFQRの側はセクタ長さ30mm、セクタ角度5deg、全セクタ数72個です。同じウェハでも区画の切り方を変えれば、最大と最小の幅は別の値になります。

測る細かさにも取り決めがあります。SEMI規格が規定する空間分解能はSFQRで1mm以下、ESFQRで0.5mm以下で、コベルコ科研はLSWシリーズがその分解能で測れるとしています。厚み方向はさらに細かく、10回測定での標準偏差の平均は、全336サイトのSFQRで0.33nm、全72セクタのESFQRで0.39nmでした。同シリーズの仕様表にある300mmウェハの厚み650〜850μmに当てはめて100万分の1を計算すると0.65〜0.85nmで、再現性はそれより細かい水準です。

センサの方式でも読み取れる細かさが変わります。同社の静電容量式のLGWシリーズはGBIRを約5mmの空間分解能、100nm以下の繰り返し精度(標準偏差)で測れ、光学干渉式のLSWシリーズは同じGBIRを10nm以下の繰り返し精度で測れます。方式が替われば、同じ名前の指標でも読み取れる細かさは1桁以上動きます。

測定は、表と裏の変位から厚みの分布を取る

Section titled “測定は、表と裏の変位から厚みの分布を取る”

コベルコ科研のLSWシリーズは、対向して配置した2つのセンサの間にウェハを運び、上側のセンサとウェハ表面の間、下側のセンサとウェハ裏面の間の変位を同時に測ります。ウェハはエッジで支持され、ステージの回転と並進で全面をスパイラル状にスキャンします。表面と裏面の変位から厚みが求まり、そこからGBIRやSFQRを計算します。吸着した状態の平坦度を、吸着を解いた測定から算出しているわけです。

計測の手法はほかにもあり、Brukerは原子間力顕微鏡を使うInSight 300について、スキャナ平坦度が±1nm以内、ノイズフロアが35pm以内で、プロファイロメトリ機能がミリメートルスケールおよびベベルエッジの計測要求を満たすとしています7。

測るタイミングは工程の節目ごとにあります。神戸製鋼は、測定対象に応じて静電容量方式やレーザー変位計方式などを選べる8SBWシリーズを、スライス、研削、エッチング、研磨後のウェハの平坦度・反りの工程内管理に充てています。独自開発の超高精度ヘテロダイン干渉計でサブナノの再現性を実現したとするLSW・LNSWシリーズは、研磨後の高精度平坦度測定と出荷検査に充てています。

計測項目も装置ごとに決まっていて、SBWシリーズは厚さムラ、Bow、Warp、LSW・LNSWシリーズはグローバルフラットネス(GBIRなど)、サイトフラットネス(SFQRなど)、Bow、Warpです。ラインナップは、ラインスキャンタイプのSBWシリーズ、サイトフラットネスを計測できる超高精度タイプのLSWシリーズ、ナノトポ計測機能を搭載した出荷検査用のLNSWシリーズの順で、ナノトポグラフィーの計測はLNSWシリーズが担います。区画ごとのサイトフラットネスを測る段になると、工程内用のラインスキャンから干渉計の側の装置に移ります。

コベルコ科研は、ESFQRを平坦度の悪化しやすいエッジに注目した指標としています2。SEMI M1が縁近傍の形状についてSEMI M67とSEMI M70を参照しているのも、同じ事情によります。露光装置の側でもASMLが、NXT:2050iのレベルセンサの測定密度を上げたことでウェハの縁でのレベリング精度が上がったとしています4。

縁の区画を捨てれば平坦度の心配は減りますが、面積の損が大きくなります。直径300mmのウェハで、外周3mmを除いた半径147mmの円が全体の面積に占める割合を計算すると約96%です。幅3mmの帯だけで、ウェハ1枚のうち約4%の面積にあたります。

CMPの「平坦化」は、積んだ膜の段差を表す別の量

Section titled “CMPの「平坦化」は、積んだ膜の段差を表す別の量”

同じ「平坦」という語が、CMP(化学機械研磨)の平坦化では別の量を指します。SEAJの半導体製造装置技術ロードマップ2012年版は、CMPを化学的作用と機械的作用の併用によりウェーハをポリシングし平坦化する加工技術とし9、その平坦性を段差緩和性(Step Height Reduction Ratio)として、ポリシング前後の段差の差をポリシング前の段差で除した値で表しています。同ロードマップは領域の一般的な基準値を10μmとし、それ以上の領域での平坦性をグローバル平坦性、それ以下をローカル平坦性と呼んでいます。

ウェハ平坦度が相手にするのは、シリコン基板そのものの厚みと表面の高さの分布です。CMPの平坦性が相手にするのは、その上に積んだ膜の段差です。「グローバル」「ローカル」という同じ語も、CMPでは10μmを境目として、ウェハ平坦度では全面と露光の区画の対比として使われます。

ウェハ平坦度とは何ですか?

ウェハ表面がどれだけ平らかを表す指標です。装置に吸着して保持した状態で、露光する面の高さがどれだけ揃っているかを示し、露光の焦点が合う範囲に収まるかが判断の基準になります。

なぜ平坦度が重要なのですか?

露光で焦点が合う高さの幅が小さいためです。開口数を上げるほど、その幅は狭くなります。表面の高さがその幅を超えた場所では、パターンがぼけます。

全面の指標と局所の指標は何が違いますか?

対象の範囲が違います。全面の指標はウェハ全体としての反りやうねりを、局所の指標は1回の露光で照らす区画ごとの平坦さを表します。露光は区画ごとに焦点を合わせ直せるので、出来ばえを左右するのは局所の指標です。

吸着すれば平らになりますか?

反りはおおむね矯正されます。ただし厚みそのもののばらつきは、そのまま表面の高さのばらつきになります。裏面が保持面に密着しても、厚みが場所ごとに違えば表面の高さは動きます。

どうやって測りますか?

表面の高さの分布を計測します。コベルコ科研のLSWシリーズは、対向する2つのセンサで表と裏の変位を同時に測って厚みの分布を求めます。BrukerはInSight 300について、スキャナ平坦度が±1nm以内、ノイズフロアが35pm以内で、プロファイロメトリ機能がミリメートルスケールおよびベベルエッジの計測要求を満たすとしています。

微細化でどう変わりますか?

要求が厳しくなります。ASMLは、High NAが開口数0.55の光学系で8nmの解像度を実現するとしています。開口数を上げるほど焦点深度は浅くなるので、許される高さのばらつきも小さくなります。

平坦度の指標にはどんな名前がありますか?

全面はGBIR(TTVと同じ量)、区画はSFQRとSBIR(LTVと同じ量)、ウェハの縁はESFQRです。頭のGはGlobal(全面)、SはSite(区画)を指し、続くBackとFrontは基準面を裏面と表面のどちらに取るかを指します。

SFQRの数値だけで良し悪しを言えますか?

サイトの大きさとセットで意味を持ちます。コベルコ科研が再現性を調べた条件は、サイトサイズ26×8mm、サイトオフセット(0,0)、全サイト数336個です。同じウェハでも区画の切り方を変えれば、最大と最小の幅は別の値になります。

WarpやBowは平坦度と何が違いますか?

保持のしかたが違います。裏面を真空チャックに全面吸着させて測る方法をClamp、裏面の3点または1点を吸着し元の形を保ったまま測る方法をUnclampと呼び分け、WarpとBowはUnclamp、平坦度はClampで測るのが基本です。

CMPの平坦化と同じ意味ですか?

別の量です。SEAJのロードマップは、CMPの平坦性を段差緩和性としてポリシング前後の段差の比で表し、領域の一般的な基準値を10μmとしています。ウェハ平坦度が相手にするのはシリコン基板そのものの厚みと表面の高さの分布で、区画は露光の1ショットに合わせた大きさです。

なぜウェハの縁だけ別の指標があるのですか?

縁は平坦度の悪化しやすい場所だからです。ESFQRはエッジに注目した指標で、円弧に沿った帯状のセクタごとに測ります。ASMLもTWINSCAN NXT:2050iのレベルセンサについて、測定密度を上げてウェハの縁でのレベリング精度を高めたとしています。

平坦度はどの工程で測りますか?

工程の節目ごとに測ります。神戸製鋼は、静電容量方式やレーザー変位計方式などを選べるSBWシリーズをスライス、研削、エッチング、研磨後の工程内管理に、ヘテロダイン干渉計のLSW・LNSWシリーズを研磨後の高精度平坦度測定と出荷検査に充てています。厚さムラ・Bow・WarpはSBWシリーズ、GBIRなどのグローバルフラットネスとSFQRなどのサイトフラットネスはLSW・LNSWシリーズ、ナノトポグラフィーはLNSWシリーズが測ります。

9件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9