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エピタキシャルウェハとは

エピタキシャルウェハとは、ウェハの上へ下地の結晶方位を引き継いだ単結晶の層を成長させたものです。 膜を載せるというより、結晶を継ぎ足す操作にあたります。基板と層で不純物濃度を別々に決められるので、低抵抗の土台の上に、欠陥の少ないデバイス用の層を持てます。継ぎ足す以上、層の出来は下地で決まります。成長直前の表面の状態、基板との格子定数の差、基板の結晶多形と転位が、層の出来を左右します。

低い抵抗と結晶の完全さは1枚では満たしにくいので、層を分ける

Section titled “低い抵抗と結晶の完全さは1枚では満たしにくいので、層を分ける”

ウェハ1枚には、性質の要求が同時に2つかかります。基板としては、搬送に耐える機械的な強さと、裏面から電流を流すための低い抵抗が要ります。デバイスを作る層としては、狙った不純物濃度と、欠陥密度の低い結晶品質が要ります。抵抗を下げるには不純物を多く入れる必要がありますが、不純物が多いほど結晶の完全性は落ちます。そこで基板は低抵抗に作り、その上へデバイス用の層を別の条件で成長させます。SUMCOは、エピタキシャル・ウェーハを結晶の完全性が求められる場合や、抵抗率の異なる多層構造を必要とする場合に対応できる1ウェーハとしています。

その層はごく薄く、信越半導体はポリッシュドウエハーの表面に成長させる0.01mm(10µm)ほどの結晶層としています2。単結晶インゴットは厚さ1mm程度にスライスするので、デバイスが作られるのは厚みの100分の1ほどにあたる表層で、残りの厚みはその表層を支える土台として働きます。

基板とエピタキシャル層の厚み
約1mm10µm狙いの濃度低欠陥低抵抗機械的な強さエピタキシャル層基板
10µmの層は約1mmの厚みの100分の1ほどで、デバイスはこの表層だけを使います。原子の並びは界面を越えて続き、不純物濃度は層と基板で別々に決めます。

格子定数がずれると、界面にミスフィット転位が溜まる

Section titled “格子定数がずれると、界面にミスフィット転位が溜まる”

同じ材料の上へ成長させるか、別の材料の上へ成長させるかで、難しさが大きく変わります。基板結晶と同じ格子定数を持つ結晶を成長させる場合をホモエピタキシャル成長3、格子定数が異なる、あるいは結晶方位や材質が異なる結晶を成長させる場合をヘテロエピタキシャル成長と呼びます。格子定数(lattice constant)は、結晶の中で原子が並ぶ間隔です。

格子定数が一致するホモエピタキシャル成長では、欠陥のもっとも少ない良質な結晶が得られます。代表例がシリコンのエピタキシャルウエーハです。ヘテロエピタキシャル成長では、格子定数などの差がわずかなら良質な結晶が得られますが、差が大きいと格子不整合によりミスフィット転位と呼ばれる欠陥を生じます。原子の並ぶ間隔がずれたまま重ねるため、界面で結晶の列にずれが溜まり、そのずれが欠陥として固まります。対策は、基板と層の間にバッファ層と呼ばれる中間層を導入し、ミスフィット転位を入りにくくすることです。

ヘテロエピタキシーの代表例が、青色LEDのGaN(窒化ガリウム)です。青色LEDでは、サファイア基板やSiC基板の上に、MOCVD装置でGaN系半導体層をエピタキシャル成長させます。ニューフレアテクノロジーは、2013年にLED向けGaNのMOCVD装置EPIREVO G8を製品化し、2014年にSiC向け成膜装置EPIREVO S6を製品化したとしています4。同社はEPIREVO G8を、GaNをSi基板上に成長させる150mm/200mmウェハ対応の枚葉式MOCVD装置5として製品にしています。

下地を引き継ぐので、成長直前の表面が仕上がりを決める

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気相から供給した原料を加熱した基板の表面で反応させると、基板の結晶配列に沿って原子が並びます。したがって仕上がりの品質は、下地の結晶品質と表面の清浄さに強く依存します。表面に自然酸化膜や汚染が残っていれば、そこで結晶の配列が途切れます。成長の直前にDHFで酸化膜を除き、清浄な面を作ります。エピタキシー工程が洗浄と一体で設計されるのはこのためです。

成長のさせ方には、気相中の成分を堆積させる気相エピタキシャル成長(VPE/CVD)のほか、液相(LPE)、固相(SPE)、分子線(MBE)による成長があります。半導体ウェハの量産で使われるのは、このうち気相エピタキシャル成長です。化合物半導体ではMOCVDが使われます。AIXTRONは、MOCVDのプラネタリ方式とシャワーヘッド方式、およびSiC-CVD向けのウォームウォールプラネット方式6を自社の技術とし、3,000台以上の成膜装置を納入したとしています。

シリコンは約1200℃、SiCはさらに300〜400℃高く、装置の作りまで変わる

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シリコンでは、SUMCOがポリッシュト・ウェーハをエピタキシャル炉の中で約1200℃まで加熱し、気化した四塩化珪素(SiCl4)や三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl3)を流して1、ウェーハ表面上に単結晶シリコンの膜を気相成長させます。

SiCの化学的気相成長は通常、高純度水素をキャリアガスとし、SiH4などのSi原料およびC3H8などのC原料を1500〜1600℃に保持したSiC基板の表面に供給して7行います。この高温では、装置の内壁など周囲の温度が低いと基板表面への原料供給の効率が大幅に低下するため、ホットウオール型のリアクターを使います。シリコンの約1200℃より300〜400℃高く、装置の作りまで変わります。

SiCでは成長速度も装置の競争軸です。ニューフレアテクノロジーは、ウェーハを高速回転させると炉内の原料ガスの輸送効率が増え、ウェーハ表面に届く原料ガス濃度を上げられるため、原料ガスの使用量を増やさずに成長速度を高められるとしています5。同社は、EPIREVO S8が200mmウェハに対応し、50µm/h以上の高速成膜とロボットによるウェハ高温搬送で高い生産性を実現するとしています。

SiC基板を4°傾けるのは、段差で積み重ね順を引き継ぐため

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市販のSiC基板の表面は、結晶の面からわずかに傾けてあります。この傾きをオフ角と呼びます。傾ける理由は、下地のポリタイプ(結晶多形。原子の積み重ね順の違いで区別される結晶の型)を層へ引き継ぐためです。

SiCには安定な多くの結晶多形が存在するため、基板の特定の結晶多形を引き継いだ成長層を得るには、原子の三次元的な配列情報をエピタキシャル成長層に与える必要があります7。その方法が、低指数面に小さなオフ角を付けた表面を持つSiC基板に対して化学的気相成長を行うステップ制御エピタキシー法(Step-Controlled Epitaxy)です。三菱電機は、この手法を京都大学名誉教授の松波氏らが見出したとしています。

傾けた表面には、分子層オーダーのステップ(段差)とテラス(平らな面)が生じます。原料ガスを流すと、原料種はテラス面上を動き回り、所々にあるステップに捕捉され、その位置で下地の結晶多形と一致する配列をもつ結晶を形成します。段差の側面が、縦方向の積み重ね順という三次元の手がかりを与えます。

ステップ制御エピタキシー
オフ角 4°原料種ステップに捕捉同じポリタイプテラス上で核形成異なるポリタイプテラス4H-SiC基板 (0001)面
テラスを動いた原料種が段差に捕まると、段差の側面が積み重ね順を伝え、下地と同じポリタイプが継がれます。段差へ届く前にテラスの途中で核ができると、異なるポリタイプが育ちます。

原料種がステップへ届く前にテラス面上で核形成すると、縦方向の配列情報を欠くため、異なるポリタイプの結晶が育ちます。混入した異種ポリタイプは、デバイスにとって致命的な欠陥です。そのため、適切なテラス幅が得られるようにオフ角を設定し、原料ガス中のSi種・C種の濃度や成長温度を最適化して、ステップで結晶を優先的に形成する条件を選びます。市販の4H型SiC基板の表面が4°オフ(0001)面なのは、ステップ制御エピタキシーからの要請と、ブール(インゴット)から取れるウエハの枚数を増やす要請の、二つで決まっています。

合否は膜厚・濃度・欠陥密度で決まり、濃度のむらは耐圧のむらになる

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エピタキシャル層の合否は、膜厚・ドーピング濃度(抵抗率)・欠陥密度の3つで決まります。SiCの量産で考慮すべき点は、エピ層の厚さの均一性やドーピング濃度の均一性、発塵、スループット、部材の交換頻度、メンテナンスのし易さです。ドーピング濃度の均一性はデバイスの耐圧分布に直接影響するため、ウエハ面内やバッチ内、run to runの均一性が要求されます7。層の濃度がそのまま耐圧に返るので、面内のばらつきはチップごとの耐圧のばらつきになります。

シリコン側でも同じ量が品質の指標です。エピタキシャル層の成長に用いる化学気相成長法はきわめて清浄な空気を必要とし、信越半導体は、厳重に管理したクリーンルーム内でつくったエピタキシャルウエハーが抵抗率面内均一性に優れ、結晶欠陥がほとんどないとしています2。

ニューフレアテクノロジーは、SiCウェーハに毎時60μm以上の成長速度で成膜し、膜厚とNドープ濃度の高い均一性を同時に達成できるとしています4。同社は、高濃度Nドープ(バッファー)層の上に低濃度Nドープ(ドリフト)層を成長する技術を応用し、0.5個/cm²という低い欠陥密度を実現したとしています。

アニールは表層を作り変え、エピは表層を足す

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同じシリコンウェーハでも、仕上げ方によって何種類かあります。SUMCOは次のように区別しています8。

  • ポリッシュト・ウェーハ(PW)は、単結晶インゴットを厚さ1mm程度にスライスし、その表面を鏡面研磨したもので、平坦度と清浄度に優れます。
  • アニール・ウェーハ(AW)は、ポリッシュト・ウェーハを水素もしくはアルゴン雰囲気中で高温にし、表面の酸素を除くことで結晶完全性を高めたものです。
  • エピタキシャル・ウェーハ(EW)は、ポリッシュト・ウェーハの表面に、気相成長させた単結晶シリコンの層を作ったものです。
  • 埋込層付エピタキシャル・ウェーハ(JIW)は、顧客の設計に合わせて露光・イオン注入・熱拡散であらかじめ表面にIC用の埋め込み層を形成し、さらにその上から気相成長させた層を作ったものです。
  • SOIウェーハは、2枚のポリッシュト・ウェーハの間に電気絶縁性の高い酸化膜層を介在させ、貼り合わせたものです。

アニール・ウェーハとエピタキシャル・ウェーハは、どちらも表層の結晶品質を上げる点で近い立ち位置にあります。違いは、アニールが元のウェハの表層を作り変えるのに対し、エピタキシャルは表層を新しく足すところです。足す方式なので、基板と層で不純物濃度を別々に決められます。抵抗率の異なる多層構造に応えられるのは、ここから来ます。

ロジックやイメージセンサから個別素子、パワーデバイスまで載る

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エピタキシャル・ウェーハは、パソコンや携帯電話などの心臓部分(演算処理を担う)にあたる半導体チップや、デジタルカメラやスマートフォンに使用される9CMOSイメージセンサなどに使われています。SUMCOは、エピタキシャル・ウェーハのシェアで自社が業界1位だとしています。

信越半導体の白河工場の製品は、ロジックIC、撮像素子、個別半導体素子などに広く用いられています。グローバルウェーハズ・ジャパン10のエピタキシャルウェーハは、トランジスタ、ダイオードなどの個別素子、およびバイポーラ型・MOS型のIC用基板に利用され、同社は埋込み拡散ウェーハをはじめ各種多層構造のエピタキシャルウェーハの要求に広く対応するとしています。同じ製品一覧のエピタキシャルウェーハの行では、個別素子やバイポーラIC向けの型に125mm・150mm・200mmの印が付き、300mmはメモリ・ロジック・イメージセンサ向けの型だけに付いています。同社が注力するパワーデバイス製品は、電力制御を行う機器に多く用いられます。

基板の転位と装置の発塵も、層へ持ち込まれる

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成長でつまずくと、症状は結晶の欠陥として出ます。異種ポリタイプの混入とミスフィット転位のほかに、基板から引き継ぐ転位と、リアクター由来の発塵があります。

エピタキシャル成長は、基板内の基底面転位(BPD)を基板とドリフト層の界面で貫通刃状転位(TED)に変換します7。バイポーラ電流が流れるとBPDは積層欠陥として拡張し、オン抵抗の増加などのデバイス特性の劣化を生じさせ得る一方、変換されたTEDはデバイスの電気特性に対して無害です。通常SiCのエピタキシャル成長ではドリフト層と基板との間にバッファ層を挿入し、バッファ層がBPDの変換の役割も担います。

基底面転位の変換
貫通刃状転位 TED電気特性に無害基底面転位 BPD積層欠陥に拡張BPDのまま残るドリフト層バッファ層基板
基板のBPDは、界面で向きを変えてTEDになれば電気特性に害を残しません。BPDのまま層へ入ると、バイポーラ電流で積層欠陥として広がり、オン抵抗の増加などの劣化につながり得ます。

リアクター内の部材や排気系に付着する反応生成物は発塵源になるため、これらの除去を容易に行えるガスエッチングの開発も行われています。装置の内側に育った膜が剥がれてパーティクルとなり、ウェハへ落ちるためです。

この用語に対応する装置と製造メーカー

Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”

装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 5社/6family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22

出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。

エピタキシャルウェハとは何ですか?

ウェハの上へ、下地の結晶方位を引き継いだ単結晶の層を成長させたものです。膜を載せるというより、結晶を継ぎ足す操作にあたります。この層の上にデバイスを作ります。

なぜ層を足すのですか?

基板と層で性質を作り分けられるためです。基板には機械的な強さと低い抵抗を求め、層にはデバイス特性に合った不純物濃度と高い結晶品質を求めます。1枚の材料で両方を満たすのは難しくなります。

エピタキシャル層の厚さはどれくらいですか?

0.01mm(10µm)ほどの薄い結晶層です。インゴットは厚さ1mm程度にスライスするので、デバイスが作られるのは厚みの100分の1ほどにあたる表層です。

どうやって作りますか?

気相から供給した原料を、加熱した基板の表面で反応させます。化合物半導体ではMOCVDが使われ、AIXTRONはMOCVDのプラネタリ方式とシャワーヘッド方式、SiC-CVD向けのウォームウォールプラネット方式を自社の技術にしています。

成長させる温度はどれくらいですか?

シリコンは約1200℃で、原料は四塩化珪素(SiCl4)と三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl3)です。SiCは1500〜1600℃で、SiH4などのSi原料とC3H8などのC原料、高純度水素のキャリアガス、ホットウオール型のリアクターを使います。

ホモエピタキシーとヘテロエピタキシーはどう違いますか?

基板と同じ格子定数を持つ結晶を成長させる場合がホモエピタキシャル成長、格子定数や結晶方位・材質が異なる結晶を成長させる場合がヘテロエピタキシャル成長です。格子定数が一致するホモでは欠陥のもっとも少ない結晶が得られ、差が大きいヘテロでは格子不整合によりミスフィット転位が生じます。

なぜSiC基板の表面は4°傾けてあるのですか?

下地のポリタイプ(結晶多形)を引き継ぐためです。傾けた面にできるステップに原料種が捕捉されると、下地と一致する配列の結晶が育ちます。市販の4H型SiC基板の4°オフ(0001)面は、ステップ制御エピタキシーからの要請と、ブールから取れるウエハ枚数を増やす要請の二つで決まっています。

アニール・ウェーハとはどう違いますか?

アニール・ウェーハはポリッシュト・ウェーハの表層を高温で作り変えたもので、エピタキシャル・ウェーハは表面に単結晶シリコンの層を足したものです。足す方式のエピタキシャル・ウェーハでは、基板と層で抵抗率を別々に決められます。

品質はどの量で測りますか?

膜厚・ドーピング濃度(抵抗率)・欠陥密度の3つです。ドーピング濃度の均一性はデバイスの耐圧分布に直接影響するため、ウエハ面内やバッチ内、run to runの均一性が要求されます。ニューフレアテクノロジーは0.5個/cm²という低い欠陥密度を実現したとしています。

成長の直前に表面を洗うのはなぜですか?

下地の結晶方位を引き継ぐため、表面に自然酸化膜や汚染が残っていると、そこで結晶の配列が途切れます。成長の直前にDHFで酸化膜を除き、清浄な面を作ります。

どんな製品で使いますか?

パワー半導体、イメージセンサ、高周波デバイス、LEDなどです。パソコンや携帯電話の半導体チップやCMOSイメージセンサにも使われ、SUMCOはエピタキシャル・ウェーハのシェアで業界1位としています。SiCやGaNのパワーデバイスでは、エピタキシャル層の品質がそのままデバイスの耐圧と損失を決めます。

エピ装置のメーカーはどこですか?

当サイトの装置カタログDBでは、エピタキシーとMOCVDに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。AIXTRON、Veeco、ASM、ニューフレアテクノロジー、AMECなどが該当します。

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