耐圧とは
耐圧とは、オフ状態の素子が支えられる電圧の上限です。 これを超えると電流が流れ始め、素子が壊れます。上限を決めるのは、電圧を支える層の厚みと、その層の中で電界がどう分布するかです。層を厚くすれば耐圧は上がり、同時にオン抵抗も上がります。パワー素子のカタログで耐圧とオン抵抗が組で並ぶのはこのためで、2つを揃えて初めて素子の実力が出ます。
耐圧は、決めた電流が流れ始める電圧として測る
Section titled “耐圧は、決めた電流が流れ始める電圧として測る”パワーMOSFETのデータシートにある耐圧は、ゲートとソースを短絡した状態で、決めたドレイン電流が流れるときのドレイン・ソース間電圧1として定義されています。電流が流れ始める点を、測る電流値で線引きして読む量です。
耐圧を超えた電圧を素子が壊れずに吸収できるエネルギーの上限は、アバランシェ耐量として示されます。Infineonは、アバランシェ試験で測るエネルギーの値が降伏電圧に左右され、その降伏電圧も放電の間に温度上昇で変わる傾向があるとしています2。耐圧は、素子の温度でも動く傾向がある値です。
層を厚くすれば耐圧は上がり、オン抵抗も上がる
Section titled “層を厚くすれば耐圧は上がり、オン抵抗も上がる”耐圧を決めるのは、電圧を支える層の厚みと、その材料が耐えられる電界の強さです。厚くすれば高い電圧を支えられますが、電流が通る距離も伸びてオン抵抗が上がります。薄く作れば逆で、2つは同じつまみの両端にあります。そのため素子を比べるときは、同じ耐圧の条件でオン抵抗を比べるか、2つを組み合わせた指標を使います。
パナソニックは、オン抵抗2.6 mΩ·cm² と耐圧800 Vを同じ素子の値として報告しています3。厚みのつまみとは別に、材料を替える手もあります。imecは、GaNの素子はSiより耐圧が高く、オン抵抗が低く、スイッチングも速いとしています4。
GaNを厚く積める限界は、基板との熱膨張差が決める
Section titled “GaNを厚く積める限界は、基板との熱膨張差が決める”Siの上にGaNを厚く積むと、冷えるときに縮む量が異なるため、厚いほど応力が溜まって割れます。熱膨張の差が、厚さの上限を決めています。Si基板上の素子では、バッファ層がAlGaN/GaN系とSi基板の間の格子定数と熱膨張係数の大きな差を受け止めます4。ウェーハを大きくすると問題は重くなり、信越化学工業はSi上のGaNは大口径ほど反りなどで歩留まりが下がり、量産の妨げになっているとしています5。
同社のQST基板は熱膨張係数をGaNに合わせてあり、300 mmでも反りや割れなしに厚膜のGaNをエピタキシャル成長でき、面内の均一性にも優れるとしています。この基板では、5 μm厚のGaN HEMT構造が300 mm基板で650 Vを超える耐圧を達成し、さらに800 Vを超える世界記録5に至ったと報告されています。
電界の集中を避ける電極でも、上限は上がる
Section titled “電界の集中を避ける電極でも、上限は上がる”耐圧を左右するのは、厚みと電界の分布の両方です。電界が一点に集まると、そこだけ先に壊れます。imecはフィールドプレート設計を詳しく検討しました4。電極の形を工夫して電界を分散させ、局所的な集中を避ける手法です。
同じ開発で、横型ショットキーダイオードは650 Vまで低い立ち上がり電圧と低い漏れ電流を両立しました4。imecはこの組み合わせを実現が非常に難しいものとしています。ゲート幅36 mmのトランジスタも実測されています。
650 V品の次は1200 V超が計画されている
Section titled “650 V品の次は1200 V超が計画されている”imecは200 mmのシリコンウェーハ上で200 Vと650 Vの品種を開発しました4。大口径での650 V認定を可能にしたのは、特許出願中のバッファ層の設計です。QST基板の品種は、初期の対象が650 V品で、1200 V超も計画されています5。用途はAIデータセンター、産業機器、自動車です。
上限を上げる手は、どれも別の指標を差し出します。基板を熱膨張の合うものへ替えれば厚く積めるものの、基板そのものの価格と供給が条件になります。フィールドプレートで電界を分散させれば耐圧は稼げますが、面積と寄生容量が増えます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”耐圧とは何ですか?
オフ状態の素子が支えられる電圧の上限です。パワーMOSFETでは、ゲートとソースを短絡し、決めたドレイン電流が流れるときのドレイン・ソース間電圧として定義します。これを超えると電流が流れ始め、素子が壊れます。
何で決まりますか?
電圧を支える層の厚みと、その材料が耐えられる電界の強さです。厚くするほど高い電圧を支えられ、電界が一点に集まらない電極構造にしても上限が上がります。
GaNではどこまで来ていますか?
熱膨張をGaNに合わせた300 mmのQST基板上で、5 μm厚のGaN HEMT構造が800 Vを超える世界記録の耐圧を得たと報告されています。
どんな基板を使いますか?
熱膨張係数をGaNに合わせたQST基板です。300 mmでも反りや割れなしに厚膜のGaNを成長でき、面内の均一性にも優れるとされています。
Si基板ではどこまでですか?
imecが200 mmのシリコンウェーハ上で200 Vと650 Vの品種を開発しています。650 V認定を可能にしたのは、Si基板との熱膨張差や格子定数の差を受け止めるバッファ層の設計です。
次の目標は何ですか?
初期の対象は650 V品で、1200 V超の品種も計画されています。用途はAIデータセンター、産業機器、自動車です。
オン抵抗との関係はどうですか?
厚くすれば耐圧は上がりますが、電流が通る距離も伸びてオン抵抗が上がります。2つは逆を向く量なので、同じ耐圧の条件でオン抵抗を比べます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- オン抵抗(面積規格)とは── 耐圧と組で比べる相手の指標
- GaN HEMTとは── 耐圧を担う素子の構造
- AlGaN/GaNヘテロ構造とは── 厚く積むときの基板と応力
- TDDBとは── 時間をかけて絶縁が壊れる側
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- 1ルネサス エレクトロニクス:パワーMOSFET アプリケーションノートrenesas.com ↩
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- 3パナソニック:GaN-Based Power Devicestech.panasonic.com ↩
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