コンテンツにスキップ

800V DCラック、GaNは2か所に搭載|整流器とLLC一次側、Renesasの白書

Renesasが2025年10月の白書で示した800V DCの電源構成では、GaNは2か所に入る。1つはサイドカーラックで三相交流から800Vを作るVienna整流器のスイッチ、もう1つはITラックの中で800Vを48Vへ降ろすLLC DCXの一次側のスイッチだ。白書によれば、前者では双方向GaNスイッチ1個が逆向きに直列につないだトランジスタ2個を置き換え1、後者ではGaNがMHz級で切り替えて変換器を小さくする。

双方向スイッチとは、オフのときに両方向の電流を止め、オンのときに両方向へ電流を流すスイッチを指す。この記事の読み方では、2か所の違いは素子に求める性質の違いになる。整流器の双方向スイッチではオン抵抗が、LLC DCXの一次側ではスイッチング周波数とゼロ電圧スイッチング(ZVS)の条件が効いてくる。48Vの中間母線を残すかどうかという構成全体の話は、800V DC化で48V母線は残るのかで扱った。

2か所のGaNは、効いてくる性質が違う

Section titled “2か所のGaNは、効いてくる性質が違う”
左はサイドカーラックのAC/DC変換で、三相480V交流を800V直流にするVienna整流器に650Vの双方向GaNスイッチが入り、効いてくる点はオン抵抗、小さくなる部品はスイッチ・高圧ドライバ・昇圧インダクタ。右はITラックの16:1 LLC DCXで、400Vから48Vへ降ろすハーフブリッジLLCの一次側に650VのGaN FETが入り、効いてくる点はスイッチング周波数とZVS、小さくなる部品はトランスと受動部品。
白書の記述から読むと、サイドカーの整流器ではオン抵抗、ラック内の16:1変換では周波数とZVSがGaNの選び方の要になる

GaNは、Siに比べて速く切り替えられ、切り替えの損失も小さい。パワー半導体の解説にあるとおり、GaNは700V以下で高い周波数を受け持つ材料だ。Renesasの構成では、この性質を一方では素子の数を減らすことに、もう一方では周波数を上げることに使う。

サイドカーラックでは、双方向GaNが整流器のスイッチを1個にまとめる

Section titled “サイドカーラックでは、双方向GaNが整流器のスイッチを1個にまとめる”

従来のVienna整流器は、SiやSiCのトランジスタ2個を逆向きに直列につなぐ「バックツーバック」で双方向スイッチを作ってきた。普通のトランジスタは、オフのときに片方向の電流しか止められないからだ。

白書は、サイドカーラックの三相Vienna整流器に双方向GaNスイッチを入れる構成を示した。白書が挙げる利点は3つある。導通損失が低いこと、浮いた電位で動く高圧ドライバが3個で済むこと、スイッチング周波数を上げて昇圧インダクタを小さくできることだ。白書は、この段の損失は主に導通で生じるため、素子の有効面積をできるだけ大きく取る必要があると書く。そのうえで、双方向GaNスイッチ1個が普通のトランジスタ2個を置き換え、オン抵抗が半分の2個直列に比べてコストも下げうるとする。サイドカーラックのAC/DC変換の1ブロックは、20kW以上へ向かっている。

Renesasは2026年3月、双方向GaNスイッチTP65B110HRU2を発表した。連続で±650V、過渡で±800Vに耐え、オン抵抗は標準110 mΩだ。高耐圧のディプレッション型GaNのチップに、低耐圧のSi MOSFETを2個組み合わせて1つのパッケージに収めており、負のゲート電圧なしで標準のゲートドライバで駆動できる3。Renesasはこの方式を独自のノーマリーオフ技術と呼ぶ。発表は、ハードスイッチングで動くVienna型の整流器をこの素子が役立つ回路に挙げ、三相Vienna整流器の組み合わせ設計も用意している。発表で示した97.5%超の効率は、太陽光の1段マイクロインバータでの値だ。

ITラックでは、650V GaN FETが16:1変換の一次側を高い周波数で切り替える

Section titled “ITラックでは、650V GaN FETが16:1変換の一次側を高い周波数で切り替える”

ITラックの16:1変換は、400V入力・3kWのLLC DCXを2個直列にして800Vを分け合う。そのため一次側のGaNが受け持つのは400Vで、白書は650V・30 mΩのGaN FET TP65H030G4PRS4を2個、ハーフブリッジに使った。上面から冷やすTOLTパッケージの素子で、白書はこの構成で損失が最も低くなる組み合わせだとしている。

GaNを一次側に置く理由を、白書はMHz級で切り替えても損失を抑えられる点に置く。LLC DCXは共振周波数で動き続け、全動作範囲でZVSを得る。スイッチング周波数は650 kHzから1 MHzで、試作機では約650 kHzでZVSを確かめた。周波数が高いほどトランスと受動部品を小さくでき、ラックに求められる電力密度に近づく。

2026年9月にRenesasは、同じ位置を狙う650V・20 mΩのGaN FET TP65H020G4PLSGBD5を発表した。上下の両面から冷やす8×8 mmのPQFNパッケージで、TOLTより面積が57%小さく、上面の熱抵抗は従来の上面冷却パッケージより10%低い。この素子で組んだ800V・48V出力の6kW参照設計は、TOLT版より全負荷効率が0.21%高かった(発表の表記)。用途にはIBCのほか、サイドカーラックの電池バックアップとキャパシタバンクの段も挙がる。サンプル出荷中で、量産は2027年半ばの予定だ。

二次側は、試作ではSi MOSFET、白書はGaNでさらに効率が上がるとする

Section titled “二次側は、試作ではSi MOSFET、白書はGaNでさらに効率が上がるとする”

48V側の二次側は、Renesasの試作ではSiのMOSFETで組んでいる。2相の全波同期整流で、1相に80V・2.4 mΩのMOSFETを4個ずつ使う。白書は二次側について、Si MOSFETとGaN HEMTのどちらも選べるとし、適したドライバと組めばGaNの版が最終的に効率で勝ると書く。

他社の基板でも、二次側の選び方は分かれる。STMicroelectronicsは2025年6月に示した800V・12kWの基板で、二次側に100VのGaN6を使った。2026年3月に示した800Vから12Vへの6kWの基板では、二次側を40VのMOSFETにしている。同じ12kWの基板では、ホットスワップ保護に1,200VのSiC素子を使う。SiC MOSFETの高温でのオン抵抗の比べ方は、ROHM第5世代SiC MOSFETの記事にある。

GaN以外にRenesasがこの基本ブロックへ入れている部品は、Renesasの800V基本ブロックの部品表にまとめた。Renesasの事業の全体は企業研究:ルネサス エレクトロニクスにある。

6件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6