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GaN HEMTとは

GaN HEMT とは、AlGaN と GaN という異なる結晶を重ね、その界面にできる電子の層で電流を運ぶトランジスタです。 高電子移動度トランジスタの頭文字からHEMTと呼びます。シリコンのトランジスタは不純物を入れて電流の担い手を用意しますが、GaNでは2種類の結晶を重ねるだけで界面へ電子が集まります。不純物を入れないので電子が速く走れる一方、この電子の層はゲートに電圧をかける前からできています。速さも、ノーマリオフ化の苦労も、電子トラップという固有の課題も、同じ構造から来ています。

バンドギャップの違う結晶を重ねると、界面の井戸に電子が溜まる

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断面の構成
ソースゲートドレイン電流AlGaNバリア層2DEGGaNチャネル層バッファ層核形成層 AlNSi基板
Si基板の上にAlN核形成層とバッファ層を敷き、GaNチャネル層とAlGaNバリア層を重ねます。両層の界面にできる電子の層を、ソースからドレインへ電流が走ります。

HEMTは、バンドギャップの異なる2つの材料の接合、すなわちヘテロ接合をチャネルに使う電界効果トランジスタです。Si基板の上にAlNの核形成層とGaN・AlGaNからなるバッファ層を置き、その上にチャネル層のGaNとバリア層のAlGaNを重ねます1。この界面には、自発分極とピエゾ分極によってキャリアが走行する層、すなわち二次元電子ガス(2DEG)ができ、ソースとドレインの間の電流はこの層を走ります。

電荷の中性を保つため、表面準位やバルクのドナー準位から来た自由電子が、伝導帯にできる局所的なポテンシャルの井戸に溜まります2。従来の電界効果トランジスタは不純物を入れた領域で電流を運ぶため、伝導が不純物散乱で制限されます。HEMTは変調ドーピングや分極でこの制限を避けます。ロームは、2DEGでは不純物によるキャリアの散乱が起きず、高速なキャリア走行を達成できるとしています1。速さの根拠は、電子を用意する方法そのものにあります。

ゲート0 Vでも電流が流れるので、ゲートの下で井戸を持ち上げる

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伝導帯の形
Dモード(VGS=0 V)伝導帯EF2DEGAlGaNGaNEモード(ゲートの下)EF井戸がEFより上AlGaNGaN
そのままのヘテロ構造では井戸の底がフェルミ準位より下にあり、ゲート0 Vでも2DEGが溜まっています。ゲートの下の伝導帯を持ち上げて井戸をフェルミ準位より上に出すと、2DEGが空になりノーマリオフになります。

標準的なGaN HEMTのヘテロ構造は、ゲート電圧0 Vで導電性の高い2DEGチャネルを持ち2、デプレッションモード、すなわちノーマリオンの素子に分類されます。Infineonは、Eモードにするにはゲートの下の伝導帯を持ち上げ、ポテンシャルの井戸をフェルミ準位より上に出して、平衡状態で2DEGを空にする必要があるとしています。

ノーマリオフ型のGITで、しきい値1.0 Vと耐圧800 Vが報告されている

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パナソニックは、p-AlGaNからAlGaN/GaNヘテロ接合へホールを注入する原理を使うGate Injection Transistorを開発した3と報告しています。作製したノーマリオフ素子は、しきい値電圧が1.0 V、最大ドレイン電流が200 mA/mm、オン抵抗が2.6 mΩ·cm²、オフ状態の耐圧が800 Vだとしています。同社は、これらをGaN系のノーマリオフトランジスタとして報告された中で最良の値だとしています。

固有の課題は、電子トラップで上がる動的オン抵抗

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動的オン抵抗
VDSオフ(高い電圧)オンRDS(on)切り替え直後に最大静的な値時間
オフの間に高い電圧を受けた素子は、オンへ切り替わった直後にオン抵抗が最も高く出ます。この上乗せが動的オン抵抗で、電子トラップが原因です。

Siでも起きるTDDB・エレクトロマイグレーション・バイアス温度不安定性に加えて、GaN HEMTには、電子トラップによる動的オン抵抗の増加という固有の現象があり、電流コラプスとも呼ばれます。この増加はオフ状態からオン状態へ切り替わった直後に最も顕著で、従来から課題と考えられてきました1。

ロームは、高電圧などの大きなストレス下での動作中に動的オン抵抗が増え、導通損失が大きくなって故障につながる可能性が高まるとしています1。さらに、この電子トラップは経年劣化で増える可能性があるとしています。スイッチングの際にドレインとソースの間へ高い電圧がかかると高い電界ができ、ホットエレクトロンが発生しやすくなる点も、同社は挙げています。

2DEGは不純物を入れずに電子を用意するため速く、オン抵抗を低く保てます。その代わり、電子が界面から近い位置を走るぶん、バリア層の表面やチャネル下の欠陥に捕まりやすくなります。捕まった電子は固定された負電荷になり、動的オン抵抗を押し上げます。速さの根拠と固有の課題の根拠は、同じ構造から来ています。

Si向けの試験に、実動作の条件を足す

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ロームは、量産品の多くがJEDECのJESD47とJEP001に沿ったSiデバイスの標準的な信頼性試験を通り、その結果が合格水準にあるとしています。いっぽう、材料とデバイス構造がSiと異なるため、従来のSi技術の信頼性試験だけでは十分ではないとし1、高電圧・大電流・高周波・高温でスイッチングする実アプリケーションの条件で検証する必要があるとしています。

同社はそのための指針としてJEDEC JEP1821を挙げ、模擬回路と加速試験による寿命算定の手順を示しています。動的オン抵抗の測定はJEP173に準拠し、ハーフブリッジに組んだ自社のEcoGaN GNP1070TC-Zを、制御信号の周波数500 kHzで動かして評価しています。

ACアダプタで量産が進み、データセンターと車載へ広がる

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GaN HEMTは、ACアダプタなどの民生機器ですでに量産が進み、通信・サーバをはじめとする産業機器、将来は車載への展開が期待されています。Infineonは、逆回復電荷がゼロで比オン抵抗が低く、高い周波数で切り替えられるEモードHEMTは、民生機器、データセンター、再生可能エネルギー、車載電源で効率と電力密度を高めるとしています2。電気自動車では、400 V系の車載充電器とDC-DCコンバータに使われるとしています。データセンターでは、800 Vの直流ラックの整流器や降圧段にGaNを載せる設計も出ています。

GaN HEMT とは何ですか?

AlGaNとGaNというバンドギャップの異なる結晶を重ね、その界面にできる電子の層で電流を運ぶトランジスタです。高電子移動度トランジスタの頭文字を取ってHEMTと呼びます。

どんな層を重ねますか?

Si基板の上にAlNの核形成層とGaN・AlGaNからなるバッファ層、その上にGaNのチャネル層とAlGaNのバリア層を重ねます。電流はチャネル層とバリア層の界面を走ります。

なぜ速いのですか?

2DEGでは不純物によるキャリアの散乱が起きず、高速なキャリア走行を達成できるためです。不純物を入れた領域で電流を運ぶ従来のトランジスタは、この散乱で伝導が制限されます。

どのくらいの性能ですか?

パナソニックは、ノーマリオフ型のGITでしきい値電圧1.0 V、最大ドレイン電流200 mA/mm、オン抵抗2.6 mΩ·cm²、耐圧800 Vを報告しています。

Si のデバイスと何が異なりますか?

材料と構造の両方です。そのためSi向けの信頼性試験に加えて、高電圧・大電流・高周波・高温でスイッチングする実動作の条件での検証が要ります。

固有の課題は何ですか?

電子トラップによる動的オン抵抗の増加、すなわち電流コラプスです。オフからオンへ切り替わった直後に最も目立ち、高電圧の動作中に増えると導通損失が大きくなって故障につながる可能性が高まります。

どんな用途で使われますか?

ACアダプタなどの民生機器ですでに量産が進み、通信・サーバをはじめとする産業機器、将来は車載への展開が期待されています。Infineonは、電気自動車の400 V系の車載充電器やDC-DCコンバータでの使用を挙げています。

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