スーパージャンクションとは
スーパージャンクションとは、n型とp型の柱を交互に並べて電荷を互いに打ち消す、パワーMOSFETのドリフト層構造です。 縦へ電流を流しながら、オフのときは空乏層を横方向にも広げて耐圧を確保します。電流を流す向きと耐圧を受け持つ向きを分けることで、Siの従来構造が持つオン抵抗の上限を下回れます。その利点が出るかどうかは、n柱とp柱の電荷バランスで決まります。
プレーナ型では、耐圧を上げるほどドリフト層が抵抗になる
Section titled “プレーナ型では、耐圧を上げるほどドリフト層が抵抗になる”プレーナ型MOSFETでは、ドリフト層がオフのときの耐圧を受け持ちます1。耐圧を高くするにはドリフト層を低濃度にし、しかも厚くする必要があります。ドリフト層の抵抗はオン抵抗RDS(on)に直接効くので、高耐圧と低オン抵抗の両立には限界があります。
理想の特性オン抵抗は2で表され、Siのnチャネルでは (Ω・cm²)、pチャネルでは (Ω・cm²) になります。耐圧を2倍にすると、特性オン抵抗はおよそ5.7倍です。この急な増え方が、Siの従来構造が持つ上限です。
スーパージャンクションでは、n柱で電流を流し、横の空乏で耐圧を受ける
Section titled “スーパージャンクションでは、n柱で電流を流し、横の空乏で耐圧を受ける”スーパージャンクションMOSFET(SJ-MOSFET)は、ドリフト層にn柱とp柱を交互に形成します1。オフのときは隣り合う柱の電荷が互いを補償し、空乏層が横方向にも広がって耐圧を確保します。この電荷補償の考え方によって、プレーナ型より高いドーピング濃度でも高耐圧を確保しやすくなります。濃度を高くしたn柱は、オンのときの電流路です。
得られる利点は2通りに使えます。同じ耐圧ならRDS(on)を下げやすく、同じRDS(on)ならチップ面積を小さくしやすくなります。
Infineonは、高耐圧パワーMOSFETのCoolMOSをスーパージャンクションの原理に沿って設計し、その原理は横型パワーMOSFETで数十年使われてきたRESURFの考え方に基づくとしています3。同社が原理の文献に挙げるのは、T. Fujihira氏が1997年にJpn. J. Appl. Phys. 36巻6254〜6262ページで発表した理論論文です。
n柱とp柱の電荷が釣り合わないと、耐圧もオン抵抗の利点も十分に得られない
Section titled “n柱とp柱の電荷が釣り合わないと、耐圧もオン抵抗の利点も十分に得られない”n柱とp柱の不純物量が釣り合っているとき、横方向の空乏が最も素直に広がります。釣り合いが崩れると、余った側の電荷が電界を偏らせて耐圧が落ちます。ロームは、SJ構造は製造難度が高く、p柱とn柱の電荷バランスが崩れると耐圧やオン抵抗のメリットが十分に得られないとしています1。柱の濃度と幅には、製造のばらつきを含めて厳しい精度が要ります。
深い柱を作る工程も要り、ここが従来のドリフト層との費用の差になります。柱を細かくするほど抵抗は下がりますが、ばらつきの余裕が狭まります。耐圧を上げるほど柱を深くすることになり、加工の難度が上がります。
チップを小さくできるぶん、ゲート電荷と出力容量を減らしやすい
Section titled “チップを小さくできるぶん、ゲート電荷と出力容量を減らしやすい”同じをより小さなチップで作れることは、ゲート総電荷や出力容量を減らすうえで有利です1。逆にチップを大きくしてオン抵抗を下げると、容量とゲート電荷が増える引き換えになります。
SJ-MOSFETはの電圧依存性が大きい素子です。小信号のの一点値だけでは、ターンオンのときのエネルギーやリンギングの出やすさを十分に表せないことがあります。ロームは、出力電荷や出力容量に蓄えられるエネルギーまで見ると、回路での見え方に近い比較ができるとしています。
低ノイズを重視するときの基本は、とを必要以上に急峻にしないことです。ロームは、ミラー区間を支配するゲート-ドレイン間電荷や有効の振る舞いを調整し、場合によっては高周波成分にだけ作用する内部スナバ的な構造や、適切な内部ゲート抵抗の設定で、電圧と電流の立ち上がりを穏やかにする方法を挙げています。
600〜800V級の電源で使われ、ボディダイオードの逆回復が損失と雑音を左右する
Section titled “600〜800V級の電源で使われ、ボディダイオードの逆回復が損失と雑音を左右する”スーパージャンクションMOSFETは、600〜800 V級で使われます1。ロームは、商用電源を入力とするAC-DC電源、PFC、LLC、フライバック、各種産業電源で、効率の向上と小型化の両立に大きく寄与するとしています。
ロームは、ボディダイオードの逆回復時間が短く、逆回復電荷が小さいことも挙げています。同期整流やブリッジ回路では、この2つが損失と雑音を左右します。短いと小さいを狙う作り込みでは、ボディダイオード近くのキャリア蓄積を抑え、ライフタイムや再結合を最適化します1。対向する素子がターンオンするときに引き抜く電荷が減り、転流の損失や過渡のストレスを軽くしやすくなります。
ただしが短くても、ピーク逆回復電流が大きければノイズや電圧スパイクは抑えにくく、が小さくても電流が急に途切れる波形ならリンギングの原因になるとロームは指摘しています。逆回復の適性は、の一語ではなく、、、測定条件、実機の波形まで含めて決まります。
さらに高い耐圧では、材料を替える道があります。4H-SiCの理想値は (Ω・cm²)で2、Siのnチャネルの係数5.93×10⁻⁹と比べると、同じ耐圧で約3,000分の1に当たります。SiC MOSFETとスーパージャンクションは、耐圧と費用で選び分けます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”スーパージャンクションとは何ですか?
n型とp型の柱を交互に並べて電荷を互いに補償する、パワーMOSFETのドリフト層構造です。縦へ電流を流しながら、オフのときは空乏層を横方向にも広げて耐圧を確保します。
なぜオン抵抗が下がるのですか?
横からも空乏が進むので、プレーナ型より高い不純物濃度のn柱で耐圧を保てます。濃度が高いほどオンのときの抵抗が下がり、同じ耐圧ならオン抵抗を、同じオン抵抗ならチップ面積を小さくしやすくなります。
従来構造の限界はどのくらいですか?
Siのnチャネルの理想特性オン抵抗は5.93×10⁻⁹・BV^2.5 (Ω・cm²) で、耐圧の2.5乗で増えます。耐圧を2倍にすると約5.7倍です。
どの耐圧で使いますか?
600〜800V級で使われます。ロームは、AC-DC電源、PFC、LLC、フライバックなど商用電源を入力とする電源で、効率向上と小型化の両立に大きく寄与するとしています。
電荷補償とは何ですか?
隣り合うn柱とp柱の不純物量を釣り合わせ、互いの電荷を打ち消すことです。この釣り合いが崩れると、耐圧もオン抵抗の利点も十分に得られません。
ボディダイオードの特性はどうですか?
ロームは、逆回復時間trrが短く逆回復電荷Qrrが小さいことを挙げています。ボディダイオード近くのキャリア蓄積やライフタイムを作り込み、引き抜く電荷を減らす設計です。
SiC とはどちらを選びますか?
4H-SiCの理想値は1.96×10⁻¹²・BV^2.5 (Ω・cm²) で、Siのnチャネルの約3,000分の1です。より高い耐圧では材料を替える道が有利になり、耐圧と費用で選び分けます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- パワーMOSFETとは── この構造が載る素子
- 特性オン抵抗とは── 効果を測る指標
- 耐圧とは── 柱が受け持つ量
- SiC MOSFETとは── 材料を替える別の道
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- 2群馬大学:パワーMOSFETの基礎(松田順一)kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp ab
- 3Infineon Technologies:CoolMOS C3 900V アプリケーションノートinfineon.com ↩