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アバランシェ耐量とは

アバランシェ耐量とは、素子の耐圧を超える電圧がかかったときに、壊れずに吸収できるエネルギーの上限です。 データシートでは単発アバランシェエネルギー EAS として与えられます。

インダクタンスを含む負荷を切ると、逆起電力が耐圧を越えます。実際の回路でこの状態が繰り返し起きるので、耐量が定格として並びます。壊れ方の1つは、素子の中に潜む寄生 NPN トランジスタがオンして制御を失うことです。定格の数字は 25 ℃ を起点にしているので、熱い回路ではそのまま使えません。

インダクタンスを切ると、逆起電力が耐圧を超える

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アバランシェが起きる回路
電源インダクタンス LMOSFETオフにする逆起電力が耐圧を超える吸収できる上限が EAS
インダクタンスを含む回路でMOSFETをオフにすると、逆起電力が耐圧を超えてかかり、そのエネルギーをMOSFETが受け止めます。

インジェクタやイグナイタで MOSFET をオフすると、インダクタンス成分の逆起電力が耐圧を超えて印加されます。この状態がアバランシェ状態で、このとき許容されるエネルギーが絶対最大定格の単発アバランシェエネルギー EAS です1。繰り返しアバランシェ電流と繰り返しアバランシェエネルギーも定格として並びます。

アバランシェの間、素子には逆向きの電流が流れます。Infineonは、この電流が大きな電力を消費して温度を上げ、素子を壊しうるとしています2。

耐圧に近づくと、増倍係数が 6 乗で跳ね上がる

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増倍係数の立ち上がり
約1.02約1.4約3.80.50.80.95BV1ドレイン電圧 VD(耐圧 BV に対する比)増倍係数 M
M = 1 / (1 − (VD/BV)⁶) は耐圧の半分ではほぼ1のまま平らで、0.8倍で約1.4、0.95倍で約3.8と、耐圧の直前で急に立ち上がります。

アバランシェ破壊の条件は、増倍係数 MM の発散です3。M=11−(VD/BV)6M = \frac{1}{1 - \left(V_\mathrm{D}/\mathrm{BV}\right)^6} なので、ドレイン電圧が耐圧の 0.8 倍のとき MM はおよそ 1.4 倍、0.95 倍のときおよそ 3.8 倍になります。同じ式に耐圧の 0.5 倍を当てはめると、MM は約 1.02 でほとんど増えません。6 乗という指数が耐圧の近くで増倍を跳ね上げるため、設計の余裕をどこに取るかはこの曲線の形から決まります。

電流が p ベースの電位を上げると、寄生 NPN がオンして制御を失う

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壊れる経路
ソース電極n+ ソースp+p ベースn− ドリフト層ドレイン電極寄生 NPN(n+/p/n−)n+ と p+ を短絡接合の曲がり:電界最大アバランシェ電流RPB
電界が最も強いのは接合の曲がりです。アバランシェの電流がpベースを通ってソース電極へ抜けるとき、抵抗RPBでの電圧が寄生NPNを順バイアスすると、トランジスタがオンして素子は制御を失います。

アバランシェはセルのどこでも同じには起きません。電界には放射方向の成分があるので、素子内部の電界は接合が曲がる所で最も強くなります2。アバランシェで増えた電流は p ベースの抵抗を通るので、そこで電位が上がります。

急峻なドレイン電圧変化は、変位電流 iD=CDB⋅dVD/dti_\mathrm{D} = C_\mathrm{DB}\cdot dV_\mathrm{D}/dt を流します3。この電流が p ベース内に作る電圧が N+ と p ベースの間のビルトイン電位 VbiV_\mathrm{bi} に達すると、寄生 NPN トランジスタがオンします。すると耐圧は BVCBO\mathrm{BV}_\mathrm{CBO} から BVCEO\mathrm{BV}_\mathrm{CEO} へ下がり、デバイスは破壊に至ります。寄生トランジスタがオンするとスイッチの制御が失われ、結果は破局的になりえます。

対策は p ベースの電位を上げないことです。p ベースの抵抗 RPB を下げるほど、この経路は起きにくくなります。セルではソース電極が n+ 層と p+ 層に接して短絡し、寄生バイポーラの動作を抑えます。

EAS は、スタートチャネル温度 25 ℃ での単発の上限

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EAS は、スタートチャネル温度 25 ℃、チャネル温度 150 ℃ 以下という条件で与えられます。そのため使用環境のスタートチャネル温度へ換算して使う必要があります1。換算の図がアバランシェディレーティング曲線で、印加可能なアバランシェエネルギーを算出し、印加されるエネルギーと比べます。85 ℃ や 125 ℃ で動く回路では、曲線を辿った値が実際の上限です。

測り方にも癖があります。Infineonは、素子の電圧と電流の瞬時値を測って積分すると、アバランシェエネルギーをより正確に読めるとしています。測ったエネルギーはアバランシェ降伏電圧に依存し、その降伏電圧は放電の間に温度が上がることで変わりやすいとも述べています。

耐量を上げる手は、どれも別のものを払う

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p ベースの抵抗を下げれば寄生 NPN がオンしにくくなり、耐量が上がります。その代わりコンタクトの面積が要り、セルを細かくする余地が狭まります。耐圧に余裕を取れば増倍係数の跳ね上がりから離れられますが、同じ面積でのオン抵抗は高くなります。クランプ回路を足せばアバランシェそのものを避けられるものの、部品と損失が増えます。

アバランシェ耐量とは何ですか?

素子の耐圧を超える電圧がかかったときに、壊れずに吸収できるエネルギーの上限です。データシートでは単発アバランシェエネルギー EAS として与えられます。

いつ起きるのですか?

インジェクタやイグナイタで MOSFET をオフし、インダクタンス成分の逆起電力が耐圧を超えて印加されたときです。素子を逆向きに流れる電流が大きな電力を消費し、温度を上げます。

素子は何で壊れるのですか?

変位電流が p ベース内に作る電圧がビルトイン電位 Vbi に達すると寄生 NPN トランジスタがオンし、耐圧が BVCBO から BVCEO へ下がって破壊に至ります。寄生トランジスタがオンするとスイッチの制御が失われます。

増倍係数とは何ですか?

M = 1 / (1 − (VD/BV)⁶) で表されます。ドレイン電圧が耐圧の 0.8 倍で約 1.4 倍、0.95 倍で約 3.8 倍になります。

EAS の条件は何ですか?

スタートチャネル温度 25 ℃、チャネル温度 150 ℃ 以下です。測るときは、素子の電圧と電流の瞬時値を掛けて積分すると精度よく求まります。

高温では減りますか?

減ります。アバランシェディレーティング曲線で、使用環境のスタートチャネル温度での値へ換算します。

設計で耐量を上げる手はありますか?

p ベースの抵抗を下げると、寄生 NPN がオンしにくくなります。ソース電極で n+ 層と p+ 層を短絡して寄生動作を抑えるので、セル構造とコンタクトの作り方が要点になります。

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