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パワーMOSFETとは

パワーMOSFETとは、電力を流すMOS型のスイッチング素子です。 多数キャリアだけで導通するため、切ればすぐ電流が止まり、高い周波数で切り替えられます。代わりに、耐圧を受け持つドリフト層が導通時の抵抗にもなるため、耐圧を上げるほどオン抵抗が急に増えます。製品系列と構造が耐圧帯ごとに分かれるのはこのためで、品種選びはどの抵抗成分を削った構造かを見ることから始まります。

多数キャリアだけで導通するので、切ればすぐ電流が止まる

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スイッチング電源やモータ駆動では、素子を毎秒何万回も開閉します。1回の開閉で失う電力に回数を掛けたものがスイッチング損失なので、速く切り替えられるほど、同じ周波数なら損失が減り、同じ損失なら周波数を上げられます。

パワーMOSFETでは、導通中はチャネルを通る多数キャリアだけが電流を運び、切るときはゲートの電荷を抜けばチャネルが消えて電流が止まります。少数キャリアを注入する素子では、導通中にドリフト層へ溜め込んだキャリアが消えるまで電流が流れ続け、その分だけ切れるのが遅れます。そちらは低い電圧降下と引き換えに切り替えの速さを差し出した構造で、パワーMOSFETは逆の選択をしています。

使い分けはおおまかに耐圧と周波数で決まり、低い耐圧で高い周波数を求める領域をパワーMOSFETが、高い耐圧で大電流を流す領域をIGBTが受け持ちます。境目は用途と世代で動きます。

縦型にすると、ドリフト層を厚くして耐圧を稼げる

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縦型の断面と抵抗成分
ソースゲートp層ドリフト層n+基板ドレインRN+RchRJ-FETRdriftRsub
縦型では、上面のソースと裏面のドレインの間を、電流がチップを貫いて流れます。通る区間ごとに抵抗があり、その足し算がオン抵抗になります。

MOSFETには、電流が半導体表面に平行に流れる横型と、垂直に流れる縦型があります。横型は、実用レベルでVDSS(ドレイン・ソース間電圧の定格、つまり耐圧)が100〜200V程度までにとどまります1。高い電圧と大きな電流を1つの素子で受け持つには、この向きだと厳しくなります。

縦型では、ソースとゲートがチップの上面、ドレインが基板の裏面にあり、電流はチップを貫くように流れます。電流経路を広く確保でき、ドリフト層を厚く設計できるため高耐圧化が容易で、低オン抵抗と高耐圧を両立しやすく、パワー用途に適しています。ドリフト層は、ドレイン側にある濃度を低くしたシリコンの層で、オフのときに高い電圧を受け持つ部分です。耐圧はこの層を厚く低濃度にして得ますが、同じ層が導通時の抵抗そのものでもあります。パワーMOSFETという言葉が指しているのはこの縦型の作りで、信号を切り替える小さなMOSFETと名前は共通でも、断面の絵は別になります。

オン抵抗の大半は、低耐圧ではチャネルとJFET部、高耐圧ではドリフト層

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オン抵抗の内訳
40V品600V品10%40%40%1%20%80%Rch(チャネル)RJFETRdrift(ドリフト層)
東芝の代表例では、40Vの品種でチャネルとJFET部が半分を占め、600Vの品種ではドリフト層が8割を占めます。耐圧帯によって、削るべき抵抗が入れ替わります。

オン抵抗RDS(ON)(オンのときのドレイン・ソース間の抵抗)は、1つの抵抗というより、素子の中に並ぶいくつかの抵抗の足し算です。成分は、Rch(チャネル)、RJ-FET(電流経路を阻害するJFET部)、Rdrift(ドリフト層)、Rsub(基板)、RN+(N+層)です2。

どの成分が支配的になるかは、耐圧と構造で入れ替わります。プレーナ構造でVDSS=600Vの品種はRdriftが飛び抜けて大きく、次にRchが続きます。同じプレーナ構造でもVDSS=30Vの品種では、RchとRJ-FETの合計がRdriftを上回ります。トレンチ構造(U-MOS)の30V品では、RchとRdriftがほぼ同じ大きさになります。東芝が示す代表例では、40Vの品種でRch 10%・RJFET 40%・Rdrift 40%、600Vの品種でRch 1%・RJFET 20%・Rdrift 80%です1。

データシートに載るRDS(on)は、シリコンの中の抵抗だけではありません。ロームは、ドレインからソースまでの電流経路全体の抵抗で3、チャネルとドリフト領域に加えて、配線の金属と、リードフレーム、ボンディングワイヤ、Cuクリップ、端子といったパッケージの抵抗も含むとしています。パワーMOSFETは多数のセルを並列にした素子なので、ダイ面積が大きいほど並列の電流経路が増え、RDS(on)は下がる傾向にあります。そのため、パッケージを変えると載せられるダイの大きさとパッケージ自身の抵抗や熱のふるまいが変わり、どれも測られるRDS(on)に響きます。

どの抵抗を小さくするかで、構造が変わる

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3つの構造の断面
プレーナゲートトレンチゲートスーパージャンクションJFET部ゲート溝のゲートPピラードリフト層JFET抵抗が残るJFETがなくなるP-N層が交互に並ぶU-MOSDTMOS
トレンチゲートは溝にゲートを埋めてJFET部をなくし、スーパージャンクションはドリフト層にPピラーを柱状に入れて、同じ耐圧で低いオン抵抗を得ます。

どの成分が大きいかが耐圧帯で入れ替わるので、手を入れる場所も耐圧帯ごとに移ります。東芝は構造を3種類に分けています1。

プレーナゲート構造では、ドレイン電流はドレインからn層の表層を通り、反転層を経由してソースへ流れます。反転層は、ゲートに電圧をかけたときに表面へできる電流の通り道です。

トレンチゲート構造は、デバイスの表面から溝を掘りゲート電極を埋め込む構造です。微細化が可能で単位面積当たりのチャネル数を増やせ、電流経路を阻害するJFETが構造的になくなるため、JFET抵抗が大幅に削減されます。30V品でRchとRdriftがほぼ並ぶのは、RJ-FETが並びから消え、Rchも小さくなった結果です。

スーパージャンクション構造は、濃度を低くしたn層の一部にp層(Pピラー層)を柱状に形成し、P-N層を交互に配置する構造で、同じ耐圧であれば、より低いオン抵抗のMOSFETが実現できます。600V帯でドリフト層が8割を占める内訳を踏まえると、ここへ手を入れたときの伸びしろが大きいことが分かります。東芝の400V〜900V帯では、DTMOSがスーパージャンクション構造の系列です4。

構造を変えると、別の項目が代わりに大きくなります。U-MOS・π-MOS・DTMOSの特長を耐圧・低オン抵抗化・大電流化・高速化の項目で比べると5、U-MOSはゲートの容量Cissが増加するため高速スイッチングには不利になります。低いオン抵抗と速い切り替えは、同じ素子の中で引っ張り合います。

耐圧帯が変われば最適な構造も変わり、製品系列は耐圧で区分される

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同じ層が耐圧と抵抗の両方を左右する以上、狙う耐圧帯が切り替われば最適な構造も切り替わります。製品系列が耐圧で切られているのはそのためです。

Infineonは、12V〜40V、45V〜80V、85V〜300VのNチャネルパワーMOSFETに6、低中耐圧のファミリとしてOptiMOSとStrongIRFETを置いています。同社はこの2つを12Vから250Vと300Vまでの低中耐圧品、CoolMOSを500Vから900Vの高耐圧品と分類し、CoolMOSの品種の帯は500V〜950Vに及びます。提供形態はモジュール、ディスクリート、ベアダイの3種類です。Infineonは、NチャネルMOSFETの特性が電動の駆動系やモータから、シートの調整、サンルーフまでの幅広い車載用途に向くとしています。

三菱電機のパワーMOSFETモジュールは、定格電圧75V〜150V/定格電流100A〜300Aです7。同社のIGBTモジュールが650V〜2000Vの帯にいるのと比べると、両者が受け持つ領域の違いがそのまま数字に出ています。低耐圧品の使い方の例として、Renesasが示した3kW・400V入力48V出力の変換器は、二次側に80V・2.4 mΩのMOSFETを8個使います。

ゲートの容量と配線のインダクタンスが、切り替えの速さを決める

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切るときにゲートの電荷を抜く以上、入れるときも切るときも、ゲートへ電荷を送り込み、また引き抜く時間の分だけ待つことになります。その電荷の行き先が、素子の中にできる容量です。データシートに載る3つの容量8は次のとおりです。

  • 入力容量Ciss(CgdとCgsの和)。遅れ時間に関わり、大きいほど遅れが長くなります。
  • 帰還容量Crss(Cgdそのもの)。高速化のためには低容量化が必要で、大きいとドレイン電流の立ち上がり特性が悪化し、スイッチング損失が増えます。
  • 出力容量Coss(CgdとCdsの和)。ターンオフ特性と軽負荷損失に関わり、大きいほどターンオフのdv/dtが小さくなってノイズには有利になる一方、軽負荷時の損失は増えます。

Ciss・Crss・Cossは、いずれもスイッチング特性に影響します。U-MOSで増えるのは、この入力容量です。カタログのオン抵抗だけを比べて品種を選ぶと、この側面が抜け落ちます。

オン抵抗がミリオーム級まで下がると、素子の外も効いてきます。ロームは、大電流のスイッチングと、基板とパッケージの寄生インダクタンス(共通ソースインダクタンス)でソースの電位が揺れ、チャネルにかかるゲート・ソース間電圧が実質的に下がり、導通が悪くなるおそれがあるとしています3。対策として、電力用のソース端子とゲート駆動の基準のソース端子を分けたケルビンソースのパッケージや、ゲートの戻り経路を電力の電流ループから分けた基板配線が有効な場合があるとしています。

内蔵ダイオードとアバランシェ耐量も、データシートで比べる

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データシートの電気的特性には、MOSFET本体の項目に続いて、ドレイン・ソース間のボディーダイオードの項目が並びます。ドレイン逆電流の連続値IDRとパルス値IDRP、ダイオードの順方向電圧VDSF、逆回復時間trr、逆回復電荷量Qrrです9。trrとQrrは、このダイオードが順方向から逆方向へ切り替わるときにかかる時間と、そのあいだに流れる電荷です。溜め込んだキャリアが消えるまで待つという事情は、内蔵ダイオードの側にも当てはまります。品種どうしでスイッチングの速さを比べるときは、MOSFET本体の容量とあわせて、この項目まで含めて比べます。

耐圧VDSSは、そこまでなら安全という線引きであると同時に、超えたときの規定も別に用意されています。一定のエネルギーとドレイン電流の範囲内で、かつ定格チャネル温度Tch以下であれば、定格VDSSを超える電圧がかかっても破壊に至らずに済む能力10をアバランシェ耐量と呼び、アバランシェエネルギーとアバランシェ電流という項目があります。アバランシェ耐量が保証の対象になるかどうかは製品ごとに別で、耐圧の数字だけを比べて品種を選ぶと、この規定の有無を取りこぼします。

パワーMOSFETとは何ですか?

電力を流すMOS型のスイッチング素子です。多数キャリアだけで導通するため、蓄積したキャリアを取り除く時間が要らず、高い周波数で切り替えられます。

IGBTとどう使い分けますか?

おおまかには耐圧と周波数で区分されます。低い耐圧で高い周波数を求める領域はパワーMOSFET、高い耐圧で大電流を流す領域はIGBTが受け持ちます。境目は用途と世代で動きます。

なぜ高速に切り替えられるのですか?

導通に多数キャリアだけを使うためです。少数キャリアを注入する素子では、切るときに蓄積したキャリアが消えるまで電流が流れ続けます。この待ち時間が不要な分、切り替えが速くなります。

耐圧を上げると何が起きますか?

オン抵抗が急に増えます。耐圧はドリフト層を厚く低濃度にすることで得ますが、その層は導通時の抵抗そのものでもあり、東芝の代表例では600V品のオン抵抗の80%をドリフト層が占めます。

どんな耐圧帯がありますか?

InfineonのNチャネルパワーMOSFETには、12V〜40V、45V〜80V、85V〜300VのOptiMOSとStrongIRFET、および500V〜950VのCoolMOSがあります。三菱電機のパワーMOSFETモジュールは、定格電圧75V〜150V/定格電流100A〜300Aです。

製品系列が耐圧で区分されるのはなぜですか?

耐圧帯ごとに最適な構造が異なるためです。Infineonは、低中耐圧側にOptiMOSとStrongIRFETのファミリ、高耐圧側にCoolMOSを用意しています。

横型と縦型はどう違いますか?

電流の向きが別です。横型は電流が半導体表面に平行に流れ、実用レベルではVDSSが100〜200V程度までです。縦型はソースとゲートがチップの上面、ドレインが基板の裏面にあって電流が垂直に流れ、ドリフト層を厚く設計できるため、低オン抵抗と高耐圧を両立しやすくなります。

オン抵抗はどこの抵抗ですか?

素子の中のいくつかの抵抗の足し算で、成分はRch(チャネル)、RJ-FET、Rdrift(ドリフト層)、Rsub(基板)、RN+です。東芝が示す代表例では、40Vの品種でRch 10%・RJFET 40%・Rdrift 40%、600Vの品種でRch 1%・RJFET 20%・Rdrift 80%です。データシートの値には、配線の金属やパッケージの抵抗も含まれます。

スーパージャンクション構造とは何ですか?

濃度を低くしたn層の一部にp層(Pピラー層)を柱状に形成し、P-N層を交互に配置する構造です。同じ耐圧であれば、より低いオン抵抗のMOSFETが実現できます。東芝の400V〜900V帯では、DTMOSがこの構造の系列です。

データシートのCiss・Crss・Cossは何ですか?

ゲートまわりの容量です。入力容量CissはCgdとCgsの和、帰還容量CrssはCgd、出力容量CossはCgdとCdsの和です。Cissが大きいほど遅れ時間が長く、Crssが大きいとドレイン電流の立ち上がり特性が悪化し、Cossが大きいとターンオフのdv/dtが小さくなる代わりに軽負荷時の損失が増えます。

ボディーダイオードとは何ですか?

パワーMOSFETのドレイン・ソース間にあるダイオードです。電気的特性には、ドレイン逆電流IDRとIDRP、ダイオードの順方向電圧VDSF、逆回復時間trr、逆回復電荷量Qrrがあります。スイッチングの速さを品種間で比べるときは、この項目まで含めて比べます。

アバランシェ耐量とは何ですか?

一定のエネルギーとドレイン電流の範囲内で、定格チャネル温度Tch以下であれば、定格VDSSを超える電圧がかかっても破壊に至らずに済む能力を指します。アバランシェエネルギーとアバランシェ電流という項目があり、保証の対象になるかどうかは製品ごとに別なので、データシートで確かめます。

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    三菱電機:Power Modulesmitsubishielectric.com ↩
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