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トレンチゲートとは

トレンチゲートとは、ゲート電極を溝の中へ埋め込み、電流を縦へまっすぐ流すパワー MOSFET の構造です。 プレーナ型では、隣り合う p ベースの間に電流が絞られる場所が生じます。溝へ埋めるとこの絞りが構造から消え、セルも細かくできるので、同じ面積でより多くの電流を流せます。代わりに溝の底へ電界が集まり、ゲート酸化膜の信頼性が新しい上限になります。SiC では、この底の電界を抑える構造を組み込んだ素子が量産されています。

溝へ埋めると、8成分のうちJFET抵抗が消える

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電流の通り道とセル幅
プレーナ型トレンチ型WG=3.0μmJFET抵抗の領域Wcell=4.6μmWcell=2.5μmゲートpベースnドリフト電流
プレーナ型では、電流がpベースに挟まれた領域を通るところがJFET抵抗になります。トレンチ型では電流が溝の側壁に沿って縦に流れ、この領域がなくなり、セル幅も4.6μmから2.5μmへ縮みます。

VD-MOSFET の特性オン抵抗は、RCS・RN+・RCH・RA・RJFET・RD・RSUB・RCD の 8 つの成分の和です1。RCS はソース・コンタクト抵抗、RN+ はソース N+ 抵抗、RCH はチャネル抵抗、RA は蓄積抵抗、RJFET は JFET 抵抗、RD はドリフト抵抗、RSUB は基板抵抗、RCD はドレイン・コンタクト抵抗を指します。

このうち RJFET は、隣り合う p ベースが作る狭い通り道の抵抗です。ゲートを溝へ埋めると、この成分が構造から消えます。トレンチ構造は Si-MOSFET では広く採用されています2。

60 V 級では、3.20×10⁻⁴から2.52×10⁻⁴ Ω・cm²へ下がる

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60V級の特性オン抵抗
VD-MOSFETRD 71.0%3.20×10⁻⁴ Ω・cm²RA 9.9%RSUB 8.0%RCH 6.4%RJFET 4.2%U-MOSFET2.52×10⁻⁴ Ω・cm²
60V級のVD-MOSFETではドリフト抵抗が71.0%を占め、JFET抵抗は4.2%です。トレンチ型のU-MOSFETは、同じ尺度で合計が2.52×10⁻⁴Ω・cm²まで短くなります。

BVDS = 60 V の VD-MOSFET では、特性オン抵抗の合計が 3.20×10⁻⁴ Ω・cm² です1。WG = 3.0 μm、Wcell = 4.6 μm のときの最小値で、内訳は RD が 71.0 %、RA が 9.9 %、RSUB が 8.0 %、RCH が 6.4 %、RJFET が 4.2 % です。

同じ 60 V 級の U-MOSFET は、合計 2.52×10⁻⁴ Ω・cm²、セル幅 Wcell = 2.5 μm です。JFET の成分がなくなり、セルも細かくなります。2つの合計に当てはめると下げ幅は約21 %で、RJFET が占めていた 4.2 % より大きくなります。

溝の底に電界が集まり、長期信頼性が課題になる

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溝の底の電界を抑える構造
シングルトレンチ底を丸めて厚膜化ダブルトレンチ電界集中厚い底部の酸化膜丸めた底ソースの溝ゲート電極ゲート酸化膜ソース電極半導体
一般的なシングルトレンチでは、ゲートの溝の底に電界が集まります。底を丸めて底部の酸化膜を厚くする方法と、ソース側にも溝を設けるダブルトレンチが、この集中を和らげます。

一般的なシングルトレンチ構造では、ゲートトレンチの底部に電界が集中し、長期信頼性に課題がありました2。SiC-MOSFETでもトレンチ構造はオン抵抗の低減に有効なことから注目されていました。

サンケン電気は、トレンチゲート端部のゲート酸化膜にかかる電界を緩和するため、高エネルギー注入による Deep P 領域を設けました3。トレンチ底部へラウンディング加工を施して電界集中を抑え、オフ時にゲート酸化膜中の電界強度を設定値以下へ保つよう膜厚を選んでいます。トレンチ側部に対して底部のゲート酸化膜を厚くすることで、帰還容量を 56 % 低減したと同社はしています。

ロームが開発したダブルトレンチ構造は、ソース部分にもトレンチ構造を設けてゲートトレンチ底部の電界集中を緩和し2、長期信頼性を確保して量産化につなげたと同社はしています。

SiCのトレンチ型は、ロームの比較でオン抵抗を約50%、入力容量を約35%下げた

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ロームは、トレンチゲート構造を採用した SiC MOSFET を世界で初めて量産しているとしており、同社の第三世代にあたります。このダブルトレンチ構造の製品は、量産中だった第2世代のプレーナ型(DMOS構造)に比べて、オン抵抗を約50%、入力容量を約35%低減しています2。

サンケン電気は、Gen.1 のプレーナ型から Gen.2 のトレンチ型へ移り、狭セルピッチによる面積効率の向上を得ました。ドリフト抵抗の低減のため N ドリフト層の上部へ高濃度変調層を配し、短チャネル効果によるしきい値電圧の動きが小さいチャネル長と P 層濃度をシミュレーションから選んでいます。これらの技術で、1200 V / 100 A 級の SiC MOSFET で面積オン抵抗 3.5 mΩ・cm² を実現したとしています。

オン抵抗を下げる代わりに、底の電界と駆動の電力を負う

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溝へ埋めれば JFET の成分がなくなり、セルも細かくできるのでオン抵抗が下がります。その代わり溝の底へ電界が集まり、ゲート酸化膜の信頼性が新しい上限になります。底の膜を厚くすれば帰還容量は下がりますが、工程が増えます。セルを細かくするほど抵抗は下がるものの、ゲート容量が増えて駆動の電力が上がります。ドリフト層側で抵抗を下げるスーパージャンクションとは、抵抗のどの成分を削るかが違います。

トレンチゲートとは何ですか?

ゲート電極を溝の中へ埋め込み、電流を縦へまっすぐ流すパワー MOSFET の構造です。表面のゲートが作る狭い通り道が構造から消えます。

プレーナ型と何が異なりますか?

プレーナ型では隣り合う p ベースの間で電流が絞られ、JFET 抵抗という成分が生じます。溝へ埋めると、この成分がなくなり、セル幅も 4.6 μm から 2.5 μm へ縮められます。

オン抵抗はいくつの成分でできていますか?

VD-MOSFET の特性オン抵抗は、RCS・RN+・RCH・RA・RJFET・RD・RSUB・RCD の 8 成分の和です。60 V 級ではドリフト抵抗 RD が 71.0 % を占めます。

どのくらい下がりますか?

60 V 級で、VD-MOSFET が 3.20×10⁻⁴ Ω・cm²、U-MOSFET が 2.52×10⁻⁴ Ω・cm² です。

溝の底には何が起きますか?

電界が集まり、ゲート酸化膜の長期信頼性が課題になります。サンケン電気は底部のラウンディング加工と Deep P 領域で、ロームはソース側にも溝を掘るダブルトレンチ構造で電界集中を抑えました。

容量はどうなりますか?

サンケン電気は、底部のゲート酸化膜を側部より厚くして帰還容量を 56 % 低減したとしています。ロームは、ダブルトレンチ構造の SiC-MOSFET で入力容量をプレーナ型より約 35 % 下げたとしています。

SiC でも使いますか?

使います。ロームはトレンチゲート構造の SiC-MOSFET を世界で初めて量産したとしており、サンケン電気は Gen.2 のトレンチ型で面積オン抵抗 3.5 mΩ・cm² を 1200 V / 100 A 級で実現したとしています。

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