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しきい値電圧とは

しきい値電圧(Vth)とは、チャネルが反転してドレイン電流が立ち上がるゲート電圧です。 フラットバンド電圧、フェルミポテンシャルと真性フェルミポテンシャルの差の2倍、単位面積あたりの空乏層電荷を単位面積あたりのゲート絶縁膜容量で割った項の3つの和で表され、微細化で変わるのは3つ目だけです。

ゲート長を縮めるとしきい値電圧が下がることも、同じ設計の素子で1個ずつ値に違いが出ることも、どちらも空乏層の電荷が原因です。

3つの項のうち、ゲート長で動くのは空乏層電荷の項

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しきい値電圧と3つの項
ゲート電圧オンオフVth対数で見た電流の立ち上がり位置Vth を動かす3つの項フラットバンド電圧フェルミポテンシャル 2φB空乏層電荷 QB / Cox短チャネルで小さくなるのは3つ目基板バイアスもこの項を変える
しきい値電圧は、対数で見た電流の立ち上がり位置です。フラットバンド電圧、フェルミポテンシャルの2倍、そして空乏層電荷をゲート絶縁膜容量で割った項の和になり、短チャネルで縮むのは3つ目です。

3つの項のうち1、フラットバンド電圧とフェルミポテンシャルの項は材料と不純物濃度で定まる量で、ゲート長への依存はごくわずかです。3つ目だけが幾何に依存します。空乏層電荷は、ゲートの真下にどれだけの空乏層があるかで決まり、その取り分が微細化で減ります。

短チャネルでは、ソースとドレインがゲートの空乏層を取り合う

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チャネル領域の空乏層は、ゲート、ソース、ドレインで取り合う形になり、この2次元的な取り合いをチャージシェアリングと呼びます。長チャネルではゲート直下の空乏層のほとんどをゲートが制御しますが、短チャネルではソースとドレイン、特に逆バイアスのドレインからの空乏層が広がり、ゲートが制御できる空乏層が相対的に減ります。

その結果、3つ目の項が長チャネルより小さくなり、しきい値電圧が下がります。この低下をVthロールオフと呼び、狭い意味での短チャネル効果はこれを指します。

基板端子も同じ項を変えます。基板バイアスをかけると空乏層幅が変わって空乏層電荷が変わり、逆バイアスではしきい値電圧が上がり、順バイアスでは下がります。短チャネルでは、この基板バイアス係数も小さくなります。

不純物約200個に、7%程度のばらつきが付く

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ロールオフとばらつき
短い長い高い低いゲート長しきい値電圧Vth ロールオフばらつきも同時に増えるLg 65nm・Wg 100nm・1e18 cm^-3空乏層 30nm に入る不純物は約200個ばらつき割合は 7% 程度σVtは1/√(Lg·Wg)に比例
ゲート長を詰めるとしきい値電圧が落ちます。同時に、しきい値を左右する不純物の個数そのものが減り、200個に対して7%程度のばらつきが付きます。

ゲート長65nm、チャネル幅100nm、基板不純物濃度1e18 cm^-3の場合、ゲート下の空乏層厚30nmに含まれる不純物は約200個です1。同じ設計寸法のトランジスタに含まれるドーパント原子の数はポアソン分布に従うので、標準偏差は平均値の平方根になり、ばらつきの割合は7%程度になります。

しきい値ばらつきは、ゲート長とチャネル幅の積の平方根の逆数に比例して増加します。その比例係数はPelgrom係数と呼ばれ、作製テクノロジー固有のばらつき強度の指標として使われます。ランダムドーパントゆらぎが微細化の障害になるのは、この平方根の働き方のためです。

FinFETがチャネルに不純物をドーピングしない構造なのは、この原因を根本から取り除くためです。FinFETではランダムドーパントゆらぎを基本的になくせますが、金属ゲートの結晶粒ごとの仕事関数のばらつきは残ります。

先端世代では、金属の仕事関数で作り分ける

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産業技術総合研究所の研究グループは2026年に公開した論文で、ゲート長20nmのGAAFETについて、しきい値電圧をおよそ+0.2Vにするにはn形で4.47eV、−0.2Vにするにはp形で4.77eVの実効仕事関数が要るとしています2。チャネルの不純物濃度でそろえる手からは離れ、仕事関数金属の種類と厚みで作り分ける形になりました。

産総研の八木下淳史氏は、Poly-Siゲートの空乏化が電気的なゲート絶縁膜の厚膜化を招くことを、Gate-Firstの欠点に数えています3。しきい値電圧を金属側で作るには、まず置換メタルゲートで工程順を入れ替える必要がありました。

高くすれば漏れが減り、低くすれば速く動く

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しきい値電圧を高くすれば待機時の漏れ電流は減り、低くすれば同じ電源電圧で速く動きます。高くすれば駆動電流が、低くすればオフリーク電流が悪くなります。プロセス担当は、ゲート長ごとのVthロールオフと、約200個の不純物が生むばらつきを合わせて見積もり、品種ごとにしきい値電圧を決めます。

しきい値電圧とは何ですか?

トランジスタのチャネルが反転してドレイン電流が立ち上がるゲート電圧です。フラットバンド電圧、フェルミポテンシャルと真性フェルミポテンシャルの差の2倍、単位面積あたりの空乏層電荷をゲート絶縁膜容量で割った項の和で表されます。

なぜゲート長を詰めると下がるのですか?

チャージシェアリングです。チャネル領域の空乏層はゲート、ソース、ドレインで取り合う形になり、短チャネルでは逆バイアスのドレインからの空乏層が広がって、ゲートが制御できる空乏層が相対的に減ります。その結果、空乏層電荷の項が小さくなり、しきい値電圧が下がります。

Vthロールオフとは何ですか?

しきい値電圧をゲート長に対してプロットしたときに、短チャネル領域で見られるしきい値電圧の低下のことです。

基板バイアスで動かせますか?

変わります。基板バイアスをかけると空乏層幅が変わって空乏層電荷が変わり、逆バイアスではしきい値電圧が上がり、順バイアスでは下がります。

どのくらいばらつきますか?

ゲート長65nm、チャネル幅100nm、基板不純物濃度1e18 cm^-3の場合、ゲート下の空乏層厚30nmに含まれる不純物は約200個で、その数はポアソン分布に従うので、ばらつきの割合は7%程度になります。

ばらつきはどんな式で増えますか?

しきい値のばらつきは、ゲート長とチャネル幅の積の平方根に反比例して大きくなります。その比例係数をPelgrom係数と呼びます。

先端世代ではどうやって作り分けますか?

金属の仕事関数で調整します。産総研の研究グループは2026年に公開した論文で、ゲート長20nmでしきい値電圧±0.2Vを得るには、n形GAAFETで4.47eV、p形GAAFETで4.77eVの実効仕事関数が必要だとしています。

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