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ダイポール層とは

ダイポール層とは、ゲート絶縁膜のSiO2界面層と高誘電率膜のあいだに金属酸化物を原子層の厚さで挟み、電荷の偏り(分極)でしきい値電圧を調整する層です。 1層の材料の選び方で、トランジスタの動作条件が決まります。

材料を選ぶだけでは済みません。2nm世代以降のGAA構造では、ダイポール層を入れる隙間が10nm程度以下しかなく、従来の材料は薄い膜厚でもしきい値電圧が大きく動きすぎるため、細かい調整が難しいままでした。

10nm程度以下のナノシート間隔に、ゲートスタックごと収める

Section titled “10nm程度以下のナノシート間隔に、ゲートスタックごと収める”
ゲートスタックの中の位置
金属ゲート高誘電率膜層(HfO2など)ダイポール層SiO2界面層Si0.2nm電荷の偏りでしきい値電圧を調整
ダイポール層は、SiO2界面層と高誘電率膜のあいだに原子層レベルの厚さで挟み、電荷の偏りでしきい値電圧を調整します。

ダイポール層は、SiO2界面層と高誘電率膜(HfO2など)のあいだに、別の金属酸化物を原子層レベルの厚さで挟んで1作ります。使う金属元素は、ランタン(La)やアルミニウムが主流です。

2nm世代以降のGAA構造トランジスタでは、10nm程度以下の狭いナノシート間隔にゲートスタック全体を収める必要があり、ダイポール層もごく薄くしなければなりません。

La・Alは0.2nmでも効きすぎ、Tiを添加すると小さく設定できる

Section titled “La・Alは0.2nmでも効きすぎ、Tiを添加すると小さく設定できる”
膜厚としきい値電圧の変化
00.20.40.60.8nm-0.300.3VAl2O3La2O3TiO2La2O3とAl2O3は薄くても大きく動く
La・Alの酸化物は薄い膜厚でもしきい値電圧が大きく変わりますが、電気的に中性なTiO2はほぼ一定のままです。

La・Alの酸化物は、最も薄い0.2nmでもしきい値電圧が大きく変わり1、それより厚くすると変化が飽和するので、膜厚で細かく調整することが困難です。一方、電気的に中性なチタン(Ti)酸化物は、膜厚を増やしてもしきい値電圧がほぼ一定のまま保たれます。

研究グループは、La・AlにTiを添加した酸化物をダイポール層に使い、一原子層レベルの0.2nmの膜厚でもしきい値電圧の変化を小さく設定できることを実測で示しました。

界面層を0.8nmから0.2nmへ薄くし、容量換算膜厚0.9nmに届いた

Section titled “界面層を0.8nmから0.2nmへ薄くし、容量換算膜厚0.9nmに届いた”

研究グループは、SiO2界面層を、オゾン水を使う従来の手法での0.8nmから0.2nmまで薄くする技術も同時に開発しました。0.2nmのダイポール層が容量換算膜厚に与える影響は無視できるほど小さく、この薄層化技術と両立します。両者を合わせて、ゲートスタック全体の容量換算膜厚0.9nmを達成しました。IRDSロードマップが2nm世代以降に求める目標値と一致します。

しきい値電圧で、速さと省電力の配分をトランジスタごとに決める

Section titled “しきい値電圧で、速さと省電力の配分をトランジスタごとに決める”

この成果は、GAA構造トランジスタの微細化と、動作条件(動作速度優先か省消費電力優先か)の精密な制御2を可能にする技術です。しきい値電圧を小さく設定すればオン時の電流が増えて高速に動く一方、オフ時の漏れ電流が増えます。大きく設定すれば逆になります。集積回路の中の個々のトランジスタについてこの配分を細かく設定すれば、性能を保ちながら消費電力を抑えられます3。

効きの強い材料は制御しにくく、中性の材料は単体では効きが小さい

Section titled “効きの強い材料は制御しにくく、中性の材料は単体では効きが小さい”

ダイポール層を精密に作り分ければ、トランジスタごとに速度優先か省電力優先かを細かく設定できます。その代わり、GAA構造のナノシート間隔という限られた隙間に、界面層、高誘電率膜、ダイポール層をすべて収める必要があり、1層あたりの厚さはさらに薄くなります。La・Alのように分極の効果が強い材料は変化が大きい分だけ制御が難しく、TiO2のような中性の材料は制御しやすい分だけ単体では効果が小さくなります。

ダイポール層とは何ですか?

ゲート絶縁膜のSiO2界面層と高誘電率膜のあいだに、別の金属酸化物を原子層レベルの厚さで挟み、電荷の偏り(分極)を作ってしきい値電圧を調整する層です。

どんな材料を使いますか?

ランタン(La)やアルミニウム(Al)の酸化物を使う技術が主流です。

従来の材料の課題は何ですか?

La・Alの酸化物は、最も薄い0.2nmでもしきい値電圧が大きく変わり、それより厚くすると変化が飽和するので、膜厚で細かく調整するのが難しいことです。

どう解決したのですか?

電気的に中性なチタン(Ti)酸化物をLa・Alへ添加したダイポール層を開発し、一原子層レベルの膜厚0.2nmでもしきい値変化を小さく設定できることを実測で示しました。

なぜ薄い膜厚が求められるのですか?

2nm世代以降のGAA構造トランジスタでは、10nm程度以下の狭いナノシート間隔にゲートスタック全体を形成する必要があるためです。

容量換算膜厚はどこまで薄くなりましたか?

同時に開発したSiO2界面層の薄層化技術と合わせて、容量換算膜厚0.9nmを達成しました。これはIRDSロードマップが2nm世代以降に求める目標値です。

しきい値電圧を動かして何に使うのですか?

個々のトランジスタの動作速度優先か省電力優先かのバランスを、しきい値電圧で細かく設定するために使います。

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