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ハロー注入とは

ハロー注入とは、MOSトランジスタのソースドレインエクステンションを取り囲むように、チャネルと同じ導電型で濃度の高い領域を作る注入です。 この領域をHaloまたはポケットと呼びます。チャネル全体の濃度を上げると、どのゲート長でもしきい値電圧が上がってしまいます。ハロー注入は濃度を横方向に作り込み、短いゲートだけに効かせます。補償を強めるほど、不純物ゆらぎによるVthのばらつきが大きくなります。

短いゲートでは、ドレインの空乏層がゲートの取り分を奪う

Section titled “短いゲートでは、ドレインの空乏層がゲートの取り分を奪う”

MOSFETのチャネル長が短くなって静電特性に現れる諸現象を短チャネル効果と呼び、ゲート長が100ナノメートルより短くなった現在、これを抑えることが微細化技術の最重要課題です1。狭い意味では、ゲート長を短くしたときのしきい値電圧(Vth)の低下を指します。ゲート長を横軸にVthを描いたとき、短チャネル側で落ち込む部分がVthロールオフです。

チャネル領域の空乏層はゲート、ソース、ドレインで取り合う形になり、この2次元的な取り合いをチャージシェアリングと呼びます。短チャネルでは逆バイアスのドレインから空乏層が広がり、ゲートが制御できる空乏層が相対的に減ります。同じ広がりが、オフリーク電流の増大とサブスレッショルド係数の劣化も招きます。ソースドレインの端が近づいてチャネル領域にかかるゲート電界が弱まり、しきい値電圧が下がる現象2とも説明されます。製造側が抑える対象は、ドレイン側から伸びてくる空乏層です。

チャネル全体を濃くすると、長いゲートのVthまで上がる

Section titled “チャネル全体を濃くすると、長いゲートのVthまで上がる”

Vthはゲート電極の仕事関数、ゲート絶縁膜容量、基板濃度で決まり、チャネル注入の量を増やすとVthが高くなります3。チャネルドープは、ゲート電極直下のチャネル領域に5E12ions/cm2未満の少ないドーズ量を正確に注入して、しきい値電圧を制御することです4。1つのLSIの中に、速度を優先する低Vthのトランジスタと待機時の電流を抑える高Vthのトランジスタを作り分けるときも、振り分けはチャネル注入量で決まります。

この方法で短チャネル効果を抑えると、3つの問題が出ます。活性領域の表面へドーピングして基板濃度を高めると、すべてのチャネル長でVthが大きくなり1、濃度が高いぶんVthのばらつきも大きくなります。サブスレッショルド係数はS=2.3(kTq)(1+CdmCox)S=2.3\left(\frac{kT}{q}\right)\left(1+\frac{C_\mathrm{dm}}{C_\mathrm{ox}}\right)で表されるので、基板濃度を上げて空乏層容量CdmC_\mathrm{dm}が相対的に大きくなると、係数も大きくなります。さらに、イオン化不純物散乱でキャリアの移動度が下がります。

深さ方向で工夫する方法もあります。チャネル表面から少し奥の濃度を高くした分布をレトログレードプロファイルと呼び、表面側の濃度を低く保てるのでVthが上がりすぎず、空乏層の伸びが深い高濃度層で止まるので短チャネル効果を抑えられます。チャネルの深い側にドーパント濃度のピークを置き、表面側を低く抑えた急峻な分布は、SSR(Super Steep Retrograde)チャネルプロファイルとも呼ばれます。作り方は多段注入で、高エネルギー注入機が使えるようになってからウェルを多段注入で作る方法が主流になりました5。深いほど濃度が高いこの分布から、レトログレードウェルと呼ばれます。

ハローは両端だけを濃くするので、短いゲートほど強く効く

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Halo構造ではチャネル両端の不純物濃度が高くなり、チャネル長が短くなるほど寄与が大きくなります6。従来はチャネル長が短くなるとVthが下がる短チャネル効果でリーク電流が増えていましたが、この構造では短チャネル領域でVthが上がる逆短チャネル効果が生じ、微細なトランジスタでも狙ったVthを保てます。

ゲートを加工した後に斜めからイオンを打ち込み、チャネル表面より深い側のソースとドレインの接合付近に濃度の高い部分を局所的に作ると、ドレインから伸びる空乏層を抑えられます1。ゲートが短いほど左右の高濃度領域が重なり合い、短チャネルのMOSFETではチャネル濃度が実効的に上がります。ヘイローを適切に設計すれば、Vthロールオフを打ち消して広いゲート長にわたって均一なVthが得られます。濃度をゲート長に応じて変えられる点が、チャネル注入との違いです。

ゲート長としきい値電圧
しきい値電圧 Vthゲート長短い長いチャネル全面ドープハローありハローなし(ロールオフ)逆短チャネル効果
チャネル全面を濃くすると長いゲートまでVthが上がります。ハローは短いゲートの側だけでVthを持ち上げ、ロールオフを打ち消します。

ゲートを作ってから傾けて打つので、位置はゲート端で決まる

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斜め注入でできるハロー
ゲート斜めイオン注入ツイストを回して再注入ソースドレインエクステンションハロー(ポケット)シリコン基板
ゲートを作った後に傾けて打つと、イオンはゲート端の下に回り込み、エクステンションの先端を囲むハローがゲートに合わせて決まります。反対側はツイスト角を回して打ち直します。

順序が構造を決めます。Halo構造はゲート電極形成後に斜めイオン注入を行うことで、セルフアラインで形成できます6。ゲートを作った後に斜めから入れるので、追加のマスク合わせなしで、ゲート端に対する位置が決まります。

Halo注入は、イクステンション部を囲む形に作る、ウェルや基板よりも不純物濃度の高い領域のための注入で2、ウェーハを傾けた大チルト角注入で行います。Pocket注入は、イクステンション部の下側に作る同じ性質の領域で、ゲート電極をチャネル部で厚く、ポケット注入部で薄くしたうえで打ち込みます。機能はPocket注入と同等で、Halo注入には生産プロセスとしてメリットがあります。

斜めイオン注入7はウェハに傾斜をつけてイオンを注入する技術で、トレンチの側壁やゲート電極下のチャネル端に不純物を入れるために使います。一方向からの注入だけでは非対称性が出るので、ツイスト角を変化させて注入するステップ注入を用います。ソース側とドレイン側で同じ濃度を作るには、ツイスト角を回した分だけ注入を重ねます。角度の基準の取り方はチャネリングと同じ系です。

ドーズ量は、同じイオン注入の中では中位です。チャネルドープが5E12ions/cm2未満、LDDが1E13ions/cm2近辺8、ソース/ドレインが5E14ions/cm2超です9。ハローはエクステンションを取り囲んで打ち消しにかかる領域なので、作用の強さはエクステンションの濃度との比で決まります。

補償を強めるほど、Vthのばらつきが増える

Section titled “補償を強めるほど、Vthのばらつきが増える”

ポケット注入MOSFETをTSUPREMで作ったメッシュからMEDICIでゲート長ごとのVthを計算した研究は10、ポケットの濃度のピークと、ソース側・ドレイン側からチャネル中央へ伸びる長さを、ドーズ量、注入エネルギー、チルト角で制御できるとしています。同じ研究は、逆短チャネル効果を50 nmのゲート長までこれらのプロセス条件でよく制御できたとしています。

1つ目の調整項目はチルト角です。角度を大きくするほどビームはゲート電極の下に回り込み、チャネル端の奥まで領域が届いて補償が強くなります。代わりに非対称性が出るので、ツイスト角を回して注入する回数が増えます。角度を小さくするとステップ注入の回数と影は減りますが、届く位置が浅くなってロールオフの補償が弱まります。

2つ目はドーズ量です。増やせば逆短チャネル効果が強くなり、短いゲートのVthを上げられますが、チャネル端のドーパント数が増えて不純物ゆらぎによるばらつきが大きくなります。減らせばばらつきは小さくなりますが、ロールオフが元に戻っていきます。

ゲート下の空乏層に入る不純物の数
ゲート空乏層ゲート長 65 nm30 nm幅 100 nm基板濃度 10¹⁸ cm⁻³不純物 約200個ばらつき 約7%
ゲート長65 nm、幅100 nm、空乏層厚30 nmの体積に入る不純物は約200個しかなく、数のゆらぎだけで約7%のばらつきになります。

ばらつきの大きさは不純物の数で決まります。ゲート長65ナノメートル、チャネル幅100ナノメートル、基板不純物濃度が1立方センチメートルあたり10の18乗個の場合、ゲート下の空乏層厚30ナノメートルに含まれる不純物数NNは約200個です1。同じ設計寸法のトランジスタに含まれるドーパント原子数はポアソン分布に従い、平均NNに対して標準偏差がN\sqrt{N}になるので、この寸法ではばらつきの割合N/N\sqrt{N}/Nが7パーセント程度になります。しきい値のばらつきσVt\sigma_{V_\mathrm{t}}はゲート幅とゲート長の積の平方根に反比例して大きくなり、その比例係数AVtA_{V_\mathrm{t}}は、製造技術ごとのばらつきの強さを表すPelgrom係数として広く使われています。チャネル中のドーパント数が数個のレベルになると、統計的なばらつきによる離散分布になり、Vthがばらつきます11。

重イオンと熱の抑制で急峻さを保つと、装置と活性化率に負担が来る

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3つ目の調整項目はイオン種です。微細なMOSFETの特性はチャネルやドレインの不純物分布に極めて敏感で、イオン注入でもエネルギー、ドーズ、注入角度など多くのパラメータを高い精度で制御する必要があります。住友重機械マテリアルソリューションズは、急峻なハローやレトログレードウェルを精度よく作るためにInやSbといった重イオンの注入が必要な場面も増えているとし12、撮像素子向けではメタルコンタミネーションの極小化も求められているとしています。同社の中電流イオン注入装置MC3-Ⅱは、3〜960キロエレクトロンボルトの注入エネルギーと重イオン注入に対応しています。重い元素にするほど分布は急峻に保てますが、注入装置は重イオン対応と角度精度を持つものに限られます。

4つ目は後の工程の熱です。ハローの急峻さは、後の熱処理で鈍ります。注入で作った点欠陥がアニールの立ち上がりでドーパントを余計に拡散させる仕組みが、過渡増速拡散(TED)です。熱を減らせば急峻さを保てますが、活性化率が下がってシート抵抗が上がります。熱処理の合計は熱バジェットで見積もります。

チャネルを真性にすれば、ゆらぎの原因そのものが減る

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薄膜SOIやfin構造のようにチャネルを真性にすれば、不純物ゆらぎは回避できます11。FinFETはチャネルに不純物をドーピングしないので、バルクプレーナMOSFETでの主なばらつき原因だったランダムドーパントゆらぎを基本的になくせます1。代わりに、立体構造へ均一にドーピングするという別の課題が生じます。

二次元の濃度分布とゲート長ごとのVthで確かめる

Section titled “二次元の濃度分布とゲート長ごとのVthで確かめる”

ハローは横方向の作り込みなので、測る面も横方向へ広げます。SCM(走査型キャパシタンス顕微鏡)は、先端が尖った針とサンプルのあいだに発生する局所的な容量を測ってキャリアの導電型と濃度を求める手法で13、二次元キャリアマップを描きます。

電気的には、ゲート長を変えたときのVthのカーブで確かめます。ロールオフが残っていればカーブは短いゲート側で下がり、補償が強すぎれば上がりすぎます。注入条件から作った分布をTCADのデバイス計算に渡しても、同じカーブを描けます。ばらつきの強さは、σVt\sigma_{V_\mathrm{t}}をゲート幅とゲート長の積の平方根の逆数に対してプロットしたPelgromプロットの傾きで比べます。

ハロー注入とは何ですか?

MOSトランジスタのソースドレインエクステンションを取り囲むように、チャネルと同じ導電型で濃度の高い領域を作る注入です。この領域をHaloまたはポケットと呼び、ゲート電極を作った後に斜めイオン注入を行うことでセルフアラインに形成できます。

ポケット注入との違いは何ですか?

Halo注入はウェーハを傾けた大チルト角注入で行います。Pocket注入はエクステンション部の下に作る領域で、ゲート電極をチャネル領域で厚く、ポケット注入領域で薄くして打ち込みます。機能は同等で、Halo注入には生産プロセスとしてメリットがあります。

何が直るのですか?

ゲート長が短いほどしきい値電圧が落ちるVthロールオフです。Halo構造ではチャネル両端の不純物濃度が高くなり、チャネル長が短いほど寄与が大きくなるので、短チャネル領域でVthが上がる逆短チャネル効果が働き、微細なトランジスタでも狙ったVthを保てます。

チャネル注入で濃度を上げるのとどう違いますか?

効く範囲が違います。活性領域の表面へドーピングして基板濃度を高めると、すべてのチャネル長でVthが大きくなります。ハローはゲート端の局所だけを濃くするので、短いゲート長のところだけに作用します。

何を調整しますか?

チルト角、ドーズ量、注入エネルギーで、ポケットの濃度のピークとチャネル中央へ伸びる長さを制御します。一方向からの注入だけでは非対称性が出るので、ツイスト角を変えて注入するステップ注入を用います。急峻なハローを精度よく作るため、InやSbといった重イオンの注入が必要な場面も増えています。

欠点は何ですか?

しきい値電圧のばらつきです。ゲート長65ナノメートル、チャネル幅100ナノメートル、基板不純物濃度が1立方センチメートルあたり10の18乗個の場合、ゲート下の空乏層厚30ナノメートルに含まれる不純物は約200個で、ばらつきの割合は7パーセント程度になります。

横方向の作り込みは何で測りますか?

二次元のキャリア分布を測ります。SCM(走査型キャパシタンス顕微鏡)は、先端が尖った針と試料のあいだの局所的な容量からキャリアの導電型と濃度を求め、二次元キャリアマップを描きます。電気的には、ゲート長を振ったVthのカーブで補償の強さを追います。

  • エクステンションとは── 浅く濃く作るのがエクステンション、その周りを囲んで短チャネル効果を打ち消すのがハロー
  • ウェルとは── 深さ方向のレトログレード分布で抑えるのがウェル、横方向で抑えるのがハロー
  • FinFETとは── ハローで補償するのではなく、チャネルを真性のままにする構造
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