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ミリ秒アニールとは

ミリ秒アニールとは、ウェーハの表面をミリ秒の単位だけ高温にして、ドーパントを深さ方向への拡散を抑えながら活性化する熱処理です。 キセノンフラッシュランプの閃光を使う方式が代表的で、フラッシュランプアニールとも呼びます。温度を上げると活性化と同時に拡散も進むので、高温にいる時間を短くして拡散を抑えます。時間を削った分、深い層の加熱と欠陥の回復は別の工程に任せることになります。

温度を上げると活性化と拡散が同時に進むので、高温の時間を削る

Section titled “温度を上げると活性化と拡散が同時に進むので、高温の時間を削る”

注入したイオンをドナーやアクセプタとして働かせるには、注入原子を格子位置へ入れる必要があります1。活性化アニールは、注入原子を格子位置へ入れると同時に、注入で発生した格子間原子や空孔を回復させる熱処理です。高濃度で打ち込んで注入領域がアモルファス化した場合は、アモルファスと単結晶の界面から固相成長して結晶化しつつ、ドーパントが格子位置へ入ります。

温度が高いほど活性化率は上がりますが、同時にドーパントが深さ方向へ拡散します。温度を上げると結晶回復や原子の再配置が速まる一方、拡散や失活反応も進みます。先端デバイスでは、拡散の抑制と活性化を両立させるために、高温でミリ秒程度の短時間の熱処理が用いられ、浅い接合を保ちながら活性化を進めます。

熱バジェットは熱処理工程の総和で、高温でも加熱時間が短ければ小さく、比較的低温でも加熱時間が長ければ大きくなります2。そのため温度と時間の両方で考える必要があります。

下部ランプで700〜1000℃に置き、フラッシュで表面だけ550℃上乗せする

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ミリ秒アニールの温度履歴
温度(℃)時間7001000+550℃フラッシュ 1×10⁵℃/秒以上表面のピーク下部ランプ50〜150℃/秒中間温度
下部ランプがウェーハ全体を700〜1000℃の中間温度まで運び、フラッシュランプがその上に表面だけ+550℃の細い針を立てます。表面が最高温度にいるのは、フラッシュが光っているあいだだけです。

ミリ秒アニールの装置は、ウェーハ全体と表面の温度を別々に持ちます。キヤノンマーケティングジャパンは、mattson Millios Rapid Thermal Annealerの適応プロセス温度を、中間温度700〜1000℃、フラッシュランプによる温度+550℃としています3。昇温レートは下部ランプで50〜150℃/秒、フラッシュランプで1×10の5乗℃/秒以上です。ウェーハサイズは300mm、標準プロセスでのスループットは55枚/時、熱処理設定時間は10秒以下で、スパイクアニールとミリ秒アニールを続けて実行できるとしています。同社は同機を32nmプロセス以降の次世代デバイス向けと位置づけ、同一装置内でスパイクアニールとのプロセスインテグレーションを実現したとしています。

下部ランプで秒のオーダーかけてウェーハ全体を700〜1000℃へ運び、そこから表面だけをさらに550℃引き上げます。引き上げの速さは下部ランプの1000倍近くになります。Mattsonは、Milliosを独自の水冷壁アルゴンアークランプ技術に基づく装置とし4、ミリ秒アニールの要求を満たしながらウェーハの熱応力を管理し、ウェーハの割れを避けられるとしています。

発光が短いので熱は表層にとどまり、パルス幅が深さを決める

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ほかの熱源は照射対象全体を加熱しますが、フラッシュランプは極短時間の発光なので、照射対象の表層付近だけを選択的に加熱できます5。ウシオ電機は、フラッシュランプによる光加熱を、物質の反射・透過・吸収のうち吸収の特性を使って対象を自己加熱させるもの6と説明し、パルス幅を制御して加熱の深さを変え、基板への熱ダメージを抑えて表層だけを加熱できるとしています。波長がシリコンの吸収特性に合っていて効率よく昇温でき、大面積基板に一括照射できる点も同社の挙げる特長です。

深さ方向の温度
温度表面からの深さ表面中間温度短いパルス長いパルス高温の層
フラッシュの瞬間に中間温度より高くなるのは表面付近だけです。パルス幅を短くするほど高温の層は薄く、長くするほど熱は深くまで届きます。

SCREENセミコンダクターソリューションズは、フラッシュランプアニール装置LA-3100が瞬間発光するキセノンフラッシュランプからの数ミリ秒の光照射でウェーハの表面温度を昇降温し、低いサーマルバジェットの熱処理ができるとしています7。同社は、ソース・ドレインへ注入した不純物を高く活性化しつつ濃度プロファイルも精密に制御でき、枚葉方式なので厳しく管理された低酸素雰囲気でアニールできるとしています。

数ミリ秒の温度履歴は、速い放射温度計で追う

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LA-3100は照射中のウェーハ温度を実測する機能を新たに備えており、装置を選ぶときの比較項目になります。mattson Milliosは表面と裏面の両方に超高速のラジオメータを配置し、裏面側では放射率をリアルタイムに補正します。温度で管理する工程では、数ミリ秒で終わる温度履歴を追える時間分解能の計器が必要です。

中間温度とパルス幅は、どちらを動かしても反対側に負担が来る

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中間温度を上げると表面の到達温度もその分上がり、フラッシュで加える温度が減ります。ただし、ウェーハ全体が長く高温にさらされるので、イオン注入で作った分布はその時間の分だけ動きます。下げると全体の熱の総量は減りますが、同じ表面温度に届かせるためにフラッシュの負担が増えます。中間温度を動かす速さは、mattson Milliosでは50〜150℃/秒という下部ランプの昇温レートで決まります。

フラッシュ側は、パルス幅を通じて加熱の深さを動かします。幅を広げれば熱の届く深さが増え、下の層まで温度が上がる代わりに、拡散する時間も長くなります。幅を詰めれば表層だけに絞れる代わりに、同じ温度へ届かせるための瞬間の投入エネルギーが増えます。

固相のまま再成長させると、平衡を超えた濃度を格子に残せる

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固相のままの再成長
注入直後フラッシュランプアニール後元の界面アモルファス層単結晶Si注入した不純物再成長の向き
注入でアモルファスになった層は、フラッシュランプアニールで界面から表面へ向かって固相のまま結晶に戻ります。セレンを注入した例では、不純物は再分布せずに同じ深さに残り、約70%が置換位置に入ります。

固溶度は8、ある温度で固相に平衡溶解できる不純物濃度です。平衡へ近づく処理では活性濃度の目安になりますが、固相の再成長でも平衡固溶度を超える準安定な取り込み9が得られています。この研究は、従来のRTAとパルスレーザーアニールの中間にあたるミリ秒域のフラッシュランプアニールで、固相エピタキシャル成長させる方法を提案しています。セレンを注入したSiでは、注入濃度が最大2.3%の試料で置換位置の割合が約70%に達し、ナノ秒のパルスレーザーで処理した試料より抵抗率が低く、キャリア移動度が高かったと報告しています。1.5 MeVのHeイオンを使ったRBS測定では、アニール後にセレンの再分布は見られませんでした。

この溶質捕獲を含め、最高温度だけでなく、パルス幅、昇降温、初期欠陥、後工程の熱履歴まで見る必要があります。Si:Pでは、後工程の加熱でSIMSの総濃度がほぼ同じでも活性キャリア濃度が下がる例があります10。短時間で残した準安定な活性状態は、後の熱で失われ得ます。

時間を削るほど、欠陥の回復と深い層の加熱は別の工程に頼る

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時間を短くすれば、格子間原子や空孔の回復に使える時間も同じだけ減ります。熱処理でできる二次欠陥には11、過剰な格子間原子による転位ループや、アモルファスと単結晶の界面にできるEOR欠陥があり、キャリアの生成再結合中心となって接合リーク電流の原因になります。ミリ秒アニールを入れた後に接合リークが変わったら、活性化率だけでなく、残ったEOR欠陥や転位ループなどを確認します。

熱が表層にとどまるので、ウェルのように深い層や裏面側の熱処理は、縦型炉アニールやRTAで行います。mattson Milliosがスパイクアニールとミリ秒アニールを同じ装置内で続けて実行できるのも、この2つを組み合わせて使うためです。ミリ秒アニールは秒単位のアニールを置き換えるものではなく、その上に追加する工程です。

浅い接合には抵抗が上がる副作用があり12、微細なトランジスタでは比較的深いソース・ドレイン拡散層に対して、チャネル端だけを浅くするエクステンション構造が使われます。接合の深さと抵抗の兼ね合いは、ミリ秒アニールでも残ります。

時間のスケールで並べると、拡散炉が数十分、RTAが秒、スパイクアニールが頂点で折り返す形、ミリ秒アニールが数ミリ秒、レーザアニールがさらに短い側になります。短いほど熱は表面へ集まり、深い層は前の工程で作りきる前提になります。工程表の組み方が、装置の選び方と一緒に決まります。

用途はエクステンションの活性化から、シリサイドとhigh-kまで広がる

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mattson Milliosの用途は、ソース・ドレインのエクステンションの活性化、ゲート空乏層の低減、ポリシリコンの粒径の制御です。ゲート空乏層の低減とは電極の中でドーパントを十分に活性化することで、レーザアニールやスパイクアニールで低温化したときに電極側の活性化が足りなくなる問題を、表面だけを一瞬加熱することで補います。Mattsonは、Milliosを先端トランジスタ製造での極浅接合の形成、high-k材料のパッシベーション、金属シリサイドの形成に最適な解と位置づけています4。

ウシオ電機がフラッシュランプの用途に挙げるのは、極浅接合層の形成、シリサイド形成、超極薄酸化膜の形成、アモルファスシリコンの結晶化、SiおよびSiC基板の活性化アニールです。

ミリ秒アニールとは何ですか?

表面をミリ秒の単位だけ高温へ持ち上げてドーパントを活性化する熱処理です。先端デバイスでは、拡散の抑制と活性化を両立させるために、高温でミリ秒程度の短時間の熱処理が用いられます。

なぜミリ秒まで短くするのですか?

高温は結晶回復とドーパントの再配置を速めますが、拡散と失活反応も進めます。時間を短くすると拡散距離を抑え、平衡へ戻る前の準安定な活性状態を残せるためです。

装置はどのくらいの温度と速さで動きますか?

キヤノンマーケティングジャパンはmattson Milliosについて、中間温度を700〜1000℃、フラッシュランプによる温度を+550℃、昇温レートを下部ランプで50〜150℃/秒、フラッシュランプで1×10の5乗℃/秒以上としています。

なぜ表面だけが熱くなるのですか?

発光時間が短いためです。ほかの熱源は対象全体を加熱しますが、フラッシュランプは極短時間の発光なので、表層付近だけを選択的に加熱できます。パルス幅を制御すれば加熱の深さも変えられます。

スパイクアニールの置き換えになりますか?

置き換えではなく上乗せとして使う構成があります。キヤノンマーケティングジャパンはmattson Milliosで同一装置内のスパイクアニールとのプロセスインテグレーションを実現したとしており、熱処理設定時間10秒以下でスパイクアニールとミリ秒アニールを続けて実行できます。

どの工程で使いますか?

mattson Milliosの用途はソース・ドレインのエクステンションの活性化、ゲート空乏層の低減、ポリシリコンの粒径の制御で、Mattsonは極浅接合、high-k材料のパッシベーション、金属シリサイドの形成も挙げています。ウシオ電機のフラッシュランプの用途は、極浅接合層の形成、シリサイド形成、超極薄酸化膜の形成、アモルファスシリコンの結晶化、SiとSiC基板の活性化アニールです。

時間を削ると困ることはありますか?

欠陥の回復に使える時間も減ります。活性化アニールは、注入原子を格子位置に入れると同時に、できた格子間原子や空孔を回復させる熱処理です。熱処理でできる二次欠陥は、キャリアの生成再結合中心となって接合リーク電流の原因になります。

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