ドーズ均一性とは
ドーズ均一性とは、同じレシピで打ち込んだ単位面積あたりのイオンの個数が、ウェーハ面内・ウェーハ間・装置間でどれだけそろっているかを表す指標です。 ドーズがばらつくと、しきい値電圧やシート抵抗がそろわなくなります。3つの層は原因も直すつまみも違うため、どの層の問題かを先に切り分けることが、均一性を上げる作業の出発点です。そろえるほど時間とビーム電流を払い、そろえた条件も数週間で流れていきます。
ばらつきは、ウェーハ内・ウェーハ間・装置間の3層に分かれる
Section titled “ばらつきは、ウェーハ内・ウェーハ間・装置間の3層に分かれる”ドーズはウェーハへ注入される単位面積あたりのイオンの個数で1、実際に注入された総個数はドーズ量にウェーハ面積を掛けた値です。注入均一性はイオン注入装置の能力を測るパラメータの1つで、シート抵抗やダメージ測定で測り2、ウェーハ面内に注入されたイオンの分布のそろい方とも言い換えられます。面内を測る場合はウェーハ内注入均一性と呼びます。同じ条件で処理した複数枚のシート抵抗値やダメージ値の平均のそろい方を見て、注入処理の再現性を確かめる2場合はウェーハ間注入均一性と呼びます。
現場では、ここへ装置間がもう1層加わります。ドーズ合わせこみは3、量産工場に複数の注入機がある場合に、どの装置で注入しても同じ特性が得られるようにする作業で、メーカーが異なる機差と、同じ機種の号機間の差の両方が対象です。合わせこみはドーズ係数を変えて行い、指標にはサーマルウェーブ、シート抵抗、デバイス特性データを使います。面内の偏りに係数を掛けても平均しか動かないので、層を取り違えると直す手が効きません。
注入は、前工程のばらつきを吸収する調整代にもなる
Section titled “注入は、前工程のばらつきを吸収する調整代にもなる”ドーズがずれると、活性化した後の濃度がずれます。濃度はシート抵抗を動かし、しきい値電圧を動かします。しかも注入は、自分のばらつきを持つだけでなく、前の工程のばらつきを吸収する調整代としても使われます。
APCは、対象工程より前のプロセスの情報をフィードフォワードして、ウェーハ間とウェーハ内の特性ばらつきを減らす仕組みです4。イオン注入では、ゲート酸化膜の厚みやゲート長の情報からハロー注入量を調整することで、しきい値電圧のばらつきを減らせます4。注入量はウェーハごとにも、ウェーハ内でも変えられます。住友重機械マテリアルソリューションズは、中電流イオン注入装置MC3-Ⅱに、他の工程で生じた不均一を補正して工程全体の生産性と歩留まりを上げる仕組み5としてMIND2.0システムを載せています。
ドーズ均一性は、自分の工程の出来ばえであると同時に、他工程の補正へ回せる余地でもあります。注入そのものが面内で偏っていれば、ドーパント活性化の後に残る分布は、前工程の補正と自分のばらつきが重なった形になります。切り分けはウェーハマップの形で行います。同心円なら回転や加熱の系、片側だけが低いなら走査や角度の系というように、形が原因の系統を指します。
測定は、低ドーズはサーマルウェーブ、高ドーズはシート抵抗
Section titled “測定は、低ドーズはサーマルウェーブ、高ドーズはシート抵抗”量産のラインでは、イオンの個数を、代わりになる2つの量へ置き換えて管理します。
1つ目はシート抵抗です。シート抵抗は薄膜やイオン注入で作った拡散層の電気抵抗6を表す量で、単位はΩ/sq、測定には一般に四探針法を使います。直線に並べた4本の針のうち外側の2本で電流を流し、内側の2本で電圧差を測ります。注入層の濃度と深さの両方で決まるので、イオン注入装置のQCに広く使われています。ただし電気的に働かせるには活性化アニールが必要なので、測る前に熱処理が1回入ります。
2つ目はサーマルウェーブで、基板へレーザ光を照射し、異なる波長のレーザ光で反射率を測ってその変化量をサーマルウェーブ値とする手法です7。結晶欠陥と反射率、注入量と欠陥のそれぞれに強い相関があるため、イオン注入装置のQC管理や面内均一性の計測に使えます。注入後のアニールを挟む前に測れるぶんシート抵抗より簡略に管理できる一方で、注入量が多くなると値が飽和する傾向にあるため、比較的低い注入量の領域で用います7。
面内分布は、平均値に加えて分布の形でも測ります。産業技術総合研究所の再生可能エネルギー研究センターは、結晶シリコン太陽電池向けの検討で、ボロン拡散層のシート抵抗の面内分布をヒストグラムで示し、イオン注入法による分布は熱拡散法(BBr3)に比べて面内均一性が非常に高いとしています8。同じ報告は、ボロン注入では高温の活性化アニールが要るため基板の酸素析出が課題になること、ランプアニールでプロセス中の酸素析出を抑えられることも挙げています。
面内のそろい方は、走査方式とビームの平行度で決まる
Section titled “面内のそろい方は、走査方式とビームの平行度で決まる”ビームの走らせ方には、静電スキャン、磁場スキャン、メカニカルスキャン、ハイブリッドスキャンがあります9。磁場スキャンは、電場を使う静電スキャンと比べてイオンビームと電子が分離されにくく、ビームの発散の要因になる空間電荷効果の点で有利なため、低エネルギーかつ大電流のビーム走査に適します10。中性化した粒子の注入を避けるために、磁場が0になる領域を注入へ使わず、オフセットをかけた磁場を使う場合もあります。
角度も面内の量を動かします。パラレルビームはウェーハ上のどの位置でも一定の角度で注入できるようにした平行なビームで11、電場または磁場の走査とコリメータを組み合わせて作ります。角度がばらつけば、チャネリングの入りやすさが面内で変わり、同じ個数を打っても深さ分布が変わります。日新イオン機器のEXCEEDシリーズは、±0.5度以下のビーム平行度制御、パラレルビーム、注入前の予想注入均一性チェック、エネルギーコンタミネーションの除去12を特長としています。
住友重機械マテリアルソリューションズは、MC3-Ⅱについて、左右対称なイオンビーム平行化光学系でビーム走査方向のビーム均質性と高精度なビーム平行度を確保し、ビーム軸とウェーハ面の交点を一定に保つ走査機構でウェーハ全面の注入均一性を実現しているとしています。最終段へ減速機構を配置してビームの広がりを抑え、独自の走査方式で注入位置を固定して均一性を上げた5とも述べています。All-in-One型のSAionについては13、それまでウェーハ面と異なる位置での計測値で代用していたビーム発散角や平行度を、イオン注入装置として初めて製品ウェーハ面上で計測して制御できるようにしたとし、メカニカルスループットは500枚/時としています。
測り方そのものにも分解能があります。プロファイルモニターは注入ターゲット付近でビーム形状を測る装置で14、均一性の計測だけでなく形状補正のフィードバックにも使います。1個のファラデーカップを動かして連続的に測る方法と、複数のファラデーカップを並べてほぼ同時に測る方法があり、後者は計測時間が短い一方で、隣り合うファラデーカップの間は計測できません14。そのため面内の細かい構造の分解能は、並んだカップの間隔で決まります。
最適条件は、数週間単位でドリフトする
Section titled “最適条件は、数週間単位でドリフトする”ドーズ均一性は、装置に固定された性能ではなく、時間とともに変わる量です。日新イオン機器の報告では、計画外を含むメンテナンスによるイオン源内部状態の急激な変化、長期運用による引出電極アパーチャの摩耗、ビームラインへのコンタミ蓄積といった現象の総体として、最適なビームチューニングパラメータのドリフトが数週間程度の期間に発生します15。同社は、実運用で得た約1万件のビームセットアップ履歴のうち9割を訓練用に使った機械学習でチューニングを自動最適化し、従来9割程度だったセットアップ正常終了率を、社内検証機の検証で安定して9割5分以上にできたとしています。イオン源パラメータと引出電極位置調整の分散も下がりました。
そのためドーズ均一性は、SPCのチャートへ載せて傾きを追う量になります。今日の1枚が規格の中に入っていることよりも、数週間かけて中心値がどちらへ動いているかが管理の対象です。装置マッチングの作業も、ドリフトの周期に合わせて繰り返す作業になります。
そろえる代償は、時間とビーム電流
Section titled “そろえる代償は、時間とビーム電流”ビームを平行にするほど、コリメータで角度のばらついた成分を落とすことになり、ウェーハへ届く電流は減ります。電流が減れば、同じドーズを入れるのに時間がかかります。走査の回数を増やして面内をならす方向も、そのまま注入時間へ乗ります。低エネルギーで大電流を流したい工程では空間電荷効果でビームが広がるため、低エネルギー大電流に適する磁場スキャンを選ぶことになりますが、電場より重い装置構成を抱えます。
計測でも同じ取引が起こります。複数のファラデーカップを並列に配置すれば短時間で測れる代わりに、カップの隙間は計測から抜けます。1個を動かせば連続した形が取れる代わりに、その時間だけ生産が止まります。物差しの側でも、アニールの前に測れるサーマルウェーブは高ドーズで飽和し、全域で使えるシート抵抗は熱処理を1本挟みます。
装置間の合わせこみには、到達点そのものに限りがあります。日新イオン機器は、機種が異なる場合はビーム径やビーム密度、スキャン方式が異なるため完全に合わせこむことは困難で、イオン種ごと、エネルギー領域ごとにドーズ係数を変えることもあるとしています3。そのため合わせこみの結果は、イオン種とエネルギー領域ごとの係数の表として管理します。レシピが増えるほど、この表を保つこと自体が工数になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ドーズ均一性とは何ですか?
同じレシピで打ち込んだ単位面積あたりのイオンの個数が、どれだけそろっているかを表す指標です。注入均一性はイオン注入装置の能力を測るパラメータの1つで、シート抵抗やダメージ測定で測ります。
ウェーハ内均一性とウェーハ間均一性は何が違いますか?
測る単位が違います。ウェーハ面内のイオン分布のそろい方がウェーハ内注入均一性で、同じ条件で注入した複数枚それぞれの平均値のそろい方を見て処理の再現性を確かめるのがウェーハ間注入均一性です。面内の偏りは走査とビームの作り方で動き、枚ごとのずれはビームの安定性で動きます。
現場では何を測って均一性を管理しますか?
シート抵抗とサーマルウェーブを使い分けます。シート抵抗は四探針法で測り、注入層の濃度と深さに依存するためQC法として広く使われます。サーマルウェーブはレーザ光の反射率の変化からダメージを測る手法で、アニールの前に測れるぶん簡略に管理できます。
サーマルウェーブはどこまで使えますか?
注入量が多くなるとサーマルウェーブ値が飽和する傾向にあるため、比較的低い注入量の領域で使います。高ドーズ側では、アニールを1本挟んでシート抵抗へ切り替えます。
面内をそろえるために装置は何をしていますか?
ビームを平行にして、走査の形を対称に保ちます。日新イオン機器のEXCEEDシリーズは、±0.5度以下のビーム平行度制御機能と、注入前の予想注入均一性チェック機能を特長としています。
装置が異なると同じ条件でも結果が動きますか?
動くことがあります。ドーズ合わせこみは、複数の注入機のどれで注入しても同じ特性が得られるようにドーズ係数を変える作業で、ビーム径やビーム密度やスキャン方式が異なると完全な合わせこみは困難なため、イオン種ごとやエネルギー領域ごとに係数を分けることもあります。
一度そろえれば、しばらくそのままですか?
数週間の単位で流れます。日新イオン機器は、イオン源内部状態の急激な変化や引出電極アパーチャの摩耗やビームラインへのコンタミ蓄積の総体として、最適なビームチューニングパラメータのドリフトが数週間程度の期間に発生すると報告しています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 均一性(面内・ウェーハ間・ロット間)とは── 工程を問わず使う一般的な指標。ドーズ均一性はそのイオン注入版
- 装置マッチングとは── 装置間のばらつきだけを合わせる作業
- 四探針法(シート抵抗)とは── ドーズ均一性の最も基本的な測定方法
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- 1日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー ドーズnissin-ion.co.jp ↩
- 2日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー 注入均一性nissin-ion.co.jp ab
- 3日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー ドーズ合わせこみnissin-ion.co.jp ab
- 4日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー APCnissin-ion.co.jp ab
- 5住友重機械マテリアルソリューションズ:中電流イオン注入装置 MC3-Ⅱ / MCshi-ms.com ab
- 6日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー シート抵抗nissin-ion.co.jp ↩
- 7日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー サーマルウェーブnissin-ion.co.jp ab
- 8産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター:イオン注入プロセスの特徴と課題(2019年成果ポスター)unit.aist.go.jp ↩
- 9日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー 用語一覧nissin-ion.co.jp ↩
- 10日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー 磁場スキャンnissin-ion.co.jp ↩
- 11日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー パラレルビームnissin-ion.co.jp ↩
- 12日新イオン機器:イオン注入サービスnissin-ion.co.jp ↩
- 13住友重機械マテリアルソリューションズ:All-in-One型イオン注入装置 SAionshi-ms.com ↩
- 14日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー プロファイルモニターnissin-ion.co.jp ab
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