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シャドウイングとは

シャドウイングとは、斜めに入るイオンビームがレジストやゲート電極の段差に遮られ、段差のきわだけ注入量が少なくなる現象です。 チャネリングを避けるためにビームを傾けると、その同じ角度がマスクのきわに幅のある帯を作り、そこだけドーズが減ります。角度を大きくすれば注入の質が上がる、というのは誤解です。ティルト角は、深さ方向の裾と平面方向の影の兼ね合いで決まります。

影の幅は、段差の高さにティルト角の正接を掛けた長さになる

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段差の高さと影の幅
マスクSi基板注入される領域影段差 1 µm影 約0.12 µm7度イオンビーム段差 2 µm影 約0.25 µm
同じ7度でも、段差が2倍なら影も2倍になります。高さ1マイクロメートルで約0.12マイクロメートル、2マイクロメートルで約0.25マイクロメートルです。

ウェーハ表面にパターンの段差があると、段差の周辺部に陰ができ、イオン注入の欠ける領域が生じます1。この現象はシャドゥ効果とも呼ばれ、DRAMメモリでは面内のデバイス特性ばらつきの問題になりました。

影の幅は、段差の高さにティルト角の正接を掛けた長さです。注入角度はチャネリングを避けるためにウェーハの結晶方向と違う角度に設定する必要があり、垂直から7度程度傾けることが多くあります2。7度に当てはめて計算すると、段差の高さが1マイクロメートルなら影の幅は約0.12マイクロメートル、2マイクロメートルなら約0.25マイクロメートルです。段差が厚いフォトレジストなら、影は開口の内側に0.1マイクロメートル台で入り込みます。イオン注入の角度は、ティルト角とツイスト角の2つで表します。影の幅はティルト角が、影の向きはツイスト角が決めます。

ウェーハの中心と端で入射角が2〜3度違えば、影の幅は約0.05マイクロメートル動く

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入射角と影の幅(段差1 µm)
影の幅入射角5.5度7度8.5度約0.096 µm約0.12 µm約0.149 µm3度の振れ約0.05 µm
高さ1マイクロメートルの段差では、入射角が5.5度から8.5度まで振れると、影の幅は約0.096マイクロメートルから約0.149マイクロメートルまで動きます。

ビームを静電走査する通常のイオン注入では、イオンのウェーハに対する入射角度がウェーハ中心と周辺部で2度から3度異なります1。7度を中心に3度の幅で振れるとして計算すると、高さ1マイクロメートルの段差では、入射角5.5度の場所で影の幅が約0.096マイクロメートル、8.5度の場所で約0.149マイクロメートルになり、差は約0.05マイクロメートルです。ドーズ量は同じでも、開口のきわ0.05マイクロメートル分の注入量が場所ごとに動き、ウェーハ端のチップだけドーズが目減りする面内分布になります。追い方は均一性の管理と同じ枠です。

この振れを消すのが平行ビームです。ウェーハ上の全ての位置で一定の角度で注入できるよう、平行なイオンビームを使います3。作り方には電場または磁場スキャンとコリメータを組み合わせる方法などがあり、最近の中電流イオン注入装置では主流です。コリメータは、入射した角度の大小に応じてビームを偏向し、どの角度で入ったビームも一定の方向に平行に出すよう設計されています4。面内の角度差が小さくなれば、影の幅の面内分布も小さくなります。代わりに、コリメータの分だけビームラインが長くなります。

ビームの向きの精度は、輸送制御システムが決め、ビーム計測系による平行度測定などで確かめられます5。面内分布そのものは注入均一性として管理し、シート抵抗やダメージ測定などで測ります6。シート抵抗の測定は四探針法です。

影の向きはツイスト角が決め、分割と回転でならす

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ツイスト角の分割(上から見た図)
ゲート電極注入される領域影一方向から注入ビーム反対側が影ツイストを4分割注入は4回
一方向からの注入では、ビームに背を向けた側のきわが影になります。ツイスト角を変えて4回に分けると四方のきわに不純物が入り、代わりに1枚あたりの注入時間が分割数だけ長くなります。

2つ目のばらつきはパターンの向きです。ツイスト角が影の向きを決めるので、同じチップの中でも、ビームに背を向けた側の段差だけ注入量が少なくなります。ウェーハを傾けて注入する技術は、トレンチの側壁やゲート電極下のチャネル端に不純物を入れるために使われます7。一方向からの注入だけでは非対称になるので、ツイスト角を変えて注入するステップ注入を使います。代わりに、1枚あたりの注入時間が分割数だけ伸び、スループットが落ちます。4分割なら、同じドーズを4回に割ることになります。

分割せずに角度を変え続ける方法もあります。シャドウイングを避ける方法の一つは、注入中にウェーハを回転させることです8。シャドウ効果の対策として、注入中にウェーハ自体がビームに対して回転し、広い範囲で注入角度を変えられるエンドステーションが開発されました1。この回転注入機構のエンドステーションは、半導体デバイスの性能を改善したとして1993年に市村産業賞を受賞しています。日新イオン機器の中電流イオン注入装置は、枚葉式のエンドステーションの回転注入機構で高精度かつ広範囲の注入角度で注入できる9ことを特徴とし、立体構造の注入分布の制御に使われます。設定できる角度の範囲が、この対策の限界になります。

偏りの量だけを取り出すなら、ツイスト角を180度変えた条件どうしの差を見比べる手が使えます。差がゼロへ近づくほど、影の向きの偏りが小さいことになります。装置側では、特定の注入条件とウェーハの種類を使えば、注入ドーズ量をモニタできる検査・測定システムで注入角度の影響を定量的に把握できます5。

ゲート電極をマスクにするハロー注入では、影がそのままVtのばらつきになる

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最も影響を受けやすいのは、ゲート電極そのものをマスクにする注入です。ハロー構造は、ゲート電極を作った後に斜めイオン注入を行うことで、セルフアラインに形成できます10。日新イオン機器は、中電流プロセスではハロー注入の角度精度がしきい値電圧Vtのばらつきを決める要因なので、最も高精度な注入角度制御が求められるとしています11。

影は開口のきわに限って生じます。そのため面内平均のシート抵抗より、DRAMの面内ばらつきやハロー注入のVtのような、デバイスの電気特性のほうが先に反応します。

ティルト角を小さくすれば影は縮み、チャネリングの裾が伸びる

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最初に調整するのはティルト角です。小さくするほど影は狭くなりますが、チャネリングの臨界角に近づきます。接合を浅く作る条件では、深さ方向にテールを引く分布になるので、チャネリングを抑える必要があります12。影と裾は、同じティルト角で逆向きに変わります。

段差そのものを低くする手もあります。SiCでは、チャネリングがSiC基板の部分に限って起こるため、同じ深さの分布を作る場合、通常の注入に比べてマスク厚さを3分の1以下にでき、コスト低減とパターン精度の向上が可能になる13とされています。影の幅は段差の高さに比例するので、この関係に当てはめると、厚さが3分の1なら影の幅も3分の1です。IMPHEAT-IIはイオンビームの角度制御性が極めて高いため、チャネリング技術を安定した量産プロセスとして採用できる13とされています。マスク厚を削る代わりに、角度制御の要求が一段上がります。

角度の精度を上げる開発も続いています。住友重機械工業の技報では、統合型イオン注入装置SAionは、FinFETやGAAのような立体構造の製造に必要なドーズ精度を満たし、ビーム角度や発散角の制御にも優れる装置14とされています。

高アスペクト比の立体構造では、直進するイオンで底や側壁を埋める手が行き詰まる

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段差が高く開口が狭いほど、影は開口の面積を食い潰します。FinFETのような立体構造では、フィンそのものが段差になり、状況がさらに複雑になる場合があります8。イオンビームは非常に優れた直進性を持つ一方、デバイス構造の三次元化で等方的に均一にドーピングする技術が求められ、finFETのfin領域やトレンチなどの高アスペクト比の構造に均一にドーピングする必要があります15。アスペクト比が上がるほど、直進するイオンで底や側壁を埋める手は行き詰まります。

そこで使われるのが、プラズマドーピングや、不純物を含む膜からの固相拡散です。FinFET以降の立体構造では、角度で影を減らす代わりに別の工程へ切り替える選択肢があります。影を狭める5つの手、すなわちティルト角、ツイスト角の分割、平行ビーム、回転、マスク厚は、どれも別の項目を悪化させます。

シャドウイングとは何ですか?

斜めに入るイオンビームがレジストやゲート電極の段差に遮られ、段差のきわだけ注入量が落ちる現象です。段差の周辺部に陰ができてイオン注入の欠ける領域が生じ、シャドゥ効果とも呼ばれます。DRAMメモリでは、面内のデバイス特性ばらつきの問題になりました。

影の幅はどのくらいになりますか?

段差の高さにティルト角の正接を掛けた長さです。注入角度は垂直から7度程度傾けることが多く、7度に当てはめて計算すると、段差の高さが1マイクロメートルなら約0.12マイクロメートル、2マイクロメートルなら約0.25マイクロメートルです。

面内で差が出るのはなぜですか?

入射角そのものが場所ごとに動くためです。ビームの静電走査では、ウェーハの中心と周辺部で入射角が2度から3度異なります。7度を中心に3度の幅で振れるとして計算すると、高さ1マイクロメートルの段差で影の幅は約0.096〜約0.149マイクロメートルになり、差は約0.05マイクロメートルです。

どの注入がいちばん影に敏感ですか?

ゲート電極そのものをマスクに使う斜め注入です。ハロー構造はゲート電極を作った後の斜めイオン注入でセルフアラインに形成できます。日新イオン機器は、中電流プロセスではハロー注入の角度精度がしきい値電圧Vtのばらつきを決める要因なので、最も高精度の注入角度制御が要求されるとしています。

影の向きの偏りはどう対策しますか?

ツイスト角を分割します。一方向からの注入だけでは非対称になるので、ツイスト角を変えて注入するステップ注入を使います。代わりに、1枚あたりの注入時間が分割数だけ長くなります。

マスクを薄くする手はありますか?

あります。SiCでチャネリングを使う注入では、チャネリングが基板の部分に限って起こるため、同じ深さの分布を通常の注入の3分の1以下のマスク厚さで作れ、コスト低減とパターン精度の向上につながるとされています。影の幅は段差の高さに比例するので、厚さが3分の1なら影の幅も3分の1です。前提は、イオンビームの角度制御性が極めて高い装置です。

高アスペクト比の構造では何をしますか?

finFETのフィンやトレンチのような高アスペクト比の構造には均一なドーピングが要り、直進するイオンビームだけでは足りません。その方法として、プラズマドーピングや、不純物を含む膜からの固相拡散があります。

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