固相拡散とは
固相拡散とは、拡散させたい領域をポリシリコン層などで覆い、その層にイオン注入してから、その層を拡散源として熱で下へ拡散させる方法です。 シリコンには直接打ち込みません。入れる量を注入で、届く深さを熱で、別々に決められることがこの方法の価値です。
イオンはポリシリコンの中で止まり、シリコンは打たれない
Section titled “イオンはポリシリコンの中で止まり、シリコンは打たれない”固相拡散では、拡散領域をポリシリコン層等でカバーし、そこへイオン注入した後、doped layer を拡散源として RTP により拡散します1。イオンが止まるのはポリシリコンの中なので、下のシリコンへ届く注入の損傷はごくわずかに留まります。その後の熱で、ポリシリコンに溜まった不純物が境目を越えて下へ入ります。
境目を越える動きは拡散そのものです。拡散は、粒子が濃度の高い領域から低い領域へ移動すること2と定義できます。深さは、熱の長さと温度で決まります。
ポリシリコンは、用途によって電極として残す場合も、拡散の後に取り除く場合もあります。
注入で浅接合を作る限界が近づき、熱拡散が見直された
Section titled “注入で浅接合を作る限界が近づき、熱拡散が見直された”現在のLSI製造工程では、不純物拡散はほぼすべて熱拡散からイオン注入に置き換わっています1。イオン注入なら深さを加速電圧で決められます。しかし薄い接合を作ろうとして電圧を下げるほど、必要な量を入れるのに時間がかかり、結晶の損傷も無視できなくなります。デバイスの縮小とともに、一部の工程でイオン注入による浅接合形成に限界が見えてきたため、熱拡散技術が見直されています1。狙いは極浅接合です。
比べる相手になるのが、炉の中で固体の拡散源を使う方法です。ジョージア工科大学のCMOS工程では、拡散をMOSトランジスタのソースとドレイン、集積抵抗、ウェルの形成に使うとしています2。ボロンの固体源でP型のウェルとPMOSのソース・ドレインを、リンの固体源でN型のウェルとNMOSのソース・ドレインをドープします。
手順は2段です。まず無限源の拡散、つまりプリデポジションで必要な量のボロンをシリコンへ溶け込ませ、ガラス状の膜を取り除いてから、ドライブインと呼ぶ別の高温工程でボロン原子を深くへ拡散させます2。拡散源そのものにも手間がかかります。B₂O₃やP₂O₅の放出量を一定にし、水分を確実に抜くため、拡散源は使う温度でのエージングが必要で、推奨される最短時間は高温の工程で数時間、低温の工程では24時間に及びます2。清浄にしてエージングした拡散源は、石英ボートに入れて650℃のような高い温度の乾燥窒素中で保管することが強く推奨されています。
固相拡散は、従来の電気炉による固相拡散法の欠点だった、ドーパント濃度の絶対値の精度と深さ方向の分布の精度を改善できます1。
量は注入で、深さは熱で、別々に決まる
Section titled “量は注入で、深さは熱で、別々に決まる”ポリシリコンへ入れる量は、イオン注入のドーズで決まり、ビーム電流と時間から正確に積算できます。下へ入る深さは、その後の熱で決まります。熱を入れるRTPは、ランプ加熱炉等の高速昇降温装置で行うプロセスです1。
量と深さを別々に調整できるので、片方を変えてももう片方は変わりません。電気炉で拡散させていた頃の欠点は、ここで解消されます。
拡散は熱の上げ下げの形まで受けるので、温度制御が深さをそろえる
Section titled “拡散は熱の上げ下げの形まで受けるので、温度制御が深さをそろえる”拡散は熱をかけている間ずっと進みます。頂点の温度に加えて、上げ下げの形まで結果に響きます。工程ごとに決める熱の上限が熱バジェットです。
面内の拡散深さをそろえるのは、均一温度制御技術の役割です。複数の温度制御の動作を協調させ、過渡状態においても均一の状態に維持する制御技術で3、傾斜温度制御法、ΔL制御法、FOLLOWER制御法などが汎用的な技術として実用化されています。
損傷を避けるかわりに、覆う層の工程と温度制御の負担が増える
Section titled “損傷を避けるかわりに、覆う層の工程と温度制御の負担が増える”シリコンへ直に打ち込まずに済むため、注入による結晶の損傷を避けられます。その代わり覆う層を付けて取り除く工程が加わり、工程数と費用が増えます。量と深さを別々に握れる一方、境目を越える拡散そのものが材料と界面の状態に左右されます。熱を短くすれば浅く保てるものの、面内で深さをそろえる制御の負担が上がります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”固相拡散とは何ですか?
拡散領域をポリシリコン層などで覆い、そこへイオン注入した後、そのドープした層を拡散源としてRTPで拡散させる方法です。
なぜ見直されたのですか?
デバイスの縮小とともに、一部の工程でイオン注入による浅接合の形成が限界に近づき、熱拡散技術が見直されました。
何が改善されるのですか?
従来の電気炉による固相拡散法の欠点だった、ドーパント濃度の絶対値の精度と深さ方向の分布の精度を改善できます。
なぜ精度が上がるのですか?
量はイオン注入のドーズで決まり、深さはRTPの熱で決まるからです。2つを別々に調整できます。
シリコンへの損傷はどうなりますか?
イオンはポリシリコンの中で止まり、シリコンに直に打ち込まずに済むため、注入による結晶の損傷を避けられます。
ポリシリコンは残すのですか?
用途で異なります。電極として残す場合も、拡散の後に取り除く場合もあります。
RTP は何をしていますか?
ランプ加熱炉などの高速昇降温装置で行う熱処理で、短い熱で必要な距離だけ不純物を拡散させます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- イオン注入とは── 入れる量を決める工程
- RTP(急速熱処理)とは── 拡散の深さを決める熱処理
- プラズマドーピングとは── 浅い接合を作る別の方法
- 過渡増速拡散とは── 昇温の初期に進む拡散
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- 2ジョージア工科大学:Diffusion(ProDiff)工程解説sums.gatech.edu abcd
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