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SPC(統計的工程管理)とは

SPC(統計的工程管理)とは、製造工程の各点で集めた測定データを統計処理し、でき栄えの推移を管理する仕組みです。 良否の切り分けは1枚ごとに規格の内側か外側かを判定しますが、SPCは規格の内側にとどまっている測定値の並び方そのものを疑います。工程が規格の中でゆっくり片側へ移っている間、良否の切り分けは合格を返し続け、SPCのほうが先に警報を上げます。この差がプロセス担当がSPCを入れる理由で、設計の中身は、測る箇所・頻度・管理限界の幅をどこに置くかの選択です。

規格の内側で進む工程の移りは、管理図の点の並びに出る

Section titled “規格の内側で進む工程の移りは、管理図の点の並びに出る”

SPCは統計的工程管理と訳され、工程の要所要所で集めた大量のデータを計算機にかけ、つくり方の条件とICの仕上がりがどちらへ向かっているかを追う仕組みです1。CIMと組み合わせて、データの自動収集から統計の計算、良し悪しの判断、現場への指示までを一続きで行う形もあります。統計的プロセス管理とも呼ばれ、測定を行う工程ごとにデータを計算機へ集めて統計処理し、つくり方の条件と測定値の散らばりが時間とともにどちらへ動いているかを追います2。

前工程では膜厚も寸法も全数を測るのが難しく、抜き取りとモニタウェーハで代表させます。NPWは製品以外のダミーウェーハやQCウェーハをまとめた呼び方で、装置の状態を決まった間隔で測るために流す1枚や、製品と一緒に流して仕上がりを確かめるパターンの無い1枚が含まれます。

抜き取った1枚が規格の内側なら、その場で手を打つ理由は薄いままです。ところが装置は使い込むほど状態が移ります。規格の内側で平均が片側へ動いていく変化は、良否の切り分けを素通りしたまま何ロットも流れ、最終検査で不良がまとまって出た段階で初めて分かります。そのときには、工程を通過したウェーハが仕掛かりとして積み上がっています。

この移りを見る道具が管理図で、1920年代にBell LabsのWalter Shewhartが考案しました3。横軸にサンプルの番号か時間、縦軸に測った品質特性の値をとり、管理状態にある工程の平均を表す中心線と4、その上下の管理限界を引きます。管理限界の外へ出た1点は、工程がおそらく管理状態を外れたとみて、原因を探して取り除く調査に入る合図です。限界の内側でも並び方が合図になり、30点のうち前の25点が中心線の上、後の5点が下に並べば、全点が限界の内側でも理由を調べる対象です。管理状態とは、全点が管理限界の内側にあり、しかも並びがランダムな状態を指します。

管理図が拾う2つの合図
規格上限管理限界中心線管理限界規格下限限界の外に1点並びが中心線の片側に偏る前の25点は上後の5点は下サンプルの順(時間)→
管理限界の外へ出た1点も、限界の内側で中心線の片側に偏った並びも、工程の変化の合図です。どちらも規格の内側で起きるので、良否の切り分けでは合格のままです。

SPCで用いるWestern Electric RulesのWE1からWE10は、こうした出方を条件として並べた決まりです。管理限界を超えた1点のほか、連続する点が中心線の片側に並ぶ、階段状に上がり続けるといった出方も、工程の変化を示す条件に入ります。

管理限界は工程自身のばらつきから引き、3σで見逃しと誤報を釣り合わせる

Section titled “管理限界は工程自身のばらつきから引き、3σで見逃しと誤報を釣り合わせる”

測る対象は計量値です。膜厚、寸法、研磨量のように、良否の2値より一段細かい数値そのものを取ります。ルネサスエレクトロニクスは製造工程で、インプロセス品質管理として出来栄え管理と計量値によるSPCを実施し、得た品質情報をフィードバックして品質を上げているとしています5。CMPの均一性は、研磨レートの最大と最小の開き、あるいは標準偏差を、研磨レートそのもので割った値で表します6。条件をそろえて研磨ヘッドだけを変えたときのヘッド間均一性のような取り方もあり、同じ膜厚1つでも、面内のどこを何点測るかで数値の意味が移ります。

管理限界は、規格の線とは出どころが違います。規格の線は製品として許される幅から来て、管理限界はその工程自身のばらつきから引くので、管理限界は規格の内側に入り、製品が不良になる前に工程の変化を知らせる線になります。限界は、工程が管理状態にある限りほぼ全点がその内側に収まるように選びます4。

ばらつきの見積もり方にも決まりがあります。SPCの関心は、ふだんからある共通原因のばらつきと、特定の原因によるばらつきを見分けることにあり、全データの標本標準偏差はこの場合のσのよい推定値になりません3。工程の安定は、サブグループ内の短期のばらつきで判断します。サブグループは時間の近い点や条件のそろった点を集めて作り、特定の原因がサブグループの中に入り込む機会を減らします。管理図を手で計算していた20世紀前半には、求めやすい範囲(レンジ)が標準偏差より好まれました。

限界をどこに置くかで、原因が実際には無いのに調査に入るリスクが決まります。Shewhartは、σの3倍に置くと本当の工程の変化の検出と誤報の回避が釣り合うことを見いだしました。品質のばらつきが正規分布ではなくnp=0.8のポアソン分布に従う例では、3σの限界を使うと、上側を偶然超える確率は0.001から0.009へ上がり、下側は0.001から0へ下がります4。

合図が出たあとの動きは書面の手続きです。ルネサスエレクトロニクスの2017年1月版の信頼性ハンドブックでは、工程や製品に異常が出たとき、それを見つけた部門が工程異常調査票という書面を起こし、関係する部門が原因を調べ、対策を確定する流れになります。同社は量産に入った直後の一定期間を初期流動管理と呼び、通常とは別の管理体制を敷いて、集める品質情報の密度を上げ、見つかった不具合への手当てとその効果の見極めを早く回すとしています。

工程能力指数は、規格の幅が工程の振れ幅の何倍かを示す

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管理図が時間の中の変化を示すのに対して、工程能力指数は分布の位置と幅を示します。工程能力指数(Cp/Cpk)は規格に照らして製造の余裕がどれだけあるかを表す指数で2、リワークやスクラップの量とは逆比例する関係にあります。1.33を超えていれば、品質の面で安定していると見なされます。

Cpは、規格の上限と下限の幅を、ばらつきの標準偏差の6倍で割った値です。分子が許される幅、分母が工程の実際に振れる幅なので、Cpは余裕の倍率になります。1.33に当てはめると、規格の幅は標準偏差の約8倍で、中心から片側に4σぶんの余裕です。Cpkはそこへ平均の偏りを織り込んだ値で、平均が中心から離れているほど小さくなります。Cpが高いままCpkが低い工程は、幅は足りているのに規格の中心からずれた状態です。

規格の幅と工程の振れ幅
規格下限規格上限管理限界管理限界中心安定した工程平均がずれた工程管理限界の幅 6σ規格の幅 約8σCp≈1.33
Cpは規格の幅を6σで割った値で、1.33なら規格は中心から片側4σの位置にあります。平均がずれると、幅が同じでも片側の余裕が減り、その分Cpkが下がります。

ルネサスエレクトロニクスは2017年1月版のハンドブックで、量産の段階では主要な工程に管理図を当ててばらつきが妥当な幅に収まっているかを見張り、工程能力指数(Cp、Cpk)と工程性能指数(Pp、Ppk)を追いながら、ばらつきをさらに小さくする活動を進めているとしています5。管理図と工程能力指数をそろえて初めて、工程がいまどこにいて、どれだけ余裕を持っているかが読み取れます。

監視を厚くすれば装置の時間を、限界を緩めれば不良を払う

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SPCの設計は、測る箇所、測る頻度、管理限界の幅の3つを選ぶ仕事です。3つとも、厚くするほど別の勘定が増えます。

厚くする側の代償は装置の時間です。OEE(設備の総合効率)は、装置が動ける時間のうち製品づくりに回る割合を上げていく考え方で2、そのためには故障や保全、NPWを流す時間を減らす必要があります。モニタウェーハを1枚流すたびに、その分だけ製品を作る時間が削れます。測定のための待ちも積み上がります。TATは工程の一部または全部を流すのに要する時間で、X-FactorはTATをRPT(搬送や待ちを除いた正味の時間)で割った指数です。監視を厚くするほど、X-Factorは大きくなる向きへ動きます。

管理限界を狭める側にも代償があります。狭めた分だけ、工程の実力の範囲内のばらつきまで合図として上がり、装置の停止と再調整、ロットの保留が増えます。逆に緩めれば、合図が上がったときにはすでに規格を割ったウェーハが流れています。工程能力指数がリワークやスクラップと逆比例するという関係は、緩めた側で払う金額の形を示しています。

SPCは知らせる側で、補正はAPC、装置の見張りはFDCが担う

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SPCは工程の変化を見張って知らせるところまでを受け持ち、レシピの数値を補正する部分は別の仕組みが担います。APCはプロセスの変動をフィードバックとフィードフォワードで抑える制御で2、AECはAPC、SPC、FDC(Fault Detection and Classification)といった技術をまとめた進んだ装置制御の総称です。

見張る・直す・装置を守る
FDC装置計測SPCAPC工程異常調査票稼働データ保全へウェーハ警報原因と対策測定値レシピ補正フィードフォワード
SPCは測定値から工程の変化を知らせて人の調査と対策につなぎ、レシピの補正はAPCが、装置の稼働データからの異常検知と保全はFDCが受け持ちます。

FDCは、装置の稼働データを細かく取り込んでその場で解析し、壊れる兆しを先につかんで、止まる前に保全へ回すことで、スクラップや品質の落ち込みを防ぎます。同じFDCは、装置ごとの出力を監視して異常を見つけ、その結果を統計にかけて異常の種類まで分けていく技術7とも説明されます。見張る、直す、装置を守るの3つは、それぞれ別の名前で並んでいます。

SPC(統計的工程管理)とは何ですか?

製造工程の各点で集めた測定データを統計処理し、でき栄えの推移を管理する仕組みです。中心線と管理限界を引いた管理図に測定値を時間順に打ち、限界の外へ出た点や偏った並びを工程の変化の合図として扱います。

良否の切り分けとSPCは何が違いますか?

見張る対象が違います。良否の切り分けは1枚ごとに規格の内側か外側かを判定し、SPCは規格の内側にとどまっている測定値の並び方そのものを疑います。規格の中で工程が片側へ移っている間、良否の切り分けは合格を返し続け、SPCのほうが先に警報を上げます。

管理限界と規格の線は何が違いますか?

規格の線は製品として許される幅から来て、管理限界はその工程自身のばらつきから引きます。そのため管理限界は規格の内側に入り、規格を超える前に工程の変化を知らせます。限界は、工程が安定している限りほぼ全点が内側に収まるように選びます。

工程能力指数(Cp・Cpk)は何を示しますか?

規格に照らして製造の余裕がどれだけあるかを示す指数で、リワークやスクラップの量とは逆比例する関係にあります。Cpは規格の幅を標準偏差の6倍で割った値で、1.33を超えていれば品質の面で安定していると見なされます。

Western Electric Rulesとは何ですか?

管理図の点の出方から工程の異常を切り分けるための一連の条件で、SPCではWE1からWE10までを用います。管理限界を超えた1点のほか、連続する点の偏りや周期性なども条件に入ります。

モニタウェーハを増やせば良いのですか?

増やすほど装置の時間を使います。OEEを上げるには故障や保全、NPWを流す時間を減らす必要があり、監視の厚みはこの取り合いの中で選びます。

SPCとAPCの役割はどう違いますか?

SPCは工程の変化を見張って知らせる側で、APCはプロセスの変動をフィードバックとフィードフォワードで抑え、レシピの数値を補正する側です。AECはAPC、SPC、FDCといった技術をまとめた進んだ装置制御の総称です。

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    JEITA:半導体用語集semicon.jeita.or.jp ↩
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