歩留まり学習とは
歩留まり学習とは、作った結果を測って不良の原因を突き止め、その原因を工程へフィードバックして直す一周を、繰り返して歩留まりを引き上げていく取り組みです。 歩留まりの数字そのものは結果として出てくるだけで、現場が動かせるのは、この一周をどれだけ速く、どれだけ確かに回せるかです。
原因を返すまで、同じ原因の不良は出続ける
Section titled “原因を返すまで、同じ原因の不良は出続ける”YMS(Yield Management System、歩留まり管理システム)は、歩留まりモニタと欠陥検査から解析までを行い、その結果を欠陥の発生した工程へフィードバックしたり、APCによって装置レシピへ送ったりしながら、総合的に歩留まりを管理し向上させる統合システムです1。測る、調べる、フィードバックする、という順序が、この語義の中にそのまま書き込まれています。
ソニーセミコンダクタソリューションズは、製品化の流れを開発、試作、量産、市場の順に並べ、それぞれの段階で出た不良の原因を素早く正確に突き止めて各工程へ返すことが、再発の防止と新規プロセス開発の促進、歩留まり向上につながるとしています2。原因を特定してフィードバックするまでの間、同じ原因の不良は出続けます。一周の速さが歩留まりを左右するのはこのためです。
この時間の側面を数式にした研究もあります。カーネギーメロン大学で公開されている論文は、製造の運用面に加えて歩留まり学習の過程まで織り込んで、欠陥起因の歩留まりを予測する方法3を示し、歩留まりとコストを時間の関数として見積もるモデルを作りました。学習曲線をモデル化するために、製造工程を製品の製造と故障解析の2つの要素からなるものとして扱っています。
学習が止まると、選別を厚くする方向へ動く
Section titled “学習が止まると、選別を厚くする方向へ動く”半導体デバイスは製造の過程で、微小な異物、製造装置によるばらつき、寸法のばらつきなどによって、欠陥を確率的に内部へ抱え込みます4。これが初期欠陥密度で、歩留まりが高いときは欠陥密度が低く、歩留まりが低いときは欠陥密度が高い関係にあります。ルネサスエレクトロニクスは、ストレステストやバーンインといったスクリーニングを工程へ入れて初期故障期間の故障率を下げるとしたうえで、スクリーニングはすでに出来上がった製品へ後から加える対策で、本質的な対策は製造の段階で欠陥率を下げるか、欠陥の影響を受けにくいレイアウトで設計することにある、としています。
原因の特定が滞ったまま歩留まりが下がると、網を細かくする方向へ動きます。ソニーセミコンダクタソリューションズは、統計的に求めた歩留まりの限界を割ったものを弾くスクリーニングを、ウェーハ単位とロット単位のそれぞれに当て2、総合の歩留まりに加えて測定カテゴリごとの歩留まりも同時に見張る手法を併せて使うとしています。学習が止まっている間は、この網の中へ良品も一緒に入り続けます。
欠陥は原因ごとに分け、最後の分類は技術者が引き受ける
Section titled “欠陥は原因ごとに分け、最後の分類は技術者が引き受ける”欠陥検査が返すのは、欠陥の座標と大きさまでです。ADR(Automatic Defect Review)は、欠陥検査で得た座標などの欠陥情報をもとに、自動で目的の欠陥画像を取って保存し、データベース化する仕組みです1。ADC(Automatic Defect Classification、自動欠陥分類)は、画像サーバへ入れた欠陥画像を、あらかじめ決めたルールにもとづいて分類ソフトウエアで発生原因ごとに分け、分類サーバへ戻します。その結果を歩留まり管理システムや工場ホストへ上げて、欠陥の発生原因の追求と解析に使います。MDC(Manual Defect Classification)は、ADCの分類ミスの修正や、ADCの運用対象外となる工程での分類を、技術者が判断して行うことです。分類の最後の部分は、技術者が引き受けます。
装置の出力、電気試験、不良の並びからも原因を読む
Section titled “装置の出力、電気試験、不良の並びからも原因を読む”FDC(Fault Detection and Classification)は、それぞれの製造装置の出力をモニタし、異常を検出したらその結果を統計的にまとめて異常の種類を分類する技術です5。SPC(統計的プロセス管理)は、各測定工程で集めたデータを統計的にまとめ、製造条件や測定データのばらつきを傾向として管理する手法です6。工程能力指数は、規格に対してどれだけ製造の余裕があるかを表し、リワークやスクラップと逆比例します。
電気で確かめる工程もあります。プローブテストは、ウェーハのボンディングパッドへプローブを当てて行う電気的試験で7、この試験でウェーハを運び位置決めする装置がウェーハプローバです。ATEの業界では、もともとTeradyneが開発した独自のバイナリ形式のファイルフォーマットが広く使われ、いまは事実上の標準形式になっています。
不良の並び方そのものも手がかりになります。ロームは、ウェーハ面内の不良品の位置の傾向に応じて不良品を落とすGraphic-PATという同社の手法8の観点に、不良品に囲まれた良品、不良品が固まっている周辺の領域、マスクショットの位置に依存する傾向、複数のウェーハの不良品マップを重ね合わせたときの傾向を挙げています。1枚のウェーハの数字に加えて、並びと重なりを読み取ります。
フィードバック先は、装置のレシピと設計データの両方
Section titled “フィードバック先は、装置のレシピと設計データの両方”APC(Advanced Process Control)は、半導体産業では一般にRun to Run制御の意味で使われ5、プロセスの結果や現在の状況をもとに戻ってプロセスを変えるフィードバック制御と、プロセス前の情報を使って予測してプロセスを変えるフィードフォワード制御があります。学習制御は、系の入力パラメータを変えたときの事後の情報を何らかの形で解析し、そのデータを自動的にためながら、より良い制御入力を見つけていく方法です。歩留まり学習も同じ形をしています。
設計側へもフィードバックします。Design Aware Manufacturing(DAM)は、ホットスポットやクリティカルパスといった製品ごとの設計情報を、生産の工程で歩留まり向上や省力化へ積極的に使う生産手法です9。設計からの寸法精度の要求を踏まえたマスクパターン検査の最適化や、リソグラフィとCMPのシミュレーションで見つけたクリティカルな場所を使った、製造条件と工程検査の内容の最適化がその例です。
一周を速くするほど、装置の時間と良品を差し出す
Section titled “一周を速くするほど、装置の時間と良品を差し出す”測るほど、製品へ回る装置の時間は減ります。NPW(Non Product Wafer)は、製品デバイスを作るために使うウェーハ以外のダミーウェーハとQCウェーハの総称で6、装置の品質を定期的に見張るためのウェーハや、仕上がりを確かめる無地のウェーハを含みます。OEE(設備の総合効率)は、設備の稼動時間のうち製品の生産へ回る時間の比率を高めることで、そのためには故障、メンテナンス、NPWを流すために費やす時間を減らす必要があります。見張るための時間と作るための時間は、同じ装置の時間を取り合います。サイクルタイムでも同じ取引が起きます。
合否の条件を厳しくすれば良品も落ちます。過剰検出(Overkill)は、デバイス・テストで、テスト条件が過度に厳しいために、本来は良品のデバイスを不良品と判定することです7。ロームが挙げるGDBC(Good Die in Bad Cluster)は、不良品に囲まれた良品を落とす考え方で、テストを通った1個をそのまま手放します。
出荷そのものが止まることもあります。ロームは、ロットまたは生産単位の歩留まりに歩留カットリミットを設けて、それを割った単位を廃棄する手法をSYL(Statistical Yield Limit)、出荷テストの決まった項目に不良率の規格を置いてロットの異常を見張る手法をSBL(Statistical Bin Limit)としています8。同社は、SYLでは歩留まりが通常より低い側に外れたとき、SBLでは管理BINの不良数や不良率が通常より高い側に外れたときを、異常の兆候として扱います。同社の基準では、実力値から±3シグマを超えて離れると異常のフラグを立てて識別管理し、±4シグマを超えて離れると良品群から隔離して、技術的な検証が済むまで出荷を停止します。学習を速く回すために、いま出せるはずの製品を止めます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”歩留まり学習とは何ですか?
作った結果を測って不良の原因を突き止め、その原因を工程へフィードバックして直す一周を繰り返し、歩留まりを引き上げていく取り組みです。これを担うYMS(歩留まり管理システム)は、歩留まりモニタと欠陥検査から解析までを行い、その結果を欠陥の発生した工程へフィードバックしたりAPCで装置レシピへ送ったりしながら、総合的に歩留まりを管理し向上させる統合システムです。
どこから始まりますか?
測るところからです。欠陥レビューはウェーハ検査装置で見つけた異物や欠陥の形状や成分をより詳しく観察し、分類し、分析することで、プローブテストはウェーハのボンディングパッドへプローブを当てて行う電気的試験です。表面から拾う手と、電気で確かめる手の両方を使います。
見つけた欠陥はどう分けますか?
原因ごとに仕分けます。ADC(自動欠陥分類)は欠陥画像をあらかじめ決めたルールで発生原因ごとに分け、その結果を歩留まり管理システムや工場ホストへ上げます。MDC(手動欠陥分類)は、ADCの分類ミスの修正や、ADCの運用対象外となる工程での分類を、技術者が判断して行うことです。
結果はどこへフィードバックしますか?
装置のレシピと設計データの両方です。APCは、結果や現状をもとにプロセスを変えるフィードバック制御と、プロセス前の情報から予測して変えるフィードフォワード制御からなります。Design Aware Manufacturingは、ホットスポットなどの設計情報を生産工程で歩留まり向上へ積極的に使う生産手法です。
ウェーハ上の不良の並びから何が分かりますか?
原因の見当がつきます。ロームは、ウェーハ面内の不良品の位置の傾向に応じて不良品を落とす同社のGraphic-PATの観点として、不良品に囲まれた良品、不良品が固まっている周辺の領域、マスクショットの位置に依存する傾向、複数のウェーハの不良品マップを重ね合わせたときの傾向を挙げています。
一周を速くする代償は何ですか?
装置の時間と、捨てる良品です。設備の総合効率を上げるには、故障とメンテナンスに加えて、製品以外のウェーハへ費やす時間を減らす必要があります。テスト条件が過度に厳しいと、本来は良品のデバイスを不良品として落とす過剰検出が起きます。
歩留まりが低いままだとどうなりますか?
選別を厚くする方向へ動きます。ルネサスエレクトロニクスは、スクリーニング自体が出来上がった製品に対する事後の対策であり、本質的な対策は製造の段階で欠陥率を下げるか、欠陥の影響を受けにくいレイアウトで設計することにある、としています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 歩留まり(イールド)とは── 一周ごとに出てくる結果の数字で、歩留まり学習はその数字を動かす手順です
- 欠陥密度とは── 学習で下げにいく相手にあたる量です
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- 1日本半導体製造装置協会:半導体製造装置用語集(計測)seaj.or.jp ab
- 2ソニーセミコンダクタソリューションズ:半導体品質・信頼性ハンドブック 第3版sony-semicon.com ab
- 3カーネギーメロン大学:Yield Learning(歩留まり学習を織り込んだ欠陥起因歩留まりの予測モデル論文)users.ece.cmu.edu ↩
- 4ルネサスエレクトロニクス:半導体信頼性ハンドブックrenesas.com ↩
- 5
- 6
- 7日本半導体製造装置協会:半導体製造装置用語集(テスト)seaj.or.jp ab
- 8ローム:品質・信頼性ハンドブックfscdn.rohm.com ab
- 9電子情報技術産業協会:DFM(製造性考慮設計)用語集semicon.jeita.or.jp ↩