サイクルタイムとは
サイクルタイムとは、ロットが工程へ入ってから出てくるまでにかかる時間です。 装置がウェーハを加工している時間へ、運ばれている時間と待っている時間を足した長さになります。
縮める余地は、加工の区間より待ちと搬送の区間に広がっています。
加工している時間は、サイクルタイムの一部にすぎない
Section titled “加工している時間は、サイクルタイムの一部にすぎない”工場では、入れてから出るまでの総時間1をTAT(Turn Around Time)とも呼び、工程の一部または全部を加工するのに要する時間として扱います。その中身を切り分ける語がRPT(Raw Process Time)で、装置で加工するための正味の時間、つまり搬送と待ち時間を除いた量です。1枚のウェーハがエッチング装置の中で削られていた時間がRPT、そのロットが工程へ入ってから出るまでの全体がサイクルタイムです。
両者の比がX-Factorで、TATまたはサイクルタイムをRPTで割った指数です。答えが3なら、装置の中にいた時間の3倍を工程で費やした勘定で、残りの3分の2は運ばれる時間と待つ時間です。
待ちは、装置の前と工程の間に生まれる
Section titled “待ちは、装置の前と工程の間に生まれる”前工程は同じ装置群を何度も往復します。前工程の流れは平坦化まで進めたあと、レジスト塗布から先を繰り返します2。1枚のシリコンウェーハは、露光装置と洗浄装置と成膜装置の間を何十回も行き来します。
装置の前には順番待ちの列が伸びます。RTD(Real Time Dispatcher)は、装置前の仕掛りから最適のロットを選ぶ仕組みまたはシステムで、選ぶ相手が装置の前に並んでいることを前提にした語です。工場全体の出来高を抑える工程をボトルネックと呼びます。
工程と工程の間にも待ち場があります。いまのファブの搬送は工程間と工程内の2つから成り、各ベイには工程を調整するための自動棚があって、そこへいったん預けてから次工程へ渡しています。村田機械は、キャリア保管ストッカーの目的を、製造装置の加工完了タイミングと次工程製造装置の加工開始タイミングのズレを吸収することとしています3。ズレを吸収する場所が、そのまま待ち時間の置き場になります。
縮める手は、順番と運び方と配置の3つ
Section titled “縮める手は、順番と運び方と配置の3つ”順番を選び直す手では、ディスパッチャが、スケジューラの作った生産計画のガントチャートを土台に、ロットの進み具合と装置の空き具合を見て、その装置でつぎに流す1ロットを選んで割り当てます。この順番付けそのものを指す語がディスパッチ(投入順序)です。
運ぶ距離を削る手がダイレクト搬送です。搬送リードタイム短縮の方法として、加工の完了した装置のロードポートから次の製造装置のロードポートへFOUPを直接搬送し、棚を経由する区間をまるごと消します。この搬送を担う設備がAMHSです。
装置の配置を変える手がフローショップです。プロセスステップに従って装置を並べ、材料が装置間を最短距離で移動できるレイアウトです。反対のジョブショップは、同じ種類の加工ができる装置どうしを1か所へまとめて据えるレイアウトです。
装置の直前で待たせる秒数を削る製品もあります。村田機械の装置前FOUPバッファ Tool Station TS300は、製造装置のロードポートの上へかぶせて据えるバッファ装置で、加工済みのFOUPを引き取ってから次のFOUPを差し出すまでの入替時間を縮め、検査の時間が短い検査装置での稼働率を上げることを志向しています。システム仕様はサイクルタイム15秒、保管数4〜12 FOUPです。
速さの代わりに、装置の時間と待ちの余裕を払う
Section titled “速さの代わりに、装置の時間と待ちの余裕を払う”急ぎのロットには別のレーンを用意します。QTAT(Quick TAT)は、標準のスピードで流れるロットとは別に2〜3倍のスピードで流れる超特急ロットです。標準の流れと別立てにする設計そのものが、全部を一律に速くする手段の限界を示しています。
装置の時間の使い道にも取引があります。OEE(Overall Equipment Efficiency、設備の総合効率)は、設備の稼動時間のうち製品を作ることへ回る時間の割合を高めることで、そのためには設備の故障とメンテナンス、およびNPWへ充てる時間を減らす必要があります。NPW(Non Product Wafer)は製品デバイスを作るためのウェーハ以外のダミーウェーハとQCウェーハの総称で、装置の品質を定期的に見張るためのウェーハを含みます。装置の状態を見張るほど、製品へ回せる装置時間は削られます。近い指標に装置稼働率があります。
待たせた時間そのものも歩留まりへ響きます。村田機械は、微細化にともなうプロセス工程間の酸化や水分などによる品質影響への対策として、工程と工程の間に許される時間の枠をN2パージで広げ、歩留の低下を防ぐとしています。工程と工程の間には待たせてよい上限があり、その上限を延ばすためだけに専用の装備が要ります。
後工程では、流し方そのものが国の事業の題目です。経済産業省はポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発で4、製造工程の中でも人手に頼る度合いが高い後工程から組立と検査を選び、完全自動化へ要る装置とシステムのつなぎ目に標準インタフェース(IF)を作るとしています。半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)のパイロットラインのイメージは、完全自動化、並列処理、効率・集約レイアウトです。
同じ語でも、JEITAとSEAJでは測る区間が違う
Section titled “同じ語でも、JEITAとSEAJでは測る区間が違う”JEITAのICガイドブック用語解説では5、サイクルタイムはメモリの読み出しや書き込みといった動作を繰り返すのにかかる時間で、工場の時間とは別物です。同じ用語解説のTATは注文を受けてから製品を届けるまでにかかる日数で、その短縮は設計から製造まであらゆる部門が合理化の目標の一つに掲げています。SEAJのTATが工程の入りから出までを指すのに対し、JEITAのTATは受注から供給までを指します。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”サイクルタイムとは何ですか?
ロットが工程へ入ってから出てくるまでにかかる時間です。TAT(Turn Around Time)とも呼び、工程の一部または全部を加工するのに要する、入れてから出るまでの総時間を指します。
装置が加工している時間と同じですか?
別の量です。RPT(Raw Process Time)は装置で加工するための正味の時間で、搬送と待ち時間を除きます。サイクルタイムからRPTを引いた残りが、運ばれる時間と待つ時間です。
X-Factorとは何ですか?
TATまたはサイクルタイムをRPTで割った指数です。答えが3なら、装置の中にいた時間の3倍を工程で費やした勘定になります。
待ちはどこで生まれますか?
装置の前と、工程と工程の間です。装置前の仕掛りからはRTD(Real Time Dispatcher)が最適のロットを選び、いまのファブは各ベイに工程調整のための自動棚を備えて、いったん保管してから次工程へ供給しています。
どうすれば短くなりますか?
順番と運び方と配置を動かします。ディスパッチャがロットの進捗情報や装置の稼動状況を考慮して最適なロットを選び、ダイレクト搬送が装置のロードポートから次の装置のロードポートへFOUPを直接運び、フローショップが材料を装置間の最短距離で移動させます。
急ぎのロットはどう流しますか?
別レーンを用意します。QTAT(Quick TAT)は、標準のスピードで流れるロットとは別に2〜3倍のスピードで流れる超特急ロットです。
短くする代償は何ですか?
工程調整の場と、装置の時間です。OEE(設備の総合効率)を上げるには、設備の故障、メンテナンス、NPWへ費やす時間を減らす必要があります。待たせてよい時間にも上限があり、村田機械はN2パージがプロセス工程間の時間制限を緩和し歩留低下を防止するとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 仕掛品(WIP)とは── ラインの中にある量を数える語で、サイクルタイムはその量が出てくるまでの時間です
- AMHS(自動搬送システム)とは── 待ち時間のうち運ばれている区間を担う設備です
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- 1日本半導体製造装置協会:半導体製造装置用語集(Factory Integration)seaj.or.jp ↩
- 2日本半導体製造装置協会:半導体製造工程とはseaj.or.jp ↩
- 3村田機械:保管システム・バッファ(機器)muratec.jp ↩
- 4経済産業省:半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発meti.go.jp ↩
- 5電子情報技術産業協会:ICガイドブック用語解説semicon.jeita.or.jp ↩