パージ時間とは
パージ時間とは、ALDの1サイクルの中で、余剰の原料と副生成物を反応室から運び去るために不活性ガスを流し続ける時間です。 膜が育つ量はゼロで、それでも1サイクルに2回入り、サイクル数を掛けた分が1枚あたりの時間へ積み上がります。
パージ時間を短くすれば1枚あたりの処理時間は減ります。しかし短すぎると前の原料が残って気相で反応し、ALDの特長である自己停止が崩れます。深い孔ほど残った原料が抜けにくく、最適な時間の決め方が難しくなります。
パージは1サイクルに2回入り、気相を空にして自己停止を成り立たせる
Section titled “パージは1サイクルに2回入り、気相を空にして自己停止を成り立たせる”ALDは通常、2種類のソースガスを交互に反応室に流し、薄膜を1原子層または1分子層ずつ成長させる方法で1、Al₂O₃膜ではTMAとH₂Oを交互に流します。サムコは、ALDを原料の供給と余剰原料のパージの繰り返しとし2、原料ガスが表面反応で1層を形成した時点で成長が止まる自己停止機能を挙げています。昭和真空は、ALD Seriesが単原子層ずつ成膜するので膜厚制御性に優れ、高アスペクト比の基板にも付き回りよく成膜できるとしています3。交互に流す2種類のガスのそれぞれにパージが続くので、1サイクルは供給とパージの4ステップになり、パージは1サイクルに2回入ります。
パージが受け持つ仕事は2つです。1つは、次に入る反応剤と気相で出会う前に、余剰の前駆体を運び去ることです。CVDは、必要な材料を含むガスを反応室へ導入して化学反応を誘起し、基板上へ薄膜を堆積させる化学的プロセスです4。パージを削ったALDは、この気相反応の成分をサイクルの中へ抱え込みます。もう1つは、前のステップの副生成物を運び去り、次のサイクルの吸着サイトを空けることです。
ALDは置換吸着が飽和する反応なので、十分な暴露時間があれば表面反応が成長速度を決め5、ほぼ完全な表面反応律速の成膜になり、パターンに粗密のある三次元構造でも均一に成膜できます。一方、従来のLPCVDは反応種の供給律速なので、アスペクト比が大きくなると底の膜厚が上部より薄くなる問題がありました。パージ時間は、この十分な暴露時間と対になる時間です。供給で表面を飽和させ、パージで気相を空にしたとき、1サイクルが自己停止の条件を満たします。
深い孔では、届く時間と抜ける時間がともに伸びる
Section titled “深い孔では、届く時間と抜ける時間がともに伸びる”KOKUSAI ELECTRICは、3D構造ではデバイスの構造がより深く複雑になり、成膜が必要な表面積が増え、ガスの移動距離が長くなって成膜時間が増えるので、生産性が課題になるとし6、これを物理的な構造上の問題としています。同社は、反応種を豊富に供給するプロセスで、200層以上の深孔を持つ3D-NANDでもステップカバレッジに優れた成膜を実現し7、主要メモリメーカーに採用されているとしています。
孔の底まで前駆体が届く時間と、孔の底から余剰分が抜ける時間は、どちらも同じ距離と表面積で決まります。供給量を増やせば、その分だけ同じサイクルのパージで除く量も増えます。これが、アスペクト比の高い3D NANDでパージ時間が伸びる理由です。
最短のパージ時間は、1サイクルあたりの成長量が下がりきる点
Section titled “最短のパージ時間は、1サイクルあたりの成長量が下がりきる点”測る対象は反応室の残留分圧です。アルバックは、プロセスガスモニタQulee RGM28をCVD、エッチング、ALD向けのガス分析装置とし、反応性と腐食性のガスのもとでも長時間安定した測定を可能とし、クリーニングのエンドポイントモニタリングに加えてリーク監視、残留水分、その他の不純物の監視に適するとしています。測定できる圧力帯は、スパッタリング装置対応機種で1Pa以下、それ以外の機種で1×10⁻²Pa以下とし9、差動排気系付きの機種であれば最大で大気圧までの測定も可能としています。
レシピは、パージ時間を段階的に伸ばしながら1サイクルあたりの成長量を測り、成長量が下がりきった点を最短のパージ時間として決めます。パージが短いと、気相反応の成分の分だけ成長量が飽和値より大きくなります。あわせて膜厚測定で面内均一性を確認し、入口と底の膜厚比は断面観察で測ります。
パージ時間・供給量・バッチ枚数・温度は、それぞれ別の代償を払う
Section titled “パージ時間・供給量・バッチ枚数・温度は、それぞれ別の代償を払う”パージ時間を伸ばすと気相反応の成分が減り、成長量が飽和値へ落ち着き、面内分布とステップカバレッジが締まります。そのかわり1サイクルが長くなり、サイクル数を掛けた分だけ1枚あたりの時間が伸びます。KOKUSAI ELECTRICは、ALDの課題としてサイクリックプロセスゆえのスループットの低さとウェーハコストの増加を挙げています。
反応種を豊富に供給するKOKUSAI ELECTRICのプロセスは、底まで届く時間を縮める方法です。そのかわり、増えた供給量はそのままパージで除く量になります。
バッチ枚数については、KOKUSAI ELECTRICはバッチ装置が一度に50〜100枚のウェーハを成膜でき、複雑な構造への成膜の生産性を高める方法としています。枚数を増やすとパージ時間が枚数で割られ、1枚あたりの時間が下がります。一方、膜の種類と用途、成膜する部分のアスペクト比によって使い分けがあり、アスペクト比の低い加工工程の犠牲膜では、枚葉が使われることが多いとされています。
基板温度では、昭和真空がALD Seriesの低温成膜の範囲を室温〜120℃としています。低温にすると熱予算に余裕ができますが、膜質を改善する工程が後に1つ増えます。KOKUSAI ELECTRICは、低温成膜の需要の高まりに合わせて、成膜後にプラズマや熱を加えて膜中の不純物を除き、粒子を安定させるトリートメント技術の需要が増えているとしています。
膜を育てない時間が、サイクル数の分だけ積み上がる
Section titled “膜を育てない時間が、サイクル数の分だけ積み上がる”得られるのは、表面反応律速による三次元構造上の均一な膜厚です。そのかわり、サイクルタイムとウェーハコストが増えます。目標膜厚を1サイクルあたりの成長量で割ればサイクル数になり、これに1サイクル分のパージ2回の時間を掛けた時間が、膜の成長に寄与しないまま1枚あたりの時間に加わります。KOKUSAI ELECTRICは、この時間を枚数で割る方法としてバッチALDを挙げ、ガートナーリサーチのデータに基づき、2023年のバッチALD市場での同社シェアを70パーセントとしています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”パージ時間とは何ですか?
ALDの1サイクルの中で、余剰の原料と副生成物を反応室から運び去るために不活性ガスを流し続ける時間です。ALDは原料の供給と余剰原料のパージの繰り返しで、2種類のソースガスを交互に流すため、パージは1サイクルに2回入ります。
パージを削ると何が起きますか?
前駆体と反応剤が気相で出会い、気相反応の成分がサイクルへ混ざり込みます。CVDは反応室へ導入したガスに化学反応を誘起して基板上へ薄膜を堆積させる化学的プロセスで、パージ不足のALDはこの成分を抱えます。
最短のパージ時間はどう求めますか?
パージ時間を段階的に伸ばしながら1サイクルあたりの成長量を測り、成長量が下がりきった点を選びます。置換吸着が飽和する反応なので、十分な暴露時間があれば表面反応が成長速度を決め、ほぼ完全な表面反応律速の成膜になります。
パージの足り具合は何を測ると分かりますか?
反応室の残留分圧です。アルバックはプロセスガスモニタQulee RGM2の用途として、クリーニングのエンドポイントモニタリング、リーク監視、残留水分、その他の不純物の監視を挙げています。測定できる圧力帯は、スパッタリング装置対応機種で1Pa以下、それ以外の機種で1×10⁻²Pa以下とし、差動排気系付きの機種なら大気圧までの測定も可能としています。
深い孔ではパージ時間はどう変わりますか?
伸びます。KOKUSAI ELECTRICは、3D構造になると構造がより深く複雑になり、成膜が必要な表面積が拡大し、ガスの移動が長くなり、成膜時間が増加して生産性の課題が顕在化するとし、これを物理的な構造上の問題としています。
基板温度はパージ時間の判断へどう絡みますか?
昭和真空は、ALD Seriesの低温成膜の範囲を室温〜120℃としています。低温にすると熱予算に余裕ができますが、膜質を改善する工程が後に1つ増えます。KOKUSAI ELECTRICは、低温成膜の需要の高まりに合わせて、成膜後にプラズマや熱を加えて膜中の不純物を除き、粒子を安定させるトリートメント技術の需要が増えているとしています。
パージ時間は1枚あたりのコストへどう積み上がりますか?
1サイクルにパージは2回入るため、狙う膜厚を1サイクルあたりの成長量で割ったサイクル数を掛けた分が総時間になります。KOKUSAI ELECTRICはALDの課題としてサイクリックプロセスゆえのスループットの低さとウェーハコストの増加を挙げ、その解として一度に50〜100枚を成膜するバッチ装置を掲げています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ALD(原子層堆積)とは── パージを含む4ステップで1サイクルを組む成膜法
- ステップカバレッジとは── パージ時間の足り具合が最終的な膜厚差になる指標
- サイクルタイムとは── 1サイクルの長さが工場の生産時間に積み上がる指標
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- 1日本半導体製造装置協会(SEAJ):半導体製造装置用語集 ウェーハプロセスseaj.or.jp ↩
- 2
- 3昭和真空:ALD Series 原子層堆積装置showashinku.co.jp ↩
- 4東京エレクトロン:半導体用語集tel.com ↩
- 5半導体歴史館(SHMJ):ALD(原子層成膜)shmj.or.jp ↩
- 6KOKUSAI ELECTRIC:IR Day 2024 Part2 テキスト版kokusai-electric.com ↩
- 7KOKUSAI ELECTRICの強みkokusai-electric.com ↩
- 8アルバック:ULVAC SHOWCASE CVD / ALD / Etchingプロセス(プロセスガスモニタ)showcase.ulvac.co.jp ↩
- 9アルバック:ULVAC SHOWCASE CVD / ALD / Etchingプロセス よくある質問showcase.ulvac.co.jp ↩