シームとは
シームとは、溝や穴を膜で埋めるときに、両側の壁から伸びた膜が中央でぶつかってできる継ぎ目です。 膜として塞がっていても、両側から合わさった面に密度や界面の不連続が残る場合があります。
断面写真で埋まって見えても、継ぎ目はめっきの埋め込み、研磨後の表面、熱処理で口がふさがってできる空孔と、成膜より後の工程で問題になります。断面では中央の1本と、底と側壁が交わる端部の2か所を確認する必要があり、見た目だけでは判断しにくい欠陥です。
継ぎ目は、空孔になる途中の状態
Section titled “継ぎ目は、空孔になる途中の状態”埋め込みは、両側の壁から内側へ同時に進みます。左右の成長面が中央で出会うと、そこにつながりの弱い面が1枚できます。この面がシームで、塞がりきらずに空間が残ればボイドになります。
3D NAND型フラッシュメモリの多層化が進むと、各メモリ層の高さを抑えるだけでなく、エッチングストップ膜を薄く均一に成膜する技術と、パターン内に絶縁膜を埋め込む技術1が必要になります。カソード側だけで成膜する高周波スパッタではパターン内への埋め込みが難しく、基板にも高周波を加える必要がありますが、複数の高周波電源を同時に扱うには技術的な課題を解決する必要がありました。
アルバックは、このエッチングストップ膜に使うAl2O3を高周波スパッタで凹パターンに埋め込む試験をしました。凹パターンはシリコン酸化物でできた深さ240nm、アスペクト比1.0の形状です。位相差10度と60度の条件では端部への回り込みが足りず、端部でAl2O3膜が鋭角に凹み、開口部が狭くなって、成膜を続けると上部で膜がふさがって空孔ができました。この2条件ではパターン側壁にシームがあり、同社はこれが後の工程で大きなボイドになるとしています。
今の断面で良品に見えても、口がまだ開いているだけで、次の熱処理や次の膜でふさがれば空孔になります。同社はアスペクト比0.2〜1.0の浅い形状でも同様の結果を確認しており、アスペクト比の低い工程でも同じ対策が必要です。
継ぎ目の位置と形は、めっき前の膜の付き方で決まる
Section titled “継ぎ目の位置と形は、めっき前の膜の付き方で決まる”スパッタリングのカバレッジ不良は後のめっき工程でボイドの原因となり2、エレクトロマイグレーションの問題を起こします。空間磁場を制御しない条件ではCu粒子がウェーハ中央の方向から多く入射するので、側壁のCu膜厚が左右非対称になり、ビア底のCu膜が傾いた形になります。空間磁場を制御するとCuイオンの指向性が上がり、側壁が左右対称でビア底が平坦な良いカバレッジになります。継ぎ目の位置と形は、電解めっきで埋める前の、バリアとシードの付き方で決まっています。
上流をたどると、底が薄いという同じ話に戻ります。日本半導体歴史館は、LPCVDには反応種の供給が律速してアスペクト比が大きくなると底部の膜厚が上部より薄くなる問題があり、ALDがこれを解消したとしています3。底が薄く上が厚ければ、上が先にふさがります。東京エレクトロンは、PVD方式では深いコンタクトの底にある構造体まで膜をつけるのは至難だったとして4、穴の底や構造体の周りにまんべんなくガスを行き渡らせて均一に成膜するCVD方式を採りました。サムコは、プラズマを使うCVDなら熱や光を使う方式と別に、比較的低温で細い溝の中へ成膜できるとしており5、同社の装置が対象にする膜厚は10nmから1000nm程度です。
断面では、端部の凹みと最上端の削れを見る
Section titled “断面では、端部の凹みと最上端の削れを見る”アルバックが断面SEMで矢印を付けたのは、底面と側壁が90度で交わる端部と、凹パターンの最上端の2か所です。端部で膜が鋭角に凹んでいれば回り込みが足りません。最上端が削れていれば、埋め込みの代わりに肩が失われています。断面観察やTEMで埋め込みを判定するときは、中央の継ぎ目だけでなく、この2か所も同時に測ります。
位相差で、堆積とエッチングの釣り合いを変える
Section titled “位相差で、堆積とエッチングの釣り合いを変える”アルバックの試験では、マルチチャンバ式スパッタ装置ENTRON-EX W300で300mmウェーハを使い、カソード側の高周波出力を4000W、基板側の高周波出力を400Wとし、Arガスを200sccm流してチャンバー内圧力を約2Paにして、マグネトロンスパッタ方式で放電しています。装置は13.56MHzの高周波を100〜5000Wの範囲で出力できます。
2つの高周波電源の位相差を変えたときの電圧の振れ幅(Vpp)から、同社は領域を分けています。位相差0〜100度が同位相領域、240〜360度が非同位相領域、それ以外がプラズマを安定に維持しにくい非整合領域です。Vppは同位相領域では50度付近を底とする凹形に、非同位相領域では300度付近を頂点とする凸形に変わります。同位相領域でVppが最も低くなる位相からさらに30〜50度進めた範囲が第一範囲、非同位相領域でVppが最も高くなる位相の前後10度が第二範囲、それより低い位相位置にある非同位相領域が第三範囲です。
断面SEMの結果は3通りになりました。第一範囲の外の位相差10度と60度では、側壁に継ぎ目が残りました。第一範囲の位相差90度と第二範囲の位相差295度では、端部の鋭角の凹みがなくなり、埋め込みの良いAl2O3膜ができ、後の工程のための開口部も十分残りました。第三範囲の位相差260度では、埋め込みは良いものの、エッチングの効果が強すぎて凹パターンの最上端が削れ、パターンを壊しました。同社は、第二範囲で成膜してから途中で第三範囲に位相位置を切り替える2段の成膜で、基板上のパターンを傷つけずに、より良い埋め込みを得ています。
埋め込みを動かすと、面内分布も一緒に変わります。基板電極側の高周波をゼロにした条件と比べると、どの位相位置でも成膜速度が上がりました。成膜室内のアルゴンイオンが膜に取り込まれたためと考えられます。位相差10度と70度では面内分布の形を保ったまま全体の成膜速度が上がり、位相差90度では面内分布の形が変わって、特に基板外周部でエッチングの効果が出ました。非同位相の領域でも同じ傾向で、320度では分布の形を保ったまま成膜速度が上がり、295度以下ではエッチングの効果が出て、位相位置を下げるほど分布の形の変化が大きくなり、260度では大きく変わりました。埋め込みを良くしようとすると、均一性も同時に変わります。
ALDで底と上をそろえると、スループットとコストを払う
Section titled “ALDで底と上をそろえると、スループットとコストを払う”継ぎ目を抑える別の方法は、底と上の膜厚をそろえることです。ALDの2つの置換吸着はそれぞれ飽和する反応なので、十分な暴露時間があれば反応種の供給に律速されず3、パターンに粗密のある三次元構造でも均一に成膜できます。ただしKOKUSAI ELECTRICによると、ALDは優れたステップカバレッジが得られる一方、繰り返しのプロセスなのでスループットが低く、ウェーハコストが増えます6。アスペクト比が高い溝ではガスの拡散に時間がかかって分子の移動が律速になり、枚葉ではサイクルタイムが伸びます。同社は一度に50〜100枚を成膜できるバッチを解決策に挙げ、3D NANDのプロセスでは64層を超えるとバッチのスループットが枚葉を上回るとしています。
熱で流して埋めると、熱バジェットを使う
Section titled “熱で流して埋めると、熱バジェットを使う”アルバックは、CVD-Coライナに必要な膜特性と埋め込みの評価にCuリフロープロセスを使い、300mmウェーハで埋め込みを測りました2。ウェーハ中央部と基板端3mmのエッジ部の断面から、面内でほぼ100%埋め込まれていることを確認しています。トレンチ深さ220nm、アスペクト比2〜10のすべての形状で良好なCuの埋め込みができ、トレンチ幅17nm、アスペクト比4.3のパターンではトレンチ壁にCo膜厚2nmが均一に形成されました。熱で流して埋めるほど継ぎ目は消えますが、熱バジェットを使います。
3つの方法では、犠牲になるものが違います。リスパッタを強める方法ではパターンの肩と面内分布、コンフォーマル成膜ではスループットとウェーハコスト、熱で流す方法では熱バジェットです。継ぎ目をどこまで許すかは、この3つのうち自分の工程でどれが最も許容しやすいかで決まります。膜の立ち上がりそのものが遅れているときは、インキュベーション時間から原因を切り分けます。
シームと空洞、拡散起因のボイドを分ける
Section titled “シームと空洞、拡散起因のボイドを分ける”シームは両側から成長した膜が合わさる継ぎ目で、必ず開いた空洞になるわけではありません。入口が先に閉じて空洞が残る埋込み不良はボイドとして確認します。ビア充填めっきとCuリフローでは、その発生を抑える成長と材料移動が異なります。
カーケンダルボイドは、接合後の異種金属の拡散で空孔が集まる機構です。成膜時の未充填とは時期と原因が違うため、加熱前後の断面と反応層を比較して分けます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”シームとは何ですか?
溝や穴を膜で埋めるときに、両側の壁から伸びた膜が中央でぶつかってできる継ぎ目です。膜として塞がっていても、両側から合わさった面に密度や界面の不連続が残る場合があります。
シームとボイドはどう異なりますか?
継ぎ目と空洞を区別します。シームがあっても必ず空洞になるわけではありません。端部への回り込みが足りないと開口部が狭くなり、そのまま成膜を続けると上部で膜がふさがって空孔(ボイド)ができます。アルバックは、側壁のシームが後の工程で大きなボイドになるとしています。
シームがあると何が起きますか?
後の工程で問題が出ます。スパッタのカバレッジ不良は後のめっき工程でボイドの原因となり、エレクトロマイグレーションの問題を起こします。
何を測れば分かりますか?
断面観察です。底面と側壁が90度で交わる端部で回り込みの良し悪しを、凹パターンの最上端で削れの有無を見ます。
何を調整すると変わりますか?
堆積とエッチングのバランスです。アルバックの試験では、カソード側と基板側の高周波の位相差が90度と295度でボイドがなく開口部も十分残り、10度と60度では側壁に継ぎ目が残りました。
シームをなくすと何が悪化しますか?
パターンの肩です。エッチング効果をさらに強めた位相差260度ではシームが消えて埋め込みも優れるものの、凹パターンの最上端が削れてパターンを壊しました。アルバックは、途中で位相位置を切り替える2段の成膜でこれを解決しています。
コンフォーマルな成膜にすれば解決しますか?
時間がかかります。ALDは優れたステップカバレッジが得られる一方、繰り返しのプロセスなのでスループットが低く、ウェーハコストが増えます。アスペクト比が高い溝ではガスの拡散に時間がかかり、分子の移動が律速になります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ボイドとは── 継ぎ目が塞がって空孔になった状態
- ステップカバレッジ(段差被覆性)とは── 底と上の膜厚比を数値にした指標で、継ぎ目の出やすさを予告します
- インキュベーション時間とは── 埋め込みの前に、膜が立ち上がるまでの遅れ
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- 2アルバック:テクニカルジャーナルNo.84 半導体多層配線における成膜技術(2021年4月)ulvac.co.jp ab
- 3日本半導体歴史館:ALD(原子層成膜)shmj.or.jp ab
- 4東京エレクトロン:新型枚葉成膜装置 Episode 1tel.co.jp ↩
- 5サムコ:CVD装置とはsamco.co.jp ↩
- 6KOKUSAI ELECTRIC:IR Day 2024 Part2 テキスト版kokusai-electric.com ↩