シード層とは
シード層とは、電解めっきで銅を埋める前に、溝や穴の内側にあらかじめ付けておく薄い銅の膜です。 めっきの電流経路と、銅が成長する起点を用意します。この膜は薄すぎると側壁で途切れ、厚すぎると溝の入口を塞ぎます。配線が細くなるほどその間の幅が狭くなり、成膜方法、下地の材料、埋め込み方が替わってきました。行き着く先は、シード層そのものを省くことです。
めっきの電流経路と、銅が成長する起点を用意する
Section titled “めっきの電流経路と、銅が成長する起点を用意する”ダマシン法では、絶縁膜に掘った溝に銅を埋めます。埋める手段は電解めっきです。電解銅めっきは、硫酸銅などの液にウェーハと銅の塊を入れ、電流を流して表面に銅を付ける方法で1、電流を流すにはウェーハの表面が導電性である必要があります。絶縁膜のままでは、溝の中で電流の経路が途切れます。
そこで、めっきの前に金属膜を2層付けます。ダマシン法の主要工程は、絶縁膜の堆積、ビア孔と配線溝の形成、バリアメタルとCuシード膜の成膜後の電解めっきによる埋め込み2、CMPによる余分な銅の除去の順です。溝や穴の表面にスパッタで付けたバリア膜とシード膜の上から電気めっきで銅を埋め、バリア膜には主にタンタルや窒化タンタルが使われます3。1層目のバリアメタルは銅が絶縁膜へ拡散するのを防ぎ、2層目のシード層は銅が成長する起点になります。
ITRSの配線章の日本語版は、この膜を膜成長核形成層4と呼びます。微細なパターンの中で核形成層がどれだけ均一に、どこまで回り込んで付いているかが、次に埋める金属をボイドなく詰められるかを左右します。埋め込みの成否は、めっきを始める前のシード層の状態で決まります。
薄すぎれば途切れ、厚すぎれば入口が塞がる
Section titled “薄すぎれば途切れ、厚すぎれば入口が塞がる”シード層には、相反する2つの条件がかかります。溝の底まで途切れずにつながっていることと、溝の入口が開いたままであることです。
シード層が途切れると、銅はそこまでしか成長しません。溝の側壁は、上から成膜するPVDにとって最も不利な面です。アルミをRIEで加工していた時代のスパッタは平坦部の面内均一性が主な課題でしたが、ダマシン配線では深い穴や細く深い溝の側壁に均一な膜を作る必要が生じ、イオン化スパッタなどの技術が大きく進みました5。
塞げば、めっき液は入口の手前で止まります。PVDで付けた膜は溝の入口側を細らせるため、デュアルダマシンの形状では銅の電解めっきで埋められる範囲に限りがあります4。付けるほど届く一方で、付けるほど入口は狭まります。
向きをそろえ、濡れやすくし、最後は流し込む
Section titled “向きをそろえ、濡れやすくし、最後は流し込む”板挟みへの答えは、膜の厚さを保ったまま側壁へ届かせることです。
まず、飛んでくる向きをそろえます。IBM Researchの野上毅氏は、側壁と底まで銅のシード層を行き渡らせる手立てとして、電界を使って飛んでくる銅イオンの向きをそろえるiPVDと、ウェーハに対して斜めに向かう銅の流れをハチの巣状の障害物で途中から抜くコリメーションスパッタ6を挙げています。この障害物がコリメータで、ターゲットとウェーハのあいだに入り、届かせたい向きだけを通します。スパッタリングそのものの改造にあたります。
次に、下地の濡れ性を変えます。バリアメタルには、銅の拡散を抑える役割に加え、その上に付けるシードCu膜との濡れ性を上げるライナー機能もあります2。特にRuは銅との相性がよく、上に重ねるシードCu薄膜が均一に広がるため、電解めっき銅の埋め込み性能が上がります。PVDの銅シード層を側壁まで途切れずに付けるため、TaNなどのバリアメタルの上にCVDでCoの薄膜を付けて濡れ性を上げる濡れ層が、28nmノードあたりから必要になりました6。
それでも足りない場合は、埋め込み方法を替えます。7nmノードあたりから電解めっきによる埋め込みが難しくなり、Cuリフローに移りました6。高真空のPVDチャンバで銅を低温成膜したあと酸素にさらさずに熱処理すると、表面エネルギーを下げようとする銅が溝の中で流動して埋まります。銅の融点は1000℃を超えますが、このCuリフローは300℃以下の加熱で起きます。濡れ層とリフローは、どちらも工程を増やします。
汚れの管理も必要です。富士通研究所の中村友二氏は、エッチング後のLow-k膜の表面に水分やフッ素系の堆積物が残っていると、その上に付けるバリアメタルやシードCuが酸化や変質を起こしやすくなる可能性があるとしています2。Low-k材料をエッチングした直後の面は、シード層にとって不利な下地になり得ます。
合金シードは寿命を延ばし、抵抗を上げる
Section titled “合金シードは寿命を延ばし、抵抗を上げる”シード層には、埋め込みとは別に、配線の寿命という仕事も乗ります。Al配線で不純物を結晶粒界に集めて信頼性を上げたのと同じ考え方で、Cu配線でもAlやAgやMnをシードCu膜に混ぜ、後の工程の加熱で配線全体に拡散させると、エレクトロマイグレーションとストレスマイグレーションの耐性が改善することが確認されています2。合金元素はPVDのCu合金シード層として持ち込まれ、めっき後のアニールで配線全体に拡散します。Cu-Al合金と界面の絶縁体キャップを組み合わせると、EM耐性が50倍になった結果があります4。
一方で、抵抗が上がります。信頼性の改善効果は銅の中に分布する不純物濃度が高いほど大きいものの、配線抵抗率が上がるという副作用があります2。純金属の配線と比べても、合金では抵抗率が上がります。シード層に何を混ぜるかは、寿命と抵抗のトレードオフで決まります。
混ぜた元素が別の役割を持つこともあります。中村氏は、シードCu膜に加えたMnがその後の加熱で銅の表面に酸化マンガンの薄膜を自己整合的に作るため、バリアメタルの成膜工程を省ける可能性があるとしています2。シード層が、拡散を防ぐ膜の役割も兼ねることになります。
最終的な方向は、シード層を省くこと
Section titled “最終的な方向は、シード層を省くこと”ALDのRuは銅の拡散に対するバリア性はわずかですが、銅の電解めっきに対しては非常に良好な核形成層であることが実証されており4、ITRSはALDのTaNやWNCなど他のバリア膜と組み合わせて使われると見ています。PVD銅の側壁被覆が限界に来ていることへの別の対策として、電解めっきで核形成層を補修する技術も挙がっています。ITRSがより良い解決策とするのは、めっき液やバリア膜を改善して銅が自ら核を作れるようにし、核形成の膜そのものを省くことです。
実際に、NISTの研究はPVDとALDのRuバリアへ銅を直接電析し、サブマイクロメートルの溝を下から満たせる7ことを示しました。決め手はRu表面の酸化状態です。空気中でできた酸化膜を除かないまま電析すると、銅は島状に成長し、埋め込みも銅とRuの密着も悪くなります。薄く抵抗の高い酸化Ruをシードにした場合はターミナル効果も重なり、酸化物の還元の速さと銅の核の密度がともに下がって、つながった緻密な膜になりにくくなります。
対策も同じ研究に示されています。酸化膜のないRuでは、濡れ広がるCuのupd(アンダーポテンシャル析出)層ができて、膜が早くつながります。酸化したRuシードを脱気した希硫酸の中で電気化学的に還元し、すぐに液のまま銅めっき浴へ移すと、溝の埋め込みが安定し、銅とRuの密着も改善しました。過電圧を高め(約0.25 V)にした析出も、膜が早くつながるのに有利です。銅の核の付き方は、Ru表面の酸化状態と析出の条件の両方で変わります。
パッケージ基板でも、めっき前の下地が線幅を決める
Section titled “パッケージ基板でも、めっき前の下地が線幅を決める”同じ課題は、ウェーハの外にもあります。新光電気工業は、半導体パッケージ用基板の微細配線で、無電解めっきのシード層に代えてスパッタ膜を使い、電解銅めっきの前にプラズマ処理で表面を親水化し、レジスト除去後の洗浄にプラズマアッシングを加えることで、線幅1.5μmを実現しました8。寸法の桁は違っても、めっきの前にどのような下地を作るかが線幅を左右する点は、ウェーハの配線と同じです。
配線として電流を運ぶのは電解めっきで埋めた銅で、シード層はその銅が成長する起点です。それでも、埋まるかどうか、寿命がどれだけ持つか、抵抗がどれだけ上がるかは、この薄い膜でほぼ決まります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”シード層とは何ですか?
電解めっきで銅を埋める前に、溝や穴の内側にあらかじめ付けておく薄い銅の膜です。ITRS 2009年版配線章の日本語版では、膜成長核形成層と呼ばれています。
バリアメタルの上へ直接めっきするには何が要りますか?
銅が成長する起点と、電流の経路です。電解銅めっきは電流を流して表面に銅を付ける方法で、ウェーハの表面が導電性である必要があります。ITRSは銅が自ら核を作れるようにして核形成の膜を省く方法をより良い解決策としていますが、現状ではシード層が別に必要です。
シード層が薄すぎると何が起きますか?
溝の中に空洞ができます。シード層が途切れると銅はそこまでしか成長せず、核形成層がどれだけ均一に、どこまで回り込んで付いているかが、ボイドなく埋められるかを左右します。
シード層を厚くするとどうなりますか?
溝の入口が塞がります。PVDで付けた膜は溝の入口側を狭めるため、デュアルダマシンの形状では銅の電解めっきで埋められる範囲に限りがあります。
側壁まで届かせるために何をしていますか?
入射方向をそろえます。電界で銅イオンの向きをそろえるiPVDと、ウェーハに垂直でない銅の流れをハチの巣状のコリメータで取り除くコリメーションスパッタが使われ、28nmノードあたりからはCVDのCoで濡れ性を上げる層も加わりました。
シード層に別の金属を混ぜるのはなぜですか?
寿命を延ばすためです。AlやAgやMnをシードCu膜に添加して加熱で配線全体に拡散させると、エレクトロマイグレーションとストレスマイグレーションの耐性が改善します。効果は不純物濃度が高いほど大きい一方、配線抵抗率が上がります。
シード層を無くす方向はありますか?
あります。ALDのRuは銅の拡散に対するバリア性はわずかですが、銅の電解めっきに対しては非常に良好な核形成層です。また7nmノードあたりから電解めっきによる埋め込みが難しくなり、PVDで付けた銅を300℃以下で流動させるCuリフローに替わりました。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- バリアメタルとは── 銅の拡散を防ぐ膜。シード層はその上に付ける
- PVD(物理気相成長)とは── シード層を付ける手段そのもの
- ステップカバレッジとは── 側壁と底への膜の付き方を表す指標
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- 1SCREENセミコンダクターソリューションズ:初心者のための半導体入門 Cu配線screen.co.jp ↩
- 2
- 3表面技術 第63巻第4号:上野和良(芝浦工業大学)「半導体集積回路の配線に用いる銅めっき膜の不純物」jstage.jst.go.jp ↩
- 4JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:ITRS 2009年版 配線 日本語版semicon.jeita.or.jp abcd
- 5日本半導体歴史館:1990年代後半 ダマシン法によるCu配線技術の採用shmj.or.jp ↩
- 6応用物理 第92巻第6号:野上毅(IBM Research)「2 nm 以降のロジックの配線技術と材料」(2023年)jstage.jst.go.jp abc
- 7
- 8新光電気工業:ドライプロセスを用いた銅配線形成技術shinko.co.jp ↩