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表面散乱とは

表面散乱とは、配線の外側の界面に達した電子が、向きを保って跳ね返るか、向きを失って散るかという現象です。 向きを保つ割合を、鏡面性パラメータpで表します。pは材料表に載る値ではなく、同じRuでも0.01から0.99まで振れます。値は金属の側ではなく、界面の相手で決まります。線幅が電子の平均自由行程を下回る世代では、どの膜を下地やバリアに選ぶかが、配線の比抵抗を左右します。

1に近いほど電子は向きを保ち、0に近いほど向きを失う

Section titled “1に近いほど電子は向きを保ち、0に近いほど向きを失う”
鏡面反射と散漫反射
p = 0.99電子の軌跡SiO2向きを保って跳ね返るp = 0.01TiN向きを失って散るALD RuSiO2TiN
同じALD Ruでも、SiO2の上では電子が界面で向きを保って跳ね返り(p=0.99)、TiNの上では当たるたびに向きを失います(p=0.01)。

1に近いほど、界面は鏡のように電子の向きを保ちます。0に近いほど、界面に達するたびに向きが失われ、実効的な走行距離が縮みます。線幅が電子平均自由行程より短い領域では、電子は走り出してすぐ界面へ届くため、そこでの振る舞いがそのまま比抵抗に乗ります。NISTが50nm未満のCu線の散乱機構を調べた動機も、線幅や厚さが平均自由行程を下回ったときにCu配線がどこまで延命できるか1を知ることでした。

pは0から1の値を取り2、NISTの比抵抗計算プログラムは既定値を0.1にしています。このプログラムは、四角柱の線の3つの面に共通のpと、上面だけのpを別々に入力させます。

同じRuでも、下地がSiO2なら0.99、TiNなら0.01

Section titled “同じRuでも、下地がSiO2なら0.99、TiNなら0.01”
鏡面性パラメータの実測値
ALD Ru/SiO2PVD Ru/SiO2PVD Cu/TaNALD Ru/TiN0.990.980.050.0101鏡面性パラメータ p
SiO2の上のRuは0.98〜0.99と右端に、TaN上のCuとTiN上のRuは0.05と0.01で左端に寄ります。

imecのDuttaらが2017年に公開した論文のTable 1では、鏡面性パラメータがSiO2上のALD Ruで0.99、SiO2上のPVD Ruで0.98、TaN上のPVD Cuで0.05、TiN上のALD Ruで0.01でした3。

同じALD Ruでも、下地がSiO2なら0.99、TiNなら0.01です。金属の側は同じで、相手だけが入れ替わっています。この測定では、SiO2上のRu膜が強い(001)配向を示し、TiN上のRu膜は明確な配向を示しませんでした。配向の有無が界面の性質と結び付いており、シード層や下地膜の選定が電気特性へ直結します。

0.99と0.01の差は、比抵抗のモデルのなかで界面の寄与がほぼ無視できる状態と、支配的な状態を隔てます。下地を1つ替えるだけで、配線設計の前提が動きます。

IBMの測定では、側壁の散乱が上面と底面より強かった

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IBMの研究者は、微細配線で散乱の寄与を実験で分けにくい理由を、粒の大きさと線の寸法が普通は独立に変えられない4ことに置いています。そこで表面散乱を評価するために、配線に初めて磁気抵抗の測定を使いました。この方法では、側壁の散乱と上面・底面の散乱を別々に評価できます。結果は、側壁の散乱が上面・底面の散乱より強いというものでした。

支配的な散乱は試料で入れ替わり、Cu細線では表面、微細Ruでは粒界だった

Section titled “支配的な散乱は試料で入れ替わり、Cu細線では表面、微細Ruでは粒界だった”
粒が長いCu細線の上面図
側壁で散る粒界25〜45nm粒は線幅よりずっと長いCu周囲の絶縁膜
NISTの25〜45nm幅のCu線では粒が線幅よりずっと長く、比抵抗は完全な散漫表面散乱のモデルと合い、粒界散乱の寄与は小さいものでした。

NISTは、電子線リソグラフィと2層のハードマスクで線幅25〜45nmのCu配線を作り1、電子線後方散乱回折で粒の構造を調べました。粒は線の断面の幅よりずっと長いものでした。比抵抗は線抵抗の温度依存性から求め、完全な散漫表面散乱を仮定した既存のモデルと合い、粒界散乱の寄与は小さいものでした。NISTは、散漫表面散乱による比抵抗を3次元で正確に表す簡単な解析モデルも作っています。

一方で、imecのDuttaらの論文は、微細Ru配線では粒界散乱が支配的な散乱機構だったとしています3。SiO2上のRuのように界面が鏡面に近ければ、残る要因は粒界散乱に絞られます。

バリアメタルは、断面積と界面の両方に響く

Section titled “バリアメタルは、断面積と界面の両方に響く”

バリアメタルは配線金属の外周に入るため、表面散乱の相手になります。断面を取られるという面積の問題と、界面の性質という電気の問題が、同じ層から同時に出ます。

imecは、Cuと違ってバリア不要の金属を使えば、貴重な導電面積を配線金属自体が使い切れるとしています5。バリアを省く選択は、面積と界面の両方へ同時に響きます。

pは粒界反射係数Rと並ぶ、比抵抗モデルの入力

Section titled “pは粒界反射係数Rと並ぶ、比抵抗モデルの入力”

Duttaらは、薄膜の比抵抗をMayadas-Shatzkesモデルで表し、得られた鏡面性パラメータpと粒界反射係数Rを、ナノワイヤ向けの修正モデルへ入力して線の比抵抗を計算しました。

pは実測から求める量で、材料の組み合わせごとに測り直します。バルク比抵抗と平均自由行程が材料の性質なら、pとRは界面と微細構造の性質です。

界面の鏡面性を高めて得られるのは、線幅を詰めたときの比抵抗の上がりにくさで、差し出すのは下地材料の自由度です。バリア性や密着性で選びたい下地が、鏡面性では不利になることがあります。配線担当は、拡散バリアとしての要求と鏡面性を同じ表へ載せます。

表面散乱とは何ですか?

配線の外側の界面に達した電子が、向きを保って跳ね返るか、向きを失って散るかという現象です。向きを保つ割合を鏡面性パラメータpで表し、pは0から1の値を取ります。

pはどのくらいの値ですか?

imecのグループが2017年に公開した論文のTable 1では、SiO2上のALD Ruで0.99、SiO2上のPVD Ruで0.98、TaN上のPVD Cuで0.05、TiN上のALD Ruで0.01です。NISTの計算プログラムは、既定値を0.1にしています。

pが1に近いと何が良いのですか?

界面で電子が向きを保つため、界面があっても比抵抗はほぼそのままです。0に近いと、界面に達するたびに向きを失い、比抵抗が上がります。

同じ金属でも値が変わりますか?

変わります。同じALD Ruでも、下地がSiO2なら0.99、TiNなら0.01です。SiO2上のRu膜は強い(001)配向を示し、TiN上では明確な配向を示しませんでした。

粒界散乱とどちらが強く出ますか?

試料によって違います。imecのグループの論文では微細Ru配線で粒界散乱が支配的で、NISTの25〜45nm幅のCu線では、比抵抗が完全な散漫表面散乱のモデルと合い、粒界散乱の寄与は小さいものでした。

バリアメタルとの関係は何ですか?

バリアは配線金属の外周へ入るため、界面の相手そのものになります。imecは、バリア不要の金属を使えば貴重な導電面積を配線金属自体が使い切れるとしています。

設計側では何に使いますか?

比抵抗の予測モデルの入力です。pと粒界反射係数R、バルク比抵抗、平均自由行程の4つから、線の断面寸法に応じた実効比抵抗を計算します。側壁と上面でpを分けて入れる計算プログラムもあります。

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