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配線抵抗の微細化限界とは

配線抵抗の微細化限界とは、線幅が電子平均自由行程を下回ると、実効の抵抗率がバルクの値から離れて上がっていく現象です。 寸法を縮めるほど、断面が減る以上に抵抗が増えます。限界を決めるのは、散乱で上がる抵抗率と、拡散を止める囲いに取られる断面の2つです。銅はこの2つで同時に損をするため、線幅20 nm前後で優位を失います。

教科書の抵抗率は、材料ごとに決まった定数として書かれています。配線で寸法の関数になるのは、線幅が電子の平均自由行程と同じ程度になると、電子が次の散乱を迎える前に壁へぶつかるからです。

平均自由行程の長い銅ほど、細線で抵抗率が上がる

Section titled “平均自由行程の長い銅ほど、細線で抵抗率が上がる”
平均自由行程と線幅
線幅 10 nm20 nmCu39.9 nmW11.2 nmCo7.77 nmRu6.59 nm010203040電子平均自由行程 nm
電子平均自由行程はCuが39.9 nmと最も長く、線幅20 nmでも10 nmでも大きくはみ出します。Ru、Co、Wは6.59〜11.2 nmで、細線で失う分が小さい金属です。

電子平均自由行程は、Cu 39.9 nm、Ru 6.59 nm、Co 7.77 nm、W 11.2 nmです1。線幅がこの長さを下回ると、壁での表面散乱と粒界散乱が抵抗を押し上げます。線幅10 nmでは、銅の抵抗率は最も低いままでも、上がり方は最も悪い部類です1。平均自由行程が長いほど、細線で失うものが大きくなります。

この寸法はもう目の前にあります。imecは、銅が1990年代半ばからロジックのBEOLで配線とビアの主流の導体だったとし2、最も厳しい局所配線の層はまもなく幅10 nmそこそこかそれ以下になり、その寸法では銅の抵抗率が急に上がって回路の性能を損なうとしています。代わりの金属は、太い寸法では銅より抵抗率が高いものの、寸法を縮めたときの上がり方が緩いため、小さな寸法で有望になるとimecは見ています。金属の良し悪しは、寸法を指定して初めて順位が付きます。

抵抗上昇の内訳は、粒界散乱が最大で、表面散乱、フォノン散乱が続く

Section titled “抵抗上昇の内訳は、粒界散乱が最大で、表面散乱、フォノン散乱が続く”

Boltzmann 輸送方程式を Monte Carlo 法で解くと、抵抗上昇で最も大きい寄与は粒界散乱で、次が表面散乱、最後がフォノン散乱です1。微細化したRu 配線でも、粒界散乱が支配的な散乱機構でした3。手法が違っても、粒界が最大という点で結論がそろっています。IBM Researchも、fcc相のRuでは粒界散乱が大きく、平均粒径が同程度の銅配線より抵抗率が高くなる4と計算しています。

順位がはっきりすれば、手の打ち方も定まります。結晶粒を大きくして粒界そのものを減らす工夫が、まず有効です。

予測の手段は2つあります。Ru 薄膜の抵抗率の膜厚依存を Mayadas-Shatzkes 模型で記述し、そこで得た係数をナノワイヤ用に修正した模型へ入れると、線の抵抗率の予測値は実測値と約 10% 以内で一致しました3。薄膜の測定から細線の性能を見積もる道筋が立ちます。いっぽう、散乱の機構を一つずつ入れた Monte Carlo 計算では、1 つの試算に約 4 GB のメモリと 48 時間ほどを要しました1。精度と計算量の関係がそのまま出ています。

ライナーとバリアは寸法と一緒に縮まず、導体の断面を削る

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線幅10 nmの溝
Cuライナー 3 nmCoライナー 1 nmRuライナー 0.3 nmWライナー 0 nm線幅 10 nm導体ライナー・バリア絶縁膜
線幅10 nmの溝に必要な厚さのライナー・バリアを実寸の比で描くと、Cuは両側の3 nmずつで導体の幅が4 nmに減ります。Ruは0.3 nm、Wは0 nmで、溝のほぼ全体を導体に使えます。

抵抗率が上がるだけでなく、導体として使える断面も減ります。銅の配線は、溝の内側をバリアとライナーで覆います。imecによると、この追加の層は周りの絶縁膜への拡散を抑えて絶縁破壊の危険を下げ、密着も確保します2。ただし一般に抵抗率の高いこの層の厚さは配線の寸法ほどには縮まず、導電にほとんど寄与しないまま金属の体積に占める割合が増え続けます。

必要なライナー・バリア厚は、Cu 3 nm、Co 1 nm、Ru 0.3 nm、W 0 nm です1。この厚みは寸法が縮んでも同じだけ要るため、細い溝ほど、囲いの取り分が相対的に大きくなります。線幅10 nmの溝に当てはめると、銅は両側の3 nmずつを差し引いて導体の幅が4 nmに減り、Ruはほぼ10 nmのまま使えます。

Ruの囲いが薄くて済む理由について、IBM Researchは、fcc相のRuは従来の密着ライナーであるTaNやTiNを介するよりSiO2へ直接結合するほうがエネルギー的に有利4と計算しています。薄いライナーが必要な場合でも、縦方向の抵抗の上乗せを銅向けの従来ライナーより最大8倍小さくできるとしています。

ライナーの取り分を含めると、線幅20 nm前後で銅の優位が消える

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順位が入れ替わる線幅
1020線幅 nm線抵抗(ライナー込み)20 nm前後で並ぶCuRuCuRu
ライナーの取り分を含めると、太い線で有利なCuは細くするほど急に抵抗が上がり、線幅20 nm前後でほかの金属と並びます。

散乱と断面の2つを合わせると、線幅 20 nm 前後で銅の抵抗がほかの 3 金属と並びます1。2つが同じ向きに働いた結果です。IBM Researchも、密着層と濡れ層のライナーに導体の体積を取られるため、fcc相のRuの線抵抗は線幅21 nm未満で銅を下回る4と計算しています。抵抗率だけを比べると銅が勝ち、断面の取り分まで含めると細線で負けます。

打ち手は3方向あり、それぞれ別の制約にぶつかる

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結晶粒を大きくすれば粒界散乱は減りますが、細い溝の中で大きな粒を育てるには熱が要り、その熱は下の層の都合とぶつかります。囲いの薄い金属を選べば断面は稼げますが、バルクの抵抗率で損をします。imecは、候補の金属のいくつかは原料コストや環境負荷まで考えると有利にならないとしています2。層ごとに最適な金属を選べば性能は出るものの、工程と検査の系統が増えます。どこまで層を分けるかが、実際の設計判断になります。

配線抵抗の微細化限界とは何ですか?

線幅が電子平均自由行程を下回ると、実効の抵抗率がバルクの値から離れて上がっていく現象です。寸法を縮めるほど、断面の減少以上に抵抗が増えます。

何がいちばん影響しますか?

粒界散乱です。抵抗上昇の寄与は粒界散乱が最も大きく、次が表面散乱、最後がフォノン散乱です。

どこから影響し始めますか?

線幅が電子平均自由行程に近づいたあたりからです。電子平均自由行程は銅で 39.9 nm、ルテニウムで 6.59 nm です。

計算で予測する方法はありますか?

あります。薄膜の膜厚依存を Mayadas-Shatzkes 模型で記述し、得た係数をナノワイヤ用の模型へ入れると、予測値は実測と約 10% 以内で一致しました。散乱を1つずつ入れる Monte Carlo 計算は、1回の試算に約 4 GB のメモリと 48 時間ほどを要します。

対策は何ですか?

結晶粒を大きくして粒界を減らす、囲いを薄くして導体の断面を稼ぐ、平均自由行程の短い金属を選ぶ、の 3 方向です。どれも熱、バルク抵抗率、工程数のいずれかと引き換えになります。

バリアの厚みも影響しますか?

はい。必要なライナー厚は Cu 3 nm、Co 1 nm、Ru 0.3 nm、W 0 nm で、この厚みは線幅と一緒に縮まないため、細い線ほど導体の断面を大きく削ります。

どのくらいの寸法で順位が変わりますか?

線幅 20 nm 前後で、ライナー分を含めた銅の抵抗がほかの 3 金属と並びます。IBM Researchは、fcc相のRuの線抵抗が線幅21 nm未満でCuを下回ると計算しています。

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