許容電流密度とは
許容電流密度とは、配線が規定の寿命を保てる範囲で流せる、断面積あたりの電流の上限です。 これを超えると、原子が動いて断線へ向かいます。配線を細くすれば同じ電流でも電流密度は上がり、動作周波数も同時に上がります。そのため、必要な電流密度と許される電流密度は世代ごとに逆へ動きます。
電流密度が高いほど、金属イオンが陽極へ流れて断線が早まる
Section titled “電流密度が高いほど、金属イオンが陽極へ流れて断線が早まる”エレクトロマイグレーションは、金属薄膜の導体でイオンが陽極へ移動し、断線(オープン)故障を起こす故障メカニズムです。このイオンの移動は、高温と高い電流密度で加速されます1。許容電流密度は、この加速を製品の寿命に収まる範囲で止めるための上限です。
IRDSの寿命モデルは、ボイドが単一ビアを含む配線の陰極側にでき、ドリフト速度が界面拡散に支配されることを前提にしています2。寿命の見積もりにはブラックの式を使います。
細くするほど要る電流密度は上がり、寿命は世代ごとに半分になる
Section titled “細くするほど要る電流密度は上がり、寿命は世代ごとに半分になる”EMの寿命はに比例します2。は線幅またはビア径、は配線の厚み、は電流密度です。幾何モデルでは寿命が新しい世代ごとに半分になり、2世代進めば4分の1です。配線寸法のわずかな工程ばらつきでも、寿命は影響を受けます。
IRDSは、最大等価DC電流密度を、エレクトロマイグレーション限界でのDC電流密度をと呼び、どちらも配線の幾何スケーリングで制限されるとしています。は、配線断面の縮小と最大動作周波数の上昇によって、スケーリングとともに増えます。許される側が縮み、要る側が伸びるので、何も手を打たなければ世代ごとに余裕が消えます。
上限を上げる手は、材料・界面・設計の3通り
Section titled “上限を上げる手は、材料・界面・設計の3通り”材料では、AlやMnを加えたCu合金の種層が、寿命を伸ばす最適な手法とされています2。界面では、Cuの溝と誘電体のSiCNバリアの間へ、CoWPやCVD Coの薄い金属層を挿入します。
設計では短長効果が、導体線の電流搬送能力を伸ばすのに有効に使われ、配線の電流密度の設計規則を支配してきました。短い配線では、背圧が原子の移動を打ち消します。
45 nmより先では、粒の構造が寿命を左右する
Section titled “45 nmより先では、粒の構造が寿命を左右する”45 nmノードより先では、粒構造がドリフト速度、ひいてはEM信頼性に果たす役割が大きくなります。許容電流密度は、寸法と材料に加えて粒の形でも決まります。成膜とアニールで作り込む粒の形が、同じ設計でも寿命を左右します。
上限を超えると、Al配線は熱暴走で融ける
Section titled “上限を超えると、Al配線は熱暴走で融ける”主にAl配線の融解による破壊を、総称して過電流破壊と呼びます3。Al配線は抵抗の温度特性が正のため、大電流を流すと抵抗が増え、配線で消費されるエネルギーがさらに増えて熱暴走し、Al-Siの共晶温度を超えて融けます。過電流で温度が上がり、Al-Siの共晶が接合を突き破ってトランジスタを壊す場合もあり、原因を切り分けにくい壊れ方です。
上限を高く取るほど、保証年数を削る
Section titled “上限を高く取るほど、保証年数を削る”許容電流密度を高く取れば、同じ配線で大きな電流を流せて面積が減ります。その代わりEMの寿命が縮み、製品の保証年数を削ります。バリアや被覆層で寿命を伸ばせば安全ですが、電流が通る断面を食います。短長効果を使えば設計で稼げるものの、配線の長さに上限が入ります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”許容電流密度とは何ですか?
配線が規定の寿命を保てる範囲で流せる、断面積あたりの電流の上限です。IRDSはEM限界でのDC電流密度をJEMと表記しています。
寿命はどんな式で表しますか?
寿命はw×h/jに比例します。wは線幅またはビア径、hは配線の厚み、jは電流密度です。
世代ごとにどう変わりますか?
幾何モデルでは、寿命が世代ごとに半分になります。配線寸法のわずかな工程ばらつきでも寿命は変わります。
なぜ必要な電流密度が上がるのですか?
断面の縮小と最大動作周波数の上昇により、Jmaxがスケーリングとともに増えるためです。
材料で伸ばす手はありますか?
AlやMnを加えたCu合金の種層が、寿命を伸ばす最適な手法とされています。
界面で伸ばす手はありますか?
Cuの溝とSiCNバリアの間へ、CoWPやCVD Coの薄い金属層を挿入する手もあります。
設計で伸ばす手はありますか?
短長効果です。短い配線では背圧が原子の移動を打ち消すので、導体線の電流搬送能力を伸ばせます。配線の電流密度の設計規則を支配してきました。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- エレクトロマイグレーションとは── 上限を左右する現象
- ブラックの式とは── 寿命を見積もる式
- 応力誘起ボイドとは── 電流ゼロで進む別の経路
- 配線抵抗のスケーリングとは── 断面が縮む側の話
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- 2IEEE:IRDS 2024 More Mooreirds.ieee.org abc
- 3ルネサス エレクトロニクス:半導体信頼性ハンドブックrenesas.com ↩