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エアギャップ(配線)とは

エアギャップとは、配線と配線の間を絶縁膜で埋めるかわりに、空洞のまま残す構造です。 空気の誘電率は約1で、どんな固体の絶縁膜よりも低くなります。誘電率を下げる道の終点にある構造で、どこまで使えるかは力学と熱で決まります。空洞は容量を下げると同時に、配線を支える材料と熱の逃げ道も取り去るからです。そのため、空洞をどこに、どれだけの幅で作るかが設計の中心になります。

固体のlow-kは行き詰まり、空洞が誘電率の下限になる

Section titled “固体のlow-kは行き詰まり、空洞が誘電率の下限になる”

隣り合う配線の間には寄生容量が生じ、配線の抵抗とこの容量の積で信号の遅れが決まります。容量は間を埋める材料の誘電率に比例するので、誘電率の低いLow-k材料が探されてきました。

この道は行き詰まりつつあります。k値が2.55を下回る領域でlow-kのスケーリングは大きく減速し、その理由は配線の統合工程で受けるプラズマや機械的な損傷でk値が上がってしまうこととされています1。より低いk値の材料は機械的強度と密着性が乏しく、それが採用を阻んでいます。

エアギャップは材料を入れず、空洞のまま残します。誘電率はおよそ1で、これが下限です。imecは、従来のlow-kを電気的に絶縁する空洞へ置き換えれば微細な寸法で容量が下がると見込み2、配線の間へ部分的な空洞、全面的な空洞を段階的に入れていくことで、RC遅延をさらに改善できるとしています。

実用段階に進んだ技術です。ITRSの2015年版では、エアギャップ構造はILDの主流の候補解と見なされるようになり、成熟度が上がりました。SiO2 ILDとのエアギャップ構造は、ワード線容量を減らすためにNAND Flashメモリへすでに導入され、MPUでも線間容量を減らすためにSiOC ILDとのエアギャップ構造が導入されています。

ロジックでは、Intelが14nm技術の概要で、第2世代のFinFET、52nmの配線ピッチと並べてエアギャップの初採用3を挙げています。Intel Foundryは2024年のIEDMで、サブトラクティブRuという代替メタライゼーション材料に薄膜抵抗率とエアギャップを併せて使い、最大25%の容量低減が得られると発表しました4。同社は、実用的で費用効率がよく大量生産に適合するサブトラクティブRuの統合プロセスを、研究開発の試験構造で実証した最初の企業だとしています。

ビアを埋めてから空洞を作れば、位置ずれの問題が消える

Section titled “ビアを埋めてから空洞を作れば、位置ずれの問題が消える”

空洞をいつ作るかで、工程の難しさが変わります。ITRSは、上の配線層を作った後に空洞を形成する統合方式なら、空洞を作る前にビアの穴が金属で埋まっているので、位置ずれの問題が起きないとしています1。

上層の後に空洞を作る順序
1 下層を埋める2 ビアと上層ビア3 後から空洞金属配線絶縁膜空洞
上の配線層とビアを先に作り、空洞はその後に下層の配線の間へ作ります。空洞を作る時点でビアはすでに金属で埋まっているので、ビアの位置ずれを空洞の側で気にする必要がありません。

空洞の形も設計対象です。IBMの研究チームは有限要素モデルで空洞内の容量分布を解析し、機械的・電気的な信頼性のためにキャップ層の開口を絞った条件5を前提にしました。その制約の下でも、キャップの下のlow-k SiCOH膜の中で空洞を横に広げ、空洞を深くすれば、容量の低減を最大にできるとしています。

代償の1つ目は、支える材料が減って亀裂が進みやすくなること

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空洞である以上、そこを支える材料は失われます。配線層は、作っている途中も使われている間も力を受けます。CMPでは膜が押しつけられ、パッケージへ実装する段階では材料ごとの熱膨張差から力がかかります。

犠牲層の分解やCMPの押しつけで生じる分布荷重のもとでは、ギャップ幅が1.5〜2µmの場合にエネルギー解放率が2〜3倍に増えうるという有限要素解析があります6。エネルギー解放率は、亀裂がどれだけ進みやすいかを表す量です。

空洞の置き方の3通り
全面low-k部分エアギャップギャップ幅 1.5〜2µm全面エアギャップ誘電率 約1金属配線low-k空洞キャップ層
空洞を増やすほど誘電率約1の部分が広がり、同時に配線を横から支える材料が減ります。テキサス大学オースティン校の解析は、この3通りを並べて亀裂の進みやすさを比べました。

この解析は、全面low-k・部分エアギャップ・全面エアギャップの3つを並べて比較しています。どこに、どれだけの幅で空洞を作るかが設計変数で、全面をエアギャップにする選択はこの時点で候補から除外されます。

代償の2つ目は、熱の逃げ道が消えて温度が20%上がること

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空気は電気も熱も伝えにくい性質です。配線に電流が流れれば熱が出て、従来はその熱が周りの絶縁膜を通って逃げていました。空洞にすれば、その通り道が消えます。imecも、空洞の熱伝導率が極めて低く、動作条件でのジュール加熱が懸念になるとしています2。

配線から出た熱の通り道
low-kで埋める絶縁膜を通って逃げるエアギャップ横の通り道が途切れる温度 +20%発熱する配線隣の配線
low-kで埋めた構造では、配線の熱は周りの絶縁膜を通って逃げます。空洞を入れると横の通り道が途切れ、imecのモデルでは12層の配線構造で温度が20%上がります。

imecは、局所的な2層の配線レベルでジュール加熱の校正測定を行い、その結果をモデルで12層のBEOL構造へ外挿して、エアギャップによって温度が20%上昇すると予測しました2。容量を下げるために作った空洞が、そのまま素子の温度を押し上げます。

imecは、金属配線の密度も重要な役割を果たし、密度が高いほうがジュール加熱の低減に役立つとしています。空洞を減らせば熱は逃げますが容量は高いままで、両者は綱引きの関係にあります。温度が上がればエレクトロマイグレーションの条件も厳しくなり、容量を下げるための空洞が導体の寿命を縮める側へ回ります。

imecはRuとの組み合わせで高アスペクト比の容量増を抑え、10年超の寿命を示した

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代償が2つあってもこの構造が進むのは、材料の側に残された余地が小さいからです。配線の抵抗を下げるには断面を縦長にする必要があります。imecは、高いアスペクト比について、抵抗とばらつきを下げる効果が容量の増加で打ち消されてしまうとし7、バリアレスのRuとエアギャップを組み合わせたセミダマシンのモジュールでこの問題を解けるとしています。導体にRuを使えば、絶縁膜と導体の間に拡散バリアが要らず、高アスペクト比での容量の増加を抑えられるという見立てです。

imecは、エアギャップを組み込んだセミダマシンの流れで、信頼性がデュアルダマシンlow-kと比べて競争力があり8、10年を超える寿命を示したと発表しました。代償があっても、実用の範囲に収まります。

エアギャップとは何ですか?

配線と配線の間を、絶縁膜で埋めるかわりに空洞のまま残す構造です。空気の誘電率は約1で、どんな固体の絶縁膜よりも低くなります。

なぜ誘電率を下げたいのですか?

隣り合う配線の間の寄生容量を減らすためです。容量は誘電率に比例するので、間を埋める材料の誘電率が下がれば容量も下がり、信号の遅れが減ります。

研究段階の技術ですか?

すでに製品に入っています。エアギャップ構造はILDの主流の候補解と見なされるようになり、SiO2 ILDとのエアギャップ構造がNAND Flashメモリのワード線容量低減のために、SiOC ILDとのエアギャップ構造がMPUの線間容量低減のために導入されています。

誘電率をどのくらい下げますか?

空洞の部分の誘電率は約1です。Intel Foundryは2024年のIEDMで、エアギャップを併せたサブトラクティブRuにより最大25%の容量低減が得られると発表しました。

弱点はありますか?

2つあります。構造として弱くなることと、熱がこもることです。中身が空洞なので支える材料が減り、空気の熱伝導率が極めて低いため熱も逃げにくくなります。

構造の弱さはどのくらいですか?

犠牲層の分解やCMPの押しつけによる分布荷重のもとで、ギャップ幅1.5〜2µmの場合にエネルギー解放率が2〜3倍に増えうるという有限要素解析があります。全面low-k・部分エアギャップ・全面エアギャップを比較した解析です。

放熱性はどう変わりますか?

imecは局所2層での測定を12層のBEOL構造へモデルで外挿し、エアギャップによって温度が20%上昇すると予測しています。金属配線の密度が高いほうが、ジュール加熱の低減に役立つとしています。

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