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熱伝導率とは

熱伝導率とは、材料が熱をどれだけ速く伝えるかを表す物性値です。 同じ発熱でも、この値が高い材料ほど温度の上がり方が緩やかになります。パワー素子の性能を電気の特性だけでなく熱の物性でも比べるのは、流せる電流の上限を最後に左右するのがチャネル温度だからです。ただし温度上昇を決めるのは熱の通り道全体の熱抵抗で、チップの熱伝導率はその一段にすぎません。

熱伝導率は、温度差に押されて流れる熱の量を表す

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熱伝導率λの単位はW/(m·K)で、温度勾配があるときに物体の中を熱として運ばれるエネルギー1を表します。熱は熱力学の第二法則に従い、必ず温度の低い側へ流れます。温度が変化している途中の伝わり方は別の物性で表し、熱拡散率a(単位mm²/s)が、材料が温度の変化にどれだけ速く反応するかを表します。

半導体では、熱伝導率がプロセッサとワイドバンドギャップのパワーエレクトロニクスで、熱管理と性能と信頼性を左右する2とNISTは位置づけています。

同じ温度差で流れる熱
Si4H-SiC高温側低温側高温側低温側熱の流れ約3倍
同じ厚さの板に同じ温度差をかけると、4H-SiCはSiの約3倍の熱を通します。同じ発熱なら、温度の上がり方が小さくなります。

4H-SiCの熱伝導率はSiの約3倍で、高温環境でも安定に動作します3。4H-SiCはSiに対して約3倍の禁制帯幅、約10倍の絶縁破壊電界、約2倍の飽和ドリフト速度も持ち、熱の物性はこの並びの1つです。熱伝導率が高いほど同じ発熱での温度上昇が小さくなるので、素子の面積を縮めても、温度の上限へ届くまでの余裕が保たれます。

熱を逃がす側の部材でも、熱伝導率は売りになる数字です。Coherentは、反応焼結のシリコン/炭化ケイ素(RB-SiSiC)の新材料で255 W/m-Kを超える熱伝導率を達成したとしています4。同社はこの材料の用途に、高電圧電源、電気自動車、再生可能エネルギー用のインバータ、産業用モータ駆動、スマートグリッド、無線基地局の熱管理を挙げています。

熱はチップ、はんだ、ケースの熱抵抗を直列に通る

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熱の経路
発熱点チップはんだケースTc=25℃Rth(チップ)Rth(はんだ)Rth(ケース)Rth(jc)
発熱点の熱はチップ、はんだ、ケースを順に通り、3段の熱抵抗を足した合計が、ケース温度25℃を基準にしたRth(jc)になります。

熱抵抗は温度の伝えにくさを表す値で、単位時間での発熱量あたりの温度上昇量を示し、単位は℃/Wです5。熱伝導率が材料そのものの性質なのに対し、熱抵抗は形と厚みまで含めた部品の性質です。発熱点で発した熱は、チップの熱抵抗Rth(チップ)、はんだの熱抵抗Rth(はんだ)、ケースの熱抵抗Rth(ケース)を通って伝わります。ケース温度Tcを25℃と定めたときの飽和熱抵抗をRth(jc)と呼びます。どの段も直列なので、合計が温度上昇を左右します。

1msのパルスでは、定常の熱抵抗が温度上昇を過大に見積もる

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過渡熱抵抗
チップはんだケース熱抵抗時間(対数)定常のRth(jc)Zth(jc)過大な分1ms
過渡熱抵抗Zth(jc)は、熱がチップ、はんだ、ケースへ順に届くにつれて定常のRth(jc)へ近づきます。1msでは熱がチップの内部にとどまり、定常の値を当てると温度上昇を過大に見積もります。

過渡熱抵抗は熱抵抗の経時変化で、発熱点の熱が時間を経るごとに伝導して各部位の熱抵抗を通過するにしたがって、温度が上昇します5。ケース温度Tcを25℃と定めたときの熱抵抗の時間変化をZth(jc)と呼びます。

1msのパルスでは、熱の広がりはチップの内部に限られます。定常のRth(jc)を当てると、温度上昇を過大に見積もることになります。

チップの熱伝導率が高くても、下の層の熱抵抗が合計を大きくする

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住友電気工業は、試作した高耐圧SiC MOSFETの素子を、高熱伝導率の銅タングステン(Cu-W)をベースとした測定用のTO-220パッケージへ実装しました3。

チップの熱伝導率が高くても、下の層の熱抵抗が大きければ合計は大きいままです。はんだの厚みと空隙、ケースの材料がそのまま結果に乗るため、SiCのように熱伝導率の高い材料を使うときほど、パッケージ側の設計が結果を左右します。チップを積み重ねる3D積層でも、imecは熱伝導率の低い接着剤を、積層した側の温度上昇が大きくなる原因の1つに挙げています。

素子の寸法では、文献値と実際の値が食い違う

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熱伝導率を測る方法の一つは、パルスで試料の表面を加熱し、反対側の赤外線検出器で過渡的な温度上昇を追う方法です1。時間とともに上がる温度を記録し、熱が試料の中を拡散する速さから熱物性を計算します。このlaser flash法は均質な試料を前提にしており、接続部を含む積層チップのような不均質な試料では熱抵抗を測りにくい方法です。

NISTは、マイクロエレクトロニクス素子の材料と界面の熱物性は十分にも容易にも特性評価できず、素子の寸法では文献値と大きく異なることがあるとしています2。そのうえで、産業界はシミュレーションのモデルに不正確な値や仮定した値を入れているとNISTは指摘しています。物性表の熱伝導率をそのまま熱設計へ入れると、この食い違いを抱えたまま見積もることになります。

熱伝導率の高い材料は、基板の価格と加工の難度で払う

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熱伝導率の高い材料を選べば、同じ発熱での温度上昇が小さくなります。その代わり基板の価格が上がり、加工の難度も上がります。チップを小さくすれば費用は下がりますが、面積あたりの発熱が増えて温度が上がります。パッケージの熱抵抗を下げれば余裕は広がるものの、材料費と実装の工程が増えます。

熱伝導率とは何ですか?

材料が熱をどれだけ速く伝えるかを表す物性値で、単位はW/(m·K)です。同じ発熱でも、この値が高い材料ほど温度の上がり方が緩やかになります。

熱抵抗とはどう異なりますか?

熱伝導率は材料そのものの性質、熱抵抗は形と厚みまで含めた部品の性質です。熱抵抗の単位は℃/Wです。

SiC はどのくらい高いのですか?

4H-SiCの熱伝導率はSiの約3倍で、高温環境でも安定に動作します。

どこで差が出るのですか?

発熱点の熱はRth(チップ)、Rth(はんだ)、Rth(ケース)を通って伝わります。どの段も直列なので、合計が温度上昇を左右します。

短い時間ではどう見積もりますか?

熱抵抗の経時変化を表す過渡熱抵抗Zth(jc)を使います。パルスの幅が短いほど、定常の値より小さくなります。1msのパルスでは熱がチップの内部にとどまります。

パッケージの材料も関係しますか?

します。住友電気工業は、試作素子を高熱伝導率の銅タングステン(Cu-W)をベースとしたTO-220パッケージへ実装しました。

材料を替えれば放熱の設計は軽くなりますか?

チップの熱伝導率が高くても、下の層の熱抵抗が大きければ合計は大きいままです。素子の寸法では物性値が文献値から大きくずれることもあり、経路全体で見積もることになります。

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