ヒートシンクとは
ヒートシンクとは、発熱する部品に密着させて、熱を空気へ渡しやすくするための放熱器です。 フィンと呼ばれる薄い板や柱を並べ、空気に触れる面を増やします。
ただし接合から空気までの熱抵抗は3区間の足し算で、ヒートシンクが下げるのは最後の1区間だけです。中央の区間は取付け面とグリスの作り方で決まり、ヒートシンクを省いた部品ではプリント基板が放熱器の役を担います。
フィンで表面積を稼ぎ、対流の熱抵抗を下げる
Section titled “フィンで表面積を稼ぎ、対流の熱抵抗を下げる”対流は、熱を受け取った流体が移動することによって熱を運ぶ熱移動現象です。対流における熱抵抗は、対流熱伝達率hmと発熱する物体の表面積Aの積の逆数になるので1、物体の表面積が大きくなると対流の熱抵抗が下がります。
フィンは、この表面積を稼ぐための形です。同じ体積の金属でも、薄い板を並べた形にすれば空気に触れる面は何倍にもなります。自然対流は流体の温度差で生じる浮力によってのみ駆動される流れ、強制対流はファンやポンプなどの外部的な要因によって駆動される流れで、対流熱伝達率hmは対流の種類によって異なります。流体を欠く状態、つまり真空では、対流による熱移動は期待しにくくなります。
ヒートシンクが受け持つのは、直列に並ぶ3区間のうち最後の1つ
Section titled “ヒートシンクが受け持つのは、直列に並ぶ3区間のうち最後の1つ”電力用ダイオードやIGBTなどのパワーモジュールは電極部と取付けベースが絶縁されているものが多く、一つのヒートシンク上へ複数のパワーモジュールを取付けて用いる構成が取れるため2、実装が容易で配線もコンパクトにできます。これらを安全に動作させるには、動作時に各素子が発生する損失(熱)を効率よく放散させる必要があり、ヒートシンクの選定が大きな鍵になります。
半導体の熱伝導は電気回路に置き換えて解けます。IGBTモジュールをヒートシンクに取付けた場合の接合温度Tvjは、接合とケースの間の熱抵抗Rth(j-c)、ケースとヒートシンクの間の熱抵抗Rth(c-f)、ヒートシンクと周囲の間の熱抵抗Rth(f-a)という3つの和に発生損失Wを掛け、周囲温度Taを足した熱方程式で表せます。ヒートシンクが直接下げる区間はRth(f-a)で、ほかの2区間の値は、フィンをどれだけ大きくしても合計に入ったままです。
中央の接触熱抵抗は、取付け面の平坦度とグリスの厚さで決まる
Section titled “中央の接触熱抵抗は、取付け面の平坦度とグリスの厚さで決まる”3区間のうち中央にあたるRth(c-f)は、部品の性能というより組み立て方で決まります。富士電機は、IGBTモジュールを取付けるヒートシンク面の仕上げに、ネジ取付け位置間の平坦度を100mmに対し50μm以下、表面粗さを10μm以下と求めています。ヒートシンク面が窪んでいると接触熱抵抗Rth(c-f)が増え、平坦度がこの範囲を超えると、締付け時にモジュール内部のチップと金属ベースの間にある絶縁基板へストレスが加わり、絶縁破壊を生じる恐れがあります。これは同社製品についての記述で、要求される平坦度や表面粗さは製品ごとに異なります。
接触熱抵抗を小さくするため、ヒートシンクとIGBTモジュールの取付け面の間にはサーマルグリスを塗布します。グリス自体が熱容量を持つため、厚く塗布しすぎるとヒートシンクへの放熱を妨げてチップ温度の上昇を招きます。薄く塗布すると、ヒートシンクとモジュールの間に未接合部分が生じて接触熱抵抗が上昇する可能性があります。塗布厚が不適切な場合は、最悪でチップ温度が上限を上回って破壊に至る可能性があるため、富士電機は均一な厚さで塗れるステンシルマスクによる塗布を推奨しています。
取付ける位置も熱抵抗を動かします。富士電機は、IGBTモジュール1個をヒートシンクに取付ける場合は中心に取付けると熱抵抗が最小になるとし、1つのヒートシンクへ複数を取付ける場合は、各モジュールが発生する損失を考慮して取付け位置を決めるよう求めています。大きな損失を発生するモジュールには、大きな占有面積を与えるようにとしています。
ヒートシンクを省いた部品は、熱の大半をプリント基板へ渡す
Section titled “ヒートシンクを省いた部品は、熱の大半をプリント基板へ渡す”小さなICの多くは、金属のヒートシンクを省いた構成で使われます。熱放射は、パッケージの表面積が非常に大きいケース以外では無視できるほど小さくなり3、パッケージからの実際の放熱経路は3つです。パッケージ表面の上部から空気へ熱伝達する経路、外部端子からプリント基板へ熱伝導しそこから空気へ熱伝達する経路、パッケージ側面へ放熱する経路です。
デバイスを基板実装したのみでパッケージ上面のヒートシンクを省いた場合、最大の放熱経路はプリント基板への熱伝導になり、計算によると全体の8割を占めます。352ピンPBGAを4層基板に実装した状態で熱流体解析を行ったルネサスの結果では、9割がプリント基板経由で、パッケージ表面からの放熱はわずかに1割でした。
ヒートシンクを省いた設計では、プリント基板そのものが放熱器の役割を担います。発熱する部品では実装基板を放熱器として利用する必要があり4、そのためにある面積を要します。この面積を欠くと熱抵抗が高くなって発熱が大きくなります。ロームの条件例では、ICの消費電力が1W、最大周囲温度TA(HT)が85℃、許容するTJの最大値が140℃のとき、θJAを55℃/Wとするには500mm²以上の銅箔面積が必要です。発熱するICが近接して実装されると相互に発熱が干渉して温度上昇を招くので、ロームは、ICの端から基板面に対する45°の直線どうしが干渉を避けられる間隔を最低限とする考え方を示しています。
基板側の作り込みも熱抵抗を左右します。基板の層数と熱抵抗の関係をシミュレーションしたデータでは、層数が多い方が熱抵抗は低くなります5。viaの有無を比べるとviaの効果が高く、ロームは、熱抵抗を下げるには基板の層数を増やすよりviaを設ける方が効果的だとしています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ヒートシンクとは何ですか?
発熱する部品に密着させて、熱を空気へ渡しやすくするための放熱器です。フィンと呼ばれる薄い板や柱を並べ、空気に触れる面を増やします。パワーモジュールを安全に動作させるには各素子が発生する損失を効率よく放散させる必要があり、ヒートシンクの選定が大きな鍵になります。
なぜフィンで表面積を増やすのですか?
対流の熱抵抗が表面積で決まるためです。対流における熱抵抗は対流熱伝達率hmと発熱する物体の表面積Aの積の逆数なので、表面積が大きくなると対流の熱抵抗が下がります。
自然対流と強制対流はどう違いますか?
流れを起こす力が違います。自然対流は流体の温度差で生じる浮力だけで駆動され、強制対流はファンやポンプなどの外部的な要因で駆動されます。対流熱伝達率hmは対流の種類によって異なります。
ヒートシンクを付ければ熱の問題は片づきますか?
受け持つのは経路の一部です。IGBTモジュールの接合温度は、接合とケースの間、ケースとヒートシンクの間、ヒートシンクと周囲の間という3つの熱抵抗の和に発生損失を掛け、周囲温度を足した式で表せます。ヒートシンクが下げるのは、そのうち最後の1区間です。
取付け面はどのくらい平らである必要がありますか?
富士電機は自社のIGBTモジュールのヒートシンク面に、ネジ取付け位置間の平坦度を100mmに対し50μm以下、表面粗さを10μm以下と求めています。面が窪むと接触熱抵抗が増え、平坦度がこの範囲を超えると締付け時にモジュール内部の絶縁基板へストレスが加わり、絶縁破壊を生じる恐れがあります。
サーマルグリスは厚く塗るほど良いのですか?
適切な厚さがあります。グリス自体が熱容量を持つため、厚く塗布しすぎるとヒートシンクへの放熱を妨げてチップ温度の上昇を招き、薄く塗布すると未接合部分が生じて接触熱抵抗が上昇する可能性があります。富士電機は、均一な厚さで塗れるステンシルマスクによる塗布を推奨しています。
ヒートシンクを省いた部品は、どこへ熱を渡していますか?
おもにプリント基板です。パッケージ上面のヒートシンクを省いて基板実装しただけの場合、最大の放熱経路はプリント基板への熱伝導で、計算では全体の8割を占めます。352ピンPBGAを4層基板に実装した熱流体解析では、9割がプリント基板経由、パッケージ表面からの放熱は1割でした。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 熱抵抗とは── ヒートシンクの働きを数値で表すための考え方
- パワーモジュールとは── 一つのヒートシンクへまとめて取付けられる形の部品
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- 1ローム:TechWeb「熱抵抗と放熱の基本:対流における熱抵抗」techweb.rohm.co.jp ↩
- 2富士電機:富士IGBTモジュール アプリケーションマニュアル 第6章 放熱設計方法(2022年3月)fujielectric.co.jp ↩
- 3ルネサス エレクトロニクス:放熱のメカニズムrenesas.com ↩
- 4ローム:TechWeb「表面実装における放熱面積の見積もりと注意点」techweb.rohm.co.jp ↩
- 5ローム:TechWeb「基板層数と熱抵抗」techweb.rohm.co.jp ↩
- 6ローム:TechWeb「熱抵抗と放熱の基本:伝熱と放熱経路」techweb.rohm.co.jp