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短絡耐量とは

短絡耐量とは、素子の上下が短絡して大電流が流れたときに、壊れずに持ちこたえられる時間です。 英語ではSCWT(Short Circuit Withstand Time)と呼びます。保護回路がゲートを切るまでの猶予を表し、IGBTでは一般に数µsから数十µsしかありません。短絡は制御の誤動作ひとつで起きるので、この数µsの中で検出して切れる保護回路と組んで初めて、素子は短絡を生き延びます。

短絡は誤動作で起き、一般に数µs〜数十µsで素子を壊す

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ハーフブリッジでは、上下の素子が同時にオンすると電源が短絡します。ロームは、こうした状態が制御回路の誤動作などの誤った動作で起こりうるとしています1。

IGBTで考えると、オフの素子に電源電圧VCCがかかった状態でゲート駆動回路がオンさせると、コンデンサに蓄えた電荷が一気に素子へ流れ込み、しばらくすると素子は壊れます。壊れるまでの時間はVCC、温度、パッケージの種類などで変わり、一般に数µsから数十µsの範囲です。短絡の間、素子には定格をはるかに超える電流が流れ、発生した熱の逃げ先は限られるので、温度が急に上がります。耐量を電流ではなく時間で表すのは、温度が限界へ達するまでの時間がそのまま余裕になるからです。

片方が速くオンすると、CGDを通って相手も誤ってオンする

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容量性ターンオン
電源+電源−上側FET(オン)下側FETドレイン電圧が急上昇短絡電流CGDRGドライバゲート電位が上がる
上側のFETが速くオンすると、下側のドレイン電圧の急な変化がCGDを通る電流になり、下側のゲート電位を持ち上げます。下側までオンすると、電源から上下を貫いて短絡電流が流れます。

同期整流 FET の誤動作を介して短絡が起き、制御側と同期整流側の FET が破壊に至る経路があります2。この誤動作の原因は、容量性ターンオンです。ドレイン電圧が急に上がると、ゲート・ドレイン間容量 CGD を通る電流がゲートの電位を持ち上げます。

許容できるドレイン電圧変化の最大値は Vth / (RG・CGD) です。ゲート抵抗 RG を小さくするほど、この上限が高くなります。上側の素子をどれだけ速くオンさせてよいかは、相手側のしきい値電圧とゲート抵抗、CGDの組み合わせで決まります。

耐えられる時間は温度で縮み、保護はその内側で切る

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耐量と遮断の時間
IGBT³ 600V検出・遮断は6 µs以内Tj 150℃6 µsTj 25℃8 µsRGS・RGTシリーズの保証最小値RGS8 µsRGT5 µs05 µs8 µs短絡からの時間
IGBT³ 600Vの短絡耐量は接合温度150℃で6 µs、25℃で8 µsです。いまの検出方式は、6 µs以内に短絡を見つけて切れるとされます。RGSシリーズとRGTシリーズでは、保証最小値が8 µsと5 µsに分かれます。

Infineonは、IGBT³ 600Vの短絡耐量を、VGE 15 V、VCC 360 Vの条件で接合温度150 ℃なら最大6 µs、25 ℃なら最大8 µsと規定しています3。同じ素子でも、高温で使うほど猶予は短くなります。同社は、いまの短絡検出の方式なら6 µs以内に短絡を見つけて切れるとし、短絡耐量を縮めることは、運転時の損失などの性能と短絡耐量のトレードオフ曲線の上で選んだ動作点だとしています。

壊れる温度の基準になるのは、チャネル温度です。新電元工業は、絶対最大定格の表にチャネル温度 Tch を挙げ4、アバランシェの条件を Tch ≦ 150 ℃ としています。短い時間でも、この温度を超えれば素子は壊れます。熱抵抗は温度の伝えにくさを表す値で、単位は ℃/W です。µs単位の短絡のような短い時間の挙動は、熱抵抗の経時変化を表す過渡熱抵抗 Zth(jc) が表します。

熱の逃げ道は決まっています。発熱点で発した熱は、チップの熱抵抗 Rth(チップ)、はんだの熱抵抗 Rth(はんだ)、ケースの熱抵抗 Rth(ケース) を通って伝わります4。この経路が、短絡の間の余裕を作ります。材料を変えると経路の条件も変わり、4H-SiC の熱伝導率はSi の約 3 倍で、高温環境でも安定に動作します5。住友電気工業は、試作した素子を高熱伝導率の銅タングステン(Cu-W)をベースとした測定用の TO-220 パッケージへ実装しました。熱を運ぶ側は有利ですが、SiC MOSFETは素子が小さいぶん熱容量は小さくなります。

壊れ方は3通りあり、2つは熱が決める

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短絡で壊れる3つの時点
電流時間b 電流パルスの最中温度に関係しないa ターンオフ時のラッチアップ過温度に関係c 遮断後の熱暴走パルスで失ったエネルギー
Infineonは短絡での破壊を、電流が流れている最中、ターンオフのとき、遮断に成功した後の3つの時点に分けています。温度に関係しないのは電流パルスの最中の破壊だけです。

Infineonは、短絡で素子が壊れる仕組みを3つに分けています。ターンオフのときに素子の過温度に関係したラッチアップで壊れるもの、電流パルスの最中に温度と関係なく壊れるもの、遮断に成功した後にパルスで失ったエネルギーから熱暴走して壊れるものです3。

同社は、IGBT³ 600Vではラッチアップの起きないセル設計にしたため1つ目は問題にならず、頑丈なチップ設計で2つ目も避けたとしています。この素子で見られるのは、遮断後の熱暴走だけです。ラッチアップと電流で壊れる経路を設計でふさぐと、残る壊れ方は熱で決まります。

測り方とデータシートの書き方は、製品ごとに違う

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ロームは、短絡耐量の試験ではゲート駆動電圧でオンの時間を少しずつ延ばし、壊れるかどうかを確かめる手順を繰り返して、壊れるまでの時間を測るとしています1。定めたオンの時間の中で壊れないことを確かめて、合否で判定する場合もあります。

データシートでの扱いも分かれます。製品のグレードや用途によって、値を載せない場合、代表値(Typ.)だけで保証のない場合、保証値を明記する場合があります。ロームのIGBTでは、RGSシリーズの保証値が8 µs(最小)、RGTシリーズが5 µs(最小)です。

ゲート電圧とゲート抵抗は、耐量と損失・雑音の引き換えになる

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設計で動かせる量は 3 つあります。1 つ目のゲート電圧を下げれば短絡の電流が小さくなり、耐えられる時間が延びます。その代わりオン抵抗が高くなり、定常の損失が増えます。

2 つ目のゲート抵抗 RG を小さくすれば、Vth / (RG・CGD) の上限が高くなり、誤オンの経路が起きにくくなります。ただしスイッチングの dV/dt が大きくなって雑音が増えます。

3 つ目は検出と保護の速さです。短絡耐量は猶予の長さであり、保護回路がその中でゲートを切ることが前提になります。

このほか、セルを細かくすればオン抵抗は下がるものの、同じ面積の短絡電流が増えて猶予が縮みます。素子の側でも、運転時の損失と短絡耐量はトレードオフの関係にあり、どこを取るかは製品ごとの選択です。

短絡耐量とは何ですか?

素子の上下が短絡して大電流が流れたときに、壊れずに持ちこたえられる時間です。保護回路がゲートを切るまでの猶予を表し、IGBTでは一般に数µsから数十µsです。

なぜ時間で表すのですか?

短絡の電流は大きく、壊れるまでの時間を左右するのは素子の温度だからです。温度が限界へ達するまでの時間が、そのまま余裕になります。

どうして誤オンが起きるのですか?

容量性ターンオンが原因です。同期整流 FET の誤動作を介して短絡が起き、両方の FET が破壊に至る経路があります。

許容できる電圧変化はどのくらいですか?

許容できるドレイン電圧変化の最大値は Vth / (RG・CGD) です。ゲート抵抗RGやゲート・ドレイン間容量CGDが小さいほど、上限は高くなります。

温度の上限はどこですか?

新電元工業は、絶対最大定格の表にチャネル温度 Tch を挙げ、アバランシェの条件を Tch ≦ 150 ℃ としています。

短い時間の温度上昇はどう見積もりますか?

熱抵抗の経時変化を表す過渡熱抵抗 Zth(jc) を使います。短いパルスでは、定常の熱抵抗のかわりにこちらを使います。

SiC では有利ですか?

4H-SiC の熱伝導率は Si の約 3 倍です。熱を運ぶ側は有利ですが、素子が小さいぶん熱容量は小さくなります。

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