ライナー膜厚予算とは
ライナー膜厚予算とは、配線の断面のうち密着層とバリア層へ何 nm を割り当てるかという配分です。 残った面積だけが、電流の通り道になります。配線が太かった頃、数 nm のライナーは端数でした。線幅が 20 nm を切ると、同じ厚みが断面の大きな割合を占めます。予算を取り戻す手は層を薄くする、無くす、縦に伸ばすの3つで、Cuはこのうち無くす手を使えません。
細くしても、ライナーの厚みは減らない
Section titled “細くしても、ライナーの厚みは減らない”imecによると、Cuは信頼性を確保するためにバリア、ライナー、キャップの3層を必要とします1。これらの層は周りの絶縁膜への拡散を抑えて絶縁破壊の危険を下げ、密着を確保します。拡散防止のバリアにも、濡れ・密着を助けるライナーにも、機能を保つ厚さが必要です。
imecは、一般に抵抗率の高いこれらの層の厚さが配線の寸法ほどには縮まず、導電にほとんど寄与しないまま金属の体積に占める割合が増え続けるとしています。電流が通る金属の面積が減るので、実効の抵抗率はこの割合で決まります。最も厳しい局所配線の層は、imecの見立てではまもなく幅10 nmそこそこかそれ以下になります1。
imec は、Cu のデュアルダマシンが 20 nm の金属ピッチを下回ると限界を迎えるとしています2。IBM Researchも、密着層と濡れ層のライナーに導体の体積を取られるため、fcc相のRuの線抵抗は線幅21 nm未満でCuを下回る3と計算しています。予算の取り分が、金属の順位そのものを入れ替えます。
Ruでは、ライナーを極限まで薄くするか、無くす
Section titled “Ruでは、ライナーを極限まで薄くするか、無くす”imec は、最適な積層を 1 nm の TiN 密着層と PVD Ru とし2、PVD が粒構造の制御に向くとしています。バリアを省いた Ru の設計は、別の密着層やバリア層を省き、導電断面の利用率を上げるとしています。欠陥抑制層として、サブナノの TiN または W を Ru の層で挟む構成もあります。薄膜化と材料・積層の変更を、その役割と必要な特性から選びます。
密着層をどこまで削れるかについて、IBM Researchは、fcc相のRuは従来の密着ライナーであるTaNやTiNを介するよりSiO2へ直接結合するほうがエネルギー的に有利3と計算しています。成膜法の都合で薄いライナーが要る場合でも、fcc相のRuではライナーによる縦方向の抵抗の上乗せをCu向けの従来ライナーより最大8倍小さくできるとしています。Ruは予算そのものが小さい材料です。
アスペクト比を上げ、縦方向に断面を稼ぐ
Section titled “アスペクト比を上げ、縦方向に断面を稼ぐ”現在の Cu 配線のアスペクト比はおよそ 1.6 です。imec の計画では、セミダマシンの第 1 世代がアスペクト比 2 を、第 2 世代が 3 を目標とし、その後 4・5・6 と続きます2。縦へ伸ばせば、幅を詰めても断面が保てます。幅を変えずにアスペクト比を1.6から3へ上げると、断面積は3÷1.6でおよそ1.9倍になる計算です。
十分な RC の利得を得るには、エアギャップと合わせてアスペクト比 6 以上にすることが imec の長期の目標です。容量の側と合わせた設計になります。
EM対策の層も、同じ断面を取り合う
Section titled “EM対策の層も、同じ断面を取り合う”Cu の溝と誘電体の SiCN バリアの間へ CoWP や CVD Co の薄い金属層を挿入する手は4、エレクトロマイグレーション(EM)の対策として IRDS 2024 が挙げる手です。層を足せば原子の動く経路が絞られ、寿命が延びます。その層の厚みは、そのまま断面の予算から引かれます。
imec は、高融点金属が Cu よりエレクトロマイグレーションに強いとしています2。材料を替えれば、この取り合いの前提が動きます。
ライナーの厚みは、寿命、抵抗、加工の取り合いで決まる
Section titled “ライナーの厚みは、寿命、抵抗、加工の取り合いで決まる”ライナーは薄すぎると濡れと密着、被覆を失います。拡散を抑える機能はバリアと材料の組合せで確認します。厚くすれば電流の通る断面を食い、実効の抵抗率が上がります。バリアを省けば断面を丸ごと使えるものの、材料そのものが拡散しにくいことが前提になります。アスペクト比を上げれば断面を稼げますが、加工の難度と隣の配線との容量が増えます。
薄膜化の余裕は底面と側壁で異なる
Section titled “薄膜化の余裕は底面と側壁で異なる”膜厚の配分は、導体の断面だけでなく膜の役割で決めます。バリアは拡散を抑え、RuライナーはCuの濡れと密着、埋込みを助けます。主導体にRuを使う比較の必要バリア厚を、Cu用Ruライナーの推奨厚さへ流用しません。
ボトムライナーレスビアでは底面の抵抗と側壁の保護を別々に扱います。底面の膜が減っても側壁の連続性が失われれば、拡散とリークの余裕が減ります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ライナー膜厚予算とは何ですか?
配線の断面のうち、密着層とバリア層へ何 nm を割り当てるかという配分です。残りが電流の通る金属になります。
なぜ配分が問題になるのですか?
配線を細くしてもライナーに要る厚みは同じだけ残るため、断面に占める割合が増えて電流の通る面積が減るからです。これらの層は一般に抵抗率が高く、導電にはほとんど寄与しません。
実際の構成はどうなっていますか?
imec が最適とする積層は、1 nm の TiN 密着層と PVD Ru です。PVD は粒構造の制御に向くとしています。
バリアを無くせますか?
バリアを省いた Ru の設計があり、導電断面の利用率を上げます。IBM Researchは、fcc相のRuはTaNやTiNを介するよりSiO2へ直接結合するほうがエネルギー的に有利と計算しています。
断面を稼ぐ別の手はありますか?
縦へ伸ばす手です。imec は、第 1 世代のセミダマシンでアスペクト比 2、第 2 世代で 3、その後 4・5・6 と上げていく計画です。
なぜ Cu では続きにくいのですか?
imec は、Cu のデュアルダマシンが 20 nm の金属ピッチを下回ると限界を迎えるとしています。Cuは信頼性のためにバリア、ライナー、キャップの3層を必要とします。
信頼性にも響きますか?
響きます。IRDS 2024 は、Cu の溝と SiCN バリアの間へ薄い金属層を挿入する手を EM 対策として挙げています。その層の厚みも同じ断面の予算から引かれます。
比較・違いを学ぶ
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